親が出てきました。
アムール=エグザイル。『Brave☩Innocent』で勇者のヒロインとなる人物だ。攻撃と素早さが高く序盤ではスキル『獣化』を持っているためボス戦で有利に戦うことができる。それにレベルが上がれば加護である『獣人の加護・虎』と『獣人の加護・狼犬』、技の『獣王の怒爪』を使えるようになるので大体のパーティメンバーには入っていた。
正直なところ僕はこのキャラを勇者より先に『百鬼夜行』に引き込めば、いずれ来る悪魔戦まで鍛え上げてミルを守れる確率が上がるのではと考えた。
そういう理由もあってキルエルのアムール友人化作戦を手伝っているといってもよい。
同種の出汁を飲んでから数分が経過し、アムールは不思議そうな顔で尋ねてきた。
「何であんな荒野にあなたみたいなガラシアの人間が居るの?」
首をこてっと傾けて問うてくる姿勢はあまり好きじゃない。やはりアムールのような”拳で語る”キャラにあざとさは必要ないと思い直す今日この頃。
僕は、とりあえず「ん~」とか言いながら答えを出し渋ってみる。理由なんてないし、魔道具買いに来ただけだし。いやまぁ理由なんてそんなもんだが・・・。結局出し渋っても意味ないので何気なく言う。
「魔道具買いに来ただけ」
「嘘だぁ」
とりあえず応えてみるとあっさりと否定された。
「何故嘘と・・・、ひどくね?」
「だって魔道具なら闇市行けば買えるし、此処なんにもないよ。自分で言っててなんだけど。何にもないところにわざわざ来る人と言ったら、それこそ此処を住処にしている自分達とかココナシアの肥料になりに来る人だけだもん!」
あぁ、そう来ます?まぁそうだな。筋通ってるし、此処本当になんもないし。
クフフッと笑っていると、アムールが溜息をついて再度僕を見る。
「で、何しに来たの?」
「・・・・・それ答えないと駄目な奴?」
「うん」
「いや、うんて・・・・・」
アムールの即答に困惑する。・・・・どう答えたものか・・・。「ん~~」と悩みながら天井を見る。どうすれば疑われずに友情を育めるかなぁ。
――――あ、そうだ。こういう時はキルエルだ。キルエルに頼もう、そうしよう!
僕はほぼ他人頼みでキルエルに話しかける。
おーい!キルエル、頼みがある。聞いてくれよ~。
『・・・・・・・・・・・・・・』
反応がない。相当メンタルに来たんだろうな。そっとしておこう。
さて、どうしようか。まぁ、実はすでに言い訳が思いついているがコレを僕が言うのはどうなんだろうか。なんかキルエルくさくて嫌だな。差別化を図りたいのだが・・・。
ふとアムールを見ると目をごしごしやりながら、目を覚まそうとしている。元気がないのか、頭に生えた黒白模様の耳は項垂れている。
その光景を見ていた僕はなんとなくいたたまれない気持ちになった。
―――健気な子だなぁ。
どこと誰かも知らねぇ馬の骨なんかの話を聞こうとしてくれている。普通ならお茶出して「後は知らねぇ!」みたいな感じでポイされるのかとヒヤヒヤしていたが実際はそんなことなく、僕の話を聞こうとしてくれている。
―――まぁ、たまにはキルエルの真似するのも有りかな。あ、決してアムールの態度に感銘を受けていた訳じゃないからな!?そこんとこ間違えんなよ。僕の恋愛対象は無生物だからな!!
僕はゆっくりと、悟りかけるように言葉を紡いだ。
「『ララフルァ―ラ』、・・・・」
「え」
アムールが顔を上げた。
「君さ、そこで働いてたよね?」
「え、うん。そうだけど、何で知ってるの?・・・・まさか、あの変態仮面の人の仲間!?」
「え!?変態仮面・・・・?―――ッ!!違う違う全然関わりない。関わりたくない!!」
変態仮面と言う聞きなれない単語で頭を悩ませ、すぐにそれが今さっきの変態ロリコンイケメン不審者という確信を得て身をよじるアムールに必死で弁解する。・・・アレの仲間とか全然嬉しくない。
「違う違う。僕はあくまでもそこでポコの実のスムージー飲んでいただけだから!!」
「――――――あぁッ!!、あの時の人!!」
びっくりして手で口を隠すアムール。ああ、そういう仕草いらないんで。可愛くないんで。
まぁ誤解が解けて何よりだ。早速キルエル風に口説きに行こう。
「そうだね。おそらく君の言う、あの時の人で間違いない」
「人間の卒業者だ!!」
「知らない称号が増えているんですが!?」
え!?何、人間の卒業者!?・・・・何だろう、どんどん僕の印象が人からバケモンに変わっていってる気がする。ブルドグには変人扱いされるし、国王には問題児扱いだ。
っていうか、
「話逸らさないで貰えますか!?」
「え、あ、・・・・ごめんなさい」
「ええ、はい。まぁ、『ララフルァ―ラ』でポコの実のスムージーを飲んでいるときに君を店内で見ましてね。少し目立っていたというか、異様だったので気になりました」
