主人公補正がキツかった。
「おい、あの男が例の・・・」
「ばっか!目を合わすんじゃねぇぞ!」
「9回戦で相手を最後の最後まで叩き潰した奴だ」
「聞いた話だと自ら降参した隙だらけの相手に全力出して場外までぶっ飛ばしたとか・・・」
「うわぁ、おっかねぇ!!」
「全身骨折だってよ。相手もツイてないな・・・・」
どうやら悪い噂が立っているようだ。いったい誰がそんなひどいことを・・・・。みんな何でこんな善良で健全な平和主義者の僕を見るんだい?
まぁ、奴らは別に話してるだけだからな。別に害がないならそれで良いんだが、と、割り切った考えで僕は給水エリアに行き木のカップに注がれた水を呷る。
あ~、生き返る~。
残り一試合、僕のゲーム知識が正しければヴェルトは勝ち上がってくる。そして最終決戦と言うわけか・・・。そういえば、何であの時キルエルは魔法を使用したのだろうか。最終決戦で戦うヴェルトはレベル11、精神力マイナスと言う多少の足枷があってもキルエルのレベルは15、強力な技も持っている。魔法を使う必要なんてどこにも無かったはず・・・・。
『勝者、ヴェルトリッヒ=カルヴァ―ン!!遂に最終決戦だァ――!!』
そうこう考えてるうちにもう決着が着いたか。・・・やはりヴェルト、君が来るのか。・・・もうお前についてはなんとなく察したわ。
僕は思い腰を上げて内に眠る”覚悟”と言う概念を認識する。
それでは行くかね最終決戦。『勇者への推薦状』でも貰いに。
僕は模造刀を腰に下げ、ゆっくりと会場に向かった。
S S S S
なぜか、僕が会場に姿を現した途端観衆が静かになった。解せぬ。此処までやって来た実力者の僕に対して向ける目がしらっとしていて良いわけがない。もっと崇め奉れ!
だがしかし、怒りを露わにしようが拍手喝采が飛んでくるわけがないと言うことは知っている。僕は寛大な心でそんな民衆の目線を受け流すことにした。
「約束通りだ」
「うん?」
僕が慈悲深い目で民衆全員に手を振っていると、静かな怒りを乗せた声が聞こえた。後ろと左右を見るが誰もいない。ならば今さっきの声を発したのは目の前にいるのは僕を宿敵だと勘違いしている勇者だろう。やけに蛮族な目をしてやがる。
そんな事はさておき、今さっき知ったのだが、どうやら試合前にはお互い礼をするらしい。礼をしないということはつまり『相手を格下として見ている』という意味になるようだ。ゴメン!決して見下してる訳じゃぁないんだ!知らなかっただけなんだよ!!と、心の中で誠心誠意の謝罪をしておく。
でも勇者も礼はしないし、僕もしなくていいか・・・。礼よりも武力、筋力、暴力!この3つは世界に通ず!礼なんかよりも最ッ高のフレンドリーを上腕二頭筋に込めることで、相手とより親密な関係を築き上げることが出来るよ!
