仲間になりました。
一瞬にして視界が暗くなったかと思えば、今度は明るくなった。
「ここは・・・?」
僕が居るのは飲食店の中ではなく機械仕掛けの城の中だった。日本の科学技術の先を行っているようなコンピューターがギチギチに詰められたようなハイテクな部屋だ。
「『魔界』か・・・・」
こんなハイテク過ぎる科学技術は『Brave☩Innocent』でも『魔界』でしか見られない。ゲーム内でも思わず「うおおおっ!!」とか言っていたが、現実世界でとなるともはや何も言えない。代わりに「みょーん」と言う謎の溜息は出た。
『魔界』と言う単語を聞くと魔神や得体の知れない怪物が犇めく世界を想像する人がいるかもしれないが、『Brave☩Innocent』ではそんなことはなく一般概念に通ずるような異形はほとんどが動物扱いでこの『魔界』を支配するのは現実世界と同じ『人種』なのである。
「人間が一番怖い、か・・・・・」
ついついエクストラミッションでキルエルが口にした言葉を言う。こんなハイテクでキラキラしたような世界が『魔界』と呼ばれる理由が分かってしまったからだ。
ちょっと部屋の中でも漁るかぁ、と僕がその場から一歩踏み出した時だった。
「おう、待たせたな」
どこからか今さっきの青年が現れた。隣には少女もいる。僕は恐怖でその場を動けなかった。すると目の前の青年が髪を掻き揚げると面倒くさそうに息を吐いた。
「別に殺すなんて物騒なことはやらねぇよ。ちょいと隣の『器』がお前に言いたいことがあるらしくてなぁ、・・・・おいさっさと言えテメェ!こんなところで人見知り発揮するんじゃねぇ!!顔を埋めんな!は・な・れ・ろ!!」
隣の少女はフードで顔が見えないにも関わらず青年の服で顔を埋めようとしていた。青年が服から少女の頭を取り出すと僕の目の前でフードを外す。っていうかフードを強引に破ったという表現が正しい気がする。
少女は両手で顔を隠していたが急にバッと両手を外し僕を睨みつける。
「あなたにはスパイになってもらいます!」
「ばっか!違ぇだろぉが!!」
青年が少女の頭をスコーンと叩く。そしてやれやれと面倒そうに若干引いている僕に対して一言。
「お前の住んでいる世界が崩壊するから『器』を手伝ってほしい」
「え?」
「手伝ってくれればお前とお前の大事な人をこの世界に迎え入れよう、っつぅ話だ」
「え?」
同じ反応になってしまった。やべぇ、話が急すぎてどう反応すれば良いのか分からねぇ。この世界が崩壊するという話に関しては僕はまだ知らない。でも攻略本を何冊も読みなおし、漫画も映画も小説も見たこのゲーム知識で言わせてもらうなら当てはまることがある。
「その崩壊は七年後ですか?」
僕がそう尋ねると青年は口角を歪めた。おそらく正解なのだろう。だが、このキャラがいるからこそより謎が深まる。
「その、・・・・ヴァイロン=インペクターさんが特攻かければ世界なんてすぐ滅ぶんじゃないんですか?」
目の前の青年、ヴァイロン=インペクターは『Brave☩Innocent』の中でも『神』類のキャラの次に強いとされるキャラであり、そのレベルは脅威の19090。カンストのレベルが99999(更新データの追加時)だが今の僕では到底太刀打ちできないほど強い。
その現時点での最強格であるヴァイロンは「ほう」と感心したように笑う。
「面白ぇ考えだが、・・・何故そう思う?オレ様が特攻かけたら滅ぶっつぅ理由がいる」
「少なくとも経験論ですかね。後はヴァイロンさんのスキルと加護ですかね。『反射100%』『ゴースト化100%』『無敵化』『瞬間移動』『次元幽閉』『次元斬撃』。加護は『暗黒大帝の加護』『時空神の加護』『魔族の加護』『悪意の加護』」
見るからにチートみたいなスキルと加護。圧倒的ステータスはこの世界の神でもない限り対抗するのは難しい。実際にゲームで使うとそれはもう『神』類戦以外ヌルゲーと感じるほどに強い。
僕がヴァイロンと同じくらいの笑みで言うと「ハンっ!!」と鼻で笑われた。
「たかが10歳前半でオレ様の強さを当てるとか勇者の格じゃぁねぇ!!ククク、そうだ。確かにオレ様なら一人で日帰りの殲滅ピクニックに行けるんだが誓約のせいで動けねぇんだ」
誓約、・・・・・?なんだそれ。ゲームでは勇者目線でストーリーが進行していたからな。キルエルがどうしたとか、全然分からねぇ。
「ある程度の干渉は許されてるんだが、・・・・簡単に言えば、一部世界の地形を変えるくらいなら大丈夫なんだが全部一掃とかは出来ねぇってことだ」
あー、ね。確かにストーリー終了後に明らかに「お前ならラスボス行けただろ!!」って思う奴がちらほら出てくるんだよなぁ・・・。多分、世界の設定的に動けないとかじゃないのかな。
「つまり、・・・ヴァイロンさんでは駄目だと」
「そういうことだ。まぁでも今回のことに関して言えば隣の『器』の一族がケリを着けるっつぅ話だからな。オレ様は巻きこみたくないから介入しないでくれって先代にも言われたし、結局介入できないんだがな、誓約で」
クククク、とヴァイロンは笑う。『器』、・・・もといこの少女の一族が関係してるのか。この少女、見たことないけどどことなくラスボスの『崩壊の因子』に似てるんだよなぁ・・・。誰だっけ?
