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主人公補正なんてクソ喰らえッ!!  作者: うにゅら帝皇神
第三章 『休暇☩旅行』
96/139

危ないのが増えました。

※追記 強制参加型模試が休みの日に連続してあるので投稿が遅くなります。

    ご了承ください。

 「ぼ、ボキは一体、何が・・・・・起こって・・・・?」


 ピクピクと、養豚場から逃げてきた太り過ぎの豚(人間)がゆっくりとその体躯を起こし始める。


 あまりの出来事に脳の理解が追い付いていなかったが、隣に居るノゥアはげんなりとした様子でその豚を見ていた。目には「また来たのか・・・」と、最早諦念に近い気持ちが見えていた。


 『誰ですかあの豚。下手したらマルク君よりも太ってるんじゃないですかね?』


 警戒心の欠片もない欠伸をしながらキルエルが僕の意識の中で目を覚ました。


 僕が廊下で起き上がろうと必死にもがいている豚を紹介しようとすると、先にノゥアによって豚男の正体が明かされた。


 「ごめんなさいキルエル君、ジォス君。”自称”私の許嫁がお見苦しい醜態を晒してしまいまして・・・。いえ、訂正します。常時醜態を晒していました」


 そんなノゥアの容赦ない発言にジォスがビックリしたようで、瞳孔を開いて必死に起き上がろうとして起き上がれない豚男を見る。


 「マジかよ・・・・」


 『マジですか・・・・』


 キルエルも同じくして驚くが、僕はもう既に知っていたので驚くも何もなかった。


 そう、この豚男もといカロリー=スレイヴ。この男はノゥアが自身に気があると思っている勘違いを疑わない、常軌を逸する妄想と究極のポジティブシンキングの持ち主だ。


 『ソレで”自称”ですか・・・』


 キルエルがノゥアの発言を思い返して今の僕の説明をくっつけて納得する。だが、キルエルよ。違うところがある。ソレは、―――――実際にノゥアとカロリーは許嫁の関係にある。


 『ぶッッ!!?―――はぁッ!?え、えぇぇぇッ!!ソレはまた何で・・・・』


 『あり得ん・・・』と現実を疑うような目線で豚男とノゥアを見るキルエル。


 僕がその理由について話そうとしたところをまたもやジォスの問いによってノゥアが先に言った。


 「そりゃーまた、ヤベーなオイ。どーいうことだ?」

 

 「簡単に言うと詐欺」


 「詐欺・・・・。結婚詐欺みてーな奴か」


 「問題なのは自分が超絶ハイスペックだと本気で思っているところ・・・・」


 「『ぶふぁッッッ!!!!』」


 その言葉と共にジォスとキルエルの腹筋が崩壊した。いや、・・・・気持ちは分かるぞ。いやだってあの見た目で自分はスマート筋肉モリモリイケメン男子だと思ってるんだぜ?こんなの見たら自分を『大英雄にして真の勇者!!』と信じて疑わないノミなんてまだ可愛い方だと思う。


 『ぶふッ、・・・・ぐはぁッ!―――イケメンマッチョと縁も所縁もない。もはや別物ですよw』


 「ちなみにある程度の想像は出来てるが、どんな戯言を言ってやがるんだ?」

 

 こらえようと口を塞いだものの、モノの数秒で陥落して笑い転げるキルエル。ソレと同時にジォスが笑いのネタ欲しさにノゥアに詐欺内容を掲示するように言う。


 ノゥアもノゥアで「えぇとね・・・・」と若干豚男を侮蔑の眼で見た後、小さな声で説明し始めた。


 ノゥアの話をまとめるとこんな感じである。キルエルエルにも分かりやすく現実との差別化をはかるため字幕を付けておこう。


 1:自分はとてもマッチョでイケメン。高身長で頭もキレる。16歳。

 現実:顔と首の境界線が無いくらいデブ。顔は出会い系サイトでよく見る討伐対象(モンスター)。低身長で自身の妄想を疑わない典型的な童貞思考。39歳。


 2:武器はなんでも使えるし、魔法も全属性(上級技含め)使える。ドラゴンを倒したこともザラにある。

 現実:妄想の世界線では大抵何でもできる。現実では斧系の武器しか使ってない。魔法もほとんど使ったことはなく、火、水、風しか使えない(全部初級)。ドラゴンを倒したのは漫画の世界だけ。


 3:嫁候補が沢山いる。全員彼女で全員と婚約している。ノゥアは特別。

 現実:ストーカー扱いされている。ノゥアは特別豚男を嫌っている。


 4:人望が厚く、将来の期待値が高い。

 現実:人望は透き通っている。将来に関しては諦められている。


 5:優しくて正義感に熱い。気配りができて人の考えていることが手に取る様に分かってしまう。

 現実:どの口が言ってんだ。自分の好いた女性には自分のエゴを押し付ける癖に。気配りではない。ちょっかいをかけているだけだ。


 以上である。


 『凄いな。いや、・・・・凄まじいと言うべきか。現実改変能力がそこまでエグイものだなんて』


 キルエルが豚男カロリーの現実改変能力(ただの妄想癖)に慄いている。ソレと同時にとある疑問を持ったジォスがノゥアに尋ねた。


 「何で見れば見るほど現実と理想に差があるような奴と許嫁関係になってたんだ・・・?」

 

 じったばったするカロリーとノゥアはどう考えたって不釣り合い甚だしい。年齢が20以上違うし、童貞思考(←此処で言う童貞は”女性に対して自己中心的な考えを持つ男子”)だし。ノゥアに至っては友人が居ないのに何故許嫁が居るんだ!?って話である。