そしてそんな野蛮なゴリラ勇者は僕に模造刀を突き出し高らかに言いのける。
「ここまで来てやったぜ!!キルエル、ここでお前を倒す!!」
「・・・・」
やべぇ、どう反応すればいいか分からん。なので無言を貫く。相手の第1印象は大事だが、こうも敵視されているのであれば敢えて何も言わないことによって問題を起こさないようにする。口は災いの元って言うしね!!だが無言はお気に召さないかったのか勇者は凄い勢いで食いついてくる。黙ってても喋っても食いつくって、勇者お前ボラか何かかよ・・・。
「俺なんて興味無しかよ!・・・それじゃぁ、遠慮なく本気出すぜ!!」
「別に興味無いとかの無言じゃなくてn」
『それでは、待ちに待った最終決戦、開始!!!』
弁解しようとすると試合のゴングが鳴ってしまう。僕はすぐさま『カウンター』の姿勢を取ると、1秒ちょっと溜めてから勇者がこっちに飛んできた。やはりは脳筋、少しバックステップをかまして威力をさらに減らす。そして隙だらけの胴に一発叩き込む。だが彼はすぐさま距離を取る。一撃で出たダメージ量をなんとなく計算して今の勇者のステータスを考える。
ヴェルトリッヒ=カルヴァ―ン(勇者)(レベル11 男 11歳)
HP380? 攻撃力150 防御力150 素早さ150 魔力150 精神力35 運40
耐性:ショック耐性
スキル:『やる気UP』
加護:無し
だったはずだ・・・!!勇者と言うのもあってステータスの割振りが完全に同じだ。使える技は確か『気合の一撃』と『全力の一撃』だったはず。
『やる気UP』:3分間精神力+10。使用後、30分間使用不可。
『気合の一撃』:溜め時間1,5秒以上。攻撃力分のダメージ。タイムラグ無し。
『全力の一撃』:溜め時間3秒、攻撃力+50のダメージ。タイムラグ無し。
つまりは今さっきのを真面に喰らうと150ダメージ。『カウンター』が威力80%カットで30ダメージ、バックステップが50%カットだったようで被ダメは15ダメージである。勇者が相手となるとどういう攻撃パターンがあるのかは分かっても行動パターンは読めなかったりするから苦戦しそうである。
脳筋っぽい感じするけどなぁ。
まぁでも悩んでても答えは出てこない。今のところ僕の通常攻撃で与えられるダメージ量は30ちょっとであり、長い時間溜める『渾身の一撃』は撃つ暇がなさそうだ。
最初の方では勇者はショック耐性があるから気絶値は案外高いと考えて良いだろう。おそらく渾身のクリティカルでも気絶はしないかもしれない。
「っるあぁっ!!」
またもや突撃。溜め時間は3秒、『全力の一撃』か・・・。だが僕には届かない。僕はすべての技の攻撃範囲を知り尽くしているからね。と、僕は飛んできた瞬間に横によける。そしてそのまま『三段攻撃』。脇腹を重点的に狙い、突攻撃を放つ。模造刀はあくまでもレイピアではない為ダメージは落ちるかもしれないが感覚では合計60ダメージは出たかもしれない。
「ぐっ・・・避けるんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!」
苦し紛れに放つ一撃を僕は頭を下げて回避する。ゲームでは少し癖があるがキャラの攻撃の仕方は全部網羅している。・・・っていうか避けるわ。避けなかったら200ダメージ喰らってたわ。
バックステップしようとすると勇者が溜め技を出そうとしている。これはチャンスだ。すぐさま前方に飛び攻撃準備をする。
「な、!?」
溜め技は出させない。溜めた瞬間に攻撃すれば溜め技を中断できるとともにダメージも与えられる。
僕は彼の腹に『三段攻撃』をお見舞いする。そしてすぐさま後ろに飛び距離を取る。
今さっきからの攻撃パターンから予測すると勇者はかなりの脳筋だと推測できる。そうだとしたら一撃で彼を鎮めることは可能かもしれない。だが、それにはもう少し彼のHPを減らす必要がある。
またもや溜め技かと思いきや今度は溜めもせずに突っ込んでくる。そんな無知どころかソクラテスもドン引きするような「押し通す!」系の脳筋蛮族に僕はもう一つも技を発動する。この技はクリティカルや遠距離攻撃はそのまま通す弱点があるがストーリ中盤まで数々のプレイヤーに愛されてきた技である。ハイゴブリン相手に鍛えた技である。
僕は彼の攻撃を模造刀で受け、そのまま『受け流し』した。模造刀は彼の腹に直撃しそのまま流れるように抜く。
『受け流し』―――相手から受けるダメージ及び衝撃を80%カットし、相手に返す。
『カウンター』の上位互換でもある。どうなるかと言うと、僕は6ダメージを受けて、彼の通常ダメージの75ダメージをお返しに与えたことになるのだ!これマジで有能!
