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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、人助けをする



闘技大会から1週間、俺は新しい城型ダンジョンの大広間で、カジノ運営の最終調整をしていた。

用意したのは一般的に知られているカジノの設備とは違い、ルールなんかが非常にわかりやすくなったこの世界独自の物が多い。


あの日本の世界のカジノを取り入れても、一からやり方を説明するのはめんどくさいからね、このくらいで丁度いいと思われる。


現在の従業員はタクマと俺、そしてどこにでもついてくるリグしかいないが、まあなんとかなるだろう。

経営が本格的になったら魔王城の魔族とかも貸してもらう予定なので、実質的な人数は足りている。


役職としては俺がオーナーで、リグが接客、タクマが警備員だ。

完璧な布陣といっていいだろう。


「ということで、そろそろ準備も終わりそうだし、外の様子を見てくるよ」

「いってらっしゃいませ若、お気をつけて」

「お、やっとか。じゃあ俺もいくわ」


ゼリリン2号をリグの護衛として待機させ、タクマと外の調査に向かうことになった。


ちなみに、この新大陸に発生した城型ダンジョンだが、場所は木々が生い茂る森のど真ん中にあるようだ。

外には結構強めの魔物が跋扈しており、おそらくC級~B級だろうと推測される。

リグ一人じゃ森を出るのでやっとのレベルだ。


だが魔物の本能なのかなんなのか、この城型ダンジョンに近づいては来るのだが、施設そのものは壊そうとはしないようだ。

さすが俺の新拠点、魔王ゼリリン城は無敵だな。


まあ城型といっても、生まれたばかりのこのダンジョンはまだ小さく、外観は屋敷程度の大きさしかないんだけどね。


「にしても、この森の魔物は向こうの大陸に比べてやけに強ぇな。【彗星剣】」

「確かにB級レベルの魔物なんて、こんな量が向こうで出たら大騒ぎになるレベルだね。ゼリリンビーム」


タクマと雑談しながら、時折飛び出してくる魔物をゼリリンビームと勇者流剣技で無造作に屠っていく。

種族魔王と称号魔王のペアに向かってくるとは、愚かな奴らだ。

愚かなので、こいつらはあとでDPダンジョンポイント変換の刑に処す。


そしてしばらく攻略本のマップを見ながら人里に向かっていくと、マップに人間らしき反応が見えた。

だがおかしいな、ここはまだ森の中だし魔物も強い、一般人がうろちょろしているような所じゃないんだが。


もしかして冒険者だろうか。


「マップに人間の反応があるから、もしかしたら冒険者かもしれない。ゼリリン城の宣伝のためにも接触しようと思うけど、どうする?」

「あ? まあ、いいんじゃねぇか? そもそも町だか村に向かった理由も、その宣伝のためなんだしよ」

「じゃあそういうことで」


そして攻略本さんを頼りに歩を進めていくと、そこには無数の魔物相手に無双している全身鎧の騎士さんがいた。

この量のB級近い相手に無双とは、やるなおぬし。


……だがよく観察してみると、鎧はところどころ凹んでいたりするし、ノーダメージという訳はなさそうだ。

おそらく実力的にはA級の上位といったところだろうか、わんわんと同格である。


今も魔物相手に雄たけびをあげながら剣を振り回しているし、楽しそうでなによりだ。


「くっ、おぞましい魔物共め。我は一歩も引かんぞっ! うぉおおおっ!」

「……なんか一人で盛り上がってるなあいつ」

「でも楽しそうだね、愉快な人かもしれないよ」

「いや、どうみてもあれは楽しそうとかじゃねえだろ。お前の感想の方が愉快だ」


俺の感想が愉快とは、失礼な奴だ。

タクマだって盛り上がってそうとか言ってたじゃないか。

あの人はきっと愉快な人だ、そうに違いない。


「……とにかく、あのままだといつかジリ貧になって死ぬだろうし、とりあえず助けるぞ」

「僕たちも混ぜてもらおうってわけだね、いい考えだ」


確かに、楽しい事はみんなでやった方がなお楽しい、タクマにしては的を射た意見だな。

……それじゃ、ちょっくら本気で遊ばせてもらうとしよう。


「助太刀するぜそこの騎士っ! 【二刀流】【ヘイスト】ッ!」

「ぼくもぼくも、ダークオーラからの、連続ゼリリンパンチ」

「なっ!? こんな魔境に人がっ!? しかし、助太刀感謝するっ、我一人では危ないところであったっ!」


おらおら、くらぇっ!

これが筋力Aとなった俺のパンチ力だっ!

ついでにゼリリンビームもサービスしとくぜ。


相棒もここぞとばかりに二刀流で無双しているし、討伐数では負けられん。


「な、なんという方々だ…… この魔境の魔物を、一方的に蹴散らしているだと……」

「ぜりぜりぜりっ!!」

「オラオラオラッ!!」


うむ、絶好調である。


しかしここは魔物の宝庫だな、やっぱりあそこにカジノを建てたのは正解だったかもしれない。

こうやって冒険者が倒した魔物をダシに経営していれば、一気にDPが貯まる事だろう。


そして助太刀してから数秒後、騎士さんが苦戦していた10匹近くの魔物は一瞬で肉塊になり、戦闘は終了した。

なかなか良い祭りだったぜ。


「ふぅ、こんなもんか」

「予想してたより、あんまり強くなかったね」

「ば、ばかなっ!? フレアサーベルタイガーとイビルグリズリーの群れを瞬殺だとっ! あなた方はいったいっ…… ま、まさか、これが噂に聞く【蒼の旅団】なのかっ!?」


なぜか騎士さんが驚いているようだ、あと蒼の旅団ってなに。

よくわからないけど、なにかの団体と勘違いしているようだ。


「まあ、たまたまここを通りかかっただけだから、気にしないでいいよ」

「いや、助けてもらっておいてそういうわけにも行きますまい。我はアイゼン帝国騎士団長、ベルレイン。此度は助太刀感謝する【蒼の旅団】殿」


冒険者だと思っていた騎士さんは、ほんまもんの騎士団長さんだった。

しかし蒼の旅団か、なにか厄介なことに巻き込まれそうな予感がするな。


「……あ、それはそうと、よければこのチラシをどうぞっ」


まあとりあえず、出会った人にはカジノの宣伝だ。

チラシ配りは基本だな。



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