古龍戦線《2》《ジォス視点》
「グゥ、オオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!!!!」
口から黒い煙を出し始めた古龍が俺らに向けて上級全体攻撃魔法を繰り出してきた。
疑似太陽を受け止めてまだ余力があるとかお前バケモノじゃねーかって話だが、そーなると俺の次の技は水素爆弾か陽子崩壊か、ひっくり返した事象の地平線のどれかだがどれも環境破壊しちまうし、下手すると俺が火傷をしてしまう。
「疑似太陽だけで勝てねーかなー?ってかいつになったらアレは倒れるんだ?」
「いつになったらイドは自分が人間ではないことに自覚を持つようになるんだ?」
独り言のつもりがなんかアンプログリッツに質問で返されてしまった。
しかしまー、あんときみてーに閻魔帳引っ張って来るのも面倒臭ーし、なによりアレを使ってからか、世界の概念的なものが少しずれかけた。
「変に世界の維持しきれねー力を出すもんじゃねーよなー」
「むしろ何故イドの存在が許されているのか不思議でならない。拒絶されて弾けてもいいころ合いじゃないかと思うのだが・・・・」
「物騒なこと言うなよ。後、話の途中だから魔法はやめてくれねーかなー」
俺も流石に上級魔法の曲芸は見飽きているのだ。
だからまー、アレだ。
「常識が欠けてる」
俺が言葉を放った瞬間に、ドラゴンの魔法の一切が空間から切除されたよーに消えた。
おもしれーくれーに、あっさりと。
「な―――ッ!!?」
原子を足場に宙に立つアンプログリッツが驚愕に染まった表情で、俺とドラゴンを見比べる。
それで出てきた問いが――、
「何をしたんだイド?今さっきのよく分からないのは、一体―――??」
「いや別にたいしたことじゃねーよ。間違ってるが正されるのはよくねーことじゃねーだろ」
実際、俺はあの魔法に「常識が欠けている」と教えてやっただけだ。そしたら勝手に消えた。俺は別に何もやってねーんだから、俺に聞くのが間違いってもんだ。
「全く、こんな健全で良識のある人間が他の人間と喋ってる時に攻撃とはねー。一体何を学んだのやら。古龍って昔からいるんだから社会性ってあると思ったんだよなー。ねーとここまで生きてこれてねー」
「・・・」
「全く、魔力は魔力で常識がなってねー。そ―思うだろアンプログリッツ。話しできる時点で真面だぞお前」
「褒められても、何に対して褒められてるのかイマイチ分からんな。―――それより」
そっとアンプログリッツが視線を古龍に向ける。
「これだけやって倒れぬとはな・・・・、何かしらの小細工があるのではないかと、我は思うのだよ」
実際、アンプログリッツの発言は的を射ている。
確かに俺的にもアレ相手に攻撃を当てても”手応え無し”って判断が出るだろーなー。
古龍。
茶色と白で分けられた体表には打撲と、口からは焼け焦げた黒い煙が出ている。
「正直雌だからステータスプレートも見えねーし、正直手合わせの強さとこの生命力は別物だと考えた方がいーよなー」
俺が思うに、この古龍は元のステータスとは別の力が混じっているのだ。
普通なら消し炭になる疑似太陽では火傷程度。アンプログリッツの攻撃も致命打には至らない。
「・・・・これじゃー、キルエルの為に古龍ぶっ倒して応援に行けねーなー・・・・」
「まるで神の力を纏っているかのようだ。・・・長への応援を邪魔するかのような、・・・時間稼ぎか?」
アンプログリッツが態勢を立て直し、再びこちらに向かって歩いて来る古龍を見て呟いた。
その疑問を含んだ声に俺の脳裏に閃光が走った。
「――――まさか!そー言う事なのかッ!!?」
「どうしたイドよ。何か気付いたのか?」
「――――あー、クソ。そーかそーか、道理で、なるほど。そー考えると、確かに色々辻褄が合うよなー」
俺の想像に過ぎねーが、この古龍ってのに”主人公補正”って奴の一端の力が宿っている。それも、HPに全振りしたよーな一部分の強化だ。
目的はおそらく、キルエルに応援に行かせる俺達の邪魔だ。
