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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、緊張感がない



お目当てのヴァンパイアちゃんを発見してから、攻略本さんのマップを頼りに移動を始めた。

この公国という国は帝国以上に魔道具技術が発展しているようで、もう俺の故郷であるベルン王国やクローム神聖国なんかとは比べ物にならない都会感を感じる。


パッと見た感じ、町はちゃんと舗装ほそうされているしゴミも散らかってない、さすが転生者の住む町だ。

きっと色々と試行錯誤してきたのだろう。


そうして発展した町の中をぐるぐると探検する事20分ほど、よやく目的地に辿りついた。


「ついたね」

「ああ、ついたな」

「つきましたね、……って! 本当にここなんですか若っ!?」

「うむ」


目の前には、これでもかというくらい厳重に警備された、めちゃくちゃ大きな屋敷があった。

もはやお城レベルである。


なんだろうここ、まさか公国の王様が住んでいる別荘かなにかかな?

だが別荘にしては警備の騎士が多いし、何かを警戒しているような感覚が伝わってくる。


まあいいや、とりあえず門番さんに接触してみよう。


「ぜりっ!」

「む、なんだお前たち? こんなところに何の用だ、フォトンケーキ様の面会希望者か?」

「そうだよ。プラリネ様の友達なんだよ、僕たち」


フォトンケーキっていうのはあのヴァンパイアちゃんの家名だ。

正式名称はプラリネ・フォトンケーキっていうらしい、とても甘そうな名前である。


「やはりお嬢様の面会希望者であったか。ちょっとまってろ、今から連絡を取るからお前の名前を教えてくれ」

「僕の事はカジノ・ゼリリンって伝えてくれれば分かると思うよ」

「カジノ・ゼリリンだな、分かった。それにしてもそんな家名聞いたことないな? 他の国の貴族なのか?」

「そうだぞ」


まあゼリリンは貴族名でないが、ロックナー家は男爵家なので、あながち間違いじゃない。


そしてしばらく待っていると、俺の名前を聞いて連絡を取りに行った騎士さんが帰ってきた。

ずいぶんと早いな、このでかい敷地の中なのに行って帰ってくるまで数分くらいしかかかっていない。

よく訓練された騎士さんだ。


「確認が取れたぞ、確かにお嬢様のご友人で間違いないようだ。屋敷の中まで案内するからついてこい」

「くるしゅうない」


うむ。


「セリルお前、無駄に貴族が様になってるな」

「こらタクマ、若に失礼だろうっ!」


無駄とはなんだ、俺はれっきとした貴族だぞ。

それにタクマもなんだかんだいって空気に溶け込んでいるし、様になっているのはお互い様だな。

リグもたまに神聖国の王城に足を運んでいたので、こういうのは慣れているようだ。


それから騎士さんについていくことしばらく、お目当ての人物の待つロビーらしき所に案内された。

ロビーのソファーには吸血鬼プラリネちゃんが足を組んで座っており、ようやく来たかといった表情が窺える。


俺たちが来るのを待っていたのだろうか。


「お嬢様、お友達のゼリリン様一行を連れてまいりました」

「ご苦労だった、さがってよいぞ」

「はっ!!」


その後、ヴァンパイアちゃんの指示を受けた騎士さんは退室していき、ロビーには俺たちだけとなった。


「やぁ、公国まで遠足にきたゼリリンだよ」

「ふふふっ、遠足とはまた賑やかな行事だの。確かに魔王の遠足なら、道中でヴァンパイアにばったり出くわしてもおかしくはない。……よくここが分かったのぉ?」

「まあ僕にはこの世界の攻略本があるからね」


まさか普通、公国に堂々と魔族の屋敷があるとは思わないだろうけど、それも含めて俺の攻略本さんの前では無力だ。

だいたいの居場所さえ見当がついていれば、すぐに見つかる。


「はっはっはっ!! 確かに、本当にそんなものがあるなら、わらわがどこに居ようと無駄だな」

「確かに、最初は冗談だと思うよな。……俺も慣れるまでは時間がかかったぜ」

「ぜりっ?」


いや、攻略本さんは実在するすごい本なんだぞ。


「それで、用件はなんだ? わらわにしても大きな借りがある故、だいたいの事には寛容になれるぞ。公国の貴族の暗殺でも、わらわに忍び込ませていたあのチラシの事でも何なりと相談するがいい」

「うむ、チラシに関してはぜひ魔物素材を持って遊びに来てほしい」

「なんじゃチラシの事じゃったか、まかせておけ」


お客さんは増えれば増えるだけ良い、S級近いこのプラリネちゃんが来るなら大歓迎だ。

むしろカジノが繁栄するなら、公国と帝国のいざこざなどどうでもいい。


「いや、用件はその事じゃねぇだろ。しっかりしろ」

「なにを言うタクマ、最も大事なのはカジノが繁栄することだ」

「そういやお前はそういう奴だったな」


どういう事だってばよ。


「まあいい、ここからは俺が説明する。今回あんたを尋ねたのはこの国に居る実力者の内情と公国の思惑を知るためだ。俺たちの脅威に繋がるかもしれない奴らを野放しにはしておけないんでな、情報収集ってやつだ」

「ふむ、やはりそういう事だったか。それについてはわらわも協力するのはやぶさかでもない。なによりこの屋敷の警備を厳重にしているのも、お主らの言う公国の実力者と、思惑とやらに不穏な動きがあるからだしの」

「…………ほう」


なにやら屋敷の警備を固めていたのは、プラリネちゃんにとっても都合が悪い事があるかららしい。


彼女にとって都合が悪いという事は、元々公国からの指示を受けて行動していただろうグラン君にとっても同じことだろうし、彼があれから俺の前に姿を現さない原因の一つかもしれないな。

いったいこの国で何が起きているのだろうか。



なにやら難しい話になりそうだし、キノッピを食べて適当に聞いておこっと。


「ぜりっ」

「……緊張感が無い奴だの」

「いつもの事だ、気にするな」


ちゃんと話は聞いてるぞ。


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