行間書きました。《1》
今回は本編とは離れた、とある神々の日常の話です。後々本編と絡みます。
「ふぅ――――、さて休憩も終わりにしましょうかね」
僕は読んでいた小説にしおりを入れて、その本を閉じる。まだまだやらなければいけないことが沢山あるのだ。異世界の管理とか、異世界の創造とか、文明の発展の促進とか、力のバランス基準の変更とか、やらないといけないことが多すぎる。あー、働きたくない。
僕は机の棚に小説を入れて、手短にある資料をチェックする。そんなときに彼女は来た。
「創造神様―――っ!!あそぼ―――っ!!!」
可愛い声が一室に響いた瞬間、僕の体が壁に叩きつけられた。ぐはっ!
僕をぶっ飛ばしたのは華奢な少女の蹴り、それによって粉砕され、飛び散った扉の破片だった。
おかしい。あの扉は少なくとも彼女のような大畏神では開けることは不可能なはずなのに。設計をミスったのか?
僕は埋もれた体を壁から引き出し、目の前の少女を叱責しようと近寄る。
だが、当の彼女は悪びれる様子がなく、目をギラギラさせている。そしてほんのりと顔が紅い。
「妹よ。僕の言いたいことが分かるかな?」
「そんな、ダメですよ・・・。そういうのは言葉で言ってくれないと、・・・そんなに見つめても言ってあげたりしませんから・・・」
そういって、もじもじと僕から視線を外す妹。何を勘違いしているのか頬を染めている。
「なんで毎度毎度扉を壊して入ってくるんだ。・・・普通に入れないのか君は・・・・・」
僕がげんなりとした表情で言うと、妹はギラッとした目つきで僕を見る。
「・・・・・・普通じゃダメなんです。”普通”だと開けてくれないじゃないですか」
当たり前だ。君を部屋に入れると必ず部屋の半分が荒野になる。僕の「待て」に10秒も待てない神を入れるわけにはいかないんだ。
僕は僕をぶっ飛ばした扉の破片を手に寄せた。
「コレ、・・・・・大畏神には絶対開けられない神力を入れてたんだけど。どうして破壊できるんですか?」
「そりゃぁ、創造神様の”妹”ですもん!私だって、開けることは無理でも粉砕くらいできますよ!!」
そういって、妹はぐっと拳に力を入れる。そうだったな。コイツ、僕の相反する神だからバッキバキの脳筋だったんだ・・・。次は怪力女対策を重点的に設計するか・・・。
「っていうか、何の用ですか?僕はこれから仕事なんです。どこぞの馬鹿神がさぼった分を今日中に終わらせなきゃいけないんですよ」
あの馬鹿、なにが「俺に救いを求める声が聞こえる!!」だ。仕事をしろ仕事を。
僕は机に積まれた大量の書類を見る。中身は数日の間の異世界の力の基準値の変化についてだったり、異世界の生活水準についての報告書のチェックだったりだ。
「こちとら新しい異世界の管理をしているというのに、・・・・・・うわぁ、コレ締め切りだいぶ前じゃないか・・・・」
いくら最高位神であろうとも、仕事をしなければ降格されるというのに、何故か馬鹿は降格されないのだ。
「彼、仕事しているところ見たことないです。なのに何故か昇格して最高位神になってるんですよね、不思議」
元々、同じ位だった妹がそうこぼす。普通、大畏神が最高位神になることは容易ではない。仕事をこなすだけでなく、何人かの最高位神からの推薦状を貰ったり主神たる存在からの直々に礼状を受けたり色々ある。
つまるところ、あの仕事もしないで異世界で遊び歩いている馬鹿が最高位神になれる訳がないのだ。
「それだけならまだしも、いやそれだけでも問題だけど、何であんな英雄志向馬鹿を僕の部署に入れたんだ・・・・?明らかな人選ミスじゃないか」
僕の担当部署の仕事は、各異世界の力のバランスを調節したり、異世界の生物の進化や退化を促して『搾取する側、される側』を創らないようにすることだ。他にも、異世界を創造して、転生者を受け入れる土壌を増やしたりする。
そういう意味で、この部署で働く神はそれこそ創造神たるこの僕だったり、調停神だったり、豊穣神だったりするわけだがあの馬鹿、もとい蛮勇神はそれこそ僕らのような物理的な現象を引き起こす神ではなく、精神的な変化を促す神だ。故に此処で働くのはそもそも前提が間違っていると言っていい。
「でもまぁ、此処でどれだけ馬鹿の悪口を言っても意味がない。仕事に戻るkオファッ!!」
僕が溜息を吐き、机の書類に手を伸ばそうとするととてつもない衝撃が僕の首に直撃し、吸っていた神気(ここでいう空気的なもの)が吐き出された。
急な攻撃にせき込みながらも、首にチョップした張本人である妹を見る。
「私の話、終わってないんだけどッ!!」
「・・・・・なんの話でしたっけ?」
「私とデートして結婚する話でしょ!!」
「どこからそんな突飛な話が出てきました!?遊ぶお誘いでしたよね!?」
「聞いてるじゃん!!」
「・・・・・・」
本人にその気はないと思うが、まんまと釣られた気がする。
だが残念。確かに妹と遊びたい気持ちは山々だが、僕には仕事が待っている。なんなら仕事しか待ってくれてない!
