出会い
初めまして。一次創作が初めてなので分かりにくいかもしれませんが最後まで読んでいただけると幸いです。
この世には人以外にも沢山の人がいる。けどそれを見えるのは極一部の人…俺はその極一部に当てはまる人間…
4月…桜が咲き誇る中、私立碧音高等学校の入学式が終わり、新たに入学した生徒もクラスに慣れ始めた頃…
俺は未だに1人でクラスの片隅で本を読んでいた。俺の名前は神屋敷煌牙…煌く牙と書くお陰で大半は煌牙と読む。別に昔からだし、高校にも慣ればどうでも良くなってくる。しかも、俺は母さん似で中性的な顔立ちをしているお陰で女性に間違われることもしばしば…ここまで来ると半ば諦めている。童顔の方が若干嬉しいけど…
それに俺は所謂、コミュ症で他人と話をするのが苦手…とまあ、色々言ってみた物の結果論からすれば俺がクラスメイトに話しかける勇気がなく、話しかけられても何を言って良いか分からず、会話不成立の為に4月も終わり、5月に近づいている中で未だに1人でいた。別に毎年のことで今更、気にもならないが…
「ねえ、昨日のこと聞きたいんだけど?」
俺に声をかけてきたのは観音寺彩菜…同じクラスではあるが彼女は俺とは真逆な性格をしている。そんな彼女に声をかけられた事で俺は肩を震わせた。
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事の起こりは昨日の夕方…俺は普段通りに学校で授業を受け、普段通りに帰宅して夕飯を作っていた。
「あ…足りない…」
醤油が足りずにいることと味を見て薄いことでため息ながらに買いに行く事にした。
「鏡月!あ!鏡月、買い物行くけどついてくる?」
両親は世界一周旅行中で留守にしており、唯一の同居人である鏡月に声をかける。同居人と言っても普段は白蛇の姿をしているために他人からしたら頭の変な人と見られるので外で表立って鏡月に話しかけることはしない。シューッと長い舌を出して鳴く鏡月が腕に絡み、定位置である首に来たのを確認して財布とエコバッグを持って買い物に行った。その帰り道、ある声に足を止めた。周りには誰もいない…それでも俺には声が聞こえた。
「…神社…裏…?」
聞こえた声を繰り返して神社の裏手に回った俺はとてつもなく後悔した。碧音の制服を着た女子生徒が2人と他校の制服を着た男子が5、6人…
「(俺…厄日かな…)」
そんなことを思いながらもどうするか考える。見てしまった以上、そのまま帰ることはしたくない。
「悪いねぇ、姉ちゃん!今度構ってやるから今日は何も見なかった事にして帰ってくれねぇか?」
チャラい系の男子に肩に腕を回され、下を向く。
「…俺……男…」
言ってみるも男子には聞こえてないみたいでゲラゲラッと笑っている。首にいる鏡月がシューッと鳴く。それに…
「…鏡月……脅しまでね」
「んだ?ボソボソッと?」
不満気に言った男子の腕を掴み、足払いをして倒れた所で背中で腕を捻りあげる。
「ガッ⁈」
驚く男子にふうっと息を吐き、立ち上がる。そして俺を中心に風が起こる。俺を守るかのようにその場にいた全員が驚く。そして誰かが言った。
化け物
っと…しかし、その手の暴言は慣れてる。
「…それが何…?」
さっきまでとは違いに相手に聞こえるように凛とした声で言うと1人、2人と男子が逃げ出した。
「お、おい⁉︎逃げるな‼︎」
リーダー格の声すら無視して逃げていくのを見てその男子を見た。
「っ…」
「どうする…?まだやる…?」
「うわぁぁぁあ?!?!!?」
リーダー格の男子が逃げ出したことで風も止み、元の状態に戻った。それに息を吐き、女子を見る。
「えーと…その…大丈夫…?」
ボソボソッと聴くと綺麗な黒髪をポニーテールにした女子生徒…彼女が観音寺さんであり、観音寺さんにガシッと肩を掴まれた俺は驚いた。
「ねえ…なんで助けたの?」
そう真っ直ぐに問われた俺は困った。観音寺さんを見ては視線を違う場所に彷徨わせることを繰り返していると観音寺さんがため息ながらに
「はぁ…とりあえず、助けてくれてありがとう。私は観音寺彩菜。こっちは親友の九重玲羅…アンタは?」
「えーと…か……神屋敷…」
戸惑いながら苗字を言う。
「カミヤシキ?」
「あ!もしかして神屋敷煌牙君?いつもみんなに神様って呼ばれてる?」
九重さんの声にコクッと頷いた。好き好んで神様と呼ばれたいわけでもないが…
「あー男子がいつも言ってるアレ…アンタだったの…?」
それにも頷き、九重さんが手にしているのもを見た。
「それ…」
「あ…さっきの人に蹴られてそのまま…」
俯く九重さんに何を言うこともなく、2人と向き合って
「…お墓、作ろう…?」
