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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、新しい上客をみつける



蒼の旅団との勝負に決着がつき、生死を確認しにゼリリン城の10階層へと向かった所、やはりというべきかグラン君とヴァンパイアの女の子には息があった。

グラン君は意識が無いようだがちゃんと呼吸をしているし、ヴァンパイアの女の子などこちらに気づき起き上がろうとしているようだ。


さすが不死の種族ヴァンパイア、生命力はとんでもないな。


獣人ちゃんと騎士のおっちゃんは生きているのか死んでいるのか分からないが、まあどちらにせよ長くは持たないだろう。

ちなみに巫女さんはグランくんが下敷きとなり、庇ったようだ。


「やぁ蒼の旅団さん、さっきぶりだね」

「……う、くっ。わらわも魔族の端くれである以上、魔王に挑むというのがどれだけ愚かな事なのかは理解していたが、……よもやこれほどとはな」

「うん。まあ、最初から君たちの勝ち目はゼロだったね」


ヴァンパイアの女の子は結末がだいたい分かっていたみたいで、どこか達観した様子がある。

負けると分かっていても挑んでくるとは、なかなか骨のある子だな。


もし巫女さんではなく、この子が俺との会話に交じっていたなら、戦わずに済んだ未来もあったかもしれない。

これだけ素直に負けを認め、なおかつ恨みなんかも残さない精神は称賛に値する。

もし俺が逆の立場だったら、とても真似できないだろう。


巫女さんには悪いが、この子みたいに、もうちょっと相手の事をよく見た方がいいと思うよ。


すると、俺の態度から何かを思案した彼女は、意を決したように話し始めた。


「……先ほど、交戦前に戦う意志がないような態度を取っていたが、あれはやはり本気じゃったのだな。……すまぬ、帝国やグランの本国の関係に、そなたを巻き込んでしまい、申し訳なく思う」


ヴァンパイアちゃんが針の上で頭を下げようとし始めた。

いやいや、もうそっちにも戦う気がないなら、拾った命は大事にしようよ。

俺は敵には容赦しないゼリリンだけど、済んだことは気にしないゼリリンでもあるのだ。


それにもしかしたら、この子とは分かり合えるかもしれない。

ちょっとだけ、もう一度だけ話し合ってみようかな。


「その謝罪、ちょっと待った。……つかぬ事を聞くけどさ、もし僕が最初から手を出す気が無く、このまま黙って立ち去るなら今回は見逃してあげるっていったら、どうする?」

「……それは、願ってもない事だのぉ。グランの奴は自力で復活できるだけのスキルを備えておるし、横の2人にしても、わらわが吸血鬼化の処置を施せばまだ間に合う。……だが、いいのか? わらわは兎も角、グランの奴が引き下がるとは限らないぞ」


ふむ、完全に死んじゃったらダメみたいだけど、まだ虫の息くらいはある獣人ちゃんたちは助かるみたいだ。

吸血鬼化ってことは、眷属かなにかにしてヴァンパイアの生命力を付加しつつ、2人を救命するのだろう。


まあグラン君が根に持ってまた攻めてきた時は、こんどこそ問答無用で倒せばいいだけだし、一回くらいは彼女に免じて許してあげよう。


俺はこういう事に理解のあるゼリリンなのだ。


「……いいよ。その代わり、次襲ってきたら容赦しないからね」

「うむ。その時は一思いにバッサリやってくれ。それに本当は、こんな回りくどいことしなくても、そなたらが本気を出せばわらわ達など敵ではなかったのだろう?」

「さて、それはどうかな。……はいこれ、エリクサー4本」


吸血鬼化で延命処置を図ろうとしていたみたいだけど、せっかくだから彼らをちゃんと助けてあげることにした。

人間が吸血鬼として生きてくのって、いろんな意味で無理があるだろうしね。

ここらへんはサービスだ。


「……なっ!? エリクサーじゃとっ! ……しかし、これでは」

「いいから、早く行きなよ。本当に、助けるのは今回だけなんだ。僕の気が変わらないうちに、彼らを連れて去ってくれ」


さっさと去ってくれないと、いつグラン君が目を覚ますか分からないからね。

もし仮に、ここで目が覚めて襲ってきたら、今度こそ容赦はできないだろう。


「すまぬ、金輪際わらわ達はこの件から手を引くことを誓おう。……この件は借りだの」


そういった彼女は、仲間にエリクサーを振りかけた後、少女とは思えない怪力で4人を引き摺って去っていった。

さすが魔族、みかけによらず怪力だな。


「……よかったのか、セリル」

「いいんだよ」


そう、いいのである。

なにせヴァンパイアの女の子の後ろポケットには、いつの間にか誰かが忍びこませておいた、カジノのチラシが混入していたのだから。


うむ、次に蒼の旅団が来るときは、きっとカジノで一攫千金を狙うギャンブラーとしてだろう。

タクマの奴も、なんだかんだいって粋な計らいをする奴である。

俺は仲間が信じた相手は、信じる事にする主義なのだ。


帝国と蒼の旅団の本国とやらの関係は聞けずじまいだったけど、まあ調べればわかる事だろう。

明日からちょっとずつ調査しようじゃないか。


「ぜりぜりぜり(笑)」

「ククッ、クククッ」


──本日もカジノゼリリンは、絶好調だ。



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