僕が興味深そうに少女を眺めると、少女がまた両手で顔を隠す。
「・・・見ないで。恥ずかしい・・・・」
「あ、ゴメン」
「・・・・それで、私たちのこと手伝ってくれる?」
少女がその言葉を放つ。あ、そういえばそういう話だった。完全に忘れてた。
『どうする?手伝う?ミルを助けられるなら別に良いんだけど・・・』
うん・・・。おそらく僕がどっちについてもミルを守れることには大差ないかと思う。ヴァイロンが介入しないなら。でもコレ、こんなやり取りしといてただで帰してもらえるかな。
「あぁ、大丈夫だ。ちょっと記憶から一部分を切り取るだけで帰してやるよ。魔族はそういうとこ何かマメなんだよな。強制的に仲間にするとかオレ様じゃねぇんだから安心しろや」
「心読まないでくださいよ!!」
後、ヴァイロンさん強制的に仲間にするタイプだったんですか!?うわぁ、意外だ。
『で、どうする。僕としてはどっちでもいい気がする』
その崩壊とやらを起こすのはこの世界の魔族の王族?だろうし個人的な意見としては手伝いたくないんだよな・・・。それでも僕にはゲームオタクと言う名の曲げられぬ根性がある!!
『なんだその根性』
ずっと勇者視点でゲームしてたからな。・・・確かに、今のままレベル上げをすれば『崩壊の因子』くらいなら倒せるだろうけども、今の体はキルエルなんだ。この人生はキルエルのモノだが僕の人生でもある。『崩壊の因子』が魔族の王族?という情報があるのは知っていた。だが、目の前の『器』の少女がその『崩壊の因子』と関係があるのなら僕はそれを止めなければいけない。
『もしかして、ゲーム君って、・・・ロリコン?』
キルエルの何かゴキブリを見るような言い草は放っておく。それにキルエル、これは案外良い案件かもしれないぞ。
『・・・どういうことだ』
『真の勇者』のクエストでは最後にキルエルともう一人、別のキャラが仲間になる。誰だと思う?
『誰って、・・・・誰だ?』
『崩壊の因子』さ。それもバケモノみたいな見た目じゃなくて飛び切りの美少女だ!ちょうど目の前の『器』の少女に似ている。それがストーリー最後ではとても人間とは言えないようなおどろおどろしい見た目で出てくるんだ!!気になるだろう?なぜあんな人見知りの少女があんなバケモノになったのかを・・・・!!
『まぁ・・・確かに。魔族と言えど同じ人間であることには変わりない。そんな子が君の言うような怪物になるというのなら僕はそれを止めたい』
つまり、手伝いをしていけば何処かで密接に関わる機会があるかもしれないってわけだ。僕は彼らの側に着こうと思う。キルエルも、どうだい?
『合点承知』
よし!これで僕らの覚悟は決まった。僕は目の前の『器』の少女に向き直る。
「僕は、手伝います。世界の崩壊は聞き捨てならないけど・・・僕は出来るだけその崩壊を止めたい。でも無理だったら保険として恩を売っておくのもアリかな、と考えます。大事な人が居ますから」
11歳という設定を忘れずに言葉を選んだつもりだが変な言葉遣いになってないだろうか。そろっとヴァイロンの方を向くとククク、・・・と笑いをこらえるのに必死だった。
「ククククククク、・・・・・世界の崩壊も止めるし大事な人も守るか・・・やけに強欲な願いだが嫌いじゃぁねぇ。まぁ10歳くらいじゃぁそんなもんか。悪ぃな、ぴちぴちの幼児に聞くことじゃぁねかった」
「・・・・」
少女が困ったように首をひねる。そこにヴァイロンが指を立てた。
「どっちも欲しいってことだな。世界の崩壊は避けたい。でも大事な人は守りたい。・・・まぁ、妥協案が欲しいってことだ。あぁ、簡単に言うとだな、『器』のお前を守りたいが自分の世界も守りたいっつぅ感じだ。お互い折り合いをつけて何とかするってワケだ」
「・・・・なるほど」
納得がいったかのように手を叩く。その後じっと僕のことを見て数秒が経過する。
その後、うーんうーんと試行錯誤し、捻りだした結論を述べる。
「手伝いは歓迎する。でも、・・・世界の崩壊は、分からない。私には決定権がないから。ある程度、被害を小さくするとか害のない生物は殺さないとか掛け合って見ないと分からない。何か変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。でも、あなたの大事な人は守ってあげる。絶対に。それでも手伝ってくれる・・・・?」
掛け合う・・・か。決定権がないとしたら黒幕は少女じゃないのか。
・・・・それでも僕の意思は変わらない。
「あぁ、構わないとも。最後の最後まで足掻いてやるさ」
僕がそう言うと少女は深く一礼し、ハイテクな扉を開けて去って行った。
そんな光景を見ながらヴァイロンは若干引き気味で言った。
「本当に11歳の会話なのか・・・・?」




