未然に防ぐ。
「なんか天然クソ姫、ジォスの事知ってそうだったけど、ほんとに何も知らないのかい?」
「むしろ聞くが、俺に心身女の子してる知り合いがいると思うか?」
「・・・・・・・ないな」
「だろー」
答えが見え透いている質問だったなと、ダンジョン『赤き闘神の聖堂』前にして僕は息を吐く。
――大規模侵攻『狂乱暴徒』。ソレが第4章で起こる事件だ。
勿論自然現象ではない。完全にジャウール教の仕業である。なんなら一部ギルドも混ざっているため、実質全人工的事件だ。まったくこの国はどうなってやがるんだッ!?馬鹿しかいないのか馬鹿しか!!国内からテロの共犯を出すんじゃねぇッッ!!!
でもまぁ、起こされてしまうのならば仕方がない。ならば僕らは全力で近道を辿って主犯を処理して、面倒くさいアレもぶっ倒すまでだ。
「まぁここまで来たわけだけど、ジォス。見えるだろう?ほら、このダンジョンの奥の方」
「あー分かるぜ。黒装束の男が13人。女は素粒子の動きからして10人か。コレ全員ジャウール教じゃねーか」
「あぁ。ジォスも知っての通り、今回の狂乱暴徒は4つのダンジョンと1つの山を源泉に起きる訳だが、僕らはその源泉4つを潰す」
僕は読芯術の応用、『空間把握』で、ジォスは素粒子の流れでダンジョン内部に潜むジャウール教徒を捕捉する。
「しかしどーすんだ?4つ?5つあるんなら祈祷が無駄になっちまうだろー?」
「あぁ、ソコは問題ない。ほら、彼が居るじゃないか?」
僕がそう言うと、ジォスは「あッー!!」とか野獣のような声を上げて掌をポンと打つ。
「あー、そーいやそーだったな」
と、ジォスと僕が後ろを見ると、ソコには超絶不満顔の中二病が居た。
「我だけおいてけぼり・・・・・」
シュンと項垂れるアンプログリッツって可愛いなオイとか思っちゃった今日この頃。
可哀そうに、アンプログリッツは何も知らされないままここまで忠実に付いて来てくれたのだ。ホント、むっちゃ良い奴なんだけどなぁ、性格と人格と生き方に難があるせいで中々コイツの良いところが分かってもらえていない。ゲームでは存在意義があるんだけどな。ゲームでは。
アンプログリッツは左手をポケットに突っ込みながら義手で頬を隠している姿勢を取っているのだが、どうしてか哀愁が漂っていた。
まぁでも仲間外れも此処で終いだな。
「すまないねアンプログリッツ。コレはかなり極秘案件でね。話すタイミングがつかめなかったんだ」
「―――ほぅ。他者に聞かれるのが不味い案件か。ソレならば仕方ない。我とて組織の上層部の芯の意向は知らされていない。無暗に友情論を掲げるクソではないからな」
「この案件は僕とジォスしか知らないモノだけど、―――アンプログリッツ」
「安心しろ長よ。我はもう既にアングラに身を落とした悪党だ。所属が変わった程度で我の方針が変わるとでも・・・?」
「なら良いんだ」
僕はうんと首を縦に振る。
アンプログリッツを信用していない訳ではない。僕の中での中二病のイメージが結構アレ(大声で秘密を暴露しながら格好いいポーズを取る系)だったので一抹の不安を感じたのだ。
僕はジォスにアイコンタクトで確認を取る。
「(大丈夫だとは思うけれども・・・、どうだろうか)」
「(安心しろキルエル。アイツはあんなナリだが言ってることはホントだ)」
アイコンタクトを取ったら、ジォスめ。僕の脳内に直接ダイレクトメッセージぶち込んできやがった。だがまぁ、安心はしていいようだ。
僕はふぅっと息を吐いて、アンプログリッツに事の次第を説明する。
「今から、ジャウール教と一部のギルドによる同時多発テロ、『狂乱暴徒』が起こる。場所はこのダンジョンと他の3つのダンジョン。あとは1つの山。山に関しては4つのダンジョンと違って『狂乱暴徒』”は”起こらない。別のヤバいのが出てくる。――僕らが今からやることはジャウール教の撲滅。『狂乱暴徒』を未然に防ぐことだ」
「なるほど。理解した。つまり、我は他のダンジョンに居る奴らを処理すると・・・」
「あぁいや、もっと簡単な方法がある」
「?」
僕はアンプログリッツに目配せをする。
アンプログリッツは「いつでも」とだけ返事を残して、いつもの無表情に戻る。
そして―――、
僕は魔法の言葉を放った。
「撃滅命令」
《ヒィンッッッ――――――――ッッッッッドン!!!!!!》
言い終わった直後に目の前のダンジョンが跡形もなく消し飛び、その余波が僕らの全身を叩いた。
まるで隕石でも落ちたかのように、一瞬の赤い閃光がダンジョンに落ちたかと思えば、強烈な爆発音と破滅音が空気を揺さぶり、吸ったら身体に悪そうな煙が周囲に無造作にばら撒かれる。
ソレだけでない。
粉塵と溶岩に塗れたクレーターが、ソコにはあった。
武道館並みの面積はあるだろう大きなクレーター。
どれくらいの速度で落ちるのかまでは僕にもよく分かっていない。だが、少なくともクレーターを作り、灼熱の溶岩を生み出す程には威力はあったということだ。
衝撃波とその爆音が僕らを過ぎ去ると、そのクレーターに居たアンプログリッツは平然とした表情で黒装束の塊を蹴つる。
「ふむ。この程度かジャウール教徒は。”教団”と聞くと委員会を思い浮かべてしまうが、アレと比べるといくらか見劣りしてしまうな」
「未完成状態の『魔隕』でコレか・・・。ゲーム版じゃ発動してもすぐに地形が元に戻るから影響とかよく分からなかったけど・・・・」
