助けられました。《アムール視点》
※追記 課題テストが連日であるため、投稿がしばらく遅くなります。おそらく三日に一度くらいのペースになります。ご了承ください。
「キルエル君、本当にやる気あるんでしょうかねぇ?」
俺の隣で揚げチキンを食いながらマルクがぼやく。それに呼応するかのように俺とノミが反応した。
「「いやないだろ!!」」
「ですよねぇ」
俺達は今ファムルスの商店街を歩いている。模擬戦で大敗退した余韻を忘れるためだ。
正確には、大敗退させられたのだが――――。
そもそもの敗退の原因はあのにっくき卑怯者、キルエル=ヴェルモンドにある。
「俺が『来い!』って言っても来ないしよ。あんな犬ころすぐに倒せるだろ!!」
「勇者様が言ってるのですから穢れた犬風情くらい無視して振り切ればいいものを・・・」
「そもそもあの兎人が総大将だって、考えればすぐわかることですよねぇ?あの兎人狙った瞬間に周りの犬人が守ろうとするんですから。この国の勇者は脳が足りませんよね。キルエル君もですけど」
「全くだ。折角この大英雄にして生きる伝説、高貴なるボクがを身動きを封じようとしたというのにあの負け犬が来ないせいでスルリと逃げられてしまったじゃぁないか!!」
キルエルを除くパーティ全員がキルエルに対しての印象が悪い。仕方ないよな、そういう奴だしな、キルエルって。
仲間とキルエルへの愚痴を言い合いながら商店街の中を見る。やはりは魔界からの侵略者の国、国民のほとんどが獣人で商店街全体が獣臭い。あまり長居はしたくないような臭いが充満している。その中であんなに笑顔で買い物や散歩をしている奴がいるからこそ、獣人は穢れているのだ。
でもやはりはファムルスとの親交があるガラシアだ。ガラシアの人間が居ても獣人はさして気にしない。なんなら、すぐそこにある小さな鍛冶場ではガラシアの人間が武器の製造過程を白黒の熊人?と蝗の獣人?に馬鹿笑いをしながら教えている。
それだけでなく、さっき訪れた広場では数学らしき学問を獣人の子供に教えているガラシアの人間も居た。そのせいもあってか、ガラシアの人間はファムルスにうまく溶け込んでいる。その光景を見た俺達からすれば「異様だ・・・」としか言えない。
確かに技術屋や学者は『英雄創聖教』の信者であっても真剣に信じているわけではなく、他国の異端教徒の技術屋や学者とうまくやっている様に思う。
それでも、俺からすれば「何で異端教徒や獣人と関わってんだよ!法典違反だろうが!!」と思う。
「それも全部、今のガラシア王が『英雄創聖教』とは関わりのない異国の冒険者出身だからか」
ガラシア王は細かく言うと元々この国の人間ではない。それならなぜ、この国の王になれたのかだが、ソレはこの国に『英雄創聖教』が救済に入る前からあった風習にある。
それは―――、
『強き者が真に尊ばれる』
というものだ。
結構昔、俺が生まれてない頃の話で大規模な狂乱暴徒がガラシア王国であったそうな。その時はガラシアでは珍しく魔法の才に長けていたナシア様や、複数の凄腕『英雄創聖教』の方々が鎮圧に向けて討伐隊が組まれるも、狂乱暴徒には千を裕に超える数のドラゴンや悪霊が居たため討伐隊の8割が秒殺されてしまう事態にまで発展した。
