67話 秘匿の花園
「綺麗………」
空間に空いた孔を潜った瞬間、視界に飛び込んできた様々な色彩にシーナは思わず声を溢した。
孔の先は無数の花で溢れかえっていた。まるで森の一部をくり貫いて作られたような円形の土地に多彩な花々が所狭しと咲き誇っており、その中を突っ切る様に細い道が延びている。
視線を動かして道の先を追って行くと、少し古ぼけた木造の小屋がぽつんと建っている。
「うわぁ!」
「凄い!」
シーナの傍らでレイナとレオルも視界を彩る花畑に感嘆するが、詩音だけは無言で佇んでいた。
そんな詩音に向かって、レオルが訪ねた。
「シオンさん、何で分かったんですか? こんな事になってるって」
「ああ、さっきも言ったけど、結界の奥と手前で景色にズレがあったんだよね。具体的に言えば、奥の木葉の方が手前の木葉に比べて不自然に黄色かかってた」
視線を向ける事無く答える。
「黄色いと何が不自然なんですか?」
「木葉にはクロロフィルとカロチノイドって言う成分が含まれてるんだけど、細かく説明すると長くなるから簡単に言うと、葉っぱってのは寒くなれば成る程緑が薄くなって黄色が強くなるんだ。ギルの森は中心に向かうにつれて木々の密度が濃くなって気温が下がる。第五層から先は一年を通して日光量が少なくて初冬並の気温だから、そのせいでその周辺の木葉は年中緑の色素が抜けてしまっている。
結界の境界線を過ぎた途端に木葉の色彩に変化があったから、あの辺は空間の一部が切り取られていて、離れた場所同士が無理矢理つなげられているって思ったんだ」
「な、成る程」
「森の中を歩く時は物の位置とか道順だけじゃなくて、色とかにも注意して見ると自分の置かれた状況が分かりやすいから覚えておくといいよ」
「はい。勉強になります」
素直な返答を返すレオル。
そんな二人の背後でレイナが地面にしゃがみ込んで咲き誇る花々を覗き込む。
「こんなに綺麗なお花見畑初めて」
綺麗な花を前に楽しげにそう溢すレイナ。
その隣でシーナも同じ様に片膝を付いて一輪摘み取る。自分には少しばかり少女らし過ぎる仕草だと気恥ずかしく思ったが、眼下の美しい花に触れずには居られなかった。
淡青色の五枚の花弁を持った花を視線の高さまで持ち上げ、その香りを楽しむ。と、不意に視界に映る花の先で、詩音が背中を此方に向けたまま、音も無く右手に氷の短剣を作り出すのが見えた。
どうかしたの? と訪ねようとしたが、声が出るより先に、
「──え」
背後で何かが動く気配を感じた。
そして、それを認識するのとほぼ同時に詩音が身を翻し、突風の様な速さでシーナの横を駆け抜けた。。
直後、がきん、という硬質な接触音がシーナの直ぐ背後で鳴り響く。
反射的にシーナは振り替える。それに続いて、双子も視線を返した。
そこには、ボロ布の様な何かと、それが握る短刀を氷の短剣で受け止める詩音の姿があった。
何かは目も鼻も口も無い白い仮面を着け、半ば朽ち掛けた黒いマントの様な布を纏っており、その布の隙間からは人形のような無機質で長い腕が伸びている。
一応は人の形をしているそれは鍔競る詩音を押し切ろうとするが詩音は容易くその刃を短剣で弾くと、それの頭部に強烈な回し蹴りを見舞った。
ごきっという鈍い音と共に、黒い何かは転がる横に吹き飛んだ。
「手荒い歓迎だね」
「──ギ、ギ」
鋭い視線と共に詩音が短剣の切っ先を向けると、白い面は首を傾げる様な動作と共に軋む様な音を漏らす。
その動きは非生物的で亡霊じみた黒装束と相まってシーナは酷く不気味に感じながら弓を構えた。
亡霊が走る。
まるでバネ仕掛けの人形の様な人間離れした動きで詩音へと飛び掛かる。
突き付けられる鉄の短刀。詩音はそれを受け流し、返す一刀でそれの腕を斬り飛ばした。
