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ゼリリン、魔王城へバカンスに行く


王城で魔王軍の侵略の話を聞かされた後、ユウキと共に王都付近の平原までやってきていた。

もちろん、敵を迎え撃つためである。


「セリル、勢いで王城を飛び出してしまったけど、僕はこの判断を間違っていないと思っているよ。乱戦になれば戦い辛くなるし、どちらにせよ、あの場で背中を任せられるのは君だけだったからね」

「ほむ」


確かに俺としても願ったり叶ったりだ。

冒険者や騎士が到着してしまえば戦力的にはこちらが有利、向こうは撤退を余儀なくされるだろうからね。


わざと捕まるには2人だけの方がいい。


そして、それからしばらくすると、平原の向こうから蠢くような黒い何かが迫っているのが見えてきた。

羽が生えた黒い人間や、ツノの生えた赤黒い人間、おそらく中級クラスの魔族たちだろう。


「ははっ、やっとおでましのようだね。彼ら中級魔族の強さは単体でB級、セリルと僕が力を合わせてもこの数は厳しいはずなんだけど、不思議と君と組んで負けるきがしない」

「まあ僕も負ける気なんてさらさら無いよ。出てこいわんわんっ!」

「グォオオン!!」


とりあえず舐めプだと思われないように、わんわんを召喚。

ある程度までは削らないと怪しまれるからね。


俺は抜かりないゼリリンなのだ。


「これが話に聞いたサタンフェンリルか。さすがに貫禄あるなあ」

「感心するのは戦闘を見てからにしてよ。……いくぞわんわん、先手必勝だ。まずはブレスで薙ぎ払えっ!」


指示通りに氷のブレスを発射すると、飛んでいた魔族や突進してきた魔族のほとんどが粉々になった。

うむ、さすがランクA魔物の必殺技だ。

中級魔族程度では受けきれないらしい。


ちなみに、サタンフェンリルとなったわんわんの能力は主に3つ。

一つ目は、俊敏さと攻撃力を生かしたヒットアンドアウェイ。

二つ目は、闇魔法。

三つ目は、氷のブレスやその魔法、そして暗闇において発動する凍てつく睨みだ。


今回は闇魔法に耐性のある魔族ばかりなので、氷のブレスやヒットアンドアウェイで戦うことにする。


「す、すごい…… これが召喚獣の力か。とんでもないね……」

「ボサっとしている暇はないよ。わんわん、俺を乗せて敵陣に突っ込めっ!」

「ウォオンッ!」


もちろん敵陣に突っ込むのは俺が積極的に戦いたいからではなく、さっさと砕け散った魔族の魔石を回収するためだ。

向こうが呆けている今がチャンス。

軽く10体以上は砕け散ったし、これで報酬ゲットだぜ。


それからしばらくブレスを続けていると、向こう側もこちらの脅威度を悟ったのか、ユウキの方ではなく俺の方に狙いを定めたようだ。

よしよし、それでいい。


魔族側から闇魔法やなんやらが飛んでくるが、素の魔法耐性に加え悪役マントもあるおかげで、俺の闇魔法に対する耐性は異常なまでに高まっている。

正直、痛くもかゆくもない。


見た目はボコボコにされているように見えてるだろうけどね。


すると、予想通りユウキの方は俺がやられていると勘違いしだしたようだ。

群れてくる魔族に対し、怒涛の勢いで剣技を放っている。


てかあれ、もう限界突破とヘイスト併用しているんじゃないかな。

最初から全力とかまじか、さすがチート勇者。


「セ、セリル!? くそっ、今助けるっ! 邪魔だ魔族共、どけぇっ!」

「そうは行かぬよ勇者。こちらもこれだけの犠牲を払っているのだ、貴様ら一人くらい生け捕りに出来ぬようでは、魔王様に顔向けできん」


ユウキが必死に剣を振るが、とめどなく押し寄せる魔族によってなかなかこっちに辿り着けそうにない。

彼らも彼らで、分断する事が勝利条件だと分かっているようだ。

さすが中級魔族、馬鹿じゃないね。


「まさか、狙いは最初から僕らの分断なのか!?」

「フンッ、いまさら分かったところで遅いわ」


そうだそうだ、もう遅いぞ。


まあでも、ここでユウキの加勢がこちらに追いついても面倒だし、かといって俺がすぐにやられて残りを処理できない事態になっても面倒だ。

ここはいっちょ派手に自爆攻撃をして、俺がやられる口実といっしょに、彼が自力で倒しきれる数にまで敵を減らすとしようかな。


ということで、ゼリリンボム(特大)をコネコネさせてもらおう。


「ユウキっ! このままでは魔族を抑えきれないっ! 僕が奥の手を出すから、少し離れてくれ!!」

「……分かった。でも、絶対に無理はしないでくれっ!」


くぅ、眩しすぎるぜ勇者。

君がいれば人類安泰だよ、あとは頑張って。

俺ちょっと魔王城に出張してくるから。


……よし、そんじゃあいっちょ、特大の花火を打ち上げますか。


「今回は音魔法だけじゃなく、火魔法のエネルギーも込めた特大版だ。派手に吹っ飛びな魔族共」


爆発に備え、わんわんを亜空間に収納すると、俺の頭上に超巨大な火の玉が出来上がった。

無魔法で固められた玉の中では、音魔法と火魔法の魔力がせめぎ合い、渦を巻きながらぐぉんぐぉん唸っている。


これが爆発したら、俺も少しダメージ受けるだろうな……

すぐ回復するとはいえ、ちょっとやりすぎたかもしれない。


「す、すごい…… なんて途方もないエネルギーだ。だけど、これが爆発してしまえば……」

「うん。僕もタダじゃ済まないね。でも、こうするしかないだろ」

「なっ!? そんな、やめるんだセリル!! まだほかに方法はあるはずだっ!!」


うん、ある。

というかこんな事しなくても、本気で戦ったら普通に勝てる。

でもそれじゃあ俺が魔王城に遊びに行けないからダメなのだ、これはストライキなのである。


「……ユウキ、もしパチュルって子に出会う事があったら、僕なら大丈夫だって伝えておいてほしい」

「セリル、やめるんだっ! くそっ、どけ! どけよ魔族っ、僕の邪魔をしないでくれっ!」

「……それじゃ、またね」


そう言った瞬間、頭上の玉が弾け俺の周囲を包み込んだ。


……ふむ、どうやら思惑通りに事が進んだようだな。

一体だけ障壁と無魔法でガードしておいた魔族が、「なんで自分が生きてるのか知らないけど、とりあえず倒れている勇者、運んでいくか」みたいな顔してる。


ぜひ運んでくれたまえ。


そんじゃ、このまま死んだフリして魔王城へバカンスだ。



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