お嬢様とメアリーの黒い作戦会議
私の名前はラヴィニア・デューリー。
私には、とても可愛い侍女がいる。
彼女の名前はアニータ・オルブライト。見た目は凛々しい美人だ。アニータはとても仕事熱心で真面目なのだけれど少しドジっ子で一日に一回はお皿を割ったり、水が入ったバケツを倒したりして侍女長に叱られている。まあ、そのギャップも彼女の魅力の一つだろう。
アニータには問題点がひとつあるそれはネガティブすぎるところだ。
数ヶ月前、アニータはハロルド・アリットセンに婚約の申し込みをされた。
ハロルドはアニータの美しい容姿と、仕事熱心な姿、そしてたまにドジを起こしてしまうギャップにやられたらしい。
しかし、アニータは私がハロルドに婚約を申し込まれたと思い込んでいるのだ。まあそれは無理もないだろう。
なぜならハロルドはアニータが好きすぎてアニータを見る度に顔が緩むのを防ぐため、不機嫌な顔をしたり、そっぽを向いたり、あからさまに遠ざけたりなどなど嫌われていると思っても仕方がない行為を繰り返していたからである。
挙句の果てに婚約を申し込むときも―――
「おい、(アニータと)婚約したいんだが。どう思う?」
「(お嬢様と)婚約ですか?私はよろしいと思います」
「そうか。なら決定だな」
「はい!」
はああ。思い出しただけで頭痛がするわ。
早くこの状況をどうにかしなければ………
「ラヴィニア様、少しよろしいでしょうか」
「あら、メアリーじゃない。どうしたの?」
「アニータについてのことなのですが……」
「まあ、そんなことになっていたのね」
どうしよう、アニータがまさかそんな風に動いていただなんて…
「ところでメアリーはなんでそれに協力したのかしら?」
「申し訳ございません。アニータに真実をいうよりも、アリットセン様にアニータが誤解をしていることを気づいてもらったほうが面白いと思ったので……」
うちより身分が上であるアリットセン家との婚約の問題なのにそれを面白がるだなんて………
「あなた、私と気が合いそうね」
「ふふっ私もそんな気がしていました」
「ねえ、メアリー私と同盟を組まない?」
「同盟、ですか?」
「ええ、これから私の可愛いアニータを奪った挙句にアニータを冷たくあしらうハロルドに少しばかりイジワルをしてあげましょうよ」
「そしてそのついでにアニータの誤解を解くってことですね。もちろんですよ。同盟組みましょう」
「うふふっそうこなくちゃ」
かくしてアニータが知らないところでハロルドに痛い目を見てもらうついでにアニータの誤解を解こう同盟が生まれたのであった。