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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、怠け者なのがバレる



膨大な魔力を持った者の気配を感じた俺は、すぐに全従業員に指示を出した。


「コードブルーの接近を確認っ! 総員、カジノで遊んでいる人たちを連れて【ゼリリンの隠れ家】へ退避っ!」

「……っ!! 了解なのじゃぁっ!」


既に避難訓練の練習を行っていた魔女たちが、ルゥルゥを筆頭に避難を始めた。

避難誘導の件はカジノで遊ぶ人たちには伝えられており、今回はそういう【イベント】だという事で納得してもらっている。


これは人気の高い蒼の旅団側に、カジノで遊んでいる人たちの目がいかないようにする作戦の一つでもあるのだ。


そして俺が避難指示を出して30秒後、圧倒的なカリスマを持つ魔女たちと、空間魔法を使えるルゥルゥが、地下一階のゼリリンの隠れ家へと転移してきた。


隠れ家はかなり広く作られており、ゼリリン城1Fの5倍ほどの面積を誇っている巨大施設だ。

ダンジョンマスターである俺の隠れ場所であることはもちろんの事、2Fから4Fまでの機能を全て兼ね揃えたスーパールームなのである。


「さて、これで準備は整ったね。あとはタクマとゼリリン2号にまかせるとして、僕は隠れ家のコアルームで、高みの見物でもしていよう」


まずは相手の事情を聞くのが先だが、まあたぶん交戦状態になるだろう。

旅団のリーダーがこれだけ魔力をまき散らして接近してきたという事は、そういう事だ。


すると、受付の1Fで待機していたゼリリン2号の所へ、黒髪の魔法使いを筆頭とした5人の人間達が現れた。

年齢は16歳くらいの青年から30を超えてそうなおじさん、はたまた10歳くらいのチビッ子までさまざまだ。


ふむ、攻略本さんにパーティの詳細を聞いてみようかな。

まずはリーダーと思わしき青年から。


【(転生者)人族:グラン・ラツェイ】

成長標準:

生命力:S/魔力:SS/筋力:B/敏捷:A/対魔力:SS

現在値:

