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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

普通

作者: Unknown

 今、あなたは幸せですか?


 あなたに友人はいますか?その友人はどんな人ですか?変わっている人ですか?それとも、いたって普通の人ですか?個性はありますか?


 その人にあなたは、変人だ、というように言ったことはありますか?



 これは、僕と友達のお話。


 僕の名前は、(たいら)隆司(たかし)


 僕は、高校生で今、私立の高校に通っている。まぁ、普通に高校に受験して、私立のすべり止めは受かったけど、公立の本命は受かんなかった。そんな感じ。


 そんな僕はいつものように高校に通う。


 そりゃあ、嫌なことだってある。周りは騒がしくて、所謂陽キャ?って言われるような人達にはなじめないし。でも、それでも学校は()()、通うべきところだから、通ってる。


 お昼ご飯は、みんなと同じように弁当を持ってきて、仲のいい友達たちと食べる。


 友達はみんな僕の弁当を見てこのように言う。


「隆司の弁当、変わってるよな。」


「うんうん。野菜多いし。嫌いなものとかないの?」


「え?特にないけど...」


 この年では野菜を食べるのはあまり見かけないのだろう。


 普段から、野菜をよく食べる隆司にとって、これはあまりに普通の弁当である。


 弁当...というより、食事に野菜を多く含むのは、よくあることである。なぜなら、そりゃあ、栄養素が偏らないようにしないといけないからである。


 ビタミンが不足すれば、体調に悪影響が出る。カルシウムが不足すれば、身体自体に悪影響が出る。他にも、ナトリウムや炭水化物も当然ながらだが。


 取りすぎはよくない、が取らなすぎも同様にダメなことである。


 そんなわけで、野菜が適度に含まれている弁当を隆司はずっと普通だと思っていた。


 仲のいい友達に変わっている弁当といわれた隆司は皆の弁当を少しだけ、見せてもらった。


 よくある、ソーセージやハンバーグ。ウインナーや卵...からあげに...とよくある男の弁当って感じである。栄養素の偏りなど気にもしていないようだった。


「いやー...うちのかあさん。食べたいものをなんでも入れてくれる母さんでさー!」


 母親自慢...なのかな。こいつはこの年では珍しく、割とマザコンのような気質がある。


 実際、仲が悪いのと良いのとでは、そりゃあ仲の良い方がいいとは思う...が、やはり少し変わっている気もする。


 そんな中、ふと周囲の会話が耳に入ってくる。


「昨日のテレビ見たー!?あの、お笑い番組!」


「あ、○○のことー!?面白かったよねー!」


 なんて声が聞こえてきた。


「・・・そういや、昨日、二人は何してた?」


 と、マザコンの気質のある友人が聞いてくる。良くも悪くも影響されやすい人間だからこういった流行り話には耳ざといのかもしれない。


「僕は勉強だな。」


「隆司は真面目だね...。昨日は日曜だったしお笑いって言っても笑点見てたぐらいかな。」


「笑点って、落ち着きすぎじゃねー!ふるー!」


「いいだろ。俺の趣味なんだから」


 そんな風に言う友達も、やはり変わっている。


 そんな三人だから、気が合うのかも...なんてふと考えながら昼休みを過ごし...授業を受け家に帰った。


 仲のいい3人だが放課後の行動は違う。


 まず隆司は帰宅部。それゆえに、家に帰る。まぁ、そのあとは勉強したり...まぁ、場合によっては遊びに行ったりといった感じだ。


 マザコンの友達は運動部である...ため、大会が近ければほとんど暇がない。そんなわけで今日は部活にいそしんでいる。


 古臭い方の友人は文科系の部活で、休みがあるときは遊ぶものの、休みさえなければ彼もまた部活に時間を取られる。


 そんなわけで今日の午後は僕一人。


 何をするわけでもなくて、まぁ、たまには学生っぽいことでもしておこう。と、気晴らしがてらにバッティングセンターに向かう。


 運動神経は幸いにも悪い方じゃない。だから、まぁ。人並程度には、物事はこなせるのだ。


 そんなわけで、バッティングセンターで遊ぼうと、受付の人に声をかける。


「あ、すいません。利用したいんですけどー。」


「あら、いらっしゃい。」


