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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、事情を聞く



俺がゼリリン3号を消し、試験用に追跡してきた暗部の人たちを解放すると、王のおじさんが上機嫌に褒め称え始めた。


「はっはっはっ! いやはや、うむ、やりおるわ。今のは召喚獣か何かかね? とてつもない魔力を内包していたようだが、アレを見れば君たちが蒼の旅団を撃退したのだと、納得せざるを得ないな」

「うん、まあ召喚獣といえばそうかもしれない。ちなみに、あれはゼリリン3号っていう名前なんだ」


別に3号も1号も同じ意識で繋がった同一人物だが、俺自身どれがどれだか分からなくなるので、個性をつけて呼んでいるだけなんだけどね。

まあそれを王のおじさんに話すこともないだろう、別に重要な事じゃないし。


すると、タクマが俺のスキルについて説明を付け加えた。


「まあこいつの事はあんまり深く考えない方がいいぜ、そういう事もあるくらいに思っとけばいい。あんまり考えてると気がおかしくなるからな」

「……うむ。それなりの実力者ともなれば、秘密なんかも増えてくるだろう。承知した」


気がおかしくなるとはなんだ、まるで俺が変な奴みたいじゃないか。


「まてタクマ、僕は変な奴じゃない」

「おう。……それで、今回の件についての事情を聞きに来たわけだが、どうする? 俺たちが必ずしもあんた達の味方になってやれるとは言い切れねぇが、とりあえず話だけでも聞くぜ?」

「こら、スルーするな」


なんてやつだ、こいつ反論をうけつけないつもりだぞ。

ズルい、ズルするぎる。


これはもうアレだ、アングリーゼリリンだ。

怒ったからもう会議なんて知らない、眉間にシワ寄せとこ。


「…………」

「どうしたんですか若、眉間にシワなんか寄せて。……あ、でも怒った若もいいですね」

「……む?」

「むふふ、ぷにぷに」

「……ぬわーっ!?」


怒りを全力で表現していたというのに、なぜかリグが俺をだっこしてほっぺたを揉み始めた。

どうしてなんだ、まさかアングリーモードが通じていないとでもいうのか。


くっ、やはりリグは強敵だな。


「……確かに深く考えると気がおかしくなりそうだのぉ」

「だろ。俺もこいつが何をしたいのか全くわからねぇ」

「ぬわーっ!」


リグのほっぺたむにむにが続く。

完全に捕獲されてしまって身動きがとれないぞ。


……それからその後、タクマと王のおじさん、そして酒場のマスターの会議の内容を聞いていたところ、だいたいの事が把握できた。


曰く、このアイゼン帝国と旅団の本国であるガーランド公国は、この大陸の中でもトップ2を張る大国なのだそうだ。

もともと公国側は、大昔にアイゼン帝国の公爵家が枝分かれしてできた傘下の国だったのだが、近年徐々に影響力が大きくなり、いまでは傘下の国とは呼べなくなるまでに大きくなり独立したらしい。


その大きくなった原因というのが、主に旅団を含む新進気鋭の若者たちの活躍によるもので、彼らのおかげで戦争なんかにも勝ち続けて肥大化していったという。

これはおそらく、旅団のリーダーが開発した食品や魔道具、日本の知識なんかが拍車をかけたのだろうと推測される。


よって、結果的に帝国と肩を並べる事となった公国が、さらなる飛躍を求めて手を出したのが帝国落としだという事なのだそうだ。


本来ならば、ここまでの事をされたら即戦争でもおかしくはないのだけれど、旅団はあくまでも世界各地を巡っている一集団という立場にすぎず、彼らに何者かが指示を出していたとしても証拠が無い以上は攻撃しにくいとのことだった。


いくら公国で生まれた人間といっても、立場は人それぞれだからね、言っている事はわかる。



「……で、今回の騒動は公国側にしてやられてたって訳か」

「うむ、お主らがいなければどうなっていたことか、というレベルでな」


まあ旅団は人気もあったからね、手を出しづらかった事だろう。

でかい国だからこそ、ルールや法がそれなりにキッチリしてて、公国とやり合うにもそこそこな証拠くらいは必要だったのだ。


その点、俺は全くの無関係だから楽でいいな。

攻めてきたらゼリリン城で倒せばいいだけだし。


次またちょっかい出してきたら、今度は公国ごと相手にしちゃってもいいかな。

うむ、そうしよう。


……そうするのだが、その前に、ちょっと気になった事がある。


「ところでアイゼン王のおじさん、ちょっと気になった事があるんだけど」

「ふむ、なんだね?」

「その蒼の旅団の他にも、公国の発展に貢献した力ある若者たちが居るっていう事だったけど、特徴とかって分かる?」


そう、俺が気になったのは旅団のリーダーであるグラン君たちの他にも、転生者みたいなのが居るのではないかという事だ。


帝国落としの任務を任されたのが蒼の旅団である以上、仮に転生者がいたとしても彼ら以上に期待されているとは考えにくいことから、グラン君がトップクラスだとみて間違いないのだろうが、それでも心配ではある。


主に、転生者がもっているであろうチートスキルや装備なんかが、束になったときにどれくらいの脅威になりうるかという点について、詳しく聞き出さなければならないだろう。


「確かに、それは聞いておかなきゃならねぇな。仮に俺たちの脅威にも繋がるようだったら、あんたらに肩入れするのもやぶさかではないぜ」

「……彼らの特徴か。そうだなぁ、彼らすべてという訳ではないが、未知の技術や理論体系、または特異なスキルを持っている者が多少居ると聞く。そこまで多くはないようだが、冒険者ランクA級からS級の影響力はあるらしいのぉ」

「ふむ?」


なるほど、つまり転生者達がまだちょっと居るってことだね。

なんで彼らが公国に肩入れするのかは知らないけれど、帰ったらゼリリン城の強化くらいはしておいた方がいいかもしれない。


その後、余ったDPは俺自身の強化についやし、公国に潜入調査をしに行くとしよう。

うむ、そうだそれがいい。


それじゃ、そうと決まればさっそく実行だ。


「ありがとうアイゼン王。結果的にだけど、自己防衛のためにこの国に協力するかもしれない。……それとタクマ、リグ、やっぱり一度公国へ行ってみよう」


もちろん、わんわんバスに乗って。


「だな、それが良さそうだ」

「うへへ、若のほっぺがぷにぷにです~」


うん、リグはやっぱり置いて行った方が良いかもしれない。


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