勇者は今の流れるような斬撃に目を見張りながらも、舌打ちして後ろに下がる。そろそろ頃合いだろうか。
僕は『カウンター』の姿勢を取る。だが別にこれでカウンターを喰らわせるわけではない。この構えで相手を釣るのだ。
「クソっ!今さっきからやられてばっかだ!!」
「・・・・」
「おい!キルエル、何でお前は今さっきから真正面から来ないんだよ!!」
ここが大事だ。一撃で仕留めるには相手が突っ込んでくる必要がある。そして力で押そうと考えさせなければならない。煽るのだ!!煽り散らかせ!!真正面からの激突ではこっちが不利になると相手に思わせるんだ!
「ふん、君のように自分から醜態を晒すわけがないだろ?」
「はぁッ!?どういうことだ!?」
「何故僕は君に一方的に攻撃できるか分かるか?」
「お前がズルいからだろう!?」
「違う」
「クスリとか暗器を使っている!!」
「違う」
「臆病で陰キャだから!!」
「違う・・・・(コイツ、自分の弱さを認めないタイプの人間だな)」
「・・・じゃぁ、なんなんだよ・・・・・」
「人には向き不向きがある。魔法使いは何故魔法使いなのか?それは魔力が高いからだろう。力が魔力より小さいんだ。じゃぁ、剣士は何故剣士か?それは攻撃力が高いからだ。魔力が低かったんだろう。それと同じだ」
「・・・・」
「僕は真正面からの激突には勝てない。力で押されると負ける。だから小回りをして隙をついて攻撃する。僕は『僕』を良く知ってるからね!!」
僕がそう言ってのけると、勇者はにんまりと笑った。気持ち悪い笑みだ。さぞかし前世で悪業を積んできたに違いない。
「つまり、お前は力でのゴリ押しには弱いんだな!」
「だから、何だ?」
勇者はスッと模造刀を横に構えて溜めをする。
『・・・・『全力の一撃』が来るぞ』
・・・・知ってる。勇者、釣られたな。
誰かの警告が頭の中に響くが適当に返しておく。
きっかり3秒。勇者がこれでもかと言う速さで飛んできた。模造刀は抜いてる最中だ。おそらく被弾するのは僕が受け止めた際・・・。なら『カウンター』!!
「小技かけられても力で押してやるぜ!!」
勇者が怒号を張り上げて考えなしに突っ込んでくる。
僕は息をゆっくり吐きながら、頭の中で次にする行動をシュミレートする。
・・・ゲームでは異なる技を組み合わせて戦う方法は存在しなかった。『渾身の一撃』を一撃目とした『三段攻撃』はゲームのシステム的に不可能で、どうしても『渾身の一撃』と『三段攻撃』は別物扱いになり、どれだけ早くキーボードを押したとしても合計四回の攻撃になってしまう。
だが、この世界は現実だ。なら、システム的に不可能とされてきた『合わせ技』は可能になるのではないか・・・・と、僕は考えた。それは『カウンター』と『渾身の一撃』の合わせ技。
金属のぶつかる音がして『全力の一撃』と『カウンター』がぶつかる。『カウンター』は細かく説明すると、「防御」をしてから「攻撃」なのだ。なので防御をしつつ、その状態で5秒溜めて『カウンター』の反撃を『渾身の一撃』に変更する。
「お前のおかげで突破口が見えたぜ!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
勇者がこれでもかと強行突破を仕掛けてくる。うん、まぁ確かにキルエルは真正面から突っ込んでいくのは苦手だけど、それは相手の攻撃力がキルエル以上の時であって、実際に勇者とキルエルとじゃぁ圧倒的な差があるんだよね。精神力が0に戻れば110近くの差が出来る。
そしてしっかり5秒、きっかり5秒経った瞬間に。大きくはじき返す。
「おおおおo――――――ッッ!!?」
クリティカルが出たのか勇者をぶっ飛ばした。いや~途中で突破を辞めてくれなくてよかった~~。
「ぐあァっ!!・・・・・・ッつぅ。何で、はじき返された・・・!?」
勇者が模造刀を杖に立ち上がる。おじいちゃんのようだ。あ~よっこらしょ。
驚愕に目を見開いてる勇者に僕は模造刀片手に言ってやった。
「欠点は他で補う。単調な正面攻撃にさせるように口数で誘い、小技をつぎ込んでタイミングを見計らい、相手の隙を突く。・・・そもそも君くらいの雑魚の正面攻撃で僕が押されると思ったら大間違いだ」
「じゃ、じゃぁ今さっきのはブラフ!?」
そうだ。っていうか勇者勝手にしゃべらないでくれない?
