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ゼリリン、認め合う



魔王城の一件から一週間が経った。


あれからタクマはクローム王に魔王城での暮らしを話し、今までの部下である魔族と人類の共存を唱えたらしい。

魔王城に居る魔族にも、むやみに人を襲うことは許さないと説得し、今はどこからどこまでがお互いの妥協ラインなのか話し合っている最中だという。


まああの不敵なタクマのことだ、ここらへんは自力でなんとかするだろう。


たまに俺の借りている宿に突入してきて、「城の仕事がめんどくせえ、お前も手伝え。魔族どころか魔王だろ」とかいってくるが、断じて無視である。

宿の場所を教えたのが運の尽きだったかもしれない。


今も王城で切磋琢磨と修行に励むユウキを見習ってくれ、彼はほんまもんの勇者だと思うぞ。


「ふーん。それで若は、こんな大事な事件の時にも、私を呼んでくれなかったんですね」

「あい」


ごめんよリグ、唐突な事件だったんだ。

機嫌をなおしてほしい。


ちなみにこのやり取りは既に7回目だったりする。


「それで、最後にはキャミィ王女に言い寄られて、ほ、ほっぺにチューまで……?」

「……あい」

「ばかぁっ!!」

「あだだだだっ」


そして最後に、必ずほっぺ抓り攻撃が飛んでくるのだ。

母ちゃんのお仕置き並みの威力である。


すると、どこからか聞き覚えのある声がとんできた。


「クハハッ! まあもう過ぎたことなんだから許してやれよ。セリルの奴も反省してるって、なぁ?」

「そうだぞ」


いつの間にか転移してきていたらしいタクマが、援護射撃をしてきたのだ。

いいぞぉ、もっといってくれ。


「……はぁ、とてもそうは思えませんが。でもそうですね、過ぎたことはしかたありません」

「そうだぜ、過ぎたことはしかたねぇ。だから次は嬢ちゃんが同じことすればいいんだ」

「ぬっ?」

「なっ! そ、それは、わわわ私が若にっ!?」


む、なんか急に流れが変わったぞ。

やめろリグ、その悪魔の囁きに惑わされてはいけない!


「おちつけリグ、あの悪魔の囁きに惑わされてはいけない……」

「で、ですがっ! ですがぁー!!」

「……ぬっ!? ぬわぁあーっ! ヤメロォオッ!」


その後、結局リグはあの悪魔の囁きに負けた。

ニヤニヤ見学しやがってなんて奴だ、こいつ絶対勇者じゃないだろ。

いつかやり返す、ゼリリンの恨みは怖いのだ。


……うむ、まあそれはともかく。


勇者といえば、俺はあの寄生型コアを倒した時に新たな力を手に入れたらしい。

なんと、迷宮空間がレベルアップしたのである。


内容はこんな感じだ。


【迷宮空間Lv2】

└LV1効果:自分だけのフィールドを作りあげる。迷宮空間にしまっているものは出し入れ可能。

└LV2効果:テイムした魔物を何かと配合できるようになる。スキル<テイム>入手。


なんと、仲間の魔物を配合できるようになったのだ。


ただし配合したからといって、必ず強くなるわけでもないらしい。

ここらへんは配合しないと結果は分からないらしいので、まずは試してみるべきだろう。


ちなみにだが、わんわん部隊は個々の強さというよりも、狼同士であることで連携をとり活躍する種族なので、今回の配合機能とは相性が悪い。

もし狼じゃなくなったら、逆に弱くなるかもしれないのだ。


なので野生の魔物をテイムしにいこうと思う。


「ということで、今日は魔物をテイムしにいくことにするよ」

「なにがどう、ということでかは知らねぇが、面白そうだ。俺もいくぜ」

「わ、若のほっぺはぷにぷにだった…… はにゃぁ……」


みんなついてくるらしい。


「じゃあ、全員で行こうか」


こうして悪魔一匹と、骨抜きになってしまい戦力外となった一人を連れていくとになった。

めざすは王都周辺の森だ、おそらく野生の魔物がそこらへんに転がっているだろう。


「それじゃ、出発」



王都の門を出て徒歩30分ほど、周辺の森へとやってきた。

現在攻略本を片手に、魔物のステータスや現在位置を確認しているところである。


「うん、やってきたのはいいけど、たいした魔物はいなさそうだなぁ」

「まあこんな近くにやべぇ魔物がいてたまるかよ。それにお前の話を聞くに、配合する素材が強けりゃいいってわけじゃないんだろ?」

「まあそうなんだけどね」


だが、素材が良ければ配合結果もよくなるというロマンは捨てきれない。

うーむ、どうしたものか。


「ふんっ。悪魔め、若の考えが分からないとは、程度が知れるぞ」

「……お前さっきまで、その悪魔の誘惑に負けてたじゃねぇか。立ち直りはええな」

「ま、負けてなどいない。あれは不可抗力だっ!」

「まてリグ、その理屈はおかしい」


なにやら不毛な争いが始まったが、まあいい。

どうやらこの近辺には強そうな魔物も居ないみたいなので、しょうがないから普通の魔物をテイムすることにする。


テイムする魔物はズバリ、スライムだ。


同じ種族の頂点たるゼリリンが選ぶのだ、きっとスライムの中でもエリートなスライムが仲間になる事だろう。


それから攻略本さんの案内のもと、数分かけてスライムの密集地帯までやってきた。

よし、テイム開始だ。


……まずはにらみ合いからだ。


「…………ぜり」

「…………スラ」


手ごわい。


「……ぜりぜりぜりっ!」

「……スララララッ!!」


なんだこいつ、やる気か?

……おぉんっ!?


「何やってんだこいつら、さすがに理解できねえ」

「ああっ、こんな真剣な若を見れるなんて。なんて凛々しいお姿でしょう」


外野は無視だ、いまは忙しい。

その後、しばらくにらみ合いを続けた結果、ついに決戦の時がやってきた。

ここで決着をつけるっ!!


「……ぜ、ぜりっ。ゼリラァァアアアッ!」

「スララァァアアアッ!!」


『ガシッ!』


俺のパンチとスライムの触手が交差した瞬間、お互いを認め合うように、パンチと触手があつい握手へと変わった。

おそらくテイム成功である。

こいつはきっと凄いスライムに違いない、俺の勘がそう告げている。


「……ふぅ。なかなか熱いバトルだったぜ、スラタロ」

「スラッ」

「すげぇっ! 最初はなにをやってるか分からなかったが、見てるうちに感動してきたぜ!! お前らすげぇよっ」

「ううぅ、すごすぎます若ぁ! わだじは、わだじは感動じまじだぁぁっ! ぐすっ」


こうして熱いバトルの結果、俺の初テイムは成功を収めたのである。




……帰って配合しよ。


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