短刀を握った腕が宙を舞う。その最中に、詩音は左手に新たな短剣を作り出すと、亡霊の身体を斬り裂いた。
人で言う肩から横腹に掛けての一刀。
致命傷かとも思えたが、それはさして怯む様子も無く、飛び退く様に後退しながら残った左腕で新たな短剣を投擲した。
高速で飛来する鉄の投擲剣。それは詩音の心臓を寸分の狂いも無く奔る。
だが、精確に放たれた刃を、精密な刃が阻む。
詩音は迫る投剣を左の氷剣で弾き返す。甲高い音と共に打ち返された剣は来た軌道を遡るように翔び、亡霊のマントに覆われた喉元に突き立った。
黒い体が花の上に転がる。今度こそ致命的だと感じたシーナだが、詩音は一瞬も気を抜かずに黒い躯体を睨む。
その視線を感じた様に、それは身を起こした。首を貫く投剣など意にも介していない動きで白い仮面を四人に向ける。
見れば身体の傷からも、斬り飛ばされた腕からも血らしき物は出ていない。やはりと言うか、あれは生物では無く人形の類いの様だ。
「自立人形?」
背後で零れたレイナの呟きに、シーナは否定する。
「いいえ、あれは人工的に作られた自動人形だわ。それも馬鹿みたいに高性能な」
鉱物や岩石が自然界の魔力を吸収して生まれる自立人形と違い、自動人形は魔術師や魔法使いが様々な素材から作り出す人形だ。
しかしその殆どが簡単な作業を延々繰り返す程度の事しか出来ない。あれだけ複雑な挙動、ましてや戦闘行為が可能な自動人形など聞いた事が無い。
黒衣の自動人形が再び駆ける。
だが、先ほどまでの様に近づいてきたりはしない。左から回り込むようにして、一定の距離を保ちつつ、
「―――ギ」
再び、刃を投げた。
しかし、その狙いは詩音では無く、
「――!!」
その後方のシーナだ。
奔る投剣。狙いは眉間。残像を残し急所へと襲来する殺意の刃。
唐突な標的の移行。半ば奇襲じみたその行為が、一瞬シーナの反応を遅らせる。
しかし、鉄の切先はシーナの額を貫く数歩手前で停止する。
詩音が氷の短剣を放棄した左手で、その刃を掴み止めたのだ。
「幼稚だけど戦略性も持っているのか」
投剣には目もくれず、蜘蛛の様に低い体勢で走行する人形を眼で追いなが詩音が呟く。
と、再び人形は刃を飛ばす。
数は五本。狙いはやはり詩音では無くその背後のシーナや双子たち。
五条の凶器の内、三本がレオルとシーナに当たる軌道で迫る。その三刀を詩音は右の一刀を以て弾き捨てる。
シーナは先の詩音の呟きに共感する。
なるほど確かに、単調ではあるがあの人形は確かな作戦の基攻撃を加えてきている。
シーナや双子を狙って投擲を仕掛ければ、詩音はそれを迎撃しざるを得ない。間合いを詰めようと詩音が三人の側を離れれば途端にシーナ達が無防備になる。
自立的に考えているのか、元からそう言った行動を取るように命令されているのかは分からないが、どちらにしろ馬鹿げた性能である。
だがやはり、所詮は人形である。
「シーナ、行ける?」
「ええ。問題ないわ」
一切の気負いなく、即答する。
何度も言うが、あれの策は幼稚だ。此方側に攻撃の手段があれば、何の脅威にもなり得ない。
シーナは左手で矢筒から矢を一本取り、弓に番える。
人形は、何度目ともなる投擲を行う。
シーナを狙った三刀投擲。しかしその全てが詩音によって難なく打ち落とされる。
シーナに焦りは一切無かった。あれがどれだけ剣を放ろうと、詩音ならばその悉くを打ち払うと言う確信があった。
故にシーナは欠片程の不安も抱く事無く、自身が射るべき敵を追う。
人形は何とか詩音の防御を掻い潜ろうと、上下左右あらゆる方向に身を走らせながら剣を飛ばす。
―――――やっぱり、所詮は作り物ね
詩音が投剣を弾く音を、何処か遠くの物の様に聞きながらシーナは白い仮面を見据えながら内心で呟く。