勇者は悔しそうに歯噛みしながら立とうとする。だが中々立てないようだ。そらぁオメェ、あんなに動き回った上にダメージもほとんど与えられず、HPまで減ってんだから『体力の低下』『過労』くらいあるだろう。
ここで僕は勝ち、『勇者への推薦状』を手に入れる!!
僕はとどめを刺すべく、今度は此方から突っ込んだ。
「ここで君も終わりだ!憎悪に取りつかれた哀れな戦士よ、友すら守れず、終えるが良い!!」
「と、・・・友」
S S S S
俺の心はズタボロだった。拳を止められたあの瞬間から。
まんまと口車に乗せられ、攻撃した暁にぶっ飛ばされる。もう体力もほとんどない。踏ん張るのが精一杯で剣を握ることすら叶わない。
俺は観客を見る。父さんが泣いている。母さんは顔を伏せている。
―――俺は何で剣を握るのだろうか。
最初の出会いは英雄創聖教の聖典に出てくる勇者がスゲーカッケェからで、俺もああなりたいと思ったから。
その夢を貫いてここまで来て、9試合目の時俺はイケる!って感じた。本当に勇者なんじゃないかと思った。でもそんなことはなくて、最終決戦でズタボロだ。
夢は、所詮夢だった。俺には絶対届かない世界だ。ほれ、見て見ろよ俺。観客も全員、俺の事なんて見てねぇ。キルエルしか見てない。アイツは自分を知っていると言った。長所も短所も全部知ってるんだ。んなわけねぇだろ、全部アイツがズルいのが原因だ。
・・・・そんなズルい奴に正義の俺は負けるのか・・・・。
俺はアンドリヒがボコボコにやられた時、アイツがすごく憎たらしく見えた。礼節もわきまえず、相手を容赦なく叩き続ける。そんな姿が嫌いだ。そんなヤツを全員が見ている。
俺はここで終わるのか。夢も希望も全部なくなる。勇者なんてただの妄想だった。俺は勇者なんかじゃなかった。ソレをコレでもかと思い知らされた。
ゆっくりと眼を閉じて、俺は戦う気力を体から逃がす。せめて変に痛くないように、一撃で終わらせてもらおうと・・・・・・、
――――――「がんばれ!ヴェルト君!!」
つんざくような声が俺の意識を叩いた。
俺は驚いて、客席を見渡す。今の声は、何なんだ!?キルエルの応援じゃなくて俺への応援!?
誰の声かはすぐにわかった。俺の親と来ていた、アリアだ。
「がんばれ!立って!」
あの子の応援だけ他の観衆の中、一番際立って聞こえる。俺は勇者なんかじゃないのに、どうして応援を―――。
「助けて!ヴェルトーーー!!」
俺は勇者何かじゃない。ただの村人なんだ。ただのヴェルトリッヒ=カルヴァ―ンなんだ。・・・でも、もしも、助けられるなら、俺は助けたい。勇者とか関係なく、あの子だけは泣かせちゃダメなんだ!!だから、ここで、血反吐吐いても立ち上がらなくてはいけないんだ!勝てる負けるは関係なく、あの子の前では絶対に、立ち上がらなくてはいけない。
再び俺は目を開けて迫りくる脅威を視界に捉える。正義な俺の真反対な人間、そんなズルい野郎が据わった目で此方に剣を向けている。
立ち上がれなくても、立ち上がらなくてはならない。一人の女の子を泣かせないために。
俺は歯を食いしばり、全身の痛みを無視して模造刀の柄を握る。
痛い、痛い、痛ぇよ。母さん、父さん、アンドリヒ、アリア・・・・。
頭の中で大事な人たちの事を思い浮かべながら、再び俺の心を再起させる。暗器とかクスリを使うようなズルい奴に大好きな女の子を泣かせられるのを黙って見ていられるわけが、
「―――ねぇんだよおッッ!!!!」
俺は絞れるだけの声を絞り、闘志の宿った目をキルエルに向ける。
――――良い目をしている。まるで昔の俺のようだ。
更に声が聞こえた。まったく知らない声なのに、何処か親近感を感じるような声。声の主は俺を自分と重ね見たのだろう、懐かしさと俺と同じような闘志を籠った声を向ける。
―――――このまま正義の味方が、異端クソ野郎に負けるなんて、そんな展開あって良いわけがない。正義の勇者な君が此処で倒れるなんて似合わない。
―――――だから、君に力を貸そう。大切なモノを守ると決め、激痛を押し殺してでも立ちあ上がる君に―――。
――――勇者の性を持つ君に、勇者の魔法を―――――!!
