共に地獄へ。
『煉獄鳳凰堂跡地』に行く前に、俺達はやるべきことがある。
ソレは―――”祈祷”だ。
どうやらガラシア王曰はく、自分たちにダンジョン攻略や冒険における手助けをしてくれるモノらしい。
―――「効能はやる気が上がったり、力が入ったり、足が速くなったり、動体視力が良くなったり色々ある。あのダンジョンはかなり強いモンスターがちらほら出て来たりするから、使わんよりはマシじゃぞ」
と聞いている。
祈祷を行える場所は”英雄創聖教本部”らしい。
「正直なところ、アソコ行ったのってもう2年近く前なんだよなぁ」
「私も時々王族の仕事の関係上時々行くくらいですからね」
「ボクのお眼鏡にかなう子は居るのかな?」
「なるほど。真の英雄であり伝説の勇者は多くの屑星の祈りの上に立つと言うのか」
「アムちゃんはこういうところ行ったことあるの?」
「ううん、私の所は戦争が激しかったからそういう聖堂っぽいところは壊されちゃった」
俺の後ろではマルク、レイブン、アリア、アムールがそれぞれ仲良く談笑している。
そんなこんなで俺たちは久々に英雄創聖教本部にたどり着いた。
S S S S
「マガツはよし、飛蝗脚・羽も大丈夫。雪国のブローチも無事だ。・・・・よし」
「どこに行く気だ我が長よ」
僕が出掛ける準備をしていると後ろからアンプログリッツが声を掛けてきた。
僕は特に隠す理由もなかったので素直に答えた。
「英雄創聖教本部」
「何故?」
「勇者パが居るからだな。僕はソコで合流して”祈祷”を受ける」
「祈祷とな・・・・。我の予想ではアレはかなり上位に君臨する冒険者パが受けることが可能とされるあの”祈祷”だと思うのだがな」
「うん、ソレであってるよ」
『祈祷』とは、勇者パーティが受けることのできるバフを授かる方法の事だ。
場所は大抵英雄創聖教本部。ストーリーを進めれば亜人の国でも同様のバフを授かるところがあるが、大抵のプレイヤーはガラシア王国の祈祷を受ける。
祈祷には主に下記の効果があるとされており、祈祷の種類によって威力も効果も違う。次の祈祷はガラシアで行う事の出来るモノだ。
1:攻撃力UP(1.2倍)
2:攻撃力UP(1.5倍)《条件:パーティ平均レベル200以上》
3:防御力UP(1.2倍)
4:防御力UP(1.5倍)《条件:パーティ平均レベル200以上》
5:素早さUP(1.2倍)
6:素早さUP(1.5倍)《条件:パーティ平均レベル200以上》
7:魔力UP(1.2倍)
8:魔力UP(1.5倍)《条件:パーティ平均レベル200以上》
9:『ジャスト』系統技を使いやすくなる。
10:モンスターから素材が多く取れやすくなる《条件:狩猟者一人以上》
とまぁこんなラインナップな訳だが、恐らく勇者の事だ。せいぜい攻撃力UPに振り分けてくるのだろう。ホントなら『ジャスト』技の使いやすさを上げた方が良いんだがな。
『ジャスト』体系は動体視力が上がれば上がる程、効能が高まる技だ。敵の攻撃時やひるみ時に、突然世界がスローモーションになるときがある。コレが『ジャスト』の前段階。このスローモーション時間は敵は何もできない状態になり、自分は好きなように動くことのできる状態に区別され、攻撃や防御を瞬間的に繰り返すことが出来るのである。
ダンジョン攻略やボス戦に挑むのであれば、基本的な攻略としては祈祷で『ジャスト』技の使用率UPを狙った方が通と言うモノだ。
僕は僕の知っている限りの全てのアイテムを詰め込んだ『時空魔力鞄』を肩にかけて、「ジォスによろしく言っておいて」と言い残して扉を閉めようとして、
――――――閉められなかった。
「・・・・・・・・何してるんだい?」
「我も行こう、我が長よ」
「はぁッ!?」
扉にアンプログリッツの履いていたスリッパが邪魔をして、扉が閉められなかったのだ。そして何の意図かと問えば返って来た答えはソレである。
「・・・・・・・」
呆れてモノが言えないとは正にこのこと。僕は数秒間停止した後、正常な脳の機能が戻るまでに1分を費やした。ソレでもアンプログリッツの奇行発言は理解できなかった。
「・・・・何で?」
絞りだした返答がコレである。いやお前呼んでないし、面倒くさいし、ついて来なくていいと言うよりかは付いて来るな!
そんな拒絶も含めて嫌そうに言ってやった。
だがやはりはキチガイ値に自由値全てを叩き込んだ中二病だ。考えていることが分からないだけあって、発言も正直意味分からんかった。
「長の行くところは大体が我も知らぬ新境地だと思うのだ」
「みょん?」
「何を言っているのか分からない、見たいな顔つきだな。流石の長でも全てを見通す真実の扉と結合の意志、超融合その先にある天地天獄を知らぬことはあるのか・・・?」
「実際マジで何を言ってるんだ?」
オイ、コイツ・・・。下手したらジォスよりも意味分からん奴なのでは・・・?アイツの場合会話の意味がないんだが、コイツの場合は独自の解釈を入れて話すから性質が悪すぎると言うか・・・。
僕は必死に目の前の中二病の生態系考慮して、先ほどの発言を読み解いていく。なんか変なヒエログリフ?禁断文字?とか使ってないよな?変な解釈入れた地獄みたいな文章だし、発言者の頭がアレだからその線もあり得ると考えて・・・・・・、そもそも何で僕がこんな奴の言う事をいちいち理解しようとせねばならんのだッ!?
