獣人国に行ってみました。
獣人国ファムルス、そこは”獣人”というジャンルの人間が暮らす王国だ。異世界的な方面で亜人と言う言葉を聞くが、獣人と亜人は全くの別物という設定になっている。獣人は犬や兎、熊やアザラシなど、地球に存在する生物と人間の融合体だ。逆に亜人と言うのはおとぎ話や神話で出てくる動物と人間の融合体みたいな種族の事を指す。
で、だ。
この国ファムルスはそれこそ何度も革命や反乱で政権が変わっているが長い歴史を持っている。しかし国の技術や医療体制がガタガタで今なお発展途上国である。
それは何故か?それは人間の白人と黒人みたいな関係によく似ている、言わば差別問題が主な原因だ。
”獣人”という種族は宗教上では『魔界からの侵略者がこの世界で生きられるように亜人を真似した姿』とされている。宗教色の強い『Brave☩Innocent』の国々はそう言った話を心から信じる人間が多いため、”獣人”は差別、排除、殲滅の対象となっている。それゆえ、各国に援助を申し込んでも門前払いされるから未だに発展途上国なのだ。
逆に亜人は差別されないのかというと、まったく差別されないのだ。むしろ”亜人”は尊敬の対象になることが多く、頼まなくても勝手に各国が無償の援助を行うのだ。それも全てが『宗教』という醜悪な鎖に縛られた故の行動である。
だがしかし、だ。
世界は流転する。時が流れるに連れて人々も考えが進歩し始めるのだ。今は少数しかいないが獣人差別をなくそうと考える者が出てきたのだ。
その中でも我先にとファムルスに相互不可侵平和親交条約を持ち込んだのがウチの親バカ国王アンセムこと、ガラシア王国だった。ガラシア王国は世界でもトップレベルの戦力(物理)を誇る脳筋で固めたような暑苦しい国だ。そんな有名国の進出を他国が(物理で)止められるはずもなく、あっさりと条約が締結された。ちなみに条約締結の時に『英雄創聖教』とむっちゃ揉めたそうな。
結果として、『英雄創聖教』をうまく丸め込んだガラシア王国はファムルスと年に一回交換小旅行をすることになった。
形だけだが存在する国際法にて記された、『各国は獣人国に対して援助を決して行わず、技術提供を禁止する。獣人はたとえ王族であろうとも自国に入った際は、自国の国教および国法で厳罰に処罰すること』をガラシア王国は交換小旅行という名目でうまく回避したのだ。
交換旅行や交換留学は国際法では『両国の王同士の承認で成立し、旅行、留学中での問題は出身国の法で裁くこと』とされているのでむやみに『英雄創聖教』も手が出せないのだ。ここまで計算してアンセムが行動してるとは到底思えないが、最終的には問題がうまく収拾されたといっていいだろう。
つまり、交換小旅行でガラシアの技術者を派遣して援助をし、ファムルスの技術屋に国の技術を学ばせる。差別対象の獣人は交換小旅行の肩書きでしっかり守る、そういうことだ。
説明が長くなったが、僕たち勇者パーティは交換小旅行で獣人国ファムルスの王宮に来ている。
発展途上国と聞いていると古くさい屋敷のイメージが脳をよぎるがそんなことはない。ガラシアの技術を取り入れた王宮は要塞とまではいかずともそれなりに戦える城だ。なんだよ戦える城って・・・。
王座は比較的新しく、床は赤い絨毯で敷き詰められている。
そして目の前には当代の王である、金色の大虎を想起させるようなイカツイ風貌の獣人が玉座に座っている。
「よく来たな。吾輩は、当代ファムルス王国の王、ハルトマン・レヴォリューション=ファムルスだ。今回の交換小旅行、大いに楽しもうぞ!」
そういってハルトマンは高らかに笑う。ファムルスは前言った通り革命と反乱で政権が変わりまくる実力主義的な部分があるので『第何代国王~』となることはほとんどない。それゆえ、「当代」と名乗るのである。
・・・確かに楽しみたいのはやまやまなのだが問題がある。
『その問題とは?』
ウチは『英雄創聖教』というクソ宗教が国教になっている国だ。技術者の類の大抵の人間は「宗教?知らんがな」みたいな感じで種族構わずすぐに打ち解ける傾向にあるが今回来たのは勇者である。
勇者もといヴェルトリッヒ=カルヴァ―ンは根っからの『英雄創聖教』の信者だ。『英雄創聖教』の視点から見ると、「獣人は悪だ!!」という根強い固定観念が存在するため、それに憑りつかれた勇者が差別的な発言や行動をするかもしれないという不安がある。
だが、『Brave☩Innocent』では勇者の言動に差別的な要素が含まれているかというと答えは否だ。
それでも、だ。
