自爆された。《勇者視点》
俺たちは一人の信者を路地裏にて追い詰めていた。
キルエルはなんか「『ジャウール教』の拠点を置いている場所を知っている!」とか大嘘ぶっこいていたから、とりあえず軽く怒声噛まして無視しておいた。気づいたらいなくなってた。・・・また自由行動しやがってクソキルエル・・・ッ!!早く勇者パーティから追い出してぇ。
よって現在、勇者パーティは俺、リピア、マルク、レイブンしかいない。あーぁ、この際獣人でもいいから新しいメンバー欲しいなぁ。どうせならこの前ギルドに来ていたキルエルと一緒に居た、あの可愛い女の子みたいな獣人が良いなぁ・・・。
空想はさておき、俺は男に詰め寄って剣を抜く。
――――「クソ、まさかガラシアの勇者が居たなんてな・・・。だがファフニール山に居る俺の仲間たちは着々と計画を進めている・・・・・ッ。俺たちの魂は『高貴なる御意思』のために・・・ガクッ」
――――「まだだ、コレでもオレは三流の魔法使い・・・。山の方には前兆があって回避しやすいが強力な範囲攻撃を持つエリートが居るんだ・・・クソッ、オレは此処までか・・・・へブシッ」
――――「君たちは運がいいねぇ。先に物理アタッカーの僕を倒すなんてさ。山の方には物理攻撃をする仲間が全然いないんだ。だから、武器で殴られると反撃がしにくいんだよねぇ・・・オファッ」
今までやられてきた『ジャウール教』の信者の台詞を思い出して、目の前の信者の首に剣を向ける。こいつらは人間なのにどうも俺の脳はこいつらをモンスターとして認識しているようで、剣を握る手には迷いがない。
仮面を着けたままで顔は良く見えないが裏はかなり焦っているのだろう、首をひくひくさせている。
「何か、言い残すことはあるか?」
「ククク、お前たちはまだ知らないだろうから教えてやる・・・。俺たち底辺にはそれこそ首ちょんぱで終わっちまうが、上級信者たちは違う・・・。奴らは倒したが最後、無駄口を開けぬように自爆する術式を体に詰め込んでいる。何も知らない奴も巻き添えにして倒すためになぁッ!!知らなかっただろう?山の方には上級信者が数名いる。アイツらの自爆でお前たちも巻き添えで死んでもらおう!・・・・ただし、範囲が狭いから倒した瞬間に離れると巻き添えを喰らわなくて済むのは秘密だぜ」
最後に仮面の上からでも分かる程の良い笑顔を見せつつ、グッと親指を立てる信者の首を俺は容赦なく撥ねた。
地面に落ちる生首、見たくなかったので向こうの方(商店街の方)に蹴り飛ばしておいた。処理?穢れた獣人にはお似合いだから処理しなくても風景画として使えるだろう。俺ってセンス良いね!
これで最後だろう信者を撃ち倒して分かったことは沢山ある。
それにしても、・・・・。
「やっぱり『ジャウール教』ってバカなのか?なんでこうも秘密をベラベラと喋るんだか」
実際、この信者に限らず今さっき戦ってきた奴は全員組織の情報を吐いた。大抵自身の組織にとって秘密事項だろうことをまるで穴の開いたバケツのようにダラダラとこぼしていった。
「まるで『滅ぼしてください』って言ってるようなモンなのに・・・・」
「全くそうですよね。能も脳も足りないなんて、どうフォローしても意味ないじゃないですか」
げんなりと呟いていると横に居るマルクが飽きたように呟いた。
「まぁ、それもこれも全てボクの圧倒的な強者のオーラがあってこそ。奴らはこの大英雄たるこのボクには表面上取り繕っても、魂の格ではかなわなかったようだ。まぁ当然さ。奴らは確か『ファフニール山』に拠点を構えていると言ったな・・・。この勇者の魂を引継ぎしこの僕が直々に出向き、この世界をも穿つレイピアの錆にするという慈悲をくれてやらんでもない!!さぁッ!ボクに続けッ!!」
「あ、ちょッ!!」