仮に詩音の護衛をすり抜けて自分達を始末した所で、その瞬間に詩音はこの場に留まる制約から解放されて即座にその作り物の体を切り刻むだけだというのに。
弦を限界まで絞り、人形に狙いを定める。
目標との距離は五十メルも無い。だが人形は低い姿勢のまま蟲の様に一切停止せずに動き続ける。
それも直線では無く左右は勿論、木々を利用して上下にも不規則に動き回る。おまけにその移動速度もかなりの物だ。仲間内でも屈指の俊足であるアリスにも引けを取らない。
―――――だが。
この程度、問題にもならない。
スッと、頭の芯が冷たくなるのを感じると同時に、シーナの感覚から、目標以外のあらゆる不要な情報が遮断される。
弓を構え、獲物を狩る時のみ訪れる、感覚の鋭敏化と限定化。
この瞬間、シーナ・ストラトスは射る事にのみ特化した武器となる。
実際の時間はほんの二、三秒だろう。しかし感覚的には数分もの時間を掛けて慎重に狙いを定めてから、シーナは矢から指を離した。
放たれた矢は風の魔力によって加速され、大気中を斬り裂きながら駆け抜け――――
ガシュッ、と言う乾いた音を響かせて人形の首を真横から貫き、その向こうの樹の太い幹に深々と鏃を突き立てた。
黒い躯体が磔になる。しかし、人形は止まらない。
詩音の跳刀、シーナの矢によって首と言う生物の急所を十字に貫かれて尚人形は動き続けた。
ギ、ギギと音を鳴らして、手足を人ではあり得ない方向に闇雲に振り回すその姿はこの上無く気味が悪い。
当然と言えば当然だ。
そも、命を持たない無機質な人型に急所も何もあるまい。
だがそれでも、あの人形は終わりである。シーナが確信を持って矢を放った瞬間から、彼の傀儡の敗北は決していた。
風が吹く。それまでシーナと双子を護り続けていた詩音が、シーナの矢もかくやと言う速度で超走する。
一息の内に磔にされ、動きを封じられた人形へと肉薄し――――
腰の白刀《雪姫》を引き抜き様に振るった。
銀の一閃が駆る。横一文字に払われた純白の刃は人形の無機質な仮面を背後の樹木ごと易々と切り裂いた。
それまで出鱈目に振り回しいた手足を、まるで糸が切れたかの様にだらりと力無く下げ、樹木の倒壊に合わせて黒衣の傀儡はその活動を完全に停止した。
■
「見れば見るほど奇妙ね」
磔になった人形を眺めながらシーナは呟く。
傀儡の体、マントの下の身体は比喩では無く人形だった。
関節は丸い球体状で、素材はよく解らないが硬質かつ無機質な物質。その表面には細い樹の根の様な溝が指先まで伸びている。
「うわ、軽っ」
人形の脚を持ち上げたレイナが驚きの声を上げる。
「本当だ。何でできてるんだろう?」
レオルも同じ様に脚を持ち上げながら、疑問符を浮かべると、
「無闇に触らない方がいいよ。呪いでも掛かっていたら大変だ」
少し離れた場所から戻って来た詩音の忠告に双子は慌てて人形から手を離すと、両の手を服に擦り付けた。
そんな様子を微笑ましく見ながらシーナは小さく笑みを浮かべる。仮に呪いが掛かっていたのなら詩音は絶対に二人を人形に近づけない筈だ。
何も言わなかったと言う事は既に安全だと言う確信があると言う事だ。その上で注意する事で安全に学習させる。
その周り諄い優しさは何とも詩音らしい。
そんな事を思いながらシーナは訪ねる。
「どう、何か分かった?」
「うん、まあ」
そう応える詩音の手には白い半円形の板の様な物が握られていた。人形の着けていた仮面の上半分だ。
「どうもこの仮面が自動人形を動かす中枢回路だったみたい。素材は本体と同じでプラスチックに近い物だと思うけど」
「ぷらす?」
