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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、王女パンチをよける


俺が大声で叫んでいる少女を無視して流れるプールに浮かんでいると、涙目になりつつも懲りずにわめき続けていた。

大声で叫んでいると言ってもしょせんは10歳そこらの少女の声なので、今日も大盛況のカジノの熱気には敵わず、部屋の中までは届いていないみたいだ。


うーん、この子どうしよう。

とりあえずタクマに相談しようかな、まわりに騎士もいるし面倒事のにおいしかしない。


みつからないようにススッと店内に入ろうっと。

スススッ。


「あっ! あそこに怪しいチビッ子がいるわっ! 騎士たち、あの子を捕まえなさいっ」

「ぬわーっ!?」


見つかってしまった。


しかも涙目の少女の護衛の騎士さんは10名近くおり、さすがに逃げ切れない。

一人一人の能力も騎士団長さんまでとはいかないけれど、それに近い近接能力を持っているようで、B級上位はあるだろうか。


一瞬で囲まれてしまったようだ。


「……ぼ、僕わるいゼリリンじゃないよ。ホントだよ」

「ゼリリンっ!? あなたがカジノ・ゼリリンねっ! 見つけたわよ!」

「しまった」


思わずいつものクセで、ゼリリンフェイクを使用してしまった。

ゼリリンフェイクの勝率はかなり悪いので、もう使わないと心に決めていたのに、なんてことだ。

この少女、デキる!


「もう、あなたのせいで私のプランが台無しになっちゃったのよっ? どうしてくれるのよ。……もうちょっとで悪しき帝国を倒せたのにっ」

「そそくさ、そそくさ」

「こら、逃げるなっ! 王女パンチッ!!」

「……ぬっ!? ゼリリンステップ!」

「避けたっ!?」


なんとこの少女は例の王女とやらだったらしい。

いきなり王女パンチを繰り出すとはなんてやつだ、俺がゼリリンステップを習得していなかったら危なかったかもしれない。


それと悪しき帝国を倒せたのにっていってるけど、どういう事なのだろうか。

確か公国は権力が欲しくて帝国落としをしていたはずなのに。


……はて?


とりあえず聞いてみよう。

なにか思惑があるのかもしれない。


「帝国は別に悪い事はしていないと思うよ」

「そんな事ないわ。だってお父様が帝国は公国を支配する悪い奴だって言ってたわよ? それに帝国ってなんか悪そうな名前じゃない、きっとお父様が正しいわ」


ただのアホの子だった。


転生者を洗脳している王女様を、さらに王様が洗脳しているってどんだけだ。

ゼリリンめんどくさくなってきたよ。


「それは王様が間違っているよ。だって現に、帝国は公国に攻め入ったりはしてないじゃないか」

「……そ、それはそうだけど、でも、……えっと。ええい、きっとこれはお父様を悪者にする罠だわっ! いままでだって、話し合ってもみんな納得してくれなかったもん」

「あたりまえだよ、みんな帝国が悪くないって知ってるからね」


この王女も転生者だと踏んでいたが、違うのだろうか?

日本人だとしたら、いくらなんでも頭が悪すぎる。


でも魅了のスキルはどうみても転生特典っぽい力だし、どうしたものか。


「ふっふっふ。私がお城に招待した有望な人材は、最初はみんなそう言っていたわ。でも最後には納得してくれたの、なぜだか分かるかしら?」

「ぜりっ?」

「それは、女神様から授かった聖なる力、王女パワーが心を開かせたからよっ! くらいなさい頑固者っ! 王女パワーっ!!」

「ぬわーっ!?」


アホの子が王女パワーって叫ぶと、突然、…………何も起こらなかった。

周りの騎士さん達はうっとりしてるみたいだけどね。


ふむ、やっぱりあのスキルは対人間用で、魔王種である俺には効かないらしいね。

異世界人であるタクマにも効かないだろうし、俺にとっては脅威度ゼロだなこの王女。


「ぜりっ? なんともない」

「……う、うそ。この私の、聖なる王女パワーが効かないなんて、今までこんな事一度もっ!」


しかもこの子、聖なる王女パワーとか言ってるし、たぶん自分が洗脳している事にも気づいていないのだろう。

きっと女神様の力で、相手の心を改心させているくらいにしか思っていないに違いない。


こりゃあ黒幕はこの子の言う女神様か、王様かな?

王様はスキルの存在を知っているか微妙だけど、帝国落としに賛成している以上は怪しいし、女神様はスキルを渡す側なので完全に黒だ。

だが同時に、女神が人間の国を欲しているとも思えないし、難しい問題だな。


まあとりあえず、この子に真実を伝えよう。


「もしもしそこの王女さん」

「ひっ!? ……な、なによ」


めちゃくちゃ動揺している。

ここで脅したら泣いちゃうかもしれないね。


ちょっと面白そう。

やらないけど。


「その王女パワーがなんなのかは知らないけど、それ対人間への洗脳スキルだよ」

「そんなハズないわっ! これはれっきとした……」


うむ、埒があかなそうだ。

ここはリグ以外のカジノメンバーの応援を要請しよう。


とりあえず騎士さん達を倒して説得タイムだ。


「カモーンッ! タクマ、ルゥルゥ!」

「……おいセリル、変な呼び方するな」

「のじゃっ!? 呼んだかチビッ子!!」

「うむ、とりあえず騎士さんを無力化してから、このアホ王女を説得しようと思う」


さて、めんどくさいけどいっちょ派手にやりますか。


「な、なん、なんなのよあなた達は!? どこから出てきたのっ!? 騎士のみんな、私を守ってっ」

「無駄だよ、ゼリリンパンチ!」

「……ガハッ」


まず一人目を倒した。


さて、面倒だけどいっちょ派手にいくとしよう。



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