 ソレに対してノゥアはこめかみを抑えながら深いため息を吐いた。


 「ソレに関しては父さんと母さんが関わっててね・・・・」


 「どういうことですか?話せるなら聞いておきたいです」


 「キルエルに同意。どーしてまた親が出てくるんだ?」


 僕は本家『Brave☩Innocent』をやっていた身であるが、ノゥアとカロリーの許嫁関係の原因が親にあることまでは全く知らなかった。知っているのはノゥアが不本意にカロリーと婚約関係を結ばされている点までだ。


 だからここから先は僕にとって未知の領域。踏み込むべきかそうでないかは分からないが、こういう現場に出会ってしまった以上、「僕は他人なんで」なんて真似ができる訳がない。ノゥアは腐っても僕ら『百鬼夜行』の一員なのだから。


 僕とジォスの問いかけにノゥアは「うん、聞いてほしいし・・・」と疲れた声を出して説明し始めた。


 「私とアレの出会いは結構昔からあって、覚えてる限りだと私が3~4歳くらいの時にはもう既に婚約が決定してた。父さんも母さんもガラシア育ちな上アタマの悪い脳筋思考を持っていて、『(聞いた限り)とても優秀な優良物件じゃないか!!ぜひとも娘を嫁に出そう!!』で固まっていて、当時の私も幼かったから『そんな白馬の王子様と結婚できるならしたい(まだ会った事無いけど)!!』って釣られて見事念書まで書いちゃった・・・」


 ドバっと一気に吐き出して深呼吸をするノゥア。心なしか目元に涙が溜まっているのが痛いほど分かる。その光景を見たジォスが廊下で起き上がりを試みている豚を睨む。肝心の豚はと言うとモッモッと首を必死に動かしてこっちを見ようとしている。三半規管が贅肉に圧迫されて使えないのか、小声で「ぉぃ・・・・」と助けを求める声が聞こえる。まぁ、勿論無視だが。


 『しかし、・・・ノゥアさんはまだしも両親は一体何してるんですかねぇ・・・。何故話聞いただけで娘を豚の生餌にしちゃったんでしょうか・・・』


 キルエルが珍しくカロリーをしっかりと豚と罵る。普段は滅多に人の悪口を言わないのに、この豚に対してだけはとても馬鹿にし腐った、というか侮蔑を孕んだ声音で言う。


 ・・・しかしながら、確かにキルエルの指摘通りだ。何故ノゥアの両親は相手側の素顔を見ないで娘の結婚方針を決めてしまったのだろうか。考え方が完全に詐欺に引っかかる典型的な例ではないか。


 僕の中に疑問が次々と生まれる中ノゥアは深く深呼吸をした後、再び話始めた。


 「ソレでいざご対面したらソコに居たのは”白馬の王子様”なんて代物じゃない、――肥えた家畜出てきた」


 「肥えてるのレベルじゃねーだろアレ。俺の視覚情報からすると病気も持ってんぞ。ソレも結構やべーのばっかり」


 何でもないことかのようにサラッと発言する内容にノゥアが食いついた。


 「えぇッ!?病気・・・。一体なんの病気持ってるの・・・?」


 その異様な食いつきに一瞬目を見張るジォス。ジォスが病気にかかるかはよく分からないが、一般的に僕も「病気持ち」と言われたら感染の可能性を危惧して警戒する癖がある。それゆえ、豚と不本意にも交際関係にあるノゥアはアレと接触する機会も多い。だからこその食いつきだろう。


 ジォスは「あー」とか言って、ノゥアの緊張をほぐす。


 「まー、俺の視覚情報が正しければノゥアから感染病の気配はねーな。どれくらいの交際があって、どれくらいの頻度で会って、どれくらいのスキンシップを取られていたかは分からねーが見た目完全にねーよ。潜伏期間とかの面も大丈夫だ。細胞から遺伝子配列までしっかり見たからな。問題ねーよ」


 ノゥアの健康を保証するジォスの発言にノゥアは「なら大丈夫か」とあっさりと納得する。


 「スキンシップに関しては大丈夫、・・・だと思う。アレが触れたモノは全部焼却したし、空気も入れ替えたし、アレと遭遇するときはちゃんと騎士の甲冑着て出会ってたから」


 「うわぁ、そんな反応でよく自分のこと嫌いなんじゃないかって疑問持たないんだなあの豚。ポジティブ通り越して脳の障害を疑ってしまうよ」


 「やめろキルエル。本当の障碍者さんたちに失礼だ。アレは障害とか生ぬるいレベルじゃねーよ」


 ケッと吐き出すジォス。もはや先天的な病気未満の扱いのようだ。僕としてはソレも優遇しすぎな気もするが・・・。


 それにしてもノゥアの豚対策にはびっくりだ。甲冑着て対応とか、相手モンスターかよwって話。実際モンスターだったわけだけれども。


 この際なのでノゥアに疑問をぶつけてみようと、僕は口を開けて尋ねようとした。


 「あのさn」


 「坊ちゃまああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!ご無事ですかッッ!!!?ってぎゃああああああああぶっ倒れてるうううううぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!」


 僕の質問を廊下に響き渡る程のデカい声が遮っていく。


 なんだなんだと廊下の奥を見る僕とジォス。ノゥアは何故か顔を逸らしていた。


 そして声を上げる主を見た瞬間、僕とジォスの思考が視覚事空の彼方へぶっ飛んだ。


 「坊ちゃまああああああッッッ!!!大丈夫ですかこんなお姿でッッッ!!!」


 


 『あ、あぁぁ、あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば』


 あまりの視覚へのインパクトにキルエルが混乱を通り越して発狂しかけている。


 なぜなら、―――――そう。


 

 フリルを付けたビキニ姿のジジィが浮き輪抱えてカロリーを呼んでいたからだ。



 ダメだ。・・・・世界が広すぎる。


 僕は考えるのをやめた。

 

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