「あぁ……樹脂を固めた素材。まあ、何か魔力を含んだ混ざり物があるみたいだけど。で、本体の細い溝は人間の神経を模した刻印だね。多分、シナプスによるニューロンの接続を極小の魔術式と解釈して、魔力を神経伝達物質の代用触媒にしたニューロン連鎖を成立させているんじゃないかな。僕自身、魔法も魔術も素人レベルの知識しかないから、細かい原理は実際に解体してみないと解らないけど、大方仮面に搭載した回路を疑似的な運動野と小脳として、本体の遠心性の伝導路を模した細かな魔術式とを中脳的な伝達経路束を介して接続することで簡易的な脊椎動物、それもヒト系の動物の神経網を再現、構築してるって所かな」
すらすらと自身の仮説を説明する詩音だが、双子は勿論シーナも揃って意味が解らないと言う表情でぽかーんと詩音を見詰める。
「えーと、つまり……これが動く原理自体は人間のそれと大差ないって事」
「え、じゃ、じゃあ、これって生き物なの」
気味が悪そうに尋ねてくるレイナに詩音は「いいや」と頭を振って応える。
「あくまで動く原理が似てるってだけ。構成素材とかは全然違う。魔術師か魔法使いかは知らないけど、これは間違いなく誰かが作った人形だよ。ただ、こんな物作れるなんて、作り手は相当魔力技術に長けてるんだろうね」
仮面の破片を器用に指先で弄びながら詩音は感心半分、呆れ半分と言った表情で言った。
「で、これからどうする?」
粗方詩音が喋り終えたタイミングでシーナが詩音にのみ聞こえる様に切り出す。
「もともとの目的は探し物だったけど、こんなの見つけちゃったら無視も出来ないわよ」
視線を人形、そして花畑全体に向けながら囁く。
どちらも一度はちゃんと調査して組合に報告しなければならない案件。しかし、この土地が空間結界に隠されている性質上、一度でもこの地を離れたらそのまま見失ってしまう可能性もある。
二手に別れてと言う選択肢もあるが、この結界内は不明な部分が多く何が起こるか分からない。人手を分散するのは得策ではない。
かと言って、探し物を諦めるにしても、レイナとレオルにどう説明するか。
シーナがどうしたものかと内心で頭を抱えていると、
「ああ、その事なんだけどさ」
詩音が花畑の中に建つ小屋の方を見ながら口を開いた。
「多分、探してる物も此処に居ると思うよ」
■
近付いてみると、小屋の外見は人の往来が途切れて久し気にも関わらず小綺麗で今でも住めそうなくらいだった。
「ほら、見てごらん」
言われて詩音が指差す方に視線を向けると、小屋の手前の階段から入り口まで点々と続く血痕が眼に入った。
「これって、まさか」
レオルの呟きに詩音は首肯を返す。
「うん、多分二人の言ってた怪我した子、この中に居るよ」
「え? じゃあ早く助けないと」
シーナと詩音の会話を聞いたレイナが慌てて小屋の中に入ろうと入り口の扉に近寄る。
「ああ待った待った。無闇に入ったら危ないよ。泥棒避けの仕掛けとか罠があるかも知れない」
急ぐレイナを詩音が諭すと、
「とりあえず、私とシオンで中の様子を確かめましょ。レイナとレオルは外で待ってて」
シーナが腰の後ろから予備武器のナイフを引き抜きながら言った。
双子はその言葉に素直に従って扉の前から退く。
「それじゃ、良いって言うまで入って来ちゃ駄目よ。シオン、行きましょ」
「うん」
頷き、詩音も氷の短剣を形成して握る。
そっと詩音が扉の取っ手に手を掛けると、鍵は掛かっていない様で扉はすんなりと開いた。
先に詩音が中に踏込み、一歩遅れてシーナもそれに続く。
中は少しばかり埃が漂っているが、外見と同じでそこそこ綺麗な状態だった。
空になった本棚が左右の壁際に置かれ、その奥には小さな椅子と机が置かれている。
なんだか寂しい内装だな、と内心でシーナは呟いた。
――――――その時だった。
背後で、ばたんっと乱暴な音が響く。
反射的にシーナは振り返る。見ると今し方二人が入って来た扉が完全に閉ざされていた。
―――罠!?
