行間書きました。《3》
「新しい異世界制作任されたって聞いたぞ?すげぇな創造神サマはよ」
「ソレも今回の案件はとある上位層の異世界線である”地球”。ソレの日本っつぅところで開発されたゲームをモデルにしてるって噂だぜ?完全オリジナルではなく下敷きがあるんだとな」
「え?ソレって大丈夫なのか?・・・最近は異世界転生者による知識無双を軽減するために、上層部が『下敷き抜き取り政策令』を遂行してるじゃん。よく通ったなその案で」
「何か聞いた話だと、最初はその下敷きを中心に改変して別の世界線を作ろうとしたらしいけど、途中でつっかえたらしくってさ、ソコを蛮勇神様がアドバイスしてゲームを元のまま再現することになったみたいだ。上層部の出したガイドラインから少しずれてるから抜け穴的な?」
「なるほどな」
そんな世間話をしながらショッピングモールで駄弁る神々。
その話を聞きながら僕は軽く溜息を落とす。
隣には絶世の美女(残念なことに妹だが)が居るというのに情けない。
僕の溜息を聞いたのか、妹が不安げな表情で此方を向く。
「大丈夫ですか創造神様?・・・・やっぱり私よりも豊穣神様とか調停神様とか因果神様の方が良いですよね・・・・。あの三人創造神様のこと好きそうですもんね」
「何で僕とデートする神のレパートリーに因果神(男)が混じってるんだ・・・・。そもそも因果神の場合、アレは恋愛的な目線で僕を見てないだろ・・・・」
「確かに因果神様ってエゴイストみたいなところありますからね。・・・・自分大好き。良いなぁ」
「よくないでしょ・・・。アレに絡まれる僕の気持ちはどうしろと。自分が一番正しくて、ソレ以外が間違ってる。そんな世界観してる奴なんて蛮勇神一人で十分なのに・・・」
「そんな自分至上主義、お兄ちゃんにもあったらなぁ・・・・・、あッ、いやゴメン。何でもない」
つい口から漏れ出た失言に今更ながらにも口を覆う復讐神。
僕は自身の失敬にちらりとこちらを見る復讐神の頭をそっと撫でる。
「良いんだよ妹よ。あの時こそ危なかったけど、今こうして生きている訳だし。妹も生きてるし。・・・僕としてはコレ以上ない心地だよ」
そう、”僕”としては、だ。
今の”僕”はとても幸せだと、そう思っている。
昔は、・・・・どうだったかな。
少し昔のことを思い出してしまったが、僕はその先を思い出すのをやめて再びショッピングモールの中を歩き始めた。妹もまた僕の後を付いてくる。
昔の、昔の思い出だ。・・・・・・気どころか存在も狂っていたんじゃないか、僕は。
まぁ、今更か。僕も最近、考えてることが分からなくなってきたし。
疲れすぎ、なのだろうか・・・・。
S S S S
「よぉ」
声を掛けてきたのは肩までかかる白髪に黒に近い赤と、白に近い赤の眼をした細身の青年、時空神だった。
妹と買い物を楽しみ、近くのカフェテリアにてマヨネーズ味の焼うどんケーキジュースを飲んでいるところで彼に出会った訳だが、彼はいつも通り片手にラノベを持ってコーヒーをちびちびと飲んでいる。
「あぁ、時空神様じゃないですか。創造神様がいつもお世話になっています」
ぺこりとお辞儀をする復讐神。ソレに対し時空神は「いぃや」と首を振る。
「お世話になってんのはオレ様の方だ。新作のラノベ、貸してもらってるしよぉ。ソレにぃ、課題の『時を駆ける歴史書』。アレ創るのには創造神の知恵と創造神としての力が必須だったんだよ」
「あぁ、そういうこともあったね。あの時は時空神も今みたいに精神図太くなかったし。完全なモヤシメンタルでしたもんね」
「やめてくれよ創造神。ありゃぁ黒歴史だ。掘り返すんじゃねぇよ。あと、オレ様は変わってねぇよ。むしろ創造神が変わり過ぎだって話だ」
「ケケケッ!」と笑う時空神。話について行けていない復讐神が僕に尋ねる。
「一体、・・・・なんの話ですか?」
「僕が時空神の課題提出を手伝っていた話だよ」
「課題提出・・・・。あぁッ!神になってすぐのエリートの所の研修の宿題ですか!!」
「その通り。その時に時空神が僕の所を訪ねてきてね。宿題が出来ないから手伝ってほしい!って頼んできたんですよ」
一呼吸おいて、僕は時空神の顔を見る。時空神はラノベを読む視線は変わらないモノのコクリと首肯する。許可は取れた。
