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主人公補正なんてクソ喰らえッ!!  作者: うにゅら帝皇神
第一章 『憑依☩生活』
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試練しに行きました。

 よくよく考えたら、この『魔封じの腕輪』機能するのは魔力190までであって、それ以上の魔力を持つ者には通用しないのだ。つまるところ、僕はこの腕輪をしても意味がない。ただのブレスレットである。


 そんなどうでもいいことを考えながら僕はとある施設に足を踏み入れる。


 『ガラシア王国立英雄創聖教会』――――、ガラシア王国最大の教会で、面積は剣大会会場の2倍近くある。さらにこの教会には『魔物祓いの結界』、『悪魔祓いの結界』、『悪霊祓いの結界』が常時展開されており、該当する対象は入ることができない。地球の教会とは違い、この教会は一種の企業のようなもので、社長のような存在の聖職者がいる。この教会の仕事内容は教会支部の取り締まり、貴族、王族の病気や怪我の治癒。そして退魔士の斡旋などである。現在で言う病院と神社を合わせたような場所である。


 この世界の役割には『治癒術士』が居ない。その代わりに『聖職者』という役割が存在する。


 『聖職者』のやることは主に除霊や回復、結界の付与である。中には戦闘派『聖職者』も存在する。公式ネット動画では『聖職者』ヒロインを担当した声優さんが『聖職者』の攻撃力を超強化し、メイスでドラゴンに特攻かけたりと意外な使われ方をしていた。


 かくいう僕も『魔法使い』の攻撃力を『天災之冥龍剣』で超強化してボス戦やったことがあるので役割云々の偏見はほとんどない。『魔法使い』だから魔法!!じゃねぇんだ。『魔法使い』故の物理攻撃なんだ!!・・・僕は何を語っているのだろうか・・・。


 『緊張してると変な事考えるよな。いったいゴキブリはどこから沸いてくるのだろうか?とか』


 キルエルが「分かる分かる」と言いながら謎発言をする。この世界にはゴキブリが居るのか・・・。

 

 『でもまぁ、思っていたよりレベルが上がったと思うんだけど、ゲーム君からしてどう思う?』

 

 キルエルは詐欺師のような口調とは裏腹に不安の感じるようなことを言う。


 確かに、ゲームでは『勇者』に選ばれたのはヴェルトリッヒだった。キルエルはこの半年かなり頑張った方だと思うが不安は拭えない。僕のゲーム知識だとこの時の勇者のレベルは20くらいだったはずだ。活動時間も夕方までで、夜行動は出来なかった。まだ属性の話もサブクエストの話も出ていないはずなので高く見積もっても24くらいだ。

 対する僕はと言うと、24時間ずっと修行できてたのでレベルは33まで上がった。ただし、試練への不安からか精神力がマイナス方向に延びまくった。


 キルエル=ヴェルモンド(11歳 男 レベル33)

 HP599 攻撃力412 防御力404 素早さ418 魔力400 精神力-308 運5

 耐性:全属性耐性マイナス

 スキル:『根性』

 加護:無し


 この半年、僕は山奥に足を踏み入れ、―――そして死にかけた。


 どうにもこうにも村にある山のボスはミサイルサソリなのだと思っていたが、あれはどうやら弱い方だったようで、真のボスは密林を好むモンスターである『キングエイプ』だった。

 キングエイプは四本の細長い腕を持った猿型のモンスターである。大きさは1,5mと割と小さいが、侮ることなかれ。このモンスターはとある『スキル』を保有しているせいで討伐ミッションのおススメレベルは低レベル個体でも60は必要なのである。それほどまでにギルドを震撼させるスキルと言うのが、


 『呼び寄せ』:エイプを呼び寄せる。集めたエイプを支配下に置ける。

 『咆哮』:一定時間味方全員の攻撃力、防御力、素早さが1,2倍。


 である。エイプは二本腕の猿型モンスターで、素早さと攻撃力が高い低レベルモンスターである。一見すると弱く見えるだろう。だがこいつは群で来るとき脅威になるのだ。猿型であるがゆえの知能の高さと統率のとれた連携は非常に厄介極まりない。その上に、さらにキングエイプの『咆哮』で強化されるので余計面倒くさい。