胸の内で叫び、シーナは詩音の方を振り返った。
しかし、
「!?」
そこに詩音の姿は無かった。いや、それだけでなく本棚も机も、壁も床も天井も。ありとあらゆる視覚情報が消失し、シーナの視界は黒一色に塗り潰されていた。
―――一体なに!?
混乱する。
一瞬、眼を潰されたのかとも思ったが、そうでは無い。周囲一切が闇色に染まりながらも、自身の身体は確りと視認できる。
焦りを自覚しながら、周囲に視線を走らせる。やはり詩音の姿は無く、全方位が黒一色。
突然の異常に警戒心を最大にしつつ、無闇に動か手に握るナイフを構えて辺りの気配を探る。
と、不意に暗闇の中から声が聞こえた。
「―――――――」
最初は遠く小さかったそれは、徐々に此方に近づいてくる。
そして、その声が苦悶を孕んだ泣き声だと分かったのと同時に声の主が姿を現した。
それは、少女だった。怪我を負い、血を流した小さな女の子。
かなりの重症だが、それだけだ。
冒険者と言う仕事の関係上、血はある程度見慣れている。
「――――ひっ」
だと言うのにシーナの口から零れたのは酷く弱々しい悲鳴だった。
両の脚から力が抜ける。ずるずると、片脚を引きずりながら迫って来る少女から視線が離せなくなる。ナイフを握る手からは力感覚が消えていき、汗が滲む。心臓は壊れた様に鼓動を早め、同時に胸の奥底からどす黒く重たい意識が湧き上って来る。
――――いや
恐怖が広がる。
―――来ないで
まるで幼子の様に、怯えた心で嘆願する。
怖い、いや、そんな生温い物ではない。本能的な拒絶反応。激甚極まり無い忌避願望。
この場から、あの少女から一刻も早く逃げ去りたいという純粋な感情。
不意にこと、と。足に何かがぶつかった。
視線が勝手に足元に向く。ぶつかったそれは死体だった。眼前の少女と同じ様に、彼方此方から血を流した人間の屍。
死体はそれ一つではない。まるでシーナを取り囲む様に幾つもの屍がゴミの様に転がっている。
そして、
「――――」
声が直ぐ側まで近づいているのに気付いて、シーナは視線を戻した。
傷だらけの少女はもう、手を伸ばせば届きそうな程の距離まで迫っていた。
「あ―――――あ―――」
乾いた喉から声が漏れる。全身から感覚が失せていき、それと同時に忌避すべき黒い物が意識を呑み込んでいく。
ずる、と少女が一歩前に出た。最早身体が触れ合う距離。
少女は血にまみれた腕でシーナの服にしがみつくと光の失せた瞳でシーナを見た。
「シーナ………どうして………」
絞り出す様に放たれたその声を聞いた瞬間、
「あああああああああ!!!!!」
絶叫と共にシーナの意識は恐怖と暗い感情に呑み込まれた。