ここは現実世界。ゲームの内容とほぼ同じような世界戦だからと言って安心するべきではない。いつ、大どんでん返しが来るのかなんて予想できないのだ。
勇者がその口をゆっくりと開いて言葉を放つ。
「此度は我々をお招きくださり、誠に感謝しております。俺はガラシア王国の冒険者にして勇者、ヴェルトリッヒ=カルヴァ―ンでございます。短い期間ですがよろしくお願いします」
深く一礼をして、再び膝をつく勇者。・・・よかった、なんも差別的なことは言ってない。完全にゲーム通りの受け答えだ。逆にそれが恐ろしいが・・・。
僕が勇者の態度に戦々恐々としていると、次々にパーティメンバーが名乗りだした。
「私は当代ガラシア王国の次期女王、リピア=ガラシアですわ。勇者様の補佐をしております」
「ボクは伝説の大英雄にして、真なる勇者、エバーズ家の末裔、レイブン=エバーズだ!」
「僕は、マルク=ファットリ―です。パーティの内政官のような役割を担っております。今後とも、我ら勇者パーティをどうぞよろしくお願いします」
全員がそれなりに敬意を払い、深く一礼する。僕とキルエルはその光景に愕然としていた。
嘘だろ!?毎日がエブリディ、危険が危ないみたいな癖が強すぎて逆に癖しかないような奴らがそろいもそろって礼儀を払っているだと・・・・ッ!?その態度を僕にもしてほしいけどなぁ。
まぁでも、だ。奴らが礼儀を払うのだから当然僕も礼儀を払うべきだろう。
僕はこの国の出来上がりに乗っ取り、拳を作った左腕を掲げる。そして勢いよく右足を踏み込み同時に拳を心臓に強く叩きつける。
そして、腹から声を出す。
「僕は百鬼夜行を従える長、キルエル=ヴェルモンドだ!!此処に僕の存在を宣言する!!」
『Brave☩Innocent』でキルエルが実際に言ったセリフだ。僕の好きなキルエルの台詞上位に入る。
僕がそう発言してから数秒が経過する。ふと周りを見ると僕以外のパーティメンバーが僕をすごい目で睨んでいた。マルクなんて「早く謝れバカ!」と小声で言っている。何故や?
だが、パーティメンバーの重苦しい圧とは違い、ハルトマンはこらえるように肩を揺らした後盛大に笑った。
「がっはっはっはっはっは!!!流石はアイツが言った通り、とんでもない奴じゃわい!!こりゃ、たまげた!!」
殺気の張りつめた雰囲気が沈静化していく。いや、訂正しよう。雰囲気は無くなったが殺気はある。ビッキビキに僕に集中放火されている。解せぬ。
ちなみに今さっきのポーズはハルトマンが革命を起こしたときに決めた『存在意義の証明』を意味するポーズであり、今ではほとんど使われていない古語みたいなものである。決して差別的な意味合いは含んでおらず、むしろカッコいいモノだ。
ハルトマンは大笑いした後、ちょっと申し訳なさそうに僕たちに言う。
「さてさて、盛大に驚かせてもらったが、ちょっと闘技場の準備が遅れていてな。おもてなしにはまだ時間がかかる。その間に勇者パーティは我が国の町を観光してもらって構わない。13時までにここに集合だ。その間は自由時間だ。まだ革命戦争の跡が残っているが景観は悪くないとも。ぜひとも見ていってほしい」
急なハルトマンのお願いの圧。「観光してくれ」という念が強い!!
何にせよ、自由時間である。やっはーっ!!
S S S S
さてさて、まずは何をするべきか。
ファムルスはそれこそ何にもないと思われがちだができることはたくさんある。
もちろん観光以外にもある。というか観光以外しかないまである。
なぜ観光を勧めたのだろうか・・・。
王宮周辺はそれこそガラシアほどではないがデカい建物や飲食店で賑わっている。草食、肉食、雑食、関係なくあらゆる獣人が街に居るのだ。
「でも、僕の目的はソコじゃぁない」
確かに革命してから数年しか経っていないにもかかわらずここまで大きな商店街を造れるのは凄まじい人望と統率力、復興力が見て取れる。
だが、ソレはココまでだ。
僕は商店街から大きく道を外して裏通りを進む。今さっきまでの明るさは存在しない、裏側の世界。
”革命の跡”たる意志と破壊後を集結させたような、とてもあの明るさからは想像ができない穢れの世界が、そこにはあった。
どこを見ても荒れた土地、売っているものはどれもこれも違法なモノばかり、腐臭と死臭がそこらに悪意とともにばら撒かれていて、誰かの泣き声と叫び声が常時聞こえる。さまよう住人は全員が生気のない顔をしながらふらふらとしている。
まさに地獄の具現化。革命戦争の勝利の陰に潜む、凄惨たる犠牲がそこにはあった。
キルエルのハルトマンに対する自己紹介の仕方はガラシアでは『自分の存在価値は君より上!』という意味になります。