 そんなヤツと出会ってしまった時は「運が無さすぎる・・・」と嘆いたものの、死闘の末に討伐成功。『受け流し』『カウンター』の連続使用で地道に数を減らして行き、なんとか殲滅出来た。その時に習得したのがこの『根性』。


 『根性』:HP1割以下の時、被ダメ80%無効。その代わり、疲労しやすくなる。


 この『スキル』を手に入れた時は「嬉しい!」よりも「疲れた~!」が優先された。このスキル、基本強いと思われるが、僕のような精神力がマイナス切ってる人にとっては余り嬉しくないのだ。疲労すると精神力が下がりステータスが下がる。それゆえにあっても使わない時の方が多かったりする。


 『まぁ、でも不安になっていても仕方ないですし、先に進みましょう』


 キルエルが励ますように言う。

 

 そうだなぁ、僕もここでやらなきゃいけない事たくさんあるし、気持ちを切り替えなきゃ!


 僕は早速教会内の受付まで行く。ゲーム知識が生かされる時だ!『Brave☩Innocent』では数十万種類のパスワードが存在する。そのパスワードを教会内の受付にある宝玉に読み込むとアイテムと交換できる。アイテムの種類はたくさんあり、中にはパスワードの使用でしか手に入らない限定アイテムまであったりする。僕はすぐそばの白い宝玉に触れる。すると頭の中に無機質な声が響いた。


 『暗証番号をどうぞ』


 僕はまず一つの暗号を頭の中に思い浮かべる。


 1ヌ3ナ198コ330


 『暗証番号の入力に成功しました。こちらの鍵をお取りください』


 白い宝玉の真上に魔法陣が出現しそこから(111)と書かれた鍵が出現する。

 僕はその鍵を取り、受付嬢に渡す。受付嬢は鍵を持って後ろの転移魔法陣に乗って消える。しばらくして戻ってきたかと思うと、僕に肩掛けバッグを渡した。


 「こちらが対象アイテムになります。お受け取りください。対象となった暗証番号は二度と使えなくなりますのでご了承ください」


 丁寧に一礼し、自身の席に戻る受付嬢に僕も一礼してそのバッグを身に着ける。

 

 『なんだそれ?魔法のバッグか?』


 キルエルが興味深そうに聞いてくる。


 このアイテムは『次元収納鞄』だ。本来ならどこかのマップで稀に現れる『ナゾの旅商人』から3000億クラン(クラン=この世界での通貨単位)で購入できるんだがこのパスワードを知ってるだけでタダで手に入る。一回手に入ったら売却が不可能になり、何らかの理由で所有者が死なない限りは所有者以外の者が使用することはできないアイテムである。


 『それは、・・・・・凄いな』


 さらにこの『次元収納鞄』、別空間にアイテムを保管するため重さを気にしなくて良い上、アイテムを各々最大所持個数まで持ち運べるのだ。その代わり、他の収納系統のアイテムを装備できなくなる。さらに他の『魔法鞄』と違い、使用する際に魔力を流さないといけないのだ。アイテムを入れるにしても出すにしても魔力を流さなければならない!


 『それは、・・・・・面倒だな』


 魔力を注ぐ行為は魔法を使用するに等しいのだ。それゆえに疲労感だって溜まるがこのバッグを使うだけで修行が出来る。『進化』後はまたプラス値を上げれるから、ある意味得していると言える。


 『なるほど、そういう考え方ならネガティブにならずに済むな』


 キルエルも納得したので改めて『装備』する。これで僕はより強くなったと言えるだろう。


 僕はさらに白い宝玉にパスワードを打ち込み鍵を貰う。そしてその鍵を提出してアイテムと交換する。そのアイテムを『次元収納鞄』に入れる。それを繰り返し続けること一時間。


 僕は『疲労状態』になった。


 HPも40程削れてしまったが魔力は402になった。これは・・・・・いい訓練だ!!


