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ゼリリン、勇者とバトルする


ちょっと勇者の強さに面くらったが、ボケっと立っててもしょうがないので、訓練場の端っこで見学している王様に挨拶しようかな。


「やぁ王様、新しく召喚された人はすごい強さみたいだね? あとこれお土産」

「ん? おお、セリルかっ! ちょうどいい、そなたとユウキの顔合わせも近々行おうと考えておったのだ」


俺が差し入れのキノッピを手渡すと、さきほどの訓練に興奮した様子で詰め寄ってきた。

気持ちは分かるけどね、どうみても人間の動きしてなかったし。


どれどれ、ちょっと鑑定してみようかな。


「サモン、攻略本っ!」


意味もなく気合の入った掛け声で呼びかけると、宙に浮く分厚い本が召喚された。

さて、ユウキ君とやらはどんなスキルを持っているのかな?


【(異世界人)人族:ユウキ・ムトウ】

成長標準:

生命力:S/魔力:A/筋力:S/敏捷:B/対魔力:S

現在値:

生命力:B/魔力:C/筋力:A/敏捷:C/対魔力:B


オリジンスキル:勇者Lv2

スキル:光魔法・時空魔法


【勇者Lv2】

└LV1効果:本人の才能にあわせて成長率が極端に上昇する。剣に関する技術が向上しやすい。

└Lv2効果:相手と本気で戦う時、敗北する場合はその結果が見えるようになる。時空魔法入手。


「なんやこのチート……」


あまりにも強すぎた。

なんだ勇者Lv2って、未来予知なんて反則や。

それに成長率もリグ以上だし、こいつは正真正銘のバケモノといって差し支えない。


それと成長率の他に現在値が表示されているのは、2年間の必死の図鑑埋めにより、グレードアップした鑑定能力のおかげだ。

他にもマップなんかが改造されており、マップに表示されている存在は、目視しなくても鑑定できるようになった。


ちなみに現在の俺の能力は以下の通り。


【魔王ゼリリン:セリル・ロックナー】

成長標準:

生命力:SSS/魔力:SS/筋力:B/敏捷:B/対魔力:S

現在値:

生命力:SS/魔力:SS/筋力:C/敏捷:B/対魔力:SS


オリジンスキル:食いしん坊、ゼリー細胞再生Lv3