ゼリリン、準備する
ユウキとパーティ戦出場の約束を取り付けたあと、また後日詳しい作戦会議をすることになった。
まあ作戦会議というか、メンバーの自己紹介なんだけどね。
彼にしてみれば、俺以外とは初見なはずなので、親睦を深める意味でも一回集まろうというやつである。
集まる場所は闘技大会の会場、魔王城だ。
パチュルは向こうにいると思うし、せっかくだからそこで合流することになった。
「ということで、勇者が仲間になったので、次は教会に行こう」
「なんじゃ、なぜ教会なんじゃ? そのパチュルというやつは、聖女か何かなのかのう?」
「いや、ちょっと装備を整えるだけだよ。リグとルゥルゥは祭壇の前で待っててくれればいいから」
俺が教会に向かう理由は、一度亜空間迷宮に戻り、DPで装備を購入してくるためだ。
ルゥルゥとユウキには不要だろうけど、リグとパチュルは装備で強化しないと心許ないからね。
それから収納を使い亜空間迷宮へとやってくると、お馴染みの白い部屋で虹のコアをいじった。
さて、ここからは攻略本さんとにらめっこだな。
5歳の頃に比べてだいぶポイントも貯まっており、ダンジョンバトルにも勝利してきたことから、ある程度の装備は整えられると確信している。
魔道具や魔導書、魔剣の類は数百ポイントのDPが必要だけど、まあ大丈夫だろう。
ちなみに、今回俺が整える装備は主にアクセサリー系統だ。
主力となる剣や槍などの武器、盾や鎧などといった防具はわざわざDPで購入せずとも、探せば売っているからね。
それに主力武器は目立ちすぎる、分不相応な装備をチラつかせてもロクなことにならないだろう。
目立つような武器は、自分がその武器を持っている事によって生まれるデメリット、嫉妬や欲望から身を守れるようになってから使うべきだ。
……とかなんとかいいつつ、ようするに小心者なだけである。
ゼリリンならぬ、ビビリンである。
渡すならせめて、リグの魔剣程度の地味なやつに抑えたい。
それじゃ、気を取り直してDP交換リストを見ていこう。
【亜空間迷宮、DP:41220】
【購入一覧(アクセサリー、腕輪)】
└疾風の腕輪:[500]DP
└剛力の腕輪:[500]DP
└魔力の腕輪:[500]DP
└防魔の腕輪:[500]DP
└治癒の腕輪:[500]DP
└etc……
【購入一覧(アクセサリー、指輪)】
└疾風の指輪:[80]DP
└剛力の指輪:[80]DP
└etc……
アクセサリーの部位はそれぞれ、指・腕・首・耳、などなど多岐に渡るようだ。
マニアックなところだと、入れ墨とかコンタクトとかもあったけど、まあ今回はそこまでする気はない。
で、俺が選んだのは以下の通りだ。
【魔王ゼリリン(俺)】
└剛力の腕輪、左右1個ずつ。合計2個。
└剛力のグローブ、左右1個ずつ。合計2個。
【リグ】
└治癒の腕輪、左右1個ずつ。合計2個。
└疾風のグローブ、左右1個ずつ。合計2個。
【パチュル】
└治癒の腕輪、左右1個ずつ。合計2個。
└疾風のグローブ、左右1個ずつ。合計2個。
主にこんな感じである。
だいたいグローブと腕輪の性能は同じで、2個つけたらランクが1つあがるくらいだ。
治癒の腕輪は微弱な回復魔法がかかっていると思って相違ない。
よって、俺は装備の効果で筋力がCからAへと上がり、これで少しはタクマとまともに打ち合えるようになったと思われる。
総出費は[6000]DPとかなり高めだったけど、今の俺にはそこまで痛くない数字だな。
「ただいまー」
「ふむ、意外と遅かったの?」
「リグの装備を選ぶのに、少し時間がかかってたんだよ」
リグとパチュルに疾風系を選んだのは、そもそも彼女らはヒットアンドアウェイ戦法が基本だからである。
当たらなければどうと言う事もないを地で行く人たちなので、敏捷強化は必須だ。
それじゃあ、さっそくアクセサリー類を装備してもらおうか。
「で、これがとってきた大会用の新装備ね。よかったら使ってよ」
「……ありがとうごじゃいまずっ! 大切に、大切にしまづぅっ!! ……ぐすっ」
また泣き始めた。
受け取った装備を大事そうに胸に抱えて、肩をぷるぷる震わせている。
「のう、ワシには何かないのか? ワシもそういうのが欲しいのじゃが」
「いやいや、ルゥルゥは自力で魔道具つくれるじゃん」
「……カーッ!! これだからチビッ子はっ! 乙女の扱い方をまったく分かっておらんわ。もういいわい、自分で作る」
結局自分で作るのかよ。
乙女の扱いだか何だか知らないが、DPの無駄使いを強要するのはやめてほしいものである。
いったいどんな魔道具を作るのか知らないけど、自力で作れるならぜひそうしてくれ。
そしてルゥルゥがぶつぶつ言いながら亜空間を漁り始めた。
きっと道具とか探しているんだと思う。
というかここで作るのかよ、作成速度早すぎだろ。
「まったく、なぜこやつがモテて、天才で可愛い美少女のワシに彼氏ができんのじゃ。世の中は理不尽じゃわい…… うむ、できた」
いやだから早すぎだから。
変なネックレスを取りだしたと思ったら、雑談をしながら魔法をネックレスに込め始め、気づいたら終わっていた。
「で、それ何の効果があるの?」
「私も気になります」
「空間魔法が何回か使えるネックレスじゃ。いざという時に瞬間移動で逃げながら戦う」
回数制限があるとはいえ、めっちゃ有用な魔導具だった。
天才かよ。
「さすがルゥルゥ、やれば出来る子だった……」
「すごいですね……」
「ぬわははははっ! もっと褒めるのじゃっ! ぬっはー!!」
その後、調子に乗ったルゥルゥが「今なら彼氏ができるかもしれないっ!?」とか言い出すまで褒め称えてあげた。