 『ところでゲーム君、本題を忘れているよ』


 キルエルが突っ込んでくれたおかげで僕はハッと我に返った。


 そうだった!!今日試練の日だったんだ!!あっぶね、このまま忘れるところだった!


 僕はすぐさま受付嬢に『勇者への推薦状』を見せる。受付嬢はスッと目を細めると、その場から立ち上がり僕を手招きする。


 「ついてきてください。試練の場所まで案内します」


 受付嬢はそう言い残し、僕を先導する。


 S S S S


 連れて行かれたところは大きな空間だった。白を主流とした清潔感のある部屋。

 目の前には『勇者の血』と呼ばれる紅い宝玉が台の上に鎮座している。


 「ヴェノス司教様が到着するまでもう少しかかります。しばしお待ちください」


 受付嬢はそう言い残すと踵を返してその場を後にした。

 僕は辺りを見回す。周りには30人近くの人間が散らばっており駄弁っていた。


 男女問わずか・・・・。どいつもこいつも攻略本に乗ってる奴だ。レベルも大まかな概要も知っている。ふん、コイツ等が相手だとしても大丈夫だな。問題は―――。


 「君が噂の負け犬かい?」


 例の勇者を探してると後ろから声を掛けられた。だが、無視する。他人を悪く言う者には無視を決め込む。それが僕流の世渡り術だ。


 「おい、負け犬!聞いてるだろ!返事ぐらいしたらどうなんだ!?」


 無視無視、そうだキルエル、この試練終わったらギルド登録してサブクエストでもやろう!


 『ん~、いいよ。何するんだい?』


 「おい、負け犬!卑怯者!敗北者!ボクに対して無視なんていい度胸じゃぁないか!!」


 確か、『畑を荒らす牛型のモンスター『ルーガバッファロー』を討伐してほしい』ってヤツがあった。おススメレベルは21だしやってみようよ。報酬は900クランとポーション1個。どうだい?


 『あ~、いいかもしれない。その『ルーガバッファロー』ってどんなヤツ?』

 

 前方向に2本の角が生えた黒い牛。レベルは18で攻撃力202で突進攻撃してくるよ。一回突進すると止まれないから避けながら戦う方法を取ろうか。


 「ボクはもうじき勇者になる男なんだぞ!!おい聞けよ愚民!」


 ついにキレたか、後ろで喚く野郎は僕の肩を強引に引っ張って僕に顔を向けさせる。そこには青い目と金色の長い髪の毛が生えたイケメンがいた。あ、コイツはそうそう―――。


 「なんだ?高々『必中』を持ってるだけの貴族の無能息子、レイブン=エバーズ」


 レイブン=エバーズ(11歳 男 レベル18)

 HP308 攻撃力210 防御力187 素早さ232 魔力170 精神力66 運18

 耐性:無し

 スキル:『必中』

 加護:無し


 エバーズ家はレイピアのエバーズ流を作った有名な貴族である。そのエバーズ流で倒したモンスターは数知れず。現在当主のラーメン=エバーズはレイピアを使いモンスターの『狂乱暴徒(スタンピード)』を一人で鎮圧したりと数多くの逸話を残している。

 そしてこのエバーズ家の次期当主と言われているレイブンは、それはそれはとんだクソ野郎である。自身の引くエバーズ家の血こそが王族の次に誇らしいことだと思い、それ以外の人間を劣等種扱いするのである。そして、自身は勇者に認められた存在だと誇示し、その恐るべき思い込みで行動するせいでストーリー中盤になるまではプレイヤーから『ノミ』、『ゴミ』、『自己中』と非難され続けてきたキャラである。


