第二の太陽を見ました。
《三重合体魔法、――――『紅藍金・混沌渦』》
《三重融合魔法、――――『銅蒼透・混沌禍』》
《三重結合魔法、――――『紺硝虚・混沌螺』》
《数多超越魔法、――――『混存原色』》
ダルマオさん(現『混沌の支配龍』)が4つの頭から別々の魔法を同時詠唱する。
何もない空間から突如として赤青黄、茶緑空、黒白無の三色が破壊のエネルギーとなって顕現、そしてそのまま螺旋を描くように生命体に飛来し、その体全体に大打撃を与えた。
「オオオオオオオオオオオォォォォォォoッ!!?」
叫び声をあげる生命体の頭が首元から消し飛び、絶叫が途絶える。
そして穴だらけの生命体の足元に向けて、ダメ押しと言わんばかりに巨大な超質量の球体エネルギーが5つ程降り注ぐ。一撃一撃が着弾するたびに余波の衝撃波と暴風が周囲の万物を蹴散らしていく。
「す、すごい攻撃だ。・・・・・でもッ・・・・・」
「あー、クソ。アレ程の猛攻受けても足は傷一つ付いてねーぞ。物理耐性どころか魔法耐性もクソ高ーと見た」
僕に襲い掛かる衝撃と風をビンタで掻き消すジォス君が忌々し気に、生命体の足を見る。
ソコにはかすり傷一つ見当たらない生命体の足が鎮座していた。
『この生命体の足、タフ過ぎるだろ。国一つ消し飛ばす火力(攻略本の説明)の魔法喰らってほぼ無傷なんてよ・・・・』
「ソレでは、アレはどうやって倒れるんでしょうかね・・・。そんな大火力の魔法が効かない。そしてもっとあのドラゴンよりも強い打撃が必要。物理属性でもなければ魔法属性でもない。ある意味無属性的な攻撃をしなければいけませんよね?・・・・何かありませんか?」
僕の問いかけに『う~ん』と首を巡らせるゲーム君。此処はゲーム君にだけ任せるわけにはいかない。僕も動かないと、・・・・ッ!!
僕はマガツを振りかぶってそのまま樹木の足に斬りかかる。だが、斬れてもすぐに回復する上、『一撃必殺』が発動しているとはいえど、完全に除去できるのは1~2本の幹だ。これでは何百本の幹で作られた足2本を完全に切断する前に僕が『疲労状態』で動けなくなってしまう。
「・・・くッ!・・・・もっと僕に力があれば・・・・ッ!!」
我ながら、自身の力不足さに嫌気がさす。でも刺したところで何かが変わるわけじゃなし、ソレでも僕はマガツを振るのをやめない。
僕がそうやって剣を振り続けていると、ジォス君が大声で叫んだ。
「キルエル、ソコを大きく右に避けろ!!」
「!?」
理解するよりも早く、身体が横に動いた。そして横にズレた直後、ジォス君を中心に空間の歪みが生じ始めた。
「な、何を・・・・・?」
僕が驚いて、何をしているのかと眼で訴えると、ジォス君は「けッ!」と息を吐き出す。
「俺、諦めかけてたんだよな。物理も魔法も効かねーなら、もういっそのこと空間を斬り飛ばしてどっか別の世界線に投擲するかなーって考えてたんだよな。・・・でも、キルエルが諦めずに剣を打ち込み行った事に心揺さぶられたんだよ」
「」
「コレ言うのも憚られるんだが、キルエル、絶対俺らの中で一番弱いのよな。ソレなのに諦めてねーのってスゲー事なんだよ。俺にとっちゃな。で、そんな俺はキルエルの勇姿に心打たれて足りねー脳みそフル回転させて戦略を考えたんだ」
「戦略・・・?」
訝し気に僕が首を捻ると、ジォス君は「まー見てろ」とだけ言い右腕を突き出して、空気を握った。
「物理じゃ無理。魔法もダメ。じゃー何が通じるのかって?・・・・そりゃもう科学と自然の力しかねーだろッ!!」
ジォス君の掛け声と共に握りこぶしから光と熱量が漏れ出す。
『なんだ・・・・。何をする気だ・・・・?』
ゲーム君が冷や汗を流しながらジォス君を見つめる。
「オラァッ!!」
猛り声と共に掌に熱量と光を放つ拳を打ち当てた。その瞬間に更に爆発的な光と熱量がジォス君の拳を包み込んだ。
そのまままるでボールを投げるような姿勢をするジォス君。片足を上げて振りかぶり、渾身のストレートを撃ち出す。
「ルォルゥァァァァァァッッッ!!!!!」
その叫び声と共に、突き出された右手が一瞬赤く光ったのを僕の眼が捉える。
