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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、真実を知る



少し間をあけてから、酒場のマスターの娘、褐色肌のララさんが旅団について語り始めた。


「……それじゃあ、まず簡単な事からだが、説明するぜ?」

「うん、お願いするよ」

「おう。最初にウチらの説明になるが、まあ聞いてくれ。お前もご存じのとおり、ここはアイゼン帝国闇ギルドの本部って所でな、長きに渡り帝国を裏から支えてきた帝国の懐刀だ」

「なるほど」


なるほど、わからん。

いまちょっと嫌な予感がしてチビりかけたけど、とりあえずこのまま話を聞くことにする。


「闇ギルドっていっても、別に違法な事ばかりしている訳じゃねえし、むしろそういうのを取り締まるのが本来の仕事だ。内容は情報収集や国からの極秘依頼の達成だったり、法で裁けない事への対応。言ってしまえば、どんな国にも必ずある汚れ仕事を担当しているに過ぎない。……ここまではいいな?」

「なるほど」


なるほど、さっぱりだ。

さっぱりだが、頷いておかないと大変な事になりそうなのでそうする。

俺は空気の読めるゼリリンだ。


「そんでここからが本題だ。その裏方である闇ギルドだが、3年前まではちゃんとここもひとつのギルドとして機能していたんだ。……しかし、奴らが現れてから全てが変わっちまった」

「なるほど」

「そう、お前の挑もうとしている相手、【蒼の旅団】の登場だ。あいつらが全部、この国の仕組みをぶっ壊しちまいやがった」

「う、うむ。……うむ」


その後、なんとか全てを分かっている素振りを見せつつ内容を聞いていくと、だいたいの事が分かった。


なんでも、その裏の警察みたいな仕事をしていた闇ギルドが、蒼の旅団の登場により壊滅しかけているっていうのが事の顛末のようだ。

確かに活動に透明性がなく、一般人からはあまりよく思われていない闇ギルドだが、法で取り締まれない人身売買や行き過ぎた違法取引なんかを取り締まるという、国の闇をまとめあげて管理する役割を担っていたらしい。


闇ギルドのトップであるこの酒場のマスターも元公爵家であり、悪を演じながら悪を潰すという、国のダークヒーロー的な立ち位置だったという。

その活躍は目覚ましく、国王からの信頼も厚い帝国のジョーカーだったのだとか。

まさに毒をもって毒を制すという奴だね。


しかし、そのダークヒーローの活躍も、3年前に終わる事となる。

突如として現れた謎の集団、【蒼の旅団】が闇ギルドや盗賊ギルド、はたまた税率の高い貴族たちを力ずくで始末していったからだ。


彼らの行動基準は分からないが、主に恨みの買う事が多い者や組織を狙う事が多いらしい。

そして一度狙われたら最後、その圧倒的な力で、公爵を頂点とした闇ギルドも他のギルドも例外なく滅んだ。


もちろん一般人からは怪しそうに見える組織が滅んだことで、彼らの人気はうなぎ上りになり、今では帝国のヒーローとして扱われているという。


「……って訳だ。まあ、ここまではおさらいだな」

「うむ」


まるで最初から知っていたかのように頷く。

あっ、いまちょっとチビった。


……でもあれだね、蒼の旅団のすごさは分かったけど、正直言って闇ギルドが壊滅するとかどうとか、興味ないや。

俺はカジノがうまく経営できれば、それでいいのである。


だがここからが旅団に関する重要な話なんだろうし、とりあえず素直に聞いとこ。


「で、ウチらが居なくなったことで、乱れに乱れている今の国をなんとかするべく、盗賊ギルドや闇ギルドの残党を集めて、レジスタンスを組んだわけだ。だが、再び裏を取り締まるっていっても、それには力がいる。……最低でも蒼の旅団を超える力が」

「ふむ、だからまずは敵情視察として、情報収集をしていたんだね」

「そういうことだな。……だが相手の旅団のリーダーってのがバケモノみたいに強い奴でな、まるで魔王みたいなおっそろしい魔法を使ってきやがる。ハッキリいって正面からでは手に負えないが、四苦八苦して入手してきたのが今回の情報って訳よ」


……魔王とな。

タクマみたいなチート勇者みたいなのがリーダーをやっているのだろうか。

もしそうならちょっとヤバイな、ちょっと本腰いれて魔王城を強化しなくちゃいけない。


「で、その情報っていうのは?」

「それがさっき言ってた、メンバーのうちの一人目の能力ってやつだ。……カァーッ、この情報手に入れるのに、ほんと死ぬかと思ったぜ」

「ふむふむ」


リーダーもヤバイみたいだけど、その仲間もヤバイらしい。

そんなのありかって感じだ。


「メンバーの人数は全部で5人。リーダーとなっている魔法使いが一人に、その他4人だ。そしてその四人のうち一人目の能力が【神託】……、そう、【帝国の巫女】さんってワケだ。あいつ、前々から怪しいと思ってたんだよなぁ。旅団の奴ら、ウチらの情報をこれでもかってくらい知ってたし」


……なんだって。

あれ、これちょっとヤバくないか。

既に【帝国の巫女】って人に、脅威認定されちゃってるんだが。


ゼリリン大ピンチ。


これはすぐにゼリリン城に帰って、迷宮を強化しないといけない。


「なるほど、貴重な情報をありがとう。僕はちょっとやることを思い出したから、一旦ここで引かせてもらうよ」

「ん、もう帰るのか? まあお前に何があったかは分からないが、ウチらが力になれるなら情報くらいはいつでも引き渡すぜ。……死ぬなよ」

「いざとなったら逃げるから大丈夫」

「ハハッ! それでいんだよガキ、分かってるじゃないか」


いざとなったら収納しておうちへひとっとびだ。

うむ。



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