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主人公補正なんてクソ喰らえッ!!  作者: うにゅら帝皇神
第一章 『憑依☩生活』
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『勇者への推薦状』を貰った。

 会場全体を爆風が呑み込んだ。


 「うぉわっ!!」


 勇者がふっ飛ばされた。クリティカルか爆風かは分からないが・・・。


 だが、場外まではぎりぎり出ずに踏みとどまったか・・・。クソ!


 文字通り『渾身の一撃』を繰り出し、身体から気力たるモノがごっそりと無くなる感覚を覚え、ふらっと足が崩れかける。


 僕が模造刀を地面につきながら肩で息をしながら勇者を見る。勇者はギリギリのラインで踏みとどまっているが疲れが見えている。『勇者の根源(ブレイブモード)』とはいえど疲労はするもんか・・・。


 さて、どうしようか?勇者は疲労してるとはいえほぼ即死の斬撃を飛ばしてくる。対するこっちは精神力がマイナス200行ってる上に過労状態だ。


 ―――あ~~~~、どうしよっかな~~。今さっきのがダメだったらどうやって勝てと言うn


 僕が空を見上げた瞬間だった。空に白い布で包まれた『何か』が飛んでいた。


 「何だ、ぁれ?」


 確かに今の爆風で観衆の雑誌やたばこの吸い殻、紙屑が飛んでいるのはよく分かる。だが、ソレに対して言ってみれば、明らかに大きさが違うのだ。


 一触即死の戦況下であることが頭からすっぽ抜け、僕はその白い布に包まれた”何か”を見る。よく目を凝らしてみると白い布から肌色の小さな手が飛び出てた。人間か・・・?でもなんでこんなところに?今さっきの爆風で飛んだか・・・?


 疑問に思った僕に誰か君が声を掛けてきた。


 『アレだ!!あの人のだ!!』


 僕の頭を無理やり動かして観客の方を見る。声援にかき消されてよく聞こえないが「私の子を助けて!!」と言う声が聞こえる。声の主は長い白髪の妊婦さんだった。


 『どうする!?助けるか!?』


 誰か君が僕に語り掛ける。僕は勿論うんと頷く。


 『やっぱり、そうか。ちょっとキツイがやるか!!』


 誰か君の力ある声。瞬間、僕の体は動いた。


 「まだ、まだぁぁっ!!!!!」


 勇者は僕だけを見据えて斬撃を放ってくる。誰か君はその斬撃を踏みしめてさらに飛ぶ。まだちょっと高さが足りない。もう少しだ!もう少し・・・・!


 斬撃を躱し、踏みしめ、もっと高く―――。


 「届いたぁ・・・・っ!!」


 指1本を力いっぱい伸ばして、空中に漂う布を引っ張る。


 白い布を手繰り寄せ、中にいる赤子を見る。ぽつぽつと白髪が生えていて、とてもふっくらとしてた顔つきだった。お眠なのか、赤子は目をつぶったままぽやっとした呼吸をしている。とてもあの妊婦さんに似ている。早く返してやらないとな・・・と、怯んだ瞬間だった。


 《ブゥオオオオオンンッッッッ!!!!!!》


 空間が歪み切られるような、不快な音が僕の耳を掠った。何事かと僕の意識が赤ちゃんから離れ、その先で見たのは―――、

 

 光の斬撃が僕の体を攫った事だった。


 何事かと思った直後、視界が急速に回転して気づけば石造りの壁に思いっきり激突していた。体全体が衝撃と、遅れてやって来る激痛に縛られた。さらに僕の掌を違和感が襲う。目を向けた掌には赤子はいない。どこだ!と眼玉を動かして上を見ると宙を漂ったまんまだ。


 あの馬鹿ッ!無駄な事しやがって・・・・ッ!!


 『くっ!油断したぁ・・・!!どうだ動けるか?ゲーム人?』


 僕はすぐさまステータス確認をするが、僕の身体状況に歯噛みした。


 「『右足骨折』、『左足捻挫』とある。・・・動けない!!」


 『クソっ!あの勇者君、僕しか見てなかった!!・・・勇者君の癖に周りの状況はお構いなしだとッ!?どうなっているあの蛮族はぁッッ!!』


 誰か君はほぼ血管が切れかかっているようで、忌々し気に勇者を見ている様に感じる。


 そして、その勇者はと言うと・・・・・。


 「どうだ!!やったぜ!!キルエル、お前の負けだ!!」


 勝ち誇ったかのように、僕を見て見下したような姿勢で立ち振る舞う始末。何でこんなのが勇者になれるのかは、もう理解できないってことにして、だ。


 勇者のオーラが突然途絶えた。『勇者の根源(ブレイブモード)』が終わったのか。


 だが、問題は落下してくる赤子。喉に血が溜まっているのか勇者に赤子の存在を気づかせられない。足も動かないなら、どうすればいい!!


