選別終わりました。
テント内は誰も居なかったので魔道具回収が非常に楽だった。だが問題があった。
「キルエル、コレは?」
「あー、コレダメだな。偽物だコレ。『観賞用』って書いてあるのに・・・・」
その問題とは魔道具の圧倒的なエセモノの数だ。10個につき9~10個の割合で贋作が混じっている。これでは『ジャウール教』の作戦だったか試練だったかが遂行されても成功はしないだろう。
だが偽物ばかりというわけでもない。
「キルエル、コレは?」
「あー、コレは、・・・・本物だ・・・・ッ!!」
「よっしゃ!」
このように稀に本物の魔道具が入ってるくらいだ。もはや一種のトレジャーハンター気分である。何やってんだ僕らは・・・。
今はもう廃れてしまったがひな鳥の性別を判断する仕事をしているような感覚に襲われる。時折キルエルと交代で選別をしているのだが、一向に終わる気配を見せない。
「これ明らかに『※コレは子供用警察ごっこセットです』って書かれてあるのに何で持ってきてんだ此処に・・・」
相当焦ってかき集めたようだが、あまりにもガバガバすぎる。どれくらいガバガバかと言うと、上司が「コレ月曜朝までにやっておいてね」って言われて日曜午後に渡された課題をやってのけた時の書類並みにガバガバである。
『例えが分かりにく過ぎる・・・・。まだやるんですかコレ?』
「どうせ見つかったら全部捨てられるんだ。それなら使用可能なモノは全部持って帰るに限る」
残りは全部で190個ちょいかな・・・、っていうかあの中でも使えるヤツほんの19個くらいなんだろうな。あ~ぁ、面倒くせぇ・・・・。
僕は再び止まっていた手を動かして作業を始めた。
S S S S
破壊が破壊を呼び衝撃が全てを凪ぎ払う、そんな爆発を木々を盾にして防ぎつつ俺は『魔法鞄』から『冒険者の剣』を引っこ抜いた。
「派手過ぎるんだよなぁ、・・・・・・俺の『白銀色の剣』無事かなぁ」
あの爆発を喰らってどこかに飛ばされていないのだろうかと、心配になるが今はコッチに集中だ。
「一人目がやられて、残り二人。一人いなくなったからって楽になった訳じゃねぇってこった」
現在黒煙によって辺りが埋め尽くされている状態だ。つまりは俺にとって絶好の好機なのだ。何故なら相手から俺の居場所が分からないからだ。だが、同時に敵にとっても好機だと言うことを忘れてはいけない。俺も相手が見えていないからだ。
故に動いてはいけない。目が塞がれていようとも、耳は聞こえる。変に物音をたてるべきではない。
黒煙が晴れるのを待つしかないようだ。
俺がそうして剣を構えながら周囲に注意を張り巡らせていると、コッチ走ってくる足音が聞こえた。
「なんd」
「キルエル君どこ!?」
「「フリューリフ」」
俺が振り向いた瞬間、俺の左右から風の刃が俺を通りすぎた。信者の風の魔法だ。しかも中々強力な奴だとわかる。
「キルエr、・・・・いや、今は関係ねぇッ!」
一瞬、『キルエル』と言うおぞましい単語が聞こえたがそんなことは後だ、と俺も同時に走る。
「危ねぇッ!!」
「ひゃっ!?」
少女に風の刃が直撃する寸前に俺は少女を抱え込み、刃の下を潜り抜ける。潜り抜ける瞬間、風の刃が俺の頭の産毛を撫でた感覚を得た。とても生きた心地がしなかった。
風の刃はまたしても的を失い、目の前の木々に切り裂くようにぶつかってその威力が消し飛ぶ。
「おい、お前大丈夫か?」
腕のなかに丸く収まった獣人に声をかける。ピクピクッ、と白い髪に埋もれた耳が動いた。
そして一言。
「あれ?・・・・キルエル君じゃない。・・・誰?」