「言いてーことは分かるぜキルエル。現実で見て2度目だが、道理で無改造で環境取れるんだなーって思ったわ」
ジォスが「すげーすげー」と手を叩きながらはしゃぐ。
確かに無改造で環境を取るくらいには”大魔導”の使い手と言うのは強い。使い手が限られていて、そもそもの”大魔導”自体が自己完結型の技と言うのもあって、需要はとても高い。僕も動画でネット対戦動画をよく見ていたが、やはり大抵のデッキにはアンプログリッツなどの”大魔導”使用者が使われていた。
だがなぁ、廃人を越えて神になりつつあるゲームプレイヤーの僕からすると見慣れた光景過ぎてつまらない。
「安定性もあって、同時に爆発力も存在する。強いには強いんだがどうにもしっくりこない。インフレだって指向性を与えればロマンになる。本来の環境はそういうモノがあってこそだと思うんだけどなぁ」
「仕方ねーよなソレは。廃人育成って数か月とかじゃなくて年単位なんだろー?だったら育成をテキトーにして属性一致パとか作った方が早いって皆思うんだろーな」
・・・・・。
僕は無言で頷く。
ゲームは日常の中では娯楽的立ち位置だ。その立ち位置は変わらず、不動である。Eスポーツでも同じで選手も毎日ゲームをやっているわけではない。賞金と生活費が見合ってない上、国際大会もあるから外国語の勉強や体づくり、健康な食事も欠かさない。ゲームだって、やりこんでいる様にも見えるが、決して縛りとかはせずにただひたすらにコンボと効率とハメ技の練習だ。
ゲームをずっとやる奴なんていないのだろう。ソレも、真面目に。
もし、僕が改訂版をやっていたなら、ソレはもう本気でやっていただろう。ナイアシンの害悪パでもなければうにゅら虫オーラのチートパでもない。ソレこそ、全員『火・王・竜属性』持ちにしてコルラブラムとルシアーヴを覚えさせて、『炎天下』と『王の領域』で火力上げをしつつ、『魔法防御無効』や『貫通』で防御面を突破しつつの『有為転変』の相手の属性転換、『原点回帰』で魔法属性を無にしたりで色々と・・・・。
「キルエル、考えてるトコ悪ーが、そろそろ別の所行かねーと」
「あッ!!・・・・そうだったそうだった。おーい、アンプログリッツ。次の所行くよー!」
「御意」
僕が手を振ってこっちに来るように言うと、アンプログリッツは頷いて此方に歩みを寄せる。
一歩を踏み出した瞬間、その一歩が僕の真隣に来た。
「・・・・・・」
「長よ、次はどこへ?」
「何したんだ今」
「座標移動だ」
平然と答えてくれるが、僕の頭の中にある『座標移動』とは違うことに驚きを隠せなかった。僕の想ってる『座標移動』は国が単位だったし、ルビも”座標移動”ではなく”座標移動』だった。
少なくとも僕とアンプログリッツの距離は20m以上。コレを一瞬で詰めるとなると、ソレはもう異世界転生小説の主人公なんだわ。
じゃぁつまり、この技自体がオカシイと言う事である。
「どうやってそんな事してるの?」
「コレはあくまでも練習だからな。未完成状態ではあるモノだが、簡単に言えば自分を分かりやすい記号に置き換えて、新しく座標に書き加えることで成り立っている。まぁあくまでも見よう見まねでやったモノだ。本家はもっと凄いぞ」
「ふむ。・・・・ジォス、君だな?技を伝授させたのは」
「何故分かるッ!?」
僕の名推理に瞳孔を開くジォス。少なくとも、何故自分が当てられないと思ったのかが疑問に残るが、ソレは関係ない。
「”重力が仕事をしていない隙に動く”と言うパワーワードを生み出した奴がナニ言ってんだ?」
「重力が仕事をしてないってなんだッ!?」
アンプログリッツの突っ込みがとても真面だと思いましたよ。当然の反応過ぎる。
ホント、”重力が仕事してない”ってなんだ?
とりあえずして、考えることをやめた僕は瞬間移動らしきことをしたアンプログリッツに言う。
「次はジォスも知っての通り『(元)阿修羅観音保管場所』な訳だけど、準備は済んだかい?」
「ならソコまでひとっ飛びだなー!」
「は?」
僕が確認を取ろうと声をかけた直後だった。
世界が暗転した。
感想・質問ありがとうございます。
Q、もしジォスvsアカシックレコードしたら結果はどうなりますか?
A、言わずもがなアカシックレコードが瞬殺されます。どんな手を使っても負けます。作者の僕ですらこのキャラ設定作った後「なんだこのゲテモノ!?」となり、理解を諦めましたから。
Q、なんで中世に「不動産」があるんだよ!お前ら平気で誤植を放置すんじゃねぇ!!
A、そもそもの話、この小説の舞台のモデルは中世じゃないです(作中に”中世”の文字は出てきておりません)。「異世界=中世」は普通に偏見でございます。じゃぁどこがモデルですかと言われても、この作品がフィクションなのでモデルは存在しません。
Q、ジォスは何者ですか?
A、作者が昼間に深夜テンションで生んでしまった恥とバグの狂気の産物でございます(メタ的に言うと)。
残り書き溜めが30000文字分くらいあります。作者は最近勉強に追われていて、心が疲れた時にしかなろうを開かないので、次投稿するのはいつになるやら・・・。最近過去問でしか文章書かないから頭と指がなまってきちゃいましたよ・・・。
もうちょっと頑張ってきますかな・・・。