「そうね」
無言で猫を埋めて出来上がったそれに手を合わせた。
「これでいいわね!」
「そうだね…あ、夕飯…まあいいか…」
調理中だったのを思い出したがまあ、ここまでこれば今更だろうと諦めた。
「アンタって…の…のう……えーと…」
「能天気…?」
九重さんが観音寺さんの言いたいことを言うとそれっと頷く観音寺さんに色々心配になった。
それから時間的にも一応、2人を送る事にした。2人を送り届けてから帰路に着く。
「うん…わかってるよ…」
シューッと鳴く鏡月に頷いた。それが昨日の出来事
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時間を戻して現在…
俺は何をどう言っていいか分からずにチラチラッと観音寺さんを見ては視線を下に向けた。
「っー放課後!屋上で待ってるから‼︎」
バンッと俺の机を叩いて教室を出て行った観音寺さんを呆然と見送る事になった。そして暫しの静寂ののちに…
「おいおい!神様の春、早すぎませんか?」
「羨ましいですね!おい!」
面白い半分で俺を“神様”と呼ぶクラスの男子の1人の腕が首に回り、空いている手で軽く頭を小突かれる。もう1人は俺の胸を軽く殴ってくるが俺自身は放課後の事を考えて1人で顔を青くした。
「…もう嫌…」
口癖にも近いそれを口にするも誰の耳に入ることはなかった。
俺は授業そっちのけでどうやったら放課後を乗り切れるか考えていたが考え事をしていれば自然と時間が経つのが早く感じてしまい、気づいたら既に放課後になっていた。
「はぁ…あ、承諾してないしこのまま帰れば……無理か…」
教科書やノートを鞄にしまいながら嘆く。
そもそも俺は承諾していなくても観音寺さんが大声で叫んだ後にクラスメイトに絡まれたことで観音寺さんが待っている相手=俺だと不特定多数の人が知ってしまった。そこまで考えて俺は大きなため息を1つ…諦めて屋上に向かった。
俺が屋上に着いた時には観音寺さんは既にいた。それも屋上に繋がる扉を開けた先に仁王立ちで…
「逃げずによく来たわね」
「あれだけ大声で言われたら…」
来る以外の選択肢などあるようでない状況にため息をついた。
「昨日もそうだけどアンタ声が小さい‼︎大きい声で喋りなさい‼︎」
観音寺さんの大声にヒィッと短い悲鳴を上げながら答える。
「お…俺はその…ひ、人と関わるのが……に、て…で…っ…観音寺さんとは真逆の人間なの‼︎」
「……つまり馬鹿…?」
観音寺さんの一言が胸に突き刺さった。けど…
「馬鹿では……鏡月に人間関係作ることだけは馬鹿って言われた……」
いつかに言われた内容に頭を抱えた。それを無視して観音寺さんは昨日の事を聞いてきた。
「それで昨日の事だけど…あそこ道路からは完全に見えないのよ。私たちが大声で話していた訳でもないのにアンタはやって来た。どうしてそこに私たちがいるってわかったの…?」
完全に言い訳をさせて貰えないと悟った俺はため息ながらに話す事にした。
「俺は…その幽霊とか…そう言うのが見えて……偶然、その子供の霊が助けてほしいって…」
「アンタ馬鹿?」
再び容赦ない一言が俺に突き刺さった。うぅっと言いながら崩れ落ちる。それと同時に観音寺さんから違和感を感じとった。それにまさかなと思いつつも確認で鞄から1枚の紙を取り出した。
「ねえ…これ、何色に見える…?」
紙を見た観音寺さんは不審に思ったのか数歩後ろに下がった所で答えてくれた。
「む…紫」
観音寺さんの答えに違和感の正体がわかった。彼女も俺と一緒なのだと…
「観音寺さん……見えてるね」
敢えて疑問形ではなく確定していると聴くと不思議そうに俺を見てきたのでタネを明かす。
「これ、見えない人は白一択の占い用の札…」
「私…占いなんて信じてないのよ」
占いについて否定した観音寺さんに
「見えてることは否定しないんだね…」
「ええ、そうよ!見えるわ!けどね、私の中では見えないのよ‼︎」
そう言い切った観音寺さんを札をしまいながらチラッと見た。
「それでいいと思うよ…防衛手段がない以上1番の防衛は無視することだからね…」
「…アンタ…詳しいのね…」
そう言われてぇっと返事に困った。えーっとっと少し考えてから…
「ち…近々、災いに合うみたいだから気をつけてね‼︎」
逃げる事にした。言うだけ言ってそのまま屋上を出た。
残された観音寺さんは…
「何よ…災いって…私はそんなの信じないんだから…」
そう言って風で流れてきた髪を抑えて夕日を眺めてから帰ったそうです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。