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主人公補正なんてクソ喰らえッ!!  作者: うにゅら帝皇神
第ニ章 『短期留学☩テロ』
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死神、来ます・・・!

 『白金の温泉洞穴』。レアアイテムをドロップしやすいモンスターが沢山出現するため、『Brave☩Innocent』では序盤の周回スポットとして有名だった。だが、それが運営の罠だとは誰もが気づかずに長時間ダンジョン内に居座り、モンスターを狩っていた。


 『死神』。運営の罠であり、序盤からアイテムを集めて『俺TUEEEEE!!』を防ぐために出てきた設定でもある。ダンジョンの推定ランクに関係なく、その圧倒的なレベルとステータス。技、スキル、加護をふんだんに使って、ダンジョン内に居座るプレイヤーを粉砕していった。基本的に自動操縦の味方は粉砕されてしまい自身の操作するキャラとタイマン張ることになってしまう。そうなったらプレイヤーの取る行動は基本”逃げる”だ。だが素早さを強化しておかないとその圧倒的なスピードで追いつかれ、処理落ちする程のダメージを喰らうことになる。


 おそらく、いやほぼ確定で今回の失踪事件は『死神』が関わっている可能性が非常に高いのだ。


 『ここが、・・・・白金の温泉洞穴・・・。白金さは欠片も感じないですねぇ』


 キルエルが呟くその視線の先には一見ただの大きな穴ともいえる、洞穴があった。


 キルエル=ヴェルモンド 11歳 レベル39 男性

 HP1040 攻撃力1025 防御力1444 素早さ947 魔力967 精神力-488 運8

 スキル:『浮遊』『身体強化』

 加護:『渡り人の加護』

 属性:闇 無

 

 今回は完全に忘れていた果実を食べてステータスを強化した状態だ。何故なら防御力が上がる反面素早さがガタ落ちしているのもあって『スプリング・改』でも逃げ切れるか不安だったからだ。今回は死神戦と言うのもあり、果実により精神力分下げられている分果実で補強してある。果実もレベルによって使用できる数が限られているのもあって全てを食うのは無理だった。


 「でも、やれることはやった。後は中を捜索して証拠探すだけだ」


 『死神』は今の僕では到底足元には及ばない。これは例外なく絶対であり、少なくとも攻撃全てを回避できるという仮説を立ててもレベル5000を超えるステータスが必要だ。倒して仲間にするならもっと努力しなければならない。だから、今の僕では努力不足だ。


 「だから、今回は『死神』にあったら全力で逃げる。以上だ」


 『その証拠は何処で見つかるんですかね?』


 キルエルが聞いてくるのは依頼の達成条件である『証拠』探しだ。


 その問いに対して僕は淡々と答える。


 「あぁ、それな。無いよ」


 『え』


 この依頼の達成条件は『死神』に会う事だ。それが今回の”証拠”になる。


 それを知らずに僕はこの依頼で『死神』が出る前にダンジョンを脱出してことごとく依頼を失敗した記憶があるんだ。・・・嫌な思い出だ。当時の僕はそれがバグだと思って、サポートセンターに189回も電話した。


 『ゲーム君の黒歴史はさておき、早く洞穴に入りましょう!せっかく来たんですからレアアイテム手に入れてみたいですよ』


 キルエルが目を輝かせてサルの如くウキウキしている。仲間ウキ?


 「そうだな。・・・・行くか」


 僕は『進化の剣』を片手にダンジョンに入った。


 S S S S

 

 白金、そう呼ばれるだけあって此処のモンスターのアイテムドロップ率は凄まじく高い。・・・・そのはずである。


 「出ねぇ・・・・出ねぇよぉ・・・・・」


 わらわらと湧いてくるモンスターを一刀両断しながら僕は嘆息する。


 ダンジョンに入って約20分、出てくるモンスターはそれこそ『Brave☩Innocent』でも名高いレアアイテムを落とすモンスターだが一向にレアアイテムを落とさない。


 『ゲーム君、煮つけにされたメバルのような顔をしていますよ』


 「・・・それは僕のことを言ってるのか?それともこのモンスターの事を言ってるのか?」


 『ゲーム君、それはモンスターとメバルに失礼ですよ』


 「お前、後で覚えてろよ」


 死に腐った魚の眼をしながらで出てくるモンスターを片っ端から斬り飛ばす僕。・・・暇だ。


 そういえばだが鮮度が高い魚の眼程虚無感に満ちた目をしている。それに対して鮮度の落ちた、つまり腐った魚の眼は逆に何かしらの感情を感じる。コレは、つまり・・・、


 「僕の眼は感情に溢れている、そういう風にとらえることもできるのだ」


 『まぁ僕の体ですし、感情に溢れているのは当たり前ですよね』


 そうだな、キルエルは格好いいからな。終盤のキルエルと比べたら今のキルエルなんてただのがきんちょだ。弱そう。


 そんな戯言を互いに吐き合いながら進んでいくと宝箱を見つけた。


 『ゲーム君、宝箱ですよ!!』


 そうだな。宝箱だな。


 「だが僕は宝箱とかあんま興味ない。怪しいし」


 なんなら怪しさしかない。宝箱の蓋に『開けてください』って書いてる時点でもう怪しい。


 しかも妙に鍵穴から視線を感じる。絶対なんかヤベェの入ってるだろ。


 僕はキルエルの好奇心を無視して宝箱を通り過ぎる。


 『えぇ~!!開けてみましょうよ!ゲーム君――!』

 

