ポテチ食いたい・・・。
急になんだが、僕の話を聞いてくれないだろうか。
僕はまだ幼い5歳のころに、モンスターの襲撃で両親とまだ生まれたばかりの妹と弟を失っている。
父は格闘家で、ゲーム君の言うように魔力が乏しくて逆に素早さと防御に能力値が大きく振られてる、みたいな感じだった。格闘家と言ってもモンスター相手ではなくて、単純に人間相手で盗賊や山賊に出くわしても大多数を敵にしない限り勝てるという強さだった。
母は少し特殊な人、あぁ、頭の方じゃないよ。種族的な方で特殊なんだ。確か、母の家計自体が少し、いや訂正しよう。かなりえげつなくひどいモノだった。
まず母の父がクマムシの獣人と件の亜人のハーフ。母の母が『龍』人と悪魔のハーフだった。
で、母の叔父が、・・・何だっけ?えぇと、『七徳』の天使の一人とプラナリアの獣人のハーフ。
母の叔母がキメラとイカの獣人のハーフだったはず・・・。
で、なんか他にもいろいろわちゃわちゃうにゅらうにゅらした親戚やら従妹やらが居て、僕の母はそのえげつない数の種族の大部分の遺伝子を持った人だった。
そのせいもあってゲーム君のいう『Brave☩Innocent』だと、「強いけど、う~んなんか色々中途半端でパーティに入れるなら他の奴入れるかな。決して弱いわけではないんだけど・・・」にあたるステータスを持っていた。
で、僕はその間に生まれた子だけど、残念ながら母からのエグイ遺伝子は一欠片も受け継がれなかった。純度100パーセントの父の人間の遺伝子だけだった。なんか母曰く、遺伝子同士が喧嘩して最終的に隠れてた父の遺伝子が残ったそうな。
それに対して弟と妹は違った。
弟と妹はそれぞれ母の遺伝子を半分ずつに分けて受け継いだ。父?あぁ、何故か知らないけど受け継がれなかった。
少なくとも言えたことは僕はただの人間だったってことかな。父みたいなどこかが突出しているわけではないし、母のように色々なスキルが発現するわけでもない。ただの平凡な可もなく不可もない人間なんだ。
僕が生まれた当初はそれはそれは持て囃されたさ。なんてたって村でも『異様』と言われた夫婦の子供だからね。でも蓋を開ければただの人間で、それも大して突出した個性があるわけでもない。
文字通り、僕から人は居なくなった。僕に魅力がないと知った瞬間、永遠の友情を結んだ友人すらもサラッと僕を見捨てたさ。ミルは、・・・彼女はとても特殊な人だよ。
でも弟たちに対する態度はミル以外好奇の目だった。そりゃそうだ、自身の村からこんなバケモノが生まれればそれこそ村にとっては栄誉そのものだろう。
不服には思わなかったさ。多少なりとも嫉妬心はあったけど妬んでどうにかなる問題じゃないと言いうことはもう既に分かり切ったことだからさ。
それに弟も妹も僕の大事な家族だし、そんな高々スキルだの加護だので身内を恨むほど僕は落ちぶれた覚えはない。それにあの時はミルの相手で忙しかったからあまりそういうこと考えてる暇がなかったのもあるかもしれない。
事実、僕と弟、妹には周囲からの好意を見れば完全な格差が存在していた。でも家族間には壁は存在しておらず、両親も僕を弟や妹と同じように扱ってくれた。妹も弟もまだまだ幼かったが僕に対して何かしら悪い印象を抱くこともなかった。
そしてある日、その悲劇は起こった。
村にモンスターが襲撃してきた。それもゲーム君と戦ってきたハイゴブリンやマイマイではなく、赤黒い鱗を背負ったドラゴンだった。
元々、王国からドラゴンの目撃や襲撃された事件が多発していたから、王国直々に村にドラゴンが襲撃してもすぐに対抗できるように各所に騎士団を配属したのだ。