 そのレイブンは僕の発言が癪に障ったのか真っ赤な顔で僕を睨みつける。


 「今すぐにその口を閉じろ!!地べたに這いつくばってこの勇者様に謝れ!!」


 それに対抗し、僕は鼻で笑い飛ばしてレイブンを見下す姿勢に入る。


 「はぁ~、これだから自身の事さえ把握できない三下風情は困る。大体、テメェが強いのはその『風乱のレイピア』のおかげだろ」


 「なっ!?このレイピアの名を何故貴様のような負け犬が知っている!?」


 「『風攻撃』だけかぁ、弱ぇな。耐久度も188とクソ低ぃ・・・・(攻撃力がプラス200されるのは序盤の武器にしては強いか)」


 「なっ・・・!!ボクのこの『風乱のレイピア』は末代まで語り継がれる勇者の武具だぞ!?卑怯者には分からないだろうな!このレイピアの真の力が!!」


 真の力ねぇ~~。そんなもん無かったはずなんだがなぁ、もしかしたら現実世界は僕の知ってる『Brave☩Innocent』とは少し違うのかもしれない・・・。そう考えると厄介だなぁ、ここから先僕の知らない情報が待ち受けてるかもしれないってのに・・・。


 「このレイピアは土属性のモンスターに対して非常に強くなるのだ!!」


 あ、前言撤回。知ってるわこの真の力とやら。

 『風攻撃』の効果だわ。『風攻撃』は属性攻撃の一つだ。主に土属性に2倍のダメージを当たられる。弱点属性の攻撃は全てがクリティカルになるから覚えておいて損はない。逆に氷属性には風属性のダメージが半分になるから注意するように。


 『毎度毎度、ゲーム知識の話は凄いくらい饒舌だよね君はさ』


 キルエルが褒めてんのか貶してんのかよく分からないことを言う。

 いやコレ、ゲームの基本だから、『Brave☩Innocent』やってる人は全員知ってるから!

 それにしても懐かしいなぁ。昔は「攻撃力+250!?つっよ!!」とか「『貫通』付与とか強すぎて草」だったのに、今となっては「攻撃力+60000?『覚醒』『霊体化50%』『我慢』付与?耐久度30000超え?弱すぎて草」と思うな。これが年の差ってヤツか・・・・・・。


 このノミが叫ぶせいで周囲の冷たい視線は僕に向いた。すげぇ見られてるじゃん。ノミではなく僕を見るのはどうかと思うがな。


 「なぁ、アイツって誰だ?」

 

 「おまっ!目ぇ合わせたらだめだ!アイツは剣大会を出禁になったやつだよ!」


 「負けたのが悔しくて優勝者に魔法を飛ばしたのよ!!」


 「試合終了後に握手を求めた選手をぶっ飛ばして全身骨折させたとか」


 「剣を落としたのにも関わらず気絶するまで殴り続けたみたい・・・」


 「公開処刑を無表情で行って、腕を斬り飛ばしても続けたみたいだ」


 「自分に切りかかってきた奴は全員家族諸共再起不能まで追い込んだって聞いたわ!!」


 おいおい・・・、僕の悪い噂に尾ひれがついて知らない話になってるやんけ。噂って怖いなぁ。


 「なんであんな奴が此処にいるんだ?」


 「此処教会だろ?『悪魔祓いの結界』はどうしたんだ!」


 「勇者候補ってあんなサイコパスがか・・・・」


 凄いくらい煽ってくるなぁこのモブ共。さすがの僕もイライラする。

 ここは一つ牽制を―――――。


 そう思った時だった。


 「やっべぇ!!遅くなったぁッ!!」


 ドアを蹴破らんとする勢いでとある金髪の蒼眼男子が入ってくる。息切れしたその男子は目の前にいる僕を見て呆気にとられた表情を作る。だがすぐに奥歯を噛んで僕を睨みつける。その眼は怒りに燃えていた。


 ――――主人公は遅れてやってくるってヤツか。嫌な気がする。


 僕はいずれ来るであろう運命に舌打ちする。おそらく余りいいモノじゃなさそうだ・・・。


 ヴェルト、通称勇者は僕の舌打ちを聞いていたのか、凄まじい怒号を放った。


 「何で!テメェが居るんだよキルエル―!!!!!」


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