「異様?ポコの実のスムージー飲む客の方が異様ですよ」
「僕のことはこの際置いておいてください!!・・・・僕からすると君の方が異様なんですよ!!」
「えぇ、・・・侵害・・・・」
「口の減らない人だなぁ!もう!!」
「あははは」
僕が呆れ声で机を叩いているのを見てアムールがころころ笑う。うん、やっぱ素の野生感溢れる笑い方の方が合ってる気がする。雌の穴持たずの熊みたいで可愛い。つーか笑うな。
「でもまぁ元気そうで何よりですよ。もう何日間も寝てなかったように見えましたから」
「・・・・えぇ~~~、そんなことないけどなぁ。元気だよ結構」
僕の言葉に少し黙ったかと思うと、ナイナイと手を振る。だが、その一瞬の沈黙を僕は見逃さない。ゲームのバグを否定したときの運営のコールセンターのような反応だ。舐めるなよ、何百回とコールセンターと話しあってきた僕の聴力は伊達じゃない。
僕はクフッと笑いを漏らした後微笑を返す。そして一言。
「薬代、実はあんまり必要ないと思いますよ」
「―――――――え」
一瞬、アムールの時が止まる。クスリダイハヒツヨウナイ?と唇が復唱している。
そして時が動き出し――――、
「何で―――、何であなたがソレを知っているのッ・・・・?」
ソレはおそらくアムールが母親のために薬代を稼いでいることを指しているのだろう。
アムールは僕がソレを知っていることに驚き、そして警戒態勢を取る。いつでも迎撃できるように、飛び跳ねる準備をしている。まぁそりゃそうなるわな。誰にも話していないはずの秘密を他人が知ってるんだから。
それに対して僕は何も持っていないと両手を振り、「まぁまぁ」とアムールの殺気を受け流す。
「少し、滑舌のクッッッッソ悪いケツアゴのお兄さん達が呟いていたのを小耳に挟んでね。母のためにコツコツと稼いでいるこの世界に住んでる幼女が居るってさ。・・・・どうだい、合ってる?」
「・・・・・・・・」
「その沈黙は図星として受け取っておきましょう」
アムールの眼がどんどん鋭利なモノに変わっていくのを見ながら話を続ける。
「で、だ。君の稼ぐ薬代は必要ないモノですよ。いや、言い換えよう。―――――君の今の母親は、嘘をついている」
「―――は?」
僕がそう言い切ると、返ってきたのは冷たい声だった。何言ってんだコイツ、みたいな目をしている。可愛い。
「意味わかんないでしょうね・・・・・まぁそうでしょう。こんな赤の他人に自分の母親が病気じゃないって言われたら、腹立ちますよねぇ?」
僕が言うとアムールは何か言いたげな様子で僕を見る。
「―――でも、理由はあります」
「――――理由・・・・・?」
僕は人差し指を突き出し、アムールに向ける。
「今の君の母親は、――――アルパカの獣人ですよね?」
アルパカ、それは主に毛を利用する目的で飼われていた家畜の一種である。体毛である白いモフモフは極めて良質で、古来より王族をはじめとする貴族たちの衣類品として使われてきたラクダ科の動物だ。そして、そんなモフモフふわふわアルパカはペットとしての飼育がとても難しい。
まず広いところで飼う事。狭いと神経質になりやすくなる。
そして二つ目、一頭だけ飼うのは禁止だ。というのも、このアルパカ。ぼっちだとストレスで死ぬのだ!!基本群れで生活するアルパカは一頭だけだと体調を崩しやすくなる。
『Brave☩Innocent』攻略本でも、アムールの母親であるラマルパカ=ビヨンドはアルパカの獣人であり、人一倍の孤独体質持ちで、とてつもないほどのアムール大好き獣人とあった。
「そうだけど・・・・」
アムールがうんと頷く。よっしゃ勝ったぜこの勝負。
つまり、――――だ。
「君の今の母親は、君と離れるのが嫌で病気と言う嘘をついているんだ!!」
「!?」
11歳と言えば少し早いが親元を離れたがる年頃だ。それを見越して、ラマルパカは病気だという嘘をついて彼女を引き留めているのだろう。優しいアムールが離れないように鎖を着けて。
僕の言い分を理解したアムールは一瞬にして顔を赤くし、激昂する。
「そんなことない!!お母さんは病気なの!!毎日苦しがってる!!勝手なこと言わないで!!」
今にも飛び掛かってきそうな剣幕でアムールが叫ぶ。チッ、此処までが限界か?赤の他人と言うポジション上、僕の言うことはほとんどアドバイスみたいな扱いだろう。正直、心の奥底まで踏み入れる権利はねぇ・・・・。ここで詰みかぁ・・・・?
僕がそう思いながら、謝罪の意を示そうとすると――――、
「アムール、家の中で騒がないの!!お客さんが驚いてるでしょ!!」
「!?」
僕とアムールが驚き、部屋の扉を見るとそこには。
「お母さん!?――――どうして、ベッドから出ているの!?」
とても元気そうなラクダ顔の女性、もといラマルパカ=ビヨンドが居た。