S S S S
勇者が何かを叫んだ直後、爆発的な”何か”が勇者の身体から溢れ出した。
大気が激震し、その衝撃が空気を伝わって僕の突撃を吹き飛ばす。
何があったのかと見て見れば、勇者の身体を黄金色の”力”が包み込んでいた。
外の世界に解放され、初めての空気に触れることを喝采し歓迎するかのように、形を持たない力が色を得て世界に干渉しているかのように、力が、爆発的な力が勇者から快哉を叫んで無尽蔵に周囲にばら撒かれている。
勇者の眼は赤かった。
充血でもなければ、傷口から漏れ出た血が眼を濡らしているわけでもない。
―――闘志だ。
確信は僕ではない。別の誰かの意志が僕にそのまま伝えたのだ。まるで”アレ”の正体でも知っているかのような口ぶりで。
闘志、は何時から赤色と決まったのか。そんなことを考えている暇は僕の頭には無かった。ただそこにある絶対的な”闘志”が此方を見据えている事以外は―――。
そして僕はすぐに察知する。
『「・・・・勇者の根源ッ!?」』
何処からか声が聞こえたが、なんだと・・・。だがそれは、確かまだ―――。
「らぁっ!!!」
僕は横に避ける。その瞬間、僕の立っていた場所に亀裂が走る。ヤバい!考えている暇がない!!
すぐに態勢を立て直し、勇者に近づく。『三段攻撃』―――!!
だが、それは全部剣で防がれた。クソッ!コレが主人公補正ってか?クソッタレが!!
「もう俺は、今までの俺じゃないぜ!全部守ってみせる!!」
勇者が模造刀を動かすたびに大気が揺れる。おそらく、あの状態だとステータスは2倍近くあるな。・・・確か『勇者の根源』は全ステータス2倍だけじゃなかったはずだ・・・クリティカル率も上昇する。
今の状態では僕に勝ち目はないだろう。
・・・だが、これが武闘大会だということを忘れてはいけない。
武闘大会は『飛び道具(主に薬物、爆発物など)禁止』、『模造刀以外の武器(素手、足技も含む)の攻撃禁止』、そして・・・『魔法の禁止』だ。そして『勇者の根源』はスキルだが、それは使い終わった時の状態だ。このスキルは一度目の発動時、発動途中は『魔法』の分類に入る。
つまり、勇者の反則負けとなる。この戦い、勝ったも同然だ!!
僕は高々に手を挙げる。
「審判!今、この者が魔法を使いました!身体強化の魔法です!!」
「はぁっ!?負けそうになったからってそんなウソを言うんじゃぁねぇ!!」
勇者が激昂するが、僕は君に言ってるんじゃない!後、嘘じゃないから、マジだから。だが、審判は僕の抗議を無視した!他の審判を見ても反応は同じ。王の方を向くと、アンセムは「うんうん」唸り、こう発言した。
「試合が終わったら鑑定士に調べてもらおう」
「なぁ!?」
僕は驚いた。まさか、試合を続行するのか!?
どう見たって、あんなにボロボロだった勇者が急に強くなったなんておかしい話だ。王の眼は節穴か!?あんな金色のオーラに目が光ってる状態で『魔法を使ってない』という結論に至るのはおかしい。
「アレは、発動し終わると『スキル』に仕様変更される魔法だ!武闘大会の規定に則り、ヴェルトリッヒを即刻反則負けにするべきだ!!」
「違う!!コレは『魔法』なんかじゃぁない!みんなの『思い』なんだ!!」
「黙れッ!!勇者の借り物を『思い』なんかで片付けるな!!それはお前が理解できるほどたやすい『魔法』ではない!!」
『僕が!僕が、それを―――』
うるさい!!キルエルの体で好き放題喋るんじゃねぇ!!僕の体でもあるんだ!!
