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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、見破る


アイゼン帝国までやってきた俺たちは、さっそく城の門番さんに事情を伝えた。

俺たちが来ることは既に承知の事だと思うし、情報が伝わっているはずだ。


「やぁ門番さん、王様に呼ばれたゼリリンだよ」

「はっ! 王からは既に、あなた方に関する通達があります。どうぞお通り下さいっ」

「ぜりっ!」


やっぱり情報が伝わっていたらしい。


門番さんも、なぜ俺たちが呼ばれたのかという事は知らないだろうけど、酒場のマスターが公爵として復帰したことからも、おおよその見当はついているはずだ。

それでもなお、感情を顔に出さないあたりはさすがプロだと思う。


タクマもこの辺か感心したのか、いつもとは違った表情をしている。


「おいセリル」

「うん、さすがに門番さんもプロだよね」

「いやちげえよ、その話じゃねぇ。そもそも、なんでお前は門番とやけにフレンドリーなんだ。……っと、話が逸れたが、気づいてんだろ?」


どうやら門番さんに感心していた訳ではなかったらしい。

……だが、だとすれば何だろうか?


適当に返事しとこ。


「うむ」

「えっ? どうしたんですか若、何か異変でも?」

「う、うむ?」


リグよ、深くは追及しないでくれたまえ。

俺も分からん。


するとしばらく王城を歩いているうちに、タクマが答えを語り出した。


「ああ、異変って程ではないが、普通じゃないな。この城に来るのが初対面の俺たちに対して、案内人も無しってのがそもそもおかしい。普通なら戸惑うところだろうよ」

「あっ! 確かに……」

「ふむ」


なるほど。


つまり、どういうことだってばよ。


「となれば、答えは二つだ。めちゃくちゃ舐められているか、もしくは試されているかだな。後者ならば、この国を転覆しかけた敵を一掃した俺たちに対して、本当にそれが可能な者たちだったのか様子を見ているんだろう」

「ほむ」


……と、いう事らしい。


まあ確かに、王様と酒場のマスターの居場所を確認するために開いた攻略本には、俺たちを追跡する謎の存在がマップに表示されているけどね。

試されているのだとしたら、いつ襲ってくるかわからない以上は、気を付けなければいけない。


クローム神聖国でも執事さんが途中からは案内していたし、タクマが言っている事はほぼほぼ正解なのだろう。


「それじゃあ、面倒だしっちゃう?」


やられる前にやっちゃう戦法だ。

不意打ちする側も、不意打ちされるとは思っていないだろうしね。


「まあそれも悪くはないが、いまは待った方がいいかもな。王の間まで行ってから看破するかした方が効果的だろう。ビックリさせてやろうぜ」


じゃ、そういう事で。

相棒は確実性よりも、効果の大きさを取ったようだ。


でもせっかくだから、ゼリリン3号を暗部のさらに後ろから追跡させとこ。


ゼリリン3号は2号と違ってスライム形態が好きな奴なので、こういう隠密作戦の時に効果を発揮するのだ。

無色透明な上に足音もなければ匂いも無いので、天井とかに張り付いて移動すればなかなかバレないのである。


王の間までに動きがあれば、その時はこいつになんとかしてもらおう。


「はわわわっ、ね、狙われているんですかっ!? 私、今狙われているんですかっ!?」

「おちつきなよリグ、どうようをかくせ」


問題があるとすれば、リグが明らかにビビっていることだね。

いまもへっぴり腰だし、俺にしがみついている。


……そして王城を散策してしばらくすると、王の間までやってきた。

どうやらマスターと王様、それと警備の騎士の他には誰も居ないようだ。


「やぁ王様とマスターのおっちゃん、約束通り会いに来たよ」

「おぅ。遅かったな、待ちくたびれたぜ。……というか、案内人の執事はどうした? お前たちが来たら案内するように指示していたはずだが」

「はっはっはっ、まあ落ち着け我が盟友よ」


マスターの問いかけに対し、王のおじさんが軽快に笑い出した。

やっぱり試されていたらしい。


王のおじさんは髪こそ白髪だが、整った顔立ちに、服がはち切れんばかりの筋肉を持った偉丈夫だ。

これはまだまだ現役と言ったところかな、活力がにじみ出ているように思う。


ちなみにマスターはオールバックの赤髪で、改めてみると豪華な貴族服が様になっている。


この2人が並ぶと、経験値豊富な歴戦の猛者感が半端じゃない。


「うむ、隣に座っとる我が友から、お主らの話は聞いている。それにしても、いやはや、お主らがどれほどの者たちなのかと思ったが、どうやら本物のようだな」

「おいアイゼン、どういう事だ?」


マスターはまだ気づいていないようだ。

敵を騙すにはまず味方からというが、よくできた王だな。


「おいおい、お前まさかこの至近距離に暗部がいて、気づかなかったとでも言うまいな? あの子供たちは既に気づき、暗部を拘束しているようだぞ」

「……な、なにぃっ!? 本当かお前らっ!?」

「まあ、そういうこったな」

「ぜりぜりぜり(笑)」


そうなのである。


実は、この部屋に入った瞬間に暗部の人たちが一斉に降りてこようとしていたので、ゼリリン3号が既に拘束していたのだ。

さすが俺の分身、仕事が出来るやつだな。

これは報酬にキノッピでも進呈してやらなければならない、いわゆるボーナスという奴だ。


俺は部下を大切にするゼリリンなのである。


……それからその後、拘束された暗部の人たちはゼリリン3号の触手に首を絞められたまま、床にドスンと落とされた。


あ、お前もうちょっとゆっくりおろしてあげろよっ!

これは減給だな、やっぱりキノッピはなし。



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