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ゼリリン、新たな商売を思いつく


スライムをテイムしたあと、まっすぐ宿にもどってきた。

とりあえず全員で集まり、まずはこの一匹目をどうするか検討中である。


「で、こいつどうしよう」

「どうしますか?」

「どうすんだこれ」

「スラ?」


どうしよ。


考えてても仕方ないし、まずはステータスのチェックをしよう。

話はそれからだ。


「サモン、攻略本」


どれどれ。


【マザースライム:スラタロ】

成長標準:

生命力:C/魔力:E/筋力:E/敏捷:E/対魔力:E

現在値:

生命力:C/魔力:E/筋力:E/敏捷:E/対魔力:E


オリジンスキル:なし

スキル:増殖


【増殖】

スキル効果:

自分の魔石に魔力が過剰供給されると分裂し、増える。

増えた分裂体は、ひとつ下位の存在として生まれる。


なんか普通のスライムじゃなかった。


「えっと、スラタロに増殖スキルがついてる」

「あ? じゃあそいつはマザースライムだな。スライムの密集地に一匹はいるボススライムだぜ」


まじか、スラタロはやはりエリートだったか。

俺の勘は間違ってなかった。


「魔物の種族までよく知ってるね、さすが大陸を冒険した勇者だよ」

「……ふふっ。やっと貴様も、若の役に立つ喜びがわかってきたようだな。だが若の右腕は私だ、譲れない」

「まあこれでも100年生きてるからな、魔物とかには詳しいぜ。あと別に喜んでねぇし譲らなくていい」


そうか、確かに魔王城で配下のダンジョンとかの面倒もみてたら博識になるわな。

これでも向こうの大陸ではラスボスだった訳だし。


なんていうか、ある意味ではタクマも魔王だな。

強さで頂点というより、魔物に精通してるという意味で。


「でもまあ、増殖スキルを持っている事は好都合だ。これでスライムを乱獲しなくても済むしね。ヒヒッ」

「確かにな、いくらでも実験台にできるぜっ。ヒヒッ」

「「ヒヒヒヒッ」」

「ス、スララ……」


俺たちがスラタロを見つめて怪しげに笑い合うと、リグの後ろに隠れて震えだしてしまった。

ふふっ、そんな怖がることはないさ、実験は一瞬で終わるだろうからね。

……ヒヒッ。



それじゃあまずは魔力の過剰供給からだ、これでもくらえスラタロォ!!

全力のゼリリンチャージだっ!


「うぉおおっ!! ゼリリンチャージッ!!」

「スラァッ!?」

「俺も混ぜろやっ! ブレイブチャージッ!」

「えっ!? じゃ、じゃあ私も。……チャ、チャージっ」

「スラァァアアア!!?」


俺を筆頭に、合計3人で全力のチャージを行うと、スラタロが虹色に輝きだした。

増殖が始まったようだな。


……そして、まず一匹目のスライムが生まれた。


「すらっ」


一回り小さいな。

下位の生命体らしいから、おそらくはただのスライムだろう。


よし決めた、こいつらの名前はいまからスラタロ.Jrだ。


「すらっ」


2匹目が生まれた。


「すらっ」

「すらっ」

「すらっ」


おっ、一気に3匹増えたぞ。

さあどんどん増えろ。


「ス、……スラ」


……ん?

どうしたんだ、様子がおかしい。


『すらららららららっ!!!』


「ぬわーっ!?」

「おいバカ、増えすぎだろ!! セリルてめぇ、どんだけ魔力込めたんだっ!?」

「ひぃいいっ、押しつぶされるぅ! うげっ」


スラタロ.Jrが一度に100匹くらいに増えてしまった。

スラタロのすぐ近くで魔力を込めたリグなんて、スライムのピラミッドに押しつぶされ、女の子にあるまじき呻き声をもらしている。


まあでも、これだけ増えれば配合素材には困らないだろう。

めちゃめちゃ増えたし、配合する作業が苦労しそうなくらいだ。


「よし、実験は成功だ」

「成功とかいう問題かっ!?」


うむ。

予想よりちょっと多く増えただけで、だいたい成功である。


「だすげでくだざい若~っ! うごっ」

「ほいほい、今助けるよ」


その後、スラタロ.Jrたちの山に埋もれたリグを救い出す事に成功した。

息も絶え絶えなので、一本くらいポーションでも分けておくかな。


……ん、ポーション?


「……まいっか」

「いいのかよ」


うむ、いいのである。


「まあまあ、落ち着いてくれみんな。……僕に考えがあるんだよ」

「あん? 考えもなにも、どうしようもねぇだろこの数はよ」

「ぜぇっ、ぜぇっ。き、貴様ァ、黙って若の話を聞けぇ」


確かにこの数はちょっと多すぎたが、逆にそれがいいと俺は考えたのだ。

まずは論より証拠だ、実際にやってみるのがいいだろう。


「やってみれば分かるよ」


だがその前に、お疲れのリグにはポーションを渡しとこう。



えー、こちらゼリリン。

ただいまスラタロ.Jrの配合中である。

実験はだいたい成功、以降作業を続行する。


「……ふぅ、これでやっと98匹目か。さすがにこれだけ配合すると魔力の消費も激しいね」

「クハハハッ! あとちょっとだ、頑張れっ! だがまあ、まさかポーションとスライムを配合して、こんな魔物が生まれるとは思わなかったぜ」

「浮いてますっ! スラタロ.Jr達が浮いてますよ若っ! これでもう私は潰されないっ! あははははっ」


ピラミッドにつぶされ、さきほどのトラウマが残っていたリグが勝利の舞いを踊り始めた。

そんなに喜んでくれると俺も嬉しいよ。


あとでこいつら全員いなくなるんだけどね。


ちなみにだけど、彼らと配合した素材はただの市販ポーションだったりする。

さきほどリグにポーションを使おうとした時に閃いたのだが、100本ほど所持していたポーションを配合素材に使えないかと考えたのだ。

そう、土の迷宮の戦闘で傷ついたわんわんを癒すために購入したアレだね。


今はもうエリクサーが大量にあるし、ここらでいらないポーション類を一気に放出してしまおうという算段である。


それで出来上がったのがこいつ、白い羽が生えた真っ赤なスライムだ。


【ヒールスライム:スラタロ.Jr】×100

成長標準:

生命力:C/魔力:D/筋力:E/敏捷:E/対魔力:D

現在値:

生命力:C/魔力:D/筋力:E/敏捷:E/対魔力:D


オリジンスキル:なし

スキル:回復魔法


……まさかの結果である。

回復魔法とか、めっちゃ役に立ちそうだ。


「それにしても、これだけいればすげぇ戦力になるな。お前が言ってたのはこういう事だったのか?」

「まあ戦力がすごいのは認めるけど、まだ作戦はここからだよ。僕はこいつらを……」

「こいつらを?」

「冒険者ギルドで、売りさばくっ!!」


俺はギルドで、スライム王になるっ!



……じゃ、さっそく箱詰めしようか。



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