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大根役者

……とは思ったものの私はしがない侍女であり私情で

アリットセン様に話しかけることはそうそう出来ない。




なのでひとまず友人であり同じくデューリー家の侍女をしているメアリーに相談することにした。



「と、いうわけなのだけれどもどうすればお嬢様の誤解を解くことができるかしら」




「どうするもなにも勘違いしてるのは……

いや、なんでもないわ。そうねえさり気なく、お嬢様にアピールすればいいんじゃない?」




「アピール?」




「そう。アリットセン様とお嬢様が二人でいらっしゃるときに、こういうのよ。おふたりはものすごくお似合いですわね。きっと王国、いや世界中の人々から羨ましがられるご夫婦になられることでしょうってね」





「なるほど!!!そうすれば、アリットセン様に怪しまれることもなく、お嬢様に気づかせることができるわ!」




流石メアリーね!私には思いつかなかったわ!さて、そうとなればすぐにでもこれを実行しなくちゃ!確か、アリットセン様は明後日にここにくるのよね




「ふふふ、明後日が楽しみね。アニータ」




「ええ。これもメアリーのおかげよ!ありがとう」



「いいのよ、アニータ。さ、特訓しましょうか」





と、特訓??




「え、特訓て何を?」




「決まってるじゃない!演技よ、演技!あなた嘘をつくのが下手なんだから特訓しないときっとおふたりは怪しく思ってしまうわ。」




なるほど!たしかに、私は嘘をつくのが下手だわ




「じゃアニータ、さっき私が言ったセリフを言ってみて」




「オオ、オフタリハ」




「待った!なんでそんなに片言なのよ!見てなさい、こうやっていうのよ。おふたりはものすごくお似合いですわぁきっと王国、いや世界中の人々から羨ましがられるご夫婦になるでしょう」




「すごいわ!メアリー!!ほんとうに羨ましそうに思っているみたいだったわ!」




「ふふっそうでしょう。私を舐めてもらったら困るんだから。じゃあ次はアニータの番ね」




よし!今ので大体のイメージは掴めたわ!!私の演技を見たらメアリーも度肝を抜いちゃうんだから!



「いくわよ~!オフタリハ」




「ちょっとアニータ。今の私の演技真剣に見てた?」



…………。



「へ?見てたわよ?」




自分では完璧に演技したつもりだったのだけれど





「はぁ私がアニータの演技力の無さを侮っていたわ。アニータ!今夜は猛特訓よ!見破られないレベルになるまで寝かせないから!」





ええええええ!!!



……ん?いや、待てよ?そういえば





「エミリー、もう寮の消灯時間になってしまうわ!もし、侍女長にでもバレたりしたら」





ガクガクブルブル

ああ、想像しただけで体が恐怖で震えてきたわ




「うっそうね今夜ところはこれで終わりにしといてあげるわ。でも、明日の夜は容赦しないから覚えておきなさい」



そういったメアリーの目はギラリと光った。その目はまるで殺し屋のように物騒である。



ひえええええ!これは断れないやつだ~。でも、やらなきゃお嬢様の誤解を解けないまま………

もしそれが原因で、デューリー家とアリットセン家の仲が悪くなったりしたら…………






私はきっと死刑になってしまうわ!!!ギロチンで首ちょんされてしまう!それは絶対に避けたい!!




「はい!喜んでメアリー様!」





かくして、この日の晩から私とメアリーの演技レッスンが始まったのである。




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