「・・・っていうか、妹も仕事があるのでは?帰らなくてもいいのですか?」
僕の指摘に妹が肩をビクッとさせる。・・・・あ、コイツサボりだな。
話が変わるが、妹の居る部署は主に、異世界同士の戦争の鎮圧やチート無双したイキリ散らすチンピラの抹消を生業としているのだが、つい最近になってそういった後者のような事例が多発していると聞いた。原因は地獄王の暗殺とその跡継ぎ問題とされている。
基本的に、生物が死んだ場合に稀有な事例(主に神による不手際な死など)がない限りは、魂はまず地獄に誘導される。そこでその魂の業の深さを『最終審判』にて決められ、業の深い者はそのまま地獄へ進み、業の軽い者は極楽、もしくは輪廻の軌道に乗り記憶の全てを抹消されてから新しい生物として転生する。
故に、転生者が次々と出てくることはほぼないのだ。
だがしかし、こういった事には例外が存在する。例えば、神の不手際が世界の終焉レベルだった時だ。この場合、一度に莫大なチート転生者が誕生し、世に放たれるために自然とそういう黒い野望を持つ人物は多くなる。
そしてもう一つの例外は、『実質的な地獄の審判の機能停止』だ。魂が最初に通る場所は基本的には地獄だ。その地獄で極楽(輪廻からの転生含め)行きか、地獄行きかが決定する。そして、その地獄が機能停止になると極楽にも地獄にも輪廻にも行けない状態になる。そうなると、この場合はほぼ自動的に『神の不手際な死』が刻印され、チートを付与されて異世界に飛ばされることになる。
すると、本来なら地獄に行くはずの業を背負った魂が記憶を保持したままチート能力を手に入れて転生することになり、そういうヤベェ奴らが増えることになる。
今回の例外は完全に後者である。しかし、それなら早く次の地獄王を決めればいいじゃないか!という話になる。だが、今回の跡継ぎ問題はかなりややこしいことになっており、簡単には決められない現状にある。
そのせいでチートイキリチンピラ野郎どもが大量に湧きまくり、収拾の目途が立たない状況にあるのだ。(長話失礼!)
現実に戻ろう。
妹は実の兄の目の前で盛大に舌打ちし、「バレたか」と言う。そして忌々しそうに虚空を睨みつけると言ってはならないことを口にした。
「ったく・・・・・、業を裁く地獄王に隠し子が(確認済みのだけで)56198746人居るってどうなってるのよ・・・。とんだクソ《ピー》まき散らし野郎じゃねぇか!おかげでこっちは一日中仕事なのによ!!」
うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
マジかよ、言いやがったぞコイツ。
実を言うと、その通りだ。地獄王は自らが業を裁く存在なのに、妻に内緒で他の妻が居たのだ。それも沢山。しかも守備範囲が広すぎて、雌(女性)なら赤ちゃんからヨボヨボ婆さんまで、ましてや家畜や植物の妻も居るせいで今や地獄のカオスっぷりがひどい。しかも全員が「自分が正妻」と言い張る始末。本人が召されたためどの子が本当のご子息なのか確認ができないでいる。
つまるところ混沌がカオスを呼びカーニバル開いてる感じである。もはや祭り。
だがもう、事実がある時点で時すでに遅し。いくら騒いでも意味がない。
だがそれでも部屋の中で恨み言を吐く神が一人いる。
「あ~~~~~~~~~ッ!!あの地獄王!!マジで嫌悪する!憎悪が湧く!!内臓抉ってひき肉にしてやろうかアアアアアアアアアアン!!?」
あ、やべ。妹が暴走気味だ。止めないとまた部屋が廃墟になる。
妹は復讐神であるが故のとてつもない執念がある。怒りと憎しみで形成された力が何度僕の部屋を粉砕したことか・・・・。
不意に妹が強く地面を踏みしめる。すると妹を中心に床に亀裂が入った。やばいな、本当に止めないと神界で地震が発生する!僕の部屋が壊れる!可愛い妹が般若になる!ダメだ!最後のだけは絶対に避けなければ!!
どんどん般若のような面構えになっていく妹に僕は無我夢中で叫んだ。必死である。僕の方が齢も長くて先輩だし最高位神なのに、必死なのである。くッ、これが妹を持つ者の宿命ってやつか!!
「仕事終わらせたら遊びに行こうか!!と言うか、行こう!!マジで!!あぁ、僕が行きたいんだ!!」
僕の声が届いた瞬間、妹の覇気が収まり、とてつもない笑顔を見せた。あの般若のような絶望メイクからは想像できない程に良い笑顔だ。
「いいの・・・?」
「―――――――うん(むしろ『うん』以外の選択肢がなかった)」
「やったー!!じゃぁ、私は仕事に行ってきます!!ぐへへへへへ、創造神様とデートだぁ。えへへへへへ、じゅるり。おっといけねぇ、涎が・・・・」
舌なめずりをしながら部屋を出ていく妹を見送る僕。とりあえず部屋崩壊の危機は去った。・・・・僕はデートで何をされるのだろうか。妹って怖いな――。でも可愛いからいいか(思考放棄)。
その後、僕は死に物狂いで馬鹿の残した仕事をやる羽目になった。・・・・帰ってこい!蛮勇神!!