そしてガラシア王国が崩壊の危機に瀕したときにその現在ガラシア王こと、アンセム=バトルスピーチを筆頭にした最も新しい伝説のパーティ、『絆剣』が現れその圧倒的な力で一週間もかからずに狂乱暴徒を制圧したことに当時女王だったナシア様が感銘を受けて即落ちし、現在ガラシア王がナシア様に一目惚れしたのもあって王に据えられた。
そんなこともあって『英雄創聖教』はむやみに現在ガラシア王を非難できず、ガラシア王はナシア様のように崇高な『英雄創聖教』の信者ではなく無神論、無所属だったためにもこんな穢れと罪と罰の巣窟である獣人国ファムルスと国交を結ぶまでに至ったのだ。
まぁでもそれが全部悪いことだとは思わないがな。今回の模擬戦も現在ガラシア王の国交締結の産物だし。
「負けちまったけど、今の俺達と世界との差を見せられたと思うとやっぱり足りない部分が多かった気がする。まだまだ世界に届くの先だと改めて思い知らされたな!」
俺がそう言うとリピアが驚きの目で俺を見る。その後、ふっと微笑んだ。
「勇者様は本当に心が広い御方ですわ!!私ももっと強くなって勇者様と肩を並べたいですわね!」
「確かに、たった一人の兎人に翻弄されて全滅なんてとんだ笑い話ですよ」
「フン。全てを極めたこの大英雄にして伝説の勇者たるこのボクが全てを極めるのもまた一つの余興だ。時間の許す限り、ついて行ってやろう!感謝したまえ小惑星共!一騎当千のボクが付くんだ、失敗は許さん!!」
リピアに続いてレイブン、マルクが賛同の声を上げる。
俺は空を見上げる。良い夕日だ。これが青春なんだろうな。
S S S S
真夜中、私は一人店から出ていつも通りの道を行く。午後11時半を回った頃合いだろうか、商店街にはほとんど人気が無く、あるのは静寂のみだ。私はいつもの裏路地を通り封鎖されて、本来は行けないはずの廃墟に足を踏み入れる。
腐臭に近い死臭が漂う街、荒野にも似たその退廃感こそ私にとっては故郷に感じる。それと同時に幼いころは違うところに居たような、別の世界戦のような記憶も脳裏をよぎる。・・・あまり関係のないことね。
いつも通り、廃墟に商店街のような綺麗な地面はない。誰かの這いずりまわった跡と、乾いた血と吐瀉物の宝庫、道端にある大きな黒い塊は新しく蛆の糧になるこの世の卒業者だろう。
―――革命戦争の犠牲は単純な人的被害じゃ終わらなかった。それでも、やらなかった頃よりはマシだ。
そんなことを思いながら闇市に入る。ここはいつも賑やかだ。元気な時のお母さんみたいな人がたくさんいる。
私が歩いていると、珍しく葉巻を吸っているザリガニのおじさんに出会った。葉巻を吸ってるあたり、良い顧客でも見つかったのだろう。あんなよくわからない古道具を買うような不思議な人がいるのだなぁ、と思っているとザリガニのおじさんが私に気づいて話しかけてきた。
「よう、アムちゃん。相変わらず元気そうだな、ちゃんと稼いでるか?」
「うん。あっちの世界の店は給料良いよ、此処より。でもお母さんのお薬買うには全然足りない」
「まぁそりゃ、薬って高いよな。ここにゃ治癒術士も居ないし。でもまだまだ革命戦争終結から数年だしな。アムちゃんが大人になった時は給料も高くなるだろ、知らんけど」
おじさんはそう言って高笑いする。毎回思うけどハサミで葉巻挟むって大変じゃないのかな?