やーめだ!やめ!と、僕は今さっきまで逆算をして会話文の法則性を理解しようとした頭のコマを忘却の彼方に投げ飛ばす。何が悲しくて中二病の思考をベースに考え事をせんとならんのじゃ!!
何もかもを理解するのをやめた僕の顔は、さながら仏陀だったと言う(ブッダに謝れ)。
「まぁ、良いか。勇者から変な目で見られるかもしれないけど、もう慣れた話だし」
「あぁ安心してくれて構わない。『撃滅命令』を唱えてくれれば、いつでも勇者パを滅ぼすことは可能だ」
「ジォスはイケるかもしれないけれど、君は無理だろうね」
「・・・・何故?傍から見ても、勇者は長より弱いだろう?才能に胡坐描いているクソではないか?」
「違うさアンプログリッツ。アレは、才能なんかじゃない。・・・・君が想像する以上に恐ろしいモノだよ」
「・・・・ほぅ、あんな正義気取りのクソ優等生クンがね。やっぱりクソだな。才能どころか人間性までクソとは救いようがない・・・・」
勇者をクソとはコイツも相当肝が据わってるな・・・。ま、本当だから反論はしない。むしろ賛同しちゃうぞ。さぁ、勇者嫌いで悪党大好きな画面の目の前の皆さん、ご唱和ください。基本勇者ポジはクソッタレだゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!
ふぅ~、まぁ?コレが最近のストレス解消の医療用法的な?ストレッサーは消えなくても溜まったストレスは消えるかもね。
アンプログリッツは前髪を掻き揚げて、左手を腰に添える。
「ソレならば、我が共に行った方が何かと好都合だろう?我は『百鬼夜行』に属する組織の一員『終末者』であり、反勇者思想である。ソレに、我が長を言われもない言葉で非難されることを防ぐためでもある。故に、我は共に行こう」
確固たる意志を言葉で表現し、僕の味方をする宣言をするアンプログリッツ。でも正直あんまり気乗りはしない。中二病一人を引き連れてクソ宗教本部に赴くとかどんな罰ゲームだよ!?みたいな話ではなく、ただ単純に前の経験のせいで仲間を勇者に取られたくないと言う本能が働いてしまうのだ。
―――アムール=エグザイル。
彼女もまた勇者パの良きヒロインメンバーに成り果てているが、元々は僕が実用戦闘に使えるように訓練や装備を与えた、言わば育成用キャラだったのだ。ソレがどうにもこうにも、何があったのかは全く持って分からないが、気づけば勇者パに居る始末。話しかけようとするも、彼女には僕が恐怖の対象として映っているようで、触れようにも触れられない状態に仕上がっている。
NT〇とはまた違うモノだと思うが(実際僕は無生物性愛者だから、アムールは恋愛対象外だった)、手塩にかけて育ててるキャラを取られると言うのは、本当に何かよく分からない虚無感があふれ出てしまう。
コレが廃人育成を経て生まれた強化キャラだったら、僕はそのキャラを持てる全てをつぎ込んで原形を留めないように処理するだろう。
「僕としてはあまり君を連れて行きたくは無いんだけどね・・・・・、嫌とか拒絶とかイタイとかは思うけれども、そんな事よりも経験則。君を失う気がしてならない・・・・」
勇者パが居ないなら別にいい(いや、良くない)んだが、残念にも行く先は勇者パと被るのだ。だからこそ、何かのコンタクトが勇者と取られてアムールみたく豹変されると困る。
僕はアンプログリッツを心配とも過保護とも言えないような、中間的な感情を感じながら、ソレでも一緒に来てほしくはないと言う思いでアンプログリッツを諭そうとする。
「我が身を案じようと・・・・?ソレは我が出向くことによって、何かの拍子に勇者が我が逆鱗に触れることを暗示しているのか・・・。ソレならば心配いらない」
「?」
アンプログリッツはどう解釈したモノか、僕の台詞とは反対に安心安全の言葉を吐く。
何を根拠にそんな事が言えるのか、中二病だから?なら仕方がない。とあやうく納得しか得ていたがしかし、アンプログリッツは僕の想像の域を軽く出るような発言を噛ましたのだった。
「なぜなら、―――――」
アンプログリッツの言葉と共に、閉まっていたクローゼットの扉が勢いよく開かれる。
「!?」
僕とアンプログリッツの他に誰が・・・、と眼を見開いてクローゼットを凝視する。
ソコから出てきたのは驚くべき、というかむしろ慣れた存在で――――、
「よー!キルエル!話は聞かせてもらったぜ。安心してくれて構わねー!俺も共に行くからなーッ!!」
「イドも共に行くからだ」
野生の世紀末キチガイ。――もといジォス=アルゼファイドが飛び出したのだ。




