ゼリリン、のじゃロリで遊ぶ
ルゥルゥの暴走を止めた後、校舎から飛び出して高級宿へとUターンしてきた。
俺が首根っこをつかんで引き摺っている間、ルゥルゥはずっと暴れていたが、ゼリリンに魔法もパンチも効かない事がわかると大人しくなったようだ。
「なんて奴じゃ…… ワシの魔法も体術もまるで効いておらん」
「なかなか面白い魔法だったけど、ちょっと火力が足りなかったかな?」
流石に魔導の探究者というオリジンスキルを持つだけあって、魔法のバリエーションはかなりのものだったけどね。
しかし、いかんせん基本的なステータスが惜しい感じに足りてないので、こちらの再生が間に合ってしまうのである。
「うぅ、もうだめじゃぁ…… きっとこのまま連れていかれて、あんな事やこんな事をされてしまうのじゃぁ……」
「えっ?」
「許してほしいのじゃぁああっ! 生まれて300年、まだ彼氏も作ったことが無いのじゃぁあ! 乙女の純潔を奪うのだけはどうか、どうかお許しをっ!」
「こののじゃロリは、いったい何を勘違いしているんだ?」
こいつは、俺をいったい何と勘違いしているのだろうか。
急に泣き始めたと思ったら、純潔がどうのとか言い始めたぞ。
意味がわからない。
というか300年生きてて乙女はないだろ、のじゃロリどころかロリババアである。
だが、これだけ生きてて色恋沙汰の一つも無いとは、ちょっとだけかわいそうな奴かもしれない。
「いやいや、僕には君をどうこうする気はないから。校舎の壁を破壊しようとしていたから止めただけだよ」
「なんじゃ、そうならそうと言わんかい。心配して損したわ」
「……立ち直り早すぎだろあんた」
自分に被害がないと分かると、急に態度がぞんざいになった。
いまも引きずられながらお尻をぽりぽりかき、どこからともなく出した魔導書を読み始めている。
なんて奴だ、ふてぶてし過ぎるぞ。
まあ、魔法の研究に熱心なのは良いところだと思うけどね。
「ふむふむ、ふむ」
「ほむ」
「ふむふむ、なるほど。これはなかなか…… ぷっ、ぬわははっ!」
「ぬっ?」
あれ、どうしたんだろう。
なんか本を見ながらゲラゲラ笑いだしたぞ。
いったいどんな本を読んでいるのか気になるし、ちょっと覗いてみようかな。
「ねぇ、さっきから何の本読んでるの?」
「ぬわはははっ! ゲラゲラッ! ヒーッ、ヒーッ! こ、これは……っ!」
「ねぇねぇ、何の本を…… って、お前それギャグ小説じゃないかーいっ!」
「のじゃーっ!? 何をするチビッ子っ! それはワシの人生じゃぞ、返さんかいっ!」
くそ、一瞬でも勤勉だと思った俺がバカだった。
研究とか魔法の事とか、こいつそんな事は何も考えてない。
「何が人生だ、頭に来たからこの本は没収ね」
「なんて奴じゃ、ひどすぎる。まるで悪魔のような奴じゃなっ!?」
悪魔もなにも、そもそも魔族で魔王だしね。
うむ、なんか面白そうだったしあとでこっそり読んでおこう。
そしてその後、再び暴れ出したルゥルゥを引き摺りながら宿へとたどり着いた。
ちなみにリグは現在、ゼリリン2号とクローム神聖国に依頼を受けに行っていて不在だ。
こんなロリ魔女と引き合わせることがなくてよかった、リグにどんな悪影響があるか知れたものじゃない。
「さて、やっと宿についた訳だけど…… まず何から聞こうかな」
「離せ悪魔めぇっ! あの本を、マイライフを返せぇっ」
「どんだけあの本に執着してるんだよ」
……しかたない、このままじゃ会話にならないから返してあげよう。
俺は心優しいゼリリンだからね。
それからギャグ小説をルゥルゥに手渡そうとすると、目にも止まらぬ速度で本を奪い取り亜空間へと本をしまったようだ。
追いかけっこしてた時よりも高スピードだったかもしれない。
「フーッ、フーッ! 危なかったのじゃ、もう少しで大事な本が悪魔の手におちるところじゃった」
「はいはい。……で、結局なんで僕に付きまとうのかな? スライムの生産方法なんて知ってどうするんだ」
問題はそこである。
別に同じ魔族同士だし、魔物の合成スキルの事を教えても問題ないんだけどね。
ただなんか企んでたらめんどくさいので、一応聞いておく事にする。
「はて、スライムの生産方法? ふーむ、ふむ。……あぁっ! なんでお主の事を追っているかと思ったら、そういえばそんな理由じゃったわ。途中から追いかけるのに夢中で、目的を忘れておったわいっ、なははははっ!」
「……ゼリリンパンチっ!!」
「いだぁっ!?」
こんだけ迷惑かけておいて理由がそれかよ。
俺の周りにはなんでこう、変な奴ばかりが集まるんだ。
「わ、悪かったのじゃっ! 本当に最初はスライムの生産方法が不思議で、研究しようと思って訪ねたのじゃぁっ! ……ちらっ」
「ちらっ、じゃないから」
謝った後に、謝罪の効果があるかちらっと確認したら台無しだろ。
もうだめだこのロリ魔女、ゼリリン疲れたよ。
疲れたから、今日のところはこいつの相手をするのはやめよう。
キノッピでも食べてゴロゴロして、そのうちルゥルゥが飽きて帰るのを待つ事にする。
「もぐもぐ」
「……のう、それ美味しいのか?」
「……もぐもぐ」
「…………のう」
ルゥルゥが仲間になりたそうに、こちらを見つめてくる。
キノッピが気になるらしい。
よし、ちょっとさっきの仕返しをしよう。
「美味しいよ」
「……くれ」
直球だな。
「ほい、あーん」
「あーん」
「っと思ったけど、やっぱやめた」
「なぜじゃっ!?」
ふむ、なかなかこの遊びは面白いな。
その後、ルゥルゥが遊ばれていると学習するまで5回ほど同じことを繰り返した。




