表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/164

ゼリリン、頼み事をされる


あれからしばらくルゥルゥでキノッピ遊びを続けていると、だれかが俺の部屋に転移してきた。

もしかして、リグが戻ってきたのだろうか?

いや、それにしては早すぎるな。


「よぉセリル、ちょっと今いいか?」

「……なんだタクマか。リグなら今はいないよ、悪魔の囁きならまた今度にしてよ」


誰かと思ったらタクマだった。

なにやら真剣な顔をしているが、今度はどんな悪知恵を吹き込みに来たのだろうか。


「いや、用があるのはお前の方だ。お前も知っている通り、俺は今まで魔族と人の関係の、その落としどころを探していたんだが…… それについて、向こうの大陸で魔族と人族の折り合いがつきそうに無くなったんだ」


なるほど、今回はかなり真面目な用事だったようだ。

だがこれは本当に笑い事じゃないな、最悪全面戦争になるかもしれない。


まあ、話を最後まで聞いたわけでもないから、なんとも言えないけどね。


「カッカッカ! 魔族が人族と争っているなどいつものことじゃろうが、なにをいまさら深刻な顔をしておるんじゃ」

「あん? 誰だお前は。なんでこんな所に幼女がいる」

「誰が幼女じゃっ!」

「うぉっ!? あぶねぇ!! なんで幼女がこんな俊敏な動きするんだよっ」


幼女呼ばわりに怒ったルゥルゥがマッハパンチを繰り出し、タクマがマッハステップで避けた。

喧嘩っ早すぎるだろ、さすが魔族。


しかも、さっきまでは乙女がどうのこうの言ってたのに、若く見られても怒るなんて理不尽すぎるな。


「まあまあ、落ちついて二人とも。とりあえず紹介しとくと、この幼女はルゥルゥっていう名前の魔族だよ。種族は魔女らしい」


正式には亜空の魔女らしいけど、空間魔法が使える珍しい魔女ってだけで、本質は変わらないらしい。

遊んでいるときに、さっき自分で語ってた。


「なんだ魔族かよ、それなら納得だ。ちなみに俺はタクマ・サトウ、100年前まで勇者をやっていた、ただの人間だ。……それにしても魔女なんていう最上級魔族と仲良くやってるなんざ、さすが魔王セリルサマといったところか」

「魔王じゃと? ずいぶん大げさな呼び名じゃな。そもそも、本物の魔王なんぞワシですら見たことが無いくらいの伝説的種族じゃぞ」

「まあ、それは今はおいておこう。それで結局、僕になんの用なの?」


問題はそこである。

あのタクマが人間と魔族の仲を取り持つのが不可能っていってるんだ、そうとうな事態なのだろう。


でもだからといって、何の計算も無しにこいつが俺を頼るとも思えない。

なにが事情があるはずだ。


「ああ、それなんだがよ…… セリルお前、闘技大会に出てみないか?」

「なんでや、今その話ちゃうやろ」


急に話が飛んだ。

だがその後、詳しくタクマの話を聞いてみるとだいたいの事情がつかめた。


まずこの落としどころを探す最大の障害として、人間と魔族の価値観の違いが大きいのだという。


人間側が彼らに求めるのは力ではなく安全、だが魔族は力。

この両者の溝がどうしようもない程に深く、いままではさすがのタクマでもどうする事もできなかったのだ。


そこで彼は考えた、それなら安全でなおかつ力を示せればいいんじゃないかと。

そうして思いついたのが、闘技大会による決着の決め方なんだとか。


殺しが禁止の闘技大会ならば、お互いの力を認め合うことも最低限の安全を確保することもできる。

そうなれば、これをきっかけに互いを知る機会になると考えたのだ。


「なるほどね、たしかに合理的だ。でも、なんで僕が参加しなくちゃいけないの?」

「決まってんだろ、お前が力ある魔族だからだ。表向きの立場としては人間側のお前が出場していい成績を残せれば、それだけでやりやすくなる」

「ほむ、なるほど。ちなみにルールは?」

「殺しは無し、あとはなんでもありの個人戦&パーティ戦だ。試合中のポーションの使用は無し」


個人戦は文字通り一人で戦い優勝を目指すルールで、パーティ戦はチームとしての優勝を目指すらしい。

タクマとしては俺にはどっちにも出場してほしいらしく、どうにか頼めないかと頭を下げてきた。


「頭なんて下げるなよ、お前らしくもない。いいよ、出るよ」

「お前ならそう言うとおもってたぜ、恩に着る」

「カッカッカッ! そういう事ならワシも参加するぞっ! もちろん魔族としてな。面白そうなことは放っておけぬ主義なのじゃ」


ルゥルゥも参加するらしい。

ならこっちもリグやパチュルを誘っておこうかな、パーティ戦要員として。


あっ、そういえば大事な話を聞いてなかった。


「今気づいたんだけど、タクマはどっち側で出るの?」

「俺は魔族側だな。一応これでも元魔王城の主だ、人間側で出たら部下に示しがつかねぇ」

「わかった、それならどっかで戦うかもな」


やってみなきゃ分からないが、こいつは全てのステータスがS以上の超絶バケモノだ、油断はできない。


「そんなときゃ宜しく頼むぜ、相棒」

「いつからお前の相棒になったんだよ」


まったく、都合のいいやつである。


闘技大会の日程は2週間後で、場所は魔王城で開催されるらしい。

すでに向こうの大陸の首脳陣たちには話がついており、ぞろぞろと選手や貴族たちが魔王城にあつまっているようだ。


ってことはもちろん、一応まだ公爵家令嬢であるパチュルなんかも向かっていることだろう。

現地でパーティ参加の是非を聞いてみればいいかな。


「よし、それならさっそく神聖国へ転移してリグを拾おう」

「うむ、ワシもつれていけい」


あとで大会のための準備をしとこ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