 心臓の鼓動が高くなる。血が巡る音がする。そして―――手が動いた。


 『なぁんっとぉ!!激戦の末、勝利したのはヴェルトリッヒ=カルv』


 「フップ」


 審判も観客も勇者も動けなかった。それほどの強大な風だった。『拡散』の声もかき消すほどの嵐が会場に顕現した。


 イメージは、優しく包み込む砂嵐、何者も寄せ付けず、持ち主に帰るまでその勢いを緩めない。


 「『反魔の魔眼』!!―――――効かないだと!?」


 審判が魔眼を使うが不発に終わったようだ。


 嵐は赤子を優しく抱き留めて、妊婦さんに送り出す。そして妊婦さんの両手が赤子の入った布をしっかりつかむ。―――そして、嵐は勢いを緩めて、やがて消失した。


 今さっきまでの盛り上がりようは何処へやら。会場は静けさを取り戻した。


 「リープ」


 僕は自分に回復魔法をかけて、壁から抜け出す。HPも完全回復だ。精神力は下がったままだが・・・。僕はすぐさま審判に取り押さえられそうになったが行動パターンを網羅している僕は審判の腕を逃れ、勇者の前へ行く。

 勇者は何故か怒っていた。怒りたいのは僕の方なんだが・・・。


 「どうした?そんなに怒って、勝者はお前だぞ」


 「ふっ!ふざけるな!正々堂々勝負しろよ!!何で負けが認められないんだ!!」


 勇者は僕の胸倉をつかんで顔を近づけてきた。

 いや僕、君の勇者補正のせいで負けたんだよ?


 「正々堂々、勝負しろだと?『魔法』を使用した癖に何をほざいている。そんなにズルしても勝ち取りたかった勝利だぞ?もっと喜べよ」


 僕は君のせいで『勇者への推薦状』もらえなかったんだぞ。今僕は怒りをぐっと飲み込んで半ばキレかけの口調で話してるんだぞ?勝ったくせに怒るなよ。もう清々しいほどに笑ってくれればそれはそれで気が抜けるというのに・・・。


 「魔法を使ったのはお前だろ!!負けたのが悔しくなって俺に魔法当てようとしたんだろ!?俺、知ってるんだからな!?」


 「俺は知ってるんだ!」みたいな台詞を吐くやつ程なんにも知らねぇんだよ。

 後胸倉摑まれてるとあんまりいい気分しないな。ちょっと放してもらおうかな――――。


 僕が勇者の腕を握ろうとした時だった。


 「ヴェルトリッヒ君、君は授与式があるからここで喧嘩を起こされちゃぁ困る。キルエル君は王直々にお話があるから。・・・・とりあえず、その手を離そうか、ね?」


 僕の周りを審判が取り囲んでいた。勇者の方は審判の笑顔の威圧に押され僕を解き放つ。

 僕は離された瞬間に身をよじって、その場から少し離れる。今さっきなんとなく違和感を感じた。それはとある『スキル』の起動を意味していたはずで―――。


 「あの、一応素直に投降してアンセム王の説教は聞くんで、『束縛の魔眼』使うの止めてもらっていいですかね?」


 僕がそういうと審判の中の一名が動揺した。


 「何でオレのスキルを知ってんだ・・・っ?っていうか何で避けれるし!?」


 『束縛の魔眼』―――対象の動きを10秒止める。シンプルで使いやすく、強いスキルだが欠点があり、対象に3秒違和感を与えることだ。


 つまりは発動のタイミングが相手にもわかるということだ。

 『魔眼』シリーズは『違和感』を与えるものが多い。ゲームでも『魔眼』を発動するとスキルの対象となったキャラの頭のの上に『?』マークが表れるのだ。


 僕は立ち上がり、模造刀をその場に落として『攻撃の意思なし』と示す。審判は4人で話し合ったのか頷いて僕の自由を認めたのだった。


 S S S S


 ワシはアンセム・バトルスピーチ=ガラシア。何代目だったか忘れたけどガラシアの王をやっている。今年の剣大会はかなりの大物が集まっていた。どいつもこいつも見るところがあって退屈せずに済んだ。

 だが、今年の大会ではついに『規則』破りが現れた。つまり、問題児である。その問題児は相手の急な力の発散を『魔法』だと言いつけ、「後で確認」と言ったら「スキルに仕様変更される魔法」だと言いおった。ワシは魔法にはあんまり詳しくはないが、優勝したあの子の力は魔法とスキルの中間みたいなモノだと我が愛しの妻は言っていた。


 まぁでも、実力隠して剣大会に出場し、決勝戦で急に本気出したら「魔法使ってる」と疑われた事例があるから今回もそうだと思っておったが、その問題児はあろうことか場外に放り出された時に魔法を使ったのだ!!ありえんとばかりに驚いたわ。

 ・・・と言うわけでワシはその問題児に裁きを与えなければならなくなった。仕事を増やすなよ、問題児め。


 ワシが怒りに燃えておったところ、扉がノックされた。


 「入れ」


 ワシがそういうとお約束通り、審判が例の問題児を連れてやってきた。問題児は面倒臭そうな目でワシを一瞥、窓辺にあった椅子を持ってきてそこに座った。床に正座ではなく、椅子に。