「ゲームじゃ、キルエルの詳細は出てこなかったけど、あの後の”出来事”があるんなら、そうだよなー。・・・・それは、世間が許しても俺が許さん」
「・・・・?」
俺の決意にアンプログリッツが首をかしげる。
そんなアンプログリッツには少し荷が重いかもしれねーが、・・・・だが。
「アンプログリッツ」
「なんだイドよ」
「俺ちょっと行ってくるところがあるんだが、此処を任されてくれねーか?」
「それは長に関係が・・・?」
「あー」
俺が首肯すると、アンプログリッツはその凛々しい顔を古龍に向ける。
そして同時に義手の掌が動く。
「『魔弾』」
――瞬間、アンプログリッツの周囲に幾万の、破壊を内包した光の球が出現する。
無言にしてその攻撃意思を表現する義手の腕が真横に振るわれる。
ソレを合図に破壊の光が白い軌道を描きながら古龍に向かって放たれた。
「行け。―――長を頼む」
「あー、任された!」
肉どころか骨すらも削り取るよーな甲高い音を響かせながら、流星群の如くキューラが破壊と閃光を撒き散らかしながら古龍の姿が埋もれていく。
そして同時に俺もまた動き出した。
中性子すらも内側から崩壊させるほどのエネルギーを溜めこんだ蹴りを空気中に放ち、そのまま空中を高速飛行する。座標を飛ばすよりも現実的に言えば、コッチの方が断然速いんだ。
「待ってろよキルエル・・・。正直、今のアイツらじゃきびしーはずだ!」
S S S S
見た目通り、状況はかなり深刻だった。
どこぞのクソ野郎が何か細工をしやがったのか、モンスターの群れが方向転換をして町中になだれ込んでいた。
王都の城下町は見る影もなく数の暴力で叩き潰されており、あちこちから火の手や黒煙が上がっている。無論人も見える訳だが、瓦礫に埋もれた人間は男女共々息が絶えている。
「流石に男のためとは言え、創造神の約束に背くのは・・・ダメだな」
時間遡行をするために動いて演算をしていた脳が計算を中断する。残念だが、今の俺には手を合わせる事しか出来ねー。
それと、だ。
立ち上る黒煙の中、二人してモンスターを捌いている人影があった。
黒髪男子に、兄妹と見間違えちまう黒髪女子だ。
黒髪男子は魔法と剣を扱って、確実にHP、防御力関係なく声明を絶つモンスターの首を跳ね飛ばしている。
女子の方はその男子に死角から近づくモンスターを弩のよーな威力の籠った一撃で抉り取っていく。
だがそれでも二人で捌くのは無理があるか、ちらほらと生き残りモンスターが二人の修羅を潜り抜けて、さらなる蹂躙を城下町に持ち込もーとしている。
「今はちょっと体裁を保ってる暇はねーか」
なので彼彼女らの撃ち漏らしを片すべく、俺もまたちょっと禁忌に触れるギリギリのラインを沿って行動をする。
「モンスター特有の脳波を解析、計算して、喉の調子を合わせて・・・・」
コリコリと俺自身の首元を指でなぞり、発する声の”波の形”を創り上げる。
日本でもあった、超音波で害獣を追い払う機器。アレに俺独自のオリジナリティを加えた至高の一品。ちょっとモンスターの脳波に異常を来たせて脳死状態にするだけの眉唾程度の音波兵器だ。脳を自ら支配して蘇生する意思の強い奴だったら効かねー小技だが、大体の奴はこれでぐっすりだ。俺も試したことあるが、間違いねー。
空気を吸いあげ、思いっきり音波の型に当てはめて即噴射する。
「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン」
特定の音波なのでキルエルとノゥアの戦闘に支障は来たさねー。モンスターの脳だけをバグらせる変わった芸当だ。
そして反応はすぐに出る。
建物を破壊し、住民を追いかけ、瓦礫の隙間に巣を作り始めるモンスターが狂笑をしたかと思うと、突然何の前触れもなくぶっ倒れたのだ。潔い眠り顔だ。
俺が空から地面に着地すると、粗方のモンスターは倒れていた。なんならキルエル達が相手取ってたモンスターまで眠りについている。
「割と効果あったな・・・・」
むしろモンスターに眠り耐性が付いて無さすぎではなかろーか?根性が足りてねーですな。