「『時を駆ける歴史書』はその時に、僕と時空神が創り上げた発明品ですよ。・・・・でも、最初は今みたいに時空神は誰にでも接する態度じゃなくて、それでいて物事を途中でほっぽりだす事がよくありました。『時を駆ける歴史書』の時もそうで、彼は途中で投げ出して逃げた。――――でも、結局は戻ってきてくれて完成まで漕ぎつけられた。・・・・今でも、いい思い出ですよ」
「オレ様にとっちゃぁ、悪夢甚だしかったぞおいぃ。なんせ逃げたら創造神のi、・・・・ソレにオレ様の仕事だってのに自分の宿題みてぇに真剣にやってるからぁ、何つぅかな、恥みてぇな、そんな感情が出てきたんだよ」
「恥ずかしいったらありゃぁしねぇ」と呟きフィッと顔を逸らす時空神を尻目に、復讐神は「ふふ」と微笑ましい生暖かい視線を僕に送ってくる。
僕はなんかもどかしい気分になったので残りのジュースに口を付けて、一旦現実から逃避する。
すると不意に後ろから声が掛けられた。
「アレ?・・・先輩じゃないですかッ!!」
「わッ!ホントだ。・・・・・お、お疲れ様です」
このキュルキュルン☆としたあざとい声とおしとやかな声の主は振り返らなくても分かる。
僕は一旦現実に戻り、ストローから口を外す。そして、創造神たる神の力によって追加の椅子を2つ作って言った。
「豊穣神様と調停神様ですか。お疲れ様です。良ければ座りますか?」
「ん、ありがと」
「す、すいません」
豊穣神はサラッとお礼を言って椅子に座り、調停神はぺこぺこと頭を下げて椅子に座る。黄色い髪をツインテールにしている碧眼女神が”豊穣神”であり、緑と青の入り混じったロングヘアの赤眼女神が”調停神”だ。復讐神が僕の隣に座る彼女たちを見ながら「邪魔な女が増えやがった・・・」とか黒い事言ってるのがよく聞こえる。こらこら、彼女たちは腐っても最高位神なんだからそんな事言わないであげて。
対するガンを飛ばされた彼女たちは黒と赤が混ざったような禍々しいオーラを燃えがらせながら復讐神を見据える。
そんな光景に時空神が頬杖をついて、ただでさえ悪循環な雰囲気にダイナマイトを投下した。
「やっぱ女って黒いな。表面上ズッ友とか言ってんのに中身は他人を引きずり落すことに必死なドロドロ加減。小説の女もリアルの女も、神の女も大して変わらねぇんだな」
「っておいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!!」
ソレは言っちゃダメな奴だ時空神ッ!!例え本当だとしても口に出してはいけないッ!!・・・・いや、言ったところで彼女たちの雰囲気が良くなるわけじゃないけどさ。
僕の今までの経験から言わせてもらうなら時空神の今の発言はとてもヤバい。何故かって?
今さっきまで剣呑な彼女たちの殺意が一瞬にして時空神に向かったからだよ・・・・。
何故かは分からないが女性の情報流通はとても速い。男性よりも速く、周囲にばら撒かれて悪意の伝染がおっぱじまる。そうなるといがみ合っていた女性が一変、アラ不思議!!一瞬にして悪意の源を絶つ狂気の集団に早変わりッ!!
そうなると最早解決の手立ては悪意の源をもう1個作るとか、正気に戻す洗脳神術を使うしかない。
僕が時空神を心配するのとは裏腹に、当の爆破テロの容疑者である時空神は睨みを効かせる彼女たちを一瞥。そして時空神は「はぁ」と軽く溜息を吐いてラノベを持って立ち上がる。
そして最後に背負っていた爆弾に着火してその場を去る。
「そんなんだからいつまでたっても彼氏の一人二人出来ねぇんだよ腹黒共。女神だとしても流石に長年独り身だったら期限切れのバーゲンセールに投入されちまうぞ?いい加減、自分の年齢を弁えるんだな」
「何で言うかなあああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
「あぁそぉだ。創造神、また時間あったらオレ様のラノベの考察聞いてくれねぇか?最近新しい伏線が見つかってよぉ、第一巻の裏表紙と関係があるのかもしれねぇ・・・・。そぉいうことで、じゃぁな。女の扱いには気を付けろよ?女の関係性について指摘とかするなよ。アイツら根回しクソ速いからな」
「君、鏡に向かって話しているのかいッッ!!?」
僕の突っ込みも彼には届かず、時空神はそのまま店内を出て行った。
まぁ、その産物かと言わんばかりに見事に女性陣全員がブチキレたのはまた別のお話。
その後、僕は病院に運び込まれる時空神の姿を見たとか、見なかったとか。