でも実際はそんなもの意味なかった。
何故か?それは騎士団が僕のことを完全に無視したからだ。
事件当日、忘れもしないあの日の頃。僕はミルと外で遊んでいた。その時、空から一匹の赤黒い鱗を纏ったかなり大きいドラゴンが舞い降り、怒り狂った目で炎を吐き散らし、村の家をいくつも焼いた。
一瞬のことで僕らは気を取られていたが、父がドラゴンの隙を狙ってミルも一緒に助けてくれたのを未だに覚えている。
僕はその後、父に「騎士団を呼んで来い!村に入る分岐点に小隊が配属されてるから事情を話して連れてこい!」と伝言を頼まれ、僕はすぐさま走り出した。
父は如何やら母と共にドラゴンの足止めをするようだった。
僕は村に入る分岐点に白いテントがいくつも並んでいるのを見た。すぐに僕は騎士団の人にドラゴン襲撃の事情を説明して援護を頼んだ。だけど騎士団の団長らしき人に「そうやってお前はワシ達をだまそうとするんだろう?そうはいかん!2回も同じ目に合ってるのに信じるわけがないだろう!悪戯は他でやりな!!」と全く信じない様子だった。
あの時のオッサンの激怒の表情が頭から離れない。
結局僕では無理だと分かり、大人を連れてこようと思って村に引き返した。だが、それが大きな間違いだったと後悔することになった。
僕が引き返した村はもう既に壊滅状態だった。ドラゴンが怒り狂いながら暴れていた中で怪我人は居ても死者は居ない。父と母の時間稼ぎが功を成したのか、村が血で染まることはなかった。ただし村の家はほぼ全焼、僕のすぐ近くには原形が分からない程に炭化した家畜の姿。まさに”黒”だった。
すぐさま走り出して大人を探す僕だったが、村人は逃げることに必死で僕の声は届かなかった。
仕方なく僕は父を呼ぶことにした。父ほどのそこそこに名の知れた大人なら騎士団も納得してくれると―――。
僕は父を探した。だが居なかった。どこにも、まぁそりゃそうかwww
父は僕の近くで炭化していたんだから。
でも、その時の僕はあの家畜の死骸みたいなのが父だと思いもしなくて、家になら居るんじゃないかと思った。行かなきゃよかった、と後々思ったけどその時はそんな事考えるほど余裕があった訳じゃない。
僕が家に着いた時には僕の家は燃えていた。それもただの火事ではない。黒い瘴気を纏った紅蓮の炎による完全滅却だ。
そしてその家の中で一人棒立ちになって何かを抱えている人が居た。
それは紛れもなく、母だった。
「母!」と叫ぼうとしたけど声が出なかった。何故なら気づいてしまったのだ。
母の上半身がもう既に炭化していたことに。
僕は言葉が出なかった。息をするのを忘れたんじゃないかと思うくらい、僕は生きてる心地がしなかった。
僕はその光景を最後に意識を失った。・・・・いや、意識はあった。ただ目の前の光景に現実感が持てずにそのまま立ち尽くした、という表現が合っていると思う。
気が付けば僕は一人で周囲の村人からは「父の伝言も無視するクソ」と呼ばれるようになった。
ドラゴンは如何やらひとしきり暴れた後、何処かに飛び立ったそうな。聞くところによると他の村を襲っていたところ騎士団が到着し、殉職者が出たものの無事討伐できたようだ。
僕の村の被害としては死傷者は合計四人。怪我人多数。村の8割の家が全焼。家畜全滅、畑炭化だ。
1:父。死因:焼死
2:母。死因:一酸化中毒
3:弟。死因:焼死もしくは一酸化中毒
4:妹。死因:焼死もしくは一酸化中毒
父は真正面から直接焼かれて形の良い黒人形のようだった。
母は両膝だけが残った。
弟と妹はまだ小さかったため骨も灰に帰したそうな。
