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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、すれ違う



帝国で酒場と思わしき場所に辿り着いた俺は、マスターにタダでもらったミルクを飲みながら目的の事を尋ねた。

この帝国の巫女の事と、蒼の旅団の事である。


「それでマスター、聞きたい事があるんだけど」

「ククッ、まったく肝の据わったガキだぜ。ここで尻込みもせずに、この俺に面と向かって話しかけてくるなんてなぁ。どこでミルクの合言葉を聞いたか知らないが、大した奴だ。……で、聞きたいことってのはなんだ?」


なんだか知らないが、ミルクは合言葉だったらしい。

きっと、合言葉を言えばミルクをサービスしてくれるってことなんだろう。

見かけによらず、なかなか商売上手なようだ。


ただ金を取るだけでは客足は遠のくからね、こういう経営手腕は見習わないといけないな。

この酒場のマスターはデキる。


「聞きたいのは【帝国の巫女】の事と、【蒼の旅団】のことだよ。知っている事があったら教えてほしい」

「……なんだと?」


俺が巫女と旅団の名前を出すと、それまで静かで怪しげな雰囲気を出していた店内が、急にざわつきだした。


……やっぱり、こんな常識的な事を聞くのはマズかったのかな?

この国じゃ結構有名な人達みたいだったからね。


「……ガキ、お前まさか、全部知った上でる気なのか?」

「そうだよ、全部知った上で行動を起こす。これが僕のやり方って奴さ」


うむ、マスターはやはり、俺がこの土地に不慣れだと分かっているらしい。

彼も言った通り、この土地に無知な俺からしたら何事もまずは情報からなのだ。


この国で事業を起こすのも、それを経営してくのも、帝国の情勢を知っていなければどうにもならないだろう。

ならばまずは巫女と旅団の事を知り、全部知った上で行動アクションを起こす。

これからのカジノ経営において、一番大事な事だ。


このマスターとは良いミルクが飲めそうだな。


「……チッ、なんてガキだ。まさかこんな年端もいかないボウズが決意を固めてるってのに、俺たちが奴らにビビって尻込みしていたなんてな。こりゃとんだ笑い話だぜ」

「そんな事はないよ、慎重というのは悪い事じゃないからね。むしろ本来、マスターくらい情報を集め、成功の基盤が固まってからやるのがセオリーだと思う。その姿勢は尊敬に値するよ」


むしろ新ゼリリン城なんか、適当にコア弄ってたら誕生しちゃった拠点だしね。

経営において、この酒場で見習う事は多いだろう。


「……お、おまえ。 くそっ、わかったよ、お前の勝ちだぜボウズ。俺の知っている事、見てきた事を全てお前に託してやる。……その代わり、絶対に死ぬな」

「まあ、失敗しても死ぬ事はないと思うよ」

「ハッハッハァッ! その意気だ。よし、こんな所ではアレだからな、奥で詳しい話しをしよう。……おいお前らァッ! 俺たちに続く、新しいホープの誕生だァ!! 丁重にもてなせ」

『うっす!!』


なんだなんだ、マスターがいきなり酒場の客たちを集めて、店の奥へと入っていった。

なにかのイベントだろうか?

こんな突発イベントを即座に起こせるなんて、つくづく勉強になるな。


そしてその後、筋肉ムキムキのマッチョさんや、きわどい服を着たお姉さん達に囲まれながら店の奥へと入っていった。

店の奥には武器や防具などといった戦うための設備の他、大量のポーションなどの回復アイテムがあり、まるでどこかの軍隊の秘密基地のような有様だ。


ふむ、あそこに掛けられている剣なんか魔剣だろうし、結構いい設備だな。

もしかしたらこの酒場は、そのうち武器屋とかも開業する予定だったなのかもしれない。


「おぅ、ここが本来の【赤き翼】の拠点だ、ゆっくりしていってくれ。結構いい感じに準備が整っているだろ?」

「そうだね、なかなかの設備だ。特にあそこの剣なんかいい感じだね」


この酒場は赤き翼っていうらしい。

そしてあの剣、おそらく金貨100枚、日本円で1000万円は固いだろう。

スラタロ.Jr10匹分だ。


開業はインパクトが重要だとはいえ、よくここまで準備したな。


「そうだろうそうだろう。……で、【帝国の巫女】と【蒼の旅団】の情報だったな。それについてはちょっとまってろ、もうすぐ新鮮な情報を持って帰った仲間が到着する」

「それじゃ、ミルクでも飲みながら待たせてもらうよ」


……それにしてもこのミルク美味しいな、商品の一つ一つにこだわりを感じる。

まったく、いい仕事してるぜ。


それから数分ほどミルクを堪能していると、急に人の気配を感じ、部屋の扉がバタンと大きく開かれた。


「今帰ったぜオヤジっ!! ……って、なんでこんな所にガキがいるんだ?」

「ぜりっ?」


そこには、大剣を持った赤髪オールバックの美女がいた。

褐色の肌に鍛えあげられた筋肉、露出度の多い服を着た18歳くらいのお姉さんだな。


「ただのガキじゃねぇぞララ。このボウズは【蒼の旅団】に単身で挑もうっていうとんでもねぇ奴だ、舐めてると火傷じゃすまねぇぜ?」

「ほう、確かにただのガキじゃなさそうだ。まあオヤジが認めたってんなら信用に値する、これ以上とやかく言う事はねぇよ。……で、今回の成果についてだが、【蒼の旅団】のメンバーのうち一人の能力が発覚した」

「……そうか、よくやった。その事も含め、このボウズに旅団の情報を一から説明してやってくれ」


やっと説明してくれるそうだ。

これほど優秀な経営者が警戒するほどの旅団さんとやらは、いったいどんなノウハウを持っているのだろうか。


騎士団長さん曰く戦闘力もすごいみたいだし、油断はできない。

もし厄介な奴らなら、ゼリリン城の警備をより厳重にする必要があるだろう。



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