旅行準備します。《後編》
明後日からテストが始まります。なので、投稿頻度が遅くなります。ご了承ください。
「まー、そー照れるなよ。久々だろ?ほれほれ、ハグとか全然大丈夫だぞ。待ってるぞ?」
「どこが照れてる風に見えるんだオレのどこが・・・ッ!!」
「まーそー言うなよ。俺が赤子の時からの仲じゃねーか!!」
「会話が!成立!しない!・・・・っていうかアレは違うだろ!!ジォスが勝手にコッチに来て「野球しようぜ!お前ベンチな!」とか言って、オレを強制参加させたんだろうが!!!」
「でもソレで経営何とかなったんだろー?ならいーじゃん。ソレに『お前とオレなら世界を取れる!』とか言ってダチ認定してたじゃねーか」
「そうなんだよ。息抜きにベンチしてたらなんか頭が回り始めてな。ジォスを友達認定してしまったんだ・・・。何でかなー、本当に何でかなー。確かに店はジォスの人選した人入れた瞬間、軌道に乗って成功したんだけどなー。なんか思ってたのと違う方面に行っちゃって、ソレだけならまだしも大成功して業界に爪痕残しおったからな・・・・」
破壊の惨状の社長室、その部屋の惨状に構わず手短な椅子に座って溜息を吐く強欲。
俺とオッサンも手短な長椅子引っ張って、強欲と対峙する形でソコに座る。
「おかしいな。最初は世界一のホストクラブ作る予定だったのに、ジォスをダチにした途端、何故か知らないけど世界一のオカマバーを作ることになってしまっていた・・・。いや本当に何でだ?年商も資産も増えてる一方だし、人気も知名度も爆上がりだし、ガラシアの王のお墨付きだし、・・・成功はしてるんだけど、何でこうなった!?本当に何でこうなった!?」
毎回のことなので聞き流しているが、コイツ。相当経営で苦労してるみたいだな。世界一でも苦労することってあるんだなー。また暇になったら経営とかまた考えるか・・・。
あぁ、それよりも大事なことがあるんだった。
俺は「なー、強欲」と目の前で情緒オカシイ強欲を呼び、隣のオッサンを指さす。
「この前、支店の増加に当たる店員数の少なさで嘆いてたろ?だから連れて来たぜ。新しい店員」
強欲はダルそーな目で俺の隣に居るオッサンを見る。
「・・・・・・・・・・・」
「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ・・・・・」
強欲に見つめられてきょどるオッサン。大丈夫かこのオッサン、さっきまでの雰囲気どこ行った?
そしてジッと見つめること数十秒、強欲は「うん」と何か納得した後俺に言う。
「良い筋肉量、毎日鍛えてるみたいじゃないか。目標あっての努力じゃないとここまでは来れないだろうな・・・。ジォスは時々しか来ない癖に来るときはしっかり扉破壊してとんでもない人員連れてくるから性質が悪い・・・」
「つーことは?」
「あぁ、彼を雇ってもいいかもね。見た目平和主義っぽそうだし、ソレなら新しい支店に配属しようかな・・・・・。まぁ最初はお姫様のボディガードから始めさせて貰うけども」
「お姫様ッ!!?」
俺が何か返そうと思っていたらオッサンが一夏越した魚の顔から、生気の溢れかえった顔になって異常な食いつきを見せる。おー、元気になったなー。
でもこんなに食いついてくれるなら、さっそくお姫様と面会して慣れさせるか・・・。後ついでに色々仕込まねーといけねーからな。
「じゃー早速呼ぶかお姫様。慣れさせるためにも、仕込むためにも、色々相手になって貰わねーとな」
「じゃぁ呼ぼうか。おーい、134番店のお姫様呼んできて~」
「分かりました。少々お待ちを」
「!?」
またもや驚くオッサン。声の出何処にビビったのか、それとも声出した奴がアザラシの着ぐるみ着た若人だからだろうか。
今さっきまで床の置物と化していたアザラシがスッと起き上がり、部屋の外へと出ていった。
「な、・・・ななな・・・・ッ!!」
このオッサン、もしかして相当肝っ玉弱いのか?と思い、俺はオッサンの背中をバンバン叩いて励ます。
「大丈夫だぜオッサン、ありゃ置物になることに人生の青春全部かけてるお兄さんだ。他にもインコと同じく鳥かごで飼われることを生きがいにするお兄さんとか居るから、よろしくだぜ?」
「お、おおぉう・・・・」
いまいち現実を感じれていないのか、間抜けな声を上げるオッサン。
すると、アザラシの着ぐるみ着たお兄さんがお姫様引き連れて部屋に入って来た。
