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マグロ係

作者: 葵陽

定期更新、7作目です。

「恭子はお見合い結婚したそうです。」シリーズの続きです。


お読みいただければ、幸いです。


はまはあの煮干しがどうしても食べたいと、にゃあにゃあ鳴いた。

 すると、主人は汀の言葉が分かるかのように汀の目の前へ煮干しを3つほど置く。

 主人は嬉しそうに、汀が食べるさまを眺めていた。

飼い猫というのは悠悠自適だ、食べるものに事欠かず敵にも襲われる心配もない。しかしながら元来動物とは己の力のみで生きるにあって、それを人間に依存して良いものかと汀は思っていた。だが汀が人間に関わるほど、人間たちは汀を贔屓し可愛がってくれる。人間は嬉しそうに、汀を撫でる。汀は、案外にもその生活が気に入っていた。


最近は撫でてくれる人間の数が、増えたようだ。女児が汀の尻尾を引っ張ることがある。全身に不快感がぞわぞわと駆け巡るが相手は年若の人間だ。

汀はぐっとこらえて小さくにゃあと注意した。




「日向子、汀の尻尾を放しなさい。痛いって汀が鳴いているでしょう。」

日向子は汀の尻尾がお気に入りのようだ、尻尾を引っ張ると汀が小さく鳴くからだろう。汀も日向子が小さいからか我慢しているのだろう、よく引掻きも噛みもしないものだ。しかしいずれは堪忍袋の緒が切れる、怪我をする前に辞めさせなければ。


 そのうち日向子の方が飽きて触らなくなった、やはり子供は飽きるのが早い。今は、一佐かずさを着飾るのがマイブームのようだ。姉というものは弟を女装させたくなるさがでもあるのだろうか。

 一佐は相も変わらず大人しく、日向子にされるがままになっている。抵抗するだけ無駄だと思っているのか。ただ一佐も見目が良いせいか、可愛い女の子に変身する。生来の青い目もあって、人形のようだ。男に生まれたのがもったいなくなるほどに、惜しい。



 クボウさまには飼い猫がある、汀という名前だ。前足だけ白い靴下を履いたような、黒い猫だ。煮干しとマグロが大好きらしく、私は週に一、二度ほど商店街へ買いに行っている。おかげで魚屋とは顔なじみになった。

 魚屋の若旦那は私と同じ歳らしく、人見知りの私には珍しく馬が合うようですぐに打ち解けることが出来た。褐色肌のイケメンで、「THE 魚屋」という感じだ。




魚屋から帰ってくると汀が私のところまで駆けてくるのが見えた。

私は汀に食事係と認識されている節がある。そう思われていると知っていても、汀を撫でるのは楽しい。

にゃおにゃお鳴いて、マグロをねだる汀は可愛い。

私はどちらかと言えば犬派、だ。無論猫も可愛いとは思っていたけれど。




まぐまぐとマグロを食む汀をみていると、日向子が女装した一佐と手をつなぎ私のところに走ってきた。


可愛い弟だが、女装に目覚めないか心配である。


定期更新、7作目です。

「恭子はお見合い結婚したそうです。」シリーズの続きです。


お読みいただければ、幸いです。

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