 「ダメだ。あんな怪しさしかない宝箱開けてたまるか」


 『えぇ~~、・・・・・ケチ』


 キルエルが毒づくが気にしない。僕はそれより後ろの視線を何とかしたい。


 正直『ミミック』だとしか思えない宝箱からの視線を振り払いながら奥に行こうとするとふと背後から何かの気配が近づいてくるのを感じた。


 モンスターか?とりあえず反撃の構えを――――。と、


 僕が振り向くとそこには―――――。


 とても汚い剛毛を生やした2本の足が生えた宝箱が、


 ―――居た。


 「『・・・・・・・・・・・・・・・』」


 正直思考がぶっ飛んでいた。


 僕とキルエルの視線に気づいていないのか、宝箱は何事もなく生えた足を宝箱の中に隠して宝箱のフリをし始める。


 ・・・・・どうすればいいのだろうか。


 『Brave☩Innocent』だと基本的に『ミミック』は宝箱のふりをして冒険者に開けさせたところをバックリいく王道の擬態モンスターだが、冒険者が通り過ぎると自ら足を生やして背後から近づいてくる。だがゲームではすらりとした長い美脚で背後から迫ってくるような、決して恐ろしいモノではないが、目の前の『ミミック』は明らかにゲームに出てくるソレではなかった。


 「短足剛毛てお前、・・・・・」


 ・・・・汚すぎる。剃れよ。


 決して言わなかったが、『ミミック』は何を感じ取ったのか見られているにも関わらず箱の側面から汗をかいた剛毛の腕を生やし宝箱から何かを取り出して投げてきた。

 僕は投げられたソレを回避した。自動攻撃とか最早ミミックではないな!?


 僕が投げられたソレを見る。


 一升瓶の酒(中身入り)だった。


 「・・・・・・・」


 僕が「お前マジかよ」みたいな目で『ミミック』を睨むと今度は鍵穴から何か紙切れが出てきた。


 吐き出された紙切れを摑んで見る。何故かとてもベタベタしていた。後ほんのりと疲れたオッサンの香りが鼻に纏わりつく。


 紙切れにはこう書かれていた。


 『住所教えてよ。文通しようよ』


 「『・・・・・・・・・・・・』」


 えぇ??えぇ・・・・・・えぇぇぇ・・・・。


 異次元過ぎてまともな言葉が出なかった。なんだコレ、新手の頭脳戦かなんかか?


 『なんかとても業を感じる文章ですねぇ・・・・』


 キルエルも理解できないようだ。そうだよな、モンスターと文通なんて愛の和歌とか送られてきたらどうしようか迷う。


 『ゲーム君もぶっ壊れてるなぁ・・・・』


 キルエルが溜息をつく。おう、僕なんか変な事言ったか?


 まぁとりあえず、だ。


 僕は渡された紙切れの両端を指でつまみ、そのまま破り捨てた。だって怖いもん。


 「ッ!!!」


 「うおッ!?」


 僕が笑顔で破り捨てた紙切れを見て何を思ったのか、宝箱から剛毛短足の手と足が出てきた。もう隠すつもりはないらしい。それでも隠す努力をしてほしいと切実に思った。見たくないんだ・・・。


 僕が出来るだけ目を伏せているとキルエルが叫んだ。


 『ゲーム君、追いかけてきますよ!!』


 「うん、なんとなくそうなるんじゃないかなと思った」


 なのでお見せしよう。この技を出す過程が残念だが、丁度いい。


 僕は両足に力を入れ、クラウチングスタートをする『ミミック』を見る。見てくれが最悪なのにどうにもこうにも様になってるんだから性質が悪い。・・・なんて美しい構えなんだ。


 宝箱が息まきながら右足に力を入れ走り出すその瞬間、僕は『飛蝗脚・羽』の力を開放する。


 「『スプリング・改』!!」


 溜められた運動エネルギーを全開放したその瞬間、


 音が消えた。


 いや、音はある。ただ、風が強すぎて周囲の音が聞こえないのだ。


 音速に満たない超速、――――――『亜音速』。あのキチガイ野郎とほぼ同速を僕は出しているのだ。後ろを向けばあの『ミミック』はどんどん小さくなっていき次第には見えなくなった。


 「振り切った―――――かッ!?」


 そう呟いたと同時に後頭部を鋭い衝撃が襲い、僕の意識も小さくなった。


 S S S S 


 どうやら亜音速で壁に突っ込み、衝撃で意識がぶっ飛んだようだ。死ななかったのは防御力が高かったのと単純に風圧で速度が軽減されていたからだろう。あっぶな、殉職するところだった。


 何時間立っただろうか、少なくとも夜を迎えているだろうと思えるほどダンジョン内部は暗くなっており、ちらほらダンジョン内に設置されている灯篭が見えている。


 「いっつつぅ、・・・・リープ」


 後頭部に回復魔法をかけて立ち上がる。他にダメージを受けたところは・・・ないようだ。


 おーい、キルエル、大丈夫か~~?


 『大丈夫ですよ。痛覚を切っていたので痛い思いをしたのがゲーム君だけです』


 「何だろう、今すごくキルエルを闇鍋に沈めたいんだが・・・・・うん?」


 キルエルのウザさに言い返していると、未知の奥から妙な音楽が流れてきた。


 何だろう、この・・・不思議と楽しそうで、それでいて物悲しく不気味な、・・・・・はッ!!


 それがなんであるかを察した瞬間、僕の体は戦闘態勢へと移行した。


 『ゲーム君、一体どうしたんですか?』


 キルエルののほほんとした問いに僕は『進化の剣』を持ち直し、洞穴の奥の道を睨んで言う。


 「来るぞ、キルエル!――――――『死神』が!!」


 その言葉に合わせたかのように暗闇の奥から曲がった刃物がギラリと怪しく光った。

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