「お姫様連れてきました」
「あぁ、ありがとう。じゃぁ君はいつも通り置物になっていていいよ」
「はい、コレ僕の青春なんで」
そんなことを呟いたかと思うと、その場にガクリと倒れ伏すアザラシのお兄さん。姫様がその上を歩くが全く気にしていねー様子で微動だにしない。アレが7年間アザラシをやっていたプロのアザラシかと思うと、やはり何とも言えねー尊敬の念を抱いてしまう。
「見ていて痛々しいというか、業が深いというか・・・・。なんであんな変態のおかげで売り上げが上がってるのかよく分からないな・・・・」
アザラシの置物にそう嘆く強欲。別に変態じゃねーと思うが・・・・、まー人には色々あるんだろーな。
ソレはさておきお姫様、相変わらず筋肉の量が凄まじい。最近はスラッとしたイケメンよりも包容力のあるダンディー髭マッチョの需要が高まっている中、やはり姫様は凄まじい筋肉量を持っていると思う。コイツが現在支店の中でもNO、1売り上げを誇る姫様なんだから周りも見習ってほしーモンだ。
お姫様もといダンディー髭マッチョはのしのしとこちらに近寄ってくる。
オッサンはそんな姫様を見て俺に問う。
「なあ小僧、姫様は何処だ?このガチムチマッチョの後ろにもいないが・・・・」
「あん?居るだろーが目の前に」
「は?」
改めて姫様を見るオッサン。そしてまた何か察したよーな顔をする。何を察したのかは別に知らねーが、姫様はオッサンを見ると「ニタァァ・・・・・」と微笑む。うん、相性バッチグーだな。
俺は姫様にオッサンを指さして伝える。
「姫様の支店、人員不足なんだろ?最初はボディガードで雇って色々教えてあげてくれねーか?」
「あんるぁ・・・・、いいんのかしるぁ?困ってたんのよぬぇ。あんりがとぅん・・・ぼ・う・や」
「おー、またアバチャ飲みに行くからな」
「ぼ・う・や、なら大歓迎んゆぉ・・・・。いつでんもぉ、来てねぇ!!」
「え、ちょッ!・・・・まっ!?」
お姫様はムキムキの筋肉から繰り出した投げキッスを俺にぶつけた後、隣のオッサンを軽々と持ち上げて肩にかける。状況が呑み込めてないのか必死に抵抗するオッサンだが、なすすべもなくお姫様によって連れ去られる。
「あんるぁ、・・・良い筋肉ねぇ・・・。まずは別の筋肉も鍛えるところから始めなんぃとぬぇ」
「嫌ぁぁァァァァァァァァァあッ!!!!!!!!!」
扉の向こうから叫び声が聞こえるがどーしたモノか・・・。まー、しっかりきたえてくれるだろーな。
俺はオッサンとお姫様を見送った後、強欲に向き直る。
「つーわけだから、俺ちょっと5ヶ月くらい旅行行ってくるわ」
「何ッ!?話が急展開したんだけどッ!!?別に良いんだけどさ!そういうのはもっと前に言ってくれよ・・・・」
「ちょっとパーティ加入したから旅行しよーぜ!!って話になってな。可愛い男子っぽい女子と、男子っぽい何かと男子で行ってくる」
「あーはいはい、いつものか・・・・。分かったよ、行っておいで。・・・っていうかオレジォスの保護者じゃないんですがッ!!?」
「おー、じゃー行ってくる」
「会話が通じない・・・ッ!!・・・・・もういぃや。パーティメンバーに迷惑かけない程度に楽しんでおいで。―――――決して海にキノコ狩りに行くような真似はしないこと!」
「分かってるって、安心しろよー。俺が今までそんな事したことねーだろ?」
「山で鯨釣ったジォスが言うと説得力ないんだよ。・・・・あぁもう、行っておいで行っておいで」
ほとんど投げやりな態度でシッシと手を振る強欲。俺はソレに応えるべく、「行ってきます!」と言い半壊した社長室を出る。
あー、明日が楽しみだぜ。山で鮭とか秋刀魚釣るかなー。
S S S S
旅行日前日、私はメイド長のBBAに執務室に呼ばれて叱責を受けていた。
「と言うことで、5ヶ月間実家帰省に行きます!」
「アンタ、絶対5ヶ月間の謹慎処分の意味分かってないでしょ」
「はい!!」
「胸張って言うなぁッッ!!!!」
生き生きと答えると何故か怒鳴り散らして辞典を投げてくるメイド長。そんなに怒ってると血管が細くなりますよ?ちゃんと小魚食べてますかね?
私はただただ、謹慎処分を有効に活用しようとしただけなのに、・・・・というか姫の好き嫌いが激しいんだよ。アレルギーでもない癖に残して、作ったメイドが悪いとかどんな神経してんだ?
ソレにメイド長よ。私胸張る程の膨らみとか無いぞ?