 ・・・品のない問題児だ・・・。


 ちゃんと座っている当たり質が悪い。


 問題児は半目の状態でワシを見ていた。「はよ話、しろ!」と言外にそう言ってる気がする。

 ワシは威厳あるいつもの姿勢を保ちながら咳ばらいをし、問題児の処遇について伝える。


 「此度の剣大会にて、お主のような奴は類を見ない。故に、幹部と話し合い処遇を決めた」


 「・・・・」


 問題児は「興味ねぇ―」みたいな眼でワシを見る。


 「まずは規則を破ったことについてだが、今後5年間にわたる『ガラシア武闘大会』の出場禁止。そして敗北したにもかかわらず、相手選手への攻撃には『コレ』を二年間付けてもらう」


 ワシは箱から腕輪を取り出す。

 問題児はそれがなんであるかを確認した瞬間、「あ~、何かあったなそんなヤツ」と小言を言った。

 ワシはちょっと気になって問題児に問う。大抵の人間はこれを見た瞬間に目をふさぐのだが、何故か問題児は腕輪を凝視していたからか。


 「お主、コレが何なのか分かるのか?」

 

 「『魔封じの腕輪』、付けられた者は魔法が使えなくなる。腕輪の宝石の色によって威力が変わる。紫ってことは今の僕だとギリギリ封じ込めるレベルってわけだ」


 問題児は軽々とその答えを言ってのけた。ワシの思った通り、この問題児はただの問題児ではない!

 ワシは最後の審判を下すべく、周りにいた幹部を追い出す。えーい散れ者共!


 「・・・?」


 問題児は不思議そうな目でワシを見ていた。幹部が全員外に出ていくとワシは椅子から立ち上がり、問題児に近寄った。


 「なんですか、アンセムの爺さん」


 まだまだピッチピチの40代だというのにこの問題児は・・・・。まぁいい。


 「これにて『幹部達』の決め事は片付いた。今から、このワシが直々にお主に『ワシの』罰を与えてやろう!!」


 「???」


 「ワシはお主に『勇者への推薦状』を与える!!」


 「・・・・・なっ、はぁっ!!えぇぇぇえええええええっ!!??」


 問題児が眼を見開き、椅子ごと後ろにひっくり返る。

 ワシは思っていた反応と違う反応を見せられ、不覚にも笑ってしまった。どうやらこの問題児、『勇者への推薦状』を知っているようだ。これはごく一部の一握りの人間しか知らないことだからな。不思議だ。


 「お主、『勇者への推薦状』が何かは知っておるのか?」


 「いっててて・・・・。あぁ、はい。勿論。魔界の覇王と言われる『崩壊の因子』を倒すための勇者を選別する試練を受けるための証、言わば権利書です。試練の内容は凄く単純で、『勇者の血』と言われる宝玉に魔力を流し込む。それだけです。後は魔力から判断したその人の人格や力を総合的に判断して決まります」


 ―――――完全であった。


 この問題児は『勇者への推薦状』もその試練の内容も、全部知っているのだ。おそらく、『崩壊の因子』が何であるかも―――。


 だが、ここでこの問題児を調べるわけにはいかない。一国の王が一人の問題児を問題として取り上げれば、世界のマッドサイエンティストが集まってしまう。それほど、この問題児は異質だ。


 「じゃぁ帰ろうかな。試練は半年後だし、それまでにレベル上げもしとかないと・・・・」


 問題児はワシのことなどどうでもいいかのように『魔封じの腕輪』を付けて『勇者への推薦状』を持って部屋を出ようとする。

 

 後、今試練は半年後とか言ったか?試練は二週間後だぞ?


 「お主、試練は二週間後だぞ?」


 ワシが注意すると問題児はさも当然のように首を振る。


 「試練を担当するグレン=ゼノア司教が二日前から失踪してるから代理立てるのに時間がかかるんだ。神聖な試練だから生半可な司教は選べない。説明以上、終わり!アディオス!!」


 そう言って問題児は部屋から出て行ってしまった。


 「グレン=ゼノアが居なくなるだと・・・?何を言ってるんだあの問題児は・・・・」


 グレン=ゼノアは非常にまじめで慎重な司教だ。そんな人が突然いなくなるなんてことはあり得ない。

 

 ワシは一息つくと王城へ戻る支度をする。まるであの問題児、未来を見てるかのようだった。

 ワシは紅茶を入れ、椅子に座って菓子を貪っていると、急に扉が開かれた。入ってきたのは数人の『英雄創聖教』の信者だった。全員が慌てふためいており、顔には焦りが見える。


 「急な訪問をお許しくださいアンセム王」


 なんとなく嫌な予感がする。


 「何用だ?」


 「二日前からグレン司教様のお姿がお見えにならず、信者数人で司教様の行きそうな場所を当たっているのですが足跡すらも見つかりません。本当なら今日から試練のための洗礼で身を清めるはずが・・・、と、とにかく、代理を立てなければなりません!緊急集会を開かなければ、アンセム王、今すぐ勅令をお出しください!!」


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