一人で呟き、一人で納得して、一人で叫びながら街中でレイピアを引き抜き山に向かって失踪するレイブン。ソレを止めようとしたがもう遅い。素早さを上げる魔法を自身に付与したレイブンはもう既に俺には点にしか見えないところまで走っていた。
・・・・自分勝手過ぎる・・・。
「全く、レイブン君は身勝手すぎる。僕もちょっと行ってきます。レイブン君を一人にしたら絶対ヤバいですからッ!」
「あ、待t」
「ウェルソ!」
そういって俺の静止の声も聞かずに素早さを上げる魔法を唱えてブヨンブヨンと夥しい不協和音を奏でながらマルクも走り去っていった。
・・・・自由過ぎるだろ・・・。
俺が溜息を吐くとトントンと誰かが肩を叩いた。
振り返るとそこにはいつも通り、そしていつも以上におめかしをしていたリピアが頬を染めて立っていた。
「なんだいリピア?」
「私たちも追いかけましょう。追いかけながらデートしましょう!」
「え、ちょっと待t、・・・・ソッチ反対じゃね?」
「いいえ、こちらが近道なんですよ。さぁ、行きましょう勇者様♡」
グイグイと腕を引っ張ってリピアが行く方向は『ファフニール山』とは真反対の方向であった。だが、リピア曰く『近道』だそうだ。まぁ、リピアが言うのなら間違いなんだろうな。
「分かった」
俺はそう言ってリピアと手を繋いで『ファフニール山』への近道をしに行った。
・・・リピアの髪、すごくいい匂いだぁ・・・。
S S S S
そんなことがあって数時間が経過した。一応『ファフニール山』には着いたものの、リピアとはぐれてしまった。
で、今おそらくすぐ隣で戦闘があったのか大きな爆発があった。森の中で、木々が生い茂っている俺の居る場所からでも見えるようなデカい黒煙が青白い空を覆い隠している。
「アッチに行けば仲間と会えるか・・・ッ!?」
俺が爆発のあったところに足を運ばせようとした瞬間、木々の間から風の刃が飛んできた。
脳が視界に映る情報を急いで処理し、すぐさま風の刃の下を潜り抜ける。
風の刃は俺の上を通り抜けた後後ろの木々に炸裂して、その太い幹に大きな傷をつけた。・・・コレは、只者じゃねぇってのが良く分かる。おそらくは此処の近くに『ジャウール教』の拠点があるのだろう。
俺は木々を睨みつけて、『魔法鞄』から商店街の武具ショップで購入したギラギラしていかにも強そうな『白銀色の剣』を手に取る。
「ソコに居るのは誰だッ!!」
「「「―――――『高貴なる御意思』に楯突く者に聖裁を」」」
俺の掛け声に応えるかのように俺を取り囲むようにして三人の信者が現れる。全員、ガラシアでも見たことのないような杖を持っている。おそらくこの三人全員かなりの腕利きだろう。まさか、一人で戦うことになるとはな・・・。
だが、俺は知っている。
こいつらは接近戦に弱いのだ。この木々を使って魔法を避けながら懐に入ってバッサリ行くのだ。
「――――我々の『試練』を邪魔する者に”死”の制裁を」
「まずはお前からだ!!」
俺は剣を構えて一瞬にして間合いに入り込む。そして剣を下から上へ――――、
「ヴァルハ」
剣を振り上げようとした瞬間、後ろの二人の内の一人が3本の炎の槍を作り出し、俺めがけて射出する。
「チィッ!!めん、・・・どうくせぇッ!!」
俺はその3本の槍を一つ目は躱し、二つ目は木々を使って盾にして、三つ目を剣で薙ぎ払う。そしてそのまま『全力の一撃』を溜めて、『白銀色の剣』をもう一人の信者にぶん投げる。
「がふッ!!」
「よしッ!!」
思い切り投げた剣は見事に信者の一人の心臓を貫く。俺は拳を握りしめて喜びに震えた。早速剣を抜こうとして、あることに気が付く。
同時に―――、
「私の最後を、『崇高なる御意思』のために―――祝福あれ」
「しまt――――――」
俺は少しでもの威力軽減のために太い木々の後ろに隠れる。
そして世界が壊れるような大音と共に天地をひっくり返すような大爆発が起こり、辺りを破壊と衝撃に巻き込んだ。