私は華麗に投げられた辞典をキャッチする。目の前には筋骨隆々の脳筋オブザイヤーBBAが机に置かれた鍋を見せてくる。中には私の作ったカレーシチューが入っている。
相変わらず良い匂いだ。その流動体は意志を持っているかのように緑の腕を大量に伸ばして鍋からの脱出を図ろうとしている。だが、量が足りないのかギリギリで脱出できないみたいだ。うんうん、いつも通り、新鮮なようだ。
さて、いつもの流れになるが私はメイド長に尋ねる。
「コレがどうしたんですか?ただのカレーシチューですよね?」
「・・・・ノゥアッ!アンタ、カレーシチューは動くのかい?自動で?」
「命で作られてるんですから当たり前でしょ?喋れますよもちろん、ね?」
私はいつものようにカレーシチューに微笑みかける。すると、緑のカレーシチューはいつものように震える目でメイド長と私を見ながら、すぐそばの鳥のくちばしからか細い声を出す。
「EAT、・・・・・・ME・・・・・」
「ね?」
「・・・・・・・・」
心なしか、目玉から涙が出てる気がする。メイド長はなんか顔の線が増えて濃ゆい顔をしているが、一体どうしたのだろうか・・・。何か悪いモノでも見たのだろうか・・・・。
そして急にノーモーションでその鍋を宙に放り投げる。
「!?」
「悪霊退散ッッッ!!!―――――ヴァルハッ!!」
掌を突き出し、3本の火炎製の斧を出現させるメイド長。そして全てを宙に投げられた鍋に全力投射する。
四方八方から斧が鍋を切り裂き、カレーシチューを爆散させる。うわぁ、もったいない・・・。なんかシチューはシチューで頭に輪っかつけて召されてるんだけど!?
一瞬にして弱肉強食の何たるかを分からされた気がする。
メイド長はカレーシチューを粉砕すると、いつものようにこちらに憤怒の形相を見せる。そんなお顔をなさらないで!!皺が増えるし寿命も縮まりますわよ!!
「ノゥアぁ、何をどうしたらあんな時空の歪みみたいな闇黒生物を作れるのかしらぁ?何で皆同一の食材でカレーシチューを作れるっていうのに、アンタは同じ材料でモンスターを生み出してくるのかしらねぇ・・・?」
「ソレは愛情がたっぷり入っているからですわッ!!」
「アンタの愛情って相当歪んでるわね・・・。そもそも愛情注いで食べ物がモンスターになるとか聞いたことないんだけど!!!」
「愛の力は偉大なのですッ!!」
「本当に偉大だから何も言えないッ!!」
忌々しそうな顔をしながら机を叩くメイド長。やがて、なんか諦めたような顔をして私の方を向く。
「結局、帰省するまでの間では料理の腕は治らなかったみたいね・・・・・」
「むしろ作れる料理の数が増えました!早速帰省したら両親に食べさせたいと思いますッ!!」
「作れたのは料理じゃねぇ!!”バケモン”だッ!!後、やめろ!そんなモン両親に食わせるな。アンタ両親に何か恨みでもあるのかッ!?」
「いえ、両親には本当に感謝していますわよ?」
なんせ運よく女の子を生んだのですから、ソコは感謝しないといけないでしょう。ソレに私の料理をなんの文句も言わずに完食してくれたお父様も居るし、別段私の料理が不味いというわけでもないと思いますけどねぇ・・・。
「まぁ、大丈夫じゃないですか?何とかなると思いますよ?」
「アンタがソレ言うと大抵何とかならなかった事が多いからねぇ・・・。まぁ料理を作る際はあまり手を込み過ぎないことだね。変にアンタが手を加えた時は厨房に騎士団が投入されたこともあることを忘れないでくださいね」
メイド長が言ってるのは結構前の、私の初めてのメイド業の時の事件だと思う。あの時は確か、姫様の夜食に粉砂糖を愛情込みで振ったところ、首が13本生えたドラゴンモドキ(体長5m)が生まれたんだったかだ。別に食べ物が動いて食われないようにするのは生存本能からなのに、メイド長をはじめとする人間はその意識が欠如していると思う。
私の父だって料理相手に剣を使ってちゃんと命を喰らっていたというのに・・・。
まぁここはあえてちゃんと聞いたフリをしておこう。これ以上、準備の時間削られたくはないし。
「分かっていますわ、メイド長。私だって一端のメイド、それくらいはちゃんとするのですよ!」
ニコニコしながら答える私に、メイド長が向ける視線は”猜疑”が見え隠れする。何でそんなに私は信用が無いのだろうか・・・・。
そんな疑いの視線を掛けるがソレもすぐに収まり、メイド長は深々と溜息を吐く。
「治ることなんて期待してないけど、とりあえずいってらっしゃい。謹慎処分期間を旅行に使うとか考え方イカレてるけども・・・・」
なんやかんやあっても変に優しい脳筋オブザイヤーBBA、いつもそんな感じだったらいいのにと思いつつも私は一礼して執務室を去る。王城内の廊下を歩きながら明日からの旅行に思いをはせる。
さてさて、キルエル君とジォス君に何を食べさせようかな~~。