 人のよさそうな割腹のいいおばさんが対応してくれた。


「あ、えーっと。今って使えますか?」


「ええ。もちろんよ。でも、珍しいわね。最近はめっきり学生さんも減って、寂しくなってたのよ。」


「あれ?そうなんですか?」


「そうよー。最近はめっきり、ゲームセンターとかカラオケに学生さんとられちゃって。」


「あー。確かに。最近だとそういうとこ多いですもんね。」


 そんなことを言いながら、おばさんは設定とか、サイズとかの対応をしてくれる。


 確かに今時だと、カラオケとか行くのが普通なのか。俺も少し古臭いんだろうなぁ...。


 とか、そんなことを考えてしまった。


「・・・まぁ、気晴らしだし。」


 誰に言うでもなく、一人。言葉を漏らした。


 休憩を挟みながら小一時間ほど遊んだ後、僕は本屋へ行った。


 中に入ると、今シリーズで買っているラノベが、でかでかと張り出されていた。


「そういえば、今日。発売日だったな。」


 そんなことを思い出して、買わないとと思い、どうせなら他の、似たようなシリーズを探そうと思った。


「ジャンルは異世界転生系...結構多いな。やっぱり流行ってるのかなぁ...」


 そんな風に物色してると、どこからともなく、バカ騒ぎしてくる男たちの声が聞こえてくる。


「おー!これなっつかしい!どうあがいても絶望のゲームじゃん!」


「何それ!?わけわかんねえ!」


「いやさ、今から10年以上も前に発売されてて、すっげえやりこみ要素もあって、5つのエンディングもあんのに、全部バッドエンドみたいな感じなんだよ!」


「はぁ!?そんなのくそげーじゃぁ!?」


「でも、なかなか面白いんだよなぁ...これ。」


 そんな会話が聞こえてきた。


 心当たりのある作品は、ふと頭をよぎったが。まぁよくも盛大にネタバレしたなー。とか考えて。


(でもあのゲームを面白いって言える感性って...)


「変わってるよなぁ...」


 また小さく一人呟いた。



 本屋を出て、帰ろうとふと横断歩道を見ると、二人組の子供がいた。


 でも。


 彼らは話に夢中になっていたのか、気づいていなかった。


 信号が赤だったことに。


 そこに、トラックがかなりのスピードで、走ってきた。


「あぶない!」


 焦って僕は飛び出した。


 二人の子供の手を引いて、二人を歩道の方に引いた。


 だけど...僕はその時の反動で、トラックの前に、身を投げてしまって。


 バンッ!グシャッ!


 って音が聞こえた気がして。何とはなしに赤いものが見えた気がして。


 こうして、僕。平隆司の人生は終わった。



 僕は異世界転生の主人公じゃない。だから、僕は転生できたわけでもない。


 僕は...僕は、みんなから変わっているといわれ続けていた。


 お弁当も、バッティングセンターを選んだことも。


 ・・・子供を助けたことも。



 そんな人生だった。でも、死んでみて初めて考える。


 普通って何なのだろうと。


 例えば、何もかもが普通の人がいるとして。それはどんな基準の人間なのだろう。


 身長は?平均身長?じゃあ、そこはどの国の平均?その平均は男女別の?それとも混合の?


 体重は?平均体重?じゃあ、それはどんな食文化の?どの時代の?


 じゃあIQは?100ぴったしが普通?じゃあ、それは算出方法にいつのデータを使っているの?


 人々は普段から普通を求める。これが普通だから。常識だから。当たり前だから。


 何が普通で何が常識で何が当たり前なんだろう。


 人には人それぞれに普通があって。常識があって。当たり前があって。


 ほんの少しそれがズレただけでその人はもう一般人ではなくなり変人になって。


 でも逆にすべてが一般といわれるような存在はもっとありえないから希少になって変人といわれて。





 結局のところ。この世には変人なんていない。同様に一般人もいない。


 みんなちがってみんないい、とは金子みすゞさんの言葉だが。


 みんなが違うからこそ。言葉は多様に、文化も多様に。信じる物も、もっと多様に。


 この世界のどこにだって、普通なんてものは存在しない。



 でも...だから子供は聞くのだろう。きっと今日死んだ僕の代わりに。





「ふつうって、なに?」





 そうして死人は。答えを求める。

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