ゼリリン、新大陸に進出する
個人戦を終えた俺は、昼食を取りそのままパーティ戦を迎えた。
結果は2回戦敗退だったが、十分健闘したと思われる。
なにせ、2回戦でタクマと最上級魔族で固められたパーティと激突してしまったのだ。
今回はパーティ戦なので上空からの大魔法は味方に被害がでるし、なにより俺が集中砲火されてしまったのが敗因だ。
一応パーティで連携を組んで粘ったが、最後は接近戦チートのタクマに場外へと投げられてしまったのである。
俺の体は小さく、軽く投げられただけでホームランになるので、タクマレベルになるとちょっと厳しい。
ま、何の準備も無しじゃ、こんなもんだろう。
俺がホームランになる瞬間、道連れの自爆魔法でタクマ以外を場外まで吹き飛ばしたし、よくやったと褒めてやりたいくらいだ。
まあその後、俺が居なくなったパーティは瓦解し、タクマに4人共一掃されたんだけどね。
最後にルゥルゥがまた逃げていたので、あのロリ魔女にはあとでお説教をしなくてはならない。
「ということで、パーティ戦2回戦進出を祝って、乾杯っ!」
『かんぱ~いっ!!』
そして現在、お祭り騒ぎのパーティ戦を終えた魔王城では、出場した全選手を祝う祝賀会が開かれていた。
魔族も人間もみんな良い笑顔で飲み食いしている姿を見ると、やはり奴の考えた闘技大会は間違っていなかったのだと実感できる。
タクマのパーティは優勝したようだが、午後の部に関しては成績など関係ないとばかりに、他のパーティたちに絡んでいるようだ。
「はははっ! ミルクでも飲むかいセリルッ! 僕は今最高に気分が良いんだっ、じゃんじゃん行こう」
「だめよセリル、私が注いだミルクを飲みなさい。それともあんた、この私の注いだミルクが飲めないっていうのかしら?……うっ、ゲロゲロゲロ」
ユウキは酒の飲みすぎで酔っぱらってるし、パチュルも同じく酒の飲みすぎで、ヒロインならぬゲロインと化している。
この世界には未成年の飲酒が禁止なんて法律はないので、やりたい放題のようだ。
「あぅー、わがぁ~。わらしは、わだじはですねっ!? いつも、いつもがんばってりゅんでずっ! がんばってりゅんでずぅっ!! うわぁあああんっ」
「のじゃぁあああっ! この珍味は、まさか虹カエルの足っ!? ほう、これはコカトリスの肝っ! 美味なのじゃぁあああっ」
さらにその後も宴は続き、リグは酔った影響で泣き上戸になるし、ルゥルゥはテーブルの上の珍味をこれでもかとばかりに食べつくしている。
ていうかまだ食べるのかルゥルゥ、奴は食いしん坊スキルでも持っているのだろうかと疑うレベルだ。
もうお腹パンパンに膨れてるし、そのくらいにしとけって。
「めちゃくちゃだな、もう」
ほんと、やれやれである。
「……ハッ。いいじゃねぇか、たまにはこういうのもよ。あ、そのキノッピ一つくれ」
「む、タクマか。キノッピは腐るほど栽培してるから、いくらでも持って行っていいよ」
呆れた顔でメンバーたちを見ていると、タクマが声をかけてきた。
彼も少しは酔っているようだが、魔王という立場を少しは気にしているのか、ほどほどに抑えているようだ。
「それにしても、タクマの闘技大会作戦は上手くいったみたいだね。この光景をみれば、この大陸の未来が明るいことは容易く想像できるよ」
「あぁ? 何言ってんだ、俺の力じゃねぇよ。らしくねぇ言い方になるが、こうなれたのは全てこいつら全員の力だ。……一人一人の意識が変わらなきゃ、なんにもならねぇんだからよ」
まったくもってその通りである。
「でよ、セリルお前、これからどうすんだ。急な誘いだったが、ぶっちゃけ言って今回の問題はお前にはなんの関係もねぇ事だったんだしよ。礼と言ってはなんだが、受けた恩くらい返すぜ」
「うーん、僕? それならちょうど、今新しいDP稼ぎの計画を考えているんだ。受けた恩を返すというなら、その手伝いをしてくれない?」
なにせ、次のダンジョンにはボディーガード兼従業員が不足しているのだ。
このチート勇者に色々手伝ってもらえれば、経営も安定するだろう。
「DPってことは、ダンジョン絡みか。なんだ、お前まさか他のダンジョンに喧嘩でも吹っ掛ける気か?」
「いやいや、違うよ。今回のは全くそういうのとは関係ない」
「ほう?」
実はこの2週間、対タクマ戦用のアイディアを考えていろいろコアを弄っている時に、適当に作った新しいコアが新大陸に出現したんだよね。
迷宮タイプは魔王城と同じ、城タイプ。
その小さい版である。
そこで俺は考えた、この城型ダンジョンと今の俺が持つスキルで何かできないのかと。
で、出した答えが……
「僕は、新大陸にカジノダンジョンを作ろうかなって思ってるんだよ」
「…………はぁっ!!?」
うむ、カジノである。
幸い手元の資金は十分にあり、設備を整えるのは楽勝だ。
あとはお金の代わりにダンジョンポイントを稼げるようにするだけ。
つまり、通貨を金貨ではなくて魔物の素材や魔石にするっていう寸法である。
「でも新大陸にはちょっと厄介な人間や魔物がうろちょろしててね、まだ発見されないけど向こうの冒険者も結構強いみたいだし、従業員と警備員が欲しかったんだ」
実はちょっと下見に行ったときに、人里の近くに出現してしまったことも発覚しちゃったんだよね。
あんまり警備が手薄だと、大変なことになるのだ。
「ということで、警備員よろしく」
「……ククッ」
「ぜりっ?」
「クハハハハッ! やっぱお前は飽きねぇわ、意外すぎるっ、ギャハハハハッ…… ゲホォッ!」
「おまえいつも咽てんな」
ま、いっか。
とりあえず従業員一人ゲットってことで。
じゃあ、さっそく帰ってカジノつくろっと。
新章突入しました。
カジノ編ではないです、大迷宮編です。