さらっと俺の怒髪天をつく単語を言う少女。俺は怒りで声が出そうになったが、そんなことをして敵に見つかるリスクを上げる可能性を察したため、出そうになっていた怒りを飲み込む。それにしても獣人の女の子ってこんなに可愛いのか。髪もリピアくらいさらさらだし、声だって向けられてる対象がキルエルでなければどれほど素晴らしいか。
クソキルエルめ、・・・・・。パーティに戻らない間、こんな可愛い女の子をたぶらかしていたのか。この女の子も可哀想だ。キルエルに洗脳の魔法でもかけられたのだろう。そうでなければ、こんなに可愛い獣人がキルエルと仲良くギルドで依頼漁りしてるわけがない。
後でリピアに魔法解いてもらうか。そして俺のパーティに入れようかな・・・。
「ヴァルハ」
獣人の女の子の可愛さにうつつを抜かしている場合ではなかった。
「チィッ!」
女の子を抱え込んだまま俺は炎の槍を避けつつ、木々の近くに女の子を置いて信者の懐まで一直線に突撃する。
「くらえッ!!」
剣の届く間合いに入った瞬間、俺は右手の『冒険者の剣』を振り上げて、ーーーー気づいた。
敵が二人居たことに。
「フリューリフ」
丁度俺の右に風の刃を出現させていた信者が目に入った。
「しまっーーーーーッ!!」
避ける体制をとろうにも俺の体は既に宙にある。地面がなければ純粋な潜り抜けすらもできない。
ここで終わりか?ーーーーチィッ、2対1なんて卑怯だ!!
俺の心の叫びもむなしく、信者の杖から風の刃が飛び出そうとした瞬間だった。
「勇者様ーーーーッ!!」
耳をくすぐるような甘い声が聞こえ、ソレと同時に右に居た信者が跡形もなく吹き飛ばされて空高く打ち上げられて空中で大爆発を起こす。
こんな大威力の魔法を使えて、こんなに心踊る声を出すのは俺が知っているなかでも一人しかいない。
リピア=ガラシア。
彼女が応援に来たのだ。
S S S S
「よしッ!!これで最後だ」
「あぁ~クソ。最後のヤツ外れだ。使用済みって書いてあるじゃねぇかッ!!雰囲気ぶち壊しだッ!!」
僕はそう嘆きながら、『使用済み』魔道具を偽物の山にロングシュートする。偽物の癖に美しい弧を描いてゴミに突き刺さった。
2000個近くにわたる魔道具のなかから回収できた本物はたった56個だけだった。
「これだけの数を買うためにどれだけの大金をはたいたのやら、・・・考えるだけで虚しくなるのは何でなんだ?」
「腹減ってんじゃねぇか?プルプルゲッペイガニあるぞ。食うか?」
そう言って『魔法鞄』からプルプルゲッペイガニの腕を取り出すジォス。出された腕はキレイに切断されており、毒に浸かっただろうピンク色に変色した身が物凄いオーラを纏って甲羅のなかに鎮座していた。ところどころから泡が吹き出しており、何故かカニの怨念が見える。
「食わねぇよ。そんな毒持ちカニさんなんて」
食ったら最後。人の場合は毒に触れただけで強制的にアレルギー反応を起こして失神させ、その数分後には筋繊維とカルシウムを溶かされて死ぬ。そんなゲテモノなのだ。食おうとか考えるヤツなんてこの世のどこ探しても居ないだろう。
『フラグですよゲーム君』
「あ」
そうだった・・・・。この世には理解できないような体の構造をしてるヤツが居たんだった。
ソレは今、僕の目の前でその毒持ちカニさんの腕を甲羅ごと噛み砕いて咀嚼しているヤツで、人はソイツをガチムチアグレッシブ世紀末野生児と呼ぶ。
その野生児たるジォスは怨念のようなオーラの出てる腕を容赦なく噛み砕いて食っていた。
あまりの惨憺たる光景にキルエルが聞いてくる。
『毒が悪いんじゃなかったんですか?』
僕はその問いにフッと息を吐いて目を閉じる。
違うよキルエル。毒が悪かったんじゃない。
ーーーー頭も悪かったんだ。