何にせよ。騎士団が来なかった原因は僕にあるとされているし、ミル以外の人は僕に厳しい視線を向ける。君らは僕の話すらも聞かずに逃げまくったというのに、あさましい。
ちなみに僕の声を拒んだ騎士団長はドラゴンのブレスを子供の身代わりで受けて焼肉になったそうだ。残念だ。後遺症患いながらでも生きていて欲しかったのに・・・。
運命と言う名の完全な証拠隠滅。結局、僕は父の言伝を守らずに自分勝手に逃げた奴扱いだ。村八分に近い嫌がらせも受けたし、危うく絶命するところだった。
結果、そんなこんなで僕は危うく村人をゲーム君の言う”三下の理由”で殺滅するところまでに暴発しそうになった。そうならなかったのも全部ミルの手厚い看護のおかげだったんだけどね。まったく、彼女には勝てる気がしない・・・。
まぁでも今思えばいい経験だ。・・・・あぁ、別に僕は家族の死に姿を見たのが良い経験だと言ってるんじゃないよ。僕はそんなサイコ野郎じゃないさ。
まぁでもさ、もしあの時騎士団が僕の村に助けに来ていたら違う結果になっていたと思うんだ。
妹も弟も母も生き残ったかもしれないし、父だってなんとかなっていたかもしれない。―――でもそれはもしもの世界だ。そんな世界は存在しない。
でも、騎士団が来なかったから僕はミルの想いを知ることができたし、ゲーム君にも出会えた。ちょっと怖いけどノゥアさんにも気に入られてしまったようだし、世界の変人を見れた。本当、僕は、さ。
まるで、――――――。
この世界線を妥協して”幸せ”だと思ってるみたいで、とても気持ち悪いッ!!
S S S S
――――気持ち悪いッ!!』
僕の中に宿るキルエルの意志が世界に対する反逆の宣告を、そして自身そのものに対する怒りをぶちまけた。黒々と混沌とした魂の叫びが決壊したダムの如くキルエルの口からあふれ出した。
僕はキルエルの事なので現在の状況を見ながらも絶叫に耳を貸した。
最後まで耳を貸し、しっかりと耳を返してもらった後に僕はキルエルの話の内容を噛み砕き、しっかりと味わって咀嚼して、思った。
―――こんな時に独白する内容じゃねぇな。
現状、僕とアムールは『リべルスティガー』を討伐しに来た。
―――「あぁ、じゃぁまずはアムールの行動から見てみようかな。ナイフはあるんだろう?とりあえず目の前の3匹の内、2匹は僕がやるからアムールはもう1匹を頼む」
―――「え?でも大丈夫かな・・・・。長い牙持ってるし、あんなので噛まれたら・・・」
―――「大丈夫。リべルスティガーの長い牙は見世物だよ。本命は噛みつき攻撃じゃなくて、素早さを利用した前足の攻撃。僕の見立てでは素早さならアムールに利がある。それに長い牙を持つ個体程、前足の動きが鈍くなる。牙が長いから折れかねないんだよ。・・・・まぁ気軽にやってみよう。話はそれからだよ」
そういって、体術による蹴り技であっさりと2匹は撃沈。攻撃力が高いと如何やら首に蹴りを入れるだけで首が折れるようだ。・・・・手加減調整しないといけないなコレ・・・。
で、現在は僕はアムールの奮闘っぷりを見ている。
そこでキルエルが急に話しかけてきたのだ。
まぁ、コイツも色々あったしな。なぁに付き合ってやるか・・・・。
と軽い思いで聞いたのが間違いだった。
ドラゴンの襲撃で家族死亡?応援要請に騎士団が応じない?村人から嫌われる?
とんでもない内容がバンバン出た。
同情を誘うような内容じゃないし、キルエルも途中で笑ってるし、なんなら最後に最高の独白するし、・・・・・僕は混乱した。
なので、とりあえずキルエルに言う。とりあえず今キルエルの話を聞いて思った事を。
「なんか、ポテチ食いたくなってきた・・・・」