生命力:S/魔力:SS/筋力:B/敏捷:A/対魔力:SS


オリジンスキル:蒼の魔法Lv2

スキル:蒼魔法・蒼き再誕・空間魔法・火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・体術・剣術


【蒼の魔法Lv2】

└LV1効果:獲得している魔法の威力に、オリジンスキルである蒼魔法の魔力を上乗せして発動できる。威力はおよそ2倍。魔法スキル強化魔法、蒼魔法獲得。

└LV2効果:死んでしまった時、肉体の損傷が軽度であれば、たった一度だけ瀕死の状態で復活できる。使い捨てスキル、蒼き再誕獲得。


なるほど、リーダーさんは噂通り完全な魔法型のようだ。

それにしても一回だけ完全復活できるとはやるな、この人は2回殺さなければ死なないようだ。

まあそれも、肉体の損傷が軽度な場合のみだけみたいだけどね。


がんばって損傷を抑えればいいと思うよ。


それから次に、他の4人のメンバーを確認すると、だいたいの役割が見えてきた。


1人目:30歳くらいのおじさん。耐久メインの騎士であり、パーティの盾役を担うらしい。

2人目:帝国の巫女さん。オリジンスキルの神託は一ヶ月に一回だけ、死亡レベルの脅威を察知できるらしい。

3人目:獣人ロリっ子。シーフっぽい二刀流の短剣に、マフラーをしている。猫耳がかわいい。

4人目:ヴァンパイアの女の子。スキルは格闘寄りで、再生系の能力が高いらしい。


鑑定した4人全員がS級に足を踏み入れるレベルの大物で、ステータスなんかもかなり高かった。

やはりまともに戦っていたら危なかっただろう。

ゼリリン2号を身代わりにしておいて良かった。


……それじゃ鑑定も済んだことだし、とりあえずリーダーさんに交戦の意志の確認を確認しよう。


「やぁ、ようこそゼリリン城へ。ここは最近できた賭博施設だよ、新しいお客さんかな?」

「……気配で分かる、お前がここ最近現れた魔王だな。俺たちを前にして逃げなかった事は称賛に値するが、その油断や驕りは命取りだぜ?」

「いやいや、まってよ。何を勘違いしているか知らないけど、僕は悪いゼリリンじゃないんだ。……本当だよ?」


うむ、予想通り向こう側は俺を魔王だと認識しているようだ。

だがそれを知ってもなお、俺は悪いゼリリンではないと言い張るつもりだったりする。

だって実際に悪い事はしてないし、万に一つでも話し合いで解決できれば、それに越したことはないからね。


しかし、やはりその言い分は無理があったのか、帝国の巫女さんがバッサリと切り捨ててきた。


「いいえ、あなたからはよこしまな心を感じます。……この流れはそう、まるで欲望で人を堕落させるような狡猾な意志と、いつまでも布団でゴロゴロしているかのような怠惰な感情です。グラン様、やはりこの魔王の言い分を信じてはいけませんっ!!」

「ぜりっ!?」

「あっ! 今、図星を突かれたという感情が読み取れましたっ!! やはりこの魔王は最低ですっ、すぐに始末しましょうグラン様っ!」


くっ、なんて鋭い巫女さんなんだ、邪心を読み取るなんて反則だぞ。

……い、いやでも、カジノで騎士団長さんを堕落させたりゴロゴロしたりすることは、別に悪い事じゃないはず。

きっとそうだ、そうに違いない。


ええい、ここはゼリリンフェイクでうやむやにしてやるっ!

会社の面接の時に散々練習した、俺の言い訳力をくらぇっ!


「……だ、そうだが?」

「うーん、まだ7歳だから、難しいことは分かんない」

「…………」


あぁぁああ、やっちまったぁああっ!

完全にゼリリンフェイク失敗だよこれっ!


「最初から信じてなど居なかったが、あまり舐めるなよ魔王。……どうやら、お前との話し合いはここまでのようだな。行くぞみんなっ!!」

『了解っ!』

「……ぜ、ぜりっ!? ゼリラァアアアッ!?」


リーダーであるグランがそういった瞬間、5人のメンバーが一斉に俺を包囲し、攻撃を浴びせてきた。

ゼリリン2号にも俺と同じ耐久力があるとはいえ、さすがにこれはきついな。


一回死んだふりしておこう。

カモンタクマ、出番だよ。


「ぜり、ぜりがはッ!!」

「フンッ、魔王と言ってもしょせんはこの程度か。さあ、みんなかえる……ぞ……? ……え?」


俺が死んだと思い込みグラン君が振り向いた先には、……帝国の巫女さんの片足と騎士のおっちゃんの片腕を刎ねた、二刀流のタクマの姿があった。

うむ、ナイスアシスト。


やっぱりタクマの接近戦の能力で不意打ちすると、最高にダメージがでかいな。

普通に戦ってたら、タクマも俺も勝てるか五分五分のところだったし。


「悪いな、魔王は一人じゃねぇんだ」

「き、き、キ、サァマァァァァアアアッ!!」


彼女っぽかった仲間の巫女さんを、不意打ちで傷つけられてしまったグラン君は驚き、予想通り怒り出してくれたようだ。

よし、これで不安要素だった彼の冷静さもなくなり、だいたい準備は整ったな。


死んだふりも解除しよう。


「おそかったじゃないかタクマ」

「まあな」

「殺すっ! 絶対に殺すぞ魔王っ!!」

「うむ、その意気だグラン君。それじゃあ僕たちは最上階で待っているから、早くおいでね。……収納っ!!」


そう言い残した俺は収納で最上階……、ではなく、地下B1のゼリリンルームへと転移してきた。

だって収納ってコアのあるところと、地元の大陸で自分自身を収納した場所にしか出れないしね。

最上階にコアなんてないから、そもそも行けないのだ。


それじゃグラン君、あとは頑張って迷宮攻略に勤しんでくれたまえ。

俺はキノッピでも食べながら、高みの見物をしておくよ。



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