さて、どうする?ポンコツの王とクソッタレ審判のせいで試合中止不可だ。少なくとも今のままでは勝てない。ならばどうするのか?って?今考えてる!!
ゲームチュートリアルにて、『勇者の根源』を発動した状態の勇者は試合が終わるまで無敵状態だった。スキル『無敵』はその名の通り、発動したら一定時間ダメージを受けなくなり、デバフも無効化される。それと同じ状態にある、と推測すると、方法は0ダメージクリティカルでぶっ飛ばすことになる。
「らぁッ!!」
くッ。何で距離があるのに斬撃が飛んでくるんだよ!!・・・僕もゲーム内では飛ばしてたから文句は言えないが・・・・。
「ふん!!」
「ぶべらっ!!」
避けた瞬間に次の斬撃が僕の腹に命中する。クリティカルも出たのか僕はかなりふっ飛ばされた。
地面をバウンドする僕はプレイヤーからすればかなり滑稽に見えるだろう。
ステータスプレートを表示する。HP1。
ギリギリ耐えたか。だが次の一撃を喰らえば間違いなく負ける。模造刀だとしてもあの一撃を喰らうとなると全身骨折もあり得るだろう。精神力もマイナス100を突破している。
くそ!近づけもしないなんて!・・・これが主人公補正の力か・・・!!今までする側だったけどされる側になって初めて思う。
規格外すぎる!!
強く奥歯を噛みしめて、忌々し気に勇者を見ていると僕の意識の中に居る”誰か”から声を掛けられた。
『なぁ、ゲームの知識人、ヴェルトのアレを通り抜けて倒せないのかい?』
『アレっていうのは、『勇者の根源』のこと、無理かな?』
「(・・・そうは言うけれど、もし君がこの体を使ったら君は勇者に近づけるの?)」
『あー、うん。所詮は失せ物の借り物、弱点知ってるから近づくくらいは出来るよ。どうするんだい?』
僕の中にいる誰かが言う「借り物の借り物」って言うのは分かんねぇけど、策はある。っていうかほぼ賭けだが。
『別に、大丈夫。君のゲーム知識を信じている。後、腕借りるよ』
「(・・・じゃぁ、頼んだ!!・・・・腕、ちゃんと返せよ)」
無言の返答。そしてそんな僕らの事お構いなしに突っ込んでくる勇者。
「うおぉッ!!」
またもや斬撃が飛んできたが、誰か君は模造刀で叩いて落とす。そのまま僕の足を使って走る。しかも凄い速さで。僕以上に僕の体の使い方を知ってるなんて・・・。
「はぁ!?」
会場がどよめく。飛び交う斬撃を潜り抜け、逃げられない斬撃は叩き落とす。僕では絶対できない神業だ。そして飛ぶ。飛んで向かい来る斬撃を踏みつけて勇者の元に落下する。
飛んでくる斬撃は確かに距離があれば脅威になる。だが強力であるが故の弱点が存在する。
それは武器を振り下ろさないと『発動』しない。
そして僕は誰か君に伝える。
『渾身の一撃』を―――!!
ダメージは0であることは確実であり、勇者のHPを削ることは不可能。クリティカルでも同じ、だがクリティカルには『ふっ飛ばし』効果がある。無敵状態でも『ふっ飛ばし』は効く。そういう設定だったんだ!!現実世界でも『ふっ飛ばし』は効果があるのかは未知数だが、絶対に飛ばさなきゃならない!!
空中で模造刀を構えて、溜める。きっかり5秒じゃないとクリティカルは倍増されない。タイミングが重要なのだ。勇者の懐に入る。ここだ!と、模造刀が放たれる。
そして模造刀と模造刀がぶつかり、僕と勇者を中心に大気が爆散した。