そして、何かがとんでもない速さで僕の感覚を飛び越えて生命体とぶつかった。
「『!?』」
僕とゲーム君が振り向いた先には、第二の太陽が渦を巻いて生命体の足を呑み込む光景が出来ていた。
S S S S
生命体の足は太陽に呑み込まれてからは完全に消滅し、床全体に張っていた根事焼き滅ぼされていた。ソレでも生命体の燃えカスは残っていた。タフ過ぎる・・・・・。
人間に進化してくれたダルマオさん曰く、この生命体の燃えカスが美味しいんだと。どの口がほざいてんだ一回木炭食ってこい、とも思っていたがコレが案外美味しかった。
ただ、問題とするのであれば――――そう。
「何でコレ、噛むたびに味が変わるんだろう?最初がミカンで、次が焼き魚、砂糖と続いて小麦の味、今はもろこしだ」
『うぇっ、辛い甘いしょっぱい無味苦いのオンパレード。全部総合してクソマズ。味覚を壊しにかかってるぞこの燃えカス』
僕と味覚と痛覚を共有したゲーム君がとても嫌そうな顔をしてペッと吐き出す仕草をする。
そんなに違和感かね?・・・と思いながら隣に居るジォス君を見る。
ジォス君はすんごい変な顔をしながら燃えカスの幹をガジガジとかじっている。
「しょっぱ、・・・・と思ったら甘い、・・・酸っぱい、苦い、うえ――、遺伝子改造された味がする・・・・」
どうやらジォス君もゲーム君と同じような反応だ。僕はあんまりそういう事気にならないんだけどなぁ。もしかしたら日本人特有の味覚みたいな違いがあるのかもしれない。
そう思いながら幹をかじっていると疑問が思い出された。
僕は目の焦点が合っていないジォス君に尋ねる。
「ねぇジォス君さ。少し質問あるけど良いかな?」
「・・・・・ん?えぇぇえ、・・・あー、何だ?」
一瞬困惑したような顔を見せるがいつもの表情に戻るジォス君に、あの生命体に発射した光の正体について尋ねた。
するとジォス君は何を納得したのか、「あーソレでか・・・」と呟く。
「一体、何に納得しているんだい?僕にも差し支えなければ教えてほしいな」
「あー、そーだな。確かにある意味において被害者だし、知る権利はあるよな・・・?」
そう前置きして話し始めるジォス君。ある意味での被害者とは何なのだろうか・・・。
「俺はあの時、物理でも魔法でもないモノによる攻撃が必要だと思った。ソレで思いついたのが、魔力エネルギーでもなく、運動エネルギーでもない、そう。キルエルが考えている通り、熱エネルギーにしたんだ」
「熱エネルギー・・・・?」
「で、どうやってあんな疑似太陽みたいなのを出したのかと言うと、・・・・・まぁ簡単に言えば、そーだな。・・・・拳を握るときに酸素原子と窒素原子を核融合させるだろ」
『か、核融合ッ!?』
ゲーム君が驚愕の表情でジォス君を見る。僕には核融合がそもそも分かっていないのだが、ゲーム君が驚くということは、ソレほど凄まじいモノなのだろう・・・。
「で、核融合して新しい原子を生み出す瞬間に、掌に拳ぶつけて核分裂を起こす。―――核融合と核分裂を同時に起こしたんだよな」
「・・・・・??????」
最早僕ではついて行けない領域の話になった。
「で、そのエネルギーを圧縮した後、光速の30倍の速さで投げた。勿論、衝撃とか全部圧縮玉の回転を生かして発生させずに、重力と抵抗が仕事してないタイミングを見計らって射撃したから問題ない」
「」
「で、まー俺の計算通り、圧縮しきれずに生命体の足の目の前でエネルギーが膨張。第二のミニ太陽?が出来上がった訳だ。・・・・で、コレからが問題」
「・・・はぁ」
「核融合も核分裂もそーなんだが、とんでもない量の放射線が出るんだわ」
『そうだな』
僕は途中から撃沈されてついて行けず、同じ日本産のキチガイたるゲーム君が話に付いて行く。
「本来なら放射線の中身再構築して魔力に変化させるんだが、急いでるのもあって、放射線を含んだまま射出した。まーその結果、生命体の遺伝子応報が書き換えられて壊されてで、・・・こんなクソマズな燃えカスが出来ちまった訳だ・・・・」
『あぁ、そういう・・・・』
ゲーム君が納得して僕の持っている生命体の燃えカスを見る。
僕にはもうなにが何やらだった。