「おじさんはどうしたの?良い顧客でも見つかった?」
私の問いにおじさんは「あー」とか言いながらハサミで頭をかく。痛くないのだろうか。
そして難しい顔をしながら言った。
「まぁ、財布の厚い上客なのはそうなんだが、口が悪いんだよ。とても」
「どんなふうに?」
「俺の事、ロリコンザリガニだとよ。11歳の若造のくせに口の減らないガキだった」
「あっはっはっはっは、ロリコンザリガニwwww」
私が爆笑すると、おじさんは何とも言えない複雑な表情をする。
それにしても11歳か・・・。
11歳と言えば私も同じ11歳だ。まぁでもここで生きてるといつ死ぬかなんてわからないから歳なんて数えるだけ無駄だけど。そんなことを考えていたら、ふと店に来た少年を思い出した。
「そういえば、11歳か分からないけど人間の男の子が私の働いてる店でポコの実のスムージーを飲んでたわ」
「ポコの実って、あの実だけは普通に食べると美味いのにジュースにした途端クソ苦くなるアレか?」
「そう、そのポコの実」
「それのスムージー飲むなんて度胸試しか罰ゲームだろ。どうせ残しただろそのガキ。残したに500クランかけるぜ」
「じゃぁその500クラン貰うね。・・・正解は残さなかったのよ」
「嘘つけ。つくならもっとマシな嘘にしとけ」
「ホント。一回飲んだ後、目を見開いて何も言わずに全部飲みほした。その後すごいくらい格好いい愛想笑いしながら会計済ませたわよ」
「あ、バケモンか。納得」
そういって、懐から500クラン硬貨を取り出して、私に投げる。私はそれを受け取りポケットにしまう。
「後、11歳の話だけどね。今日の朝にチンピラに絡まれたの。薬代寄こせって」
私が言うと、おじさんは目を丸くする。その後、私の肩を摑んで揺さぶってきた。
「おい!それは大丈夫だったのか!?怪我はないか!!」
「無いから放して、泥臭いし」
「ど、泥臭い!?」
私の台詞に対して驚愕するおじさん。心なしか、目がびょーん!ってなってる気がする。気のせいだと思いたい。
私は話を続ける。
「で、大丈夫でした。一人の男の人がナイフ持って飛び掛かってきたけど、11歳くらいの男の子が助けてくれたの」
「へぇ、人助けねぇ。英雄志向のガキがまだいるもんだねぇ」
おじさんは如何やらその男の子よりも私に怪我が有るか無いかの方が心配だったようだ。・・・この幼女趣味が。
ふと思い返せば、あの11歳の男の子心なしか助けてくれた男の子?に似てる気がする。・・・いや気のせいか。
S S S S
おじさんとひとしきり喋った後、私は帰路に着いた。まだ距離はあるが、もうすぐそこを曲がった先に家がある。
そこまで大きな家じゃないけど、風が通り抜けるような隙間は無い。
ここまで来ると、人はほとんど通らない。ここはこの地区でも有名な自殺スポットで、通る人は大体死んだ目をしている人ばかり。私みたいな必死に今を生きているような人はこんな空気の一段悪いところには来ない。
此処には高いところが沢山あり、そこで飛び降りたり縄で首を吊ったりしている。
そんなことを今更ながらに考えながら廃墟の角を曲がろうとしたときだった。
「お嬢ちゃん、良い髪色をしているねぇ・・・・」
「えっ?」
背後から肩に手を置かれて、耳元でそっと囁いてきた。
私は狼犬と猫のハーフだ。だから周囲からの情報処理や気配察知はかなり高い。
でも、だ。
今後ろから声を掛けてきた存在の気配は察知できなかった。まるで突如そこに現れたかのような、はっきりとしない存在察知だった。
でも、こういう場合の対処法は決まっている。一撃を入れてから後退して逃げるのだ。
私は左手を固めて後ろを振り返ろうとすると―――、
「むぐぅッ!?」
「これぇ、裏路地付近と廃墟の闇市の地面に落ちていた髪の毛と唾液と皮膚だけどさ、お嬢ちゃんのだよねぇ?」
後ろに居た存在は左手に持っていた布を私の口元と鼻を覆うように強く被せ、右手のピンセットにつままれた細い糸のようなモノを見せてくる。それが何か判断する前に私の意識が遠のいていく。
「―――――ぁ」
閉じていく私の瞳に何か黒い影が頭上から舞い降りて―――――、
「声かけ条例を知らんのかクソッタレ!!」
「うブッ!?」
怒号と共に何かが私の後ろ髪をかすり、鈍い音と共に私への拘束が解放される。
意識を立て直して声の主を見ると、それは―――、
朝方の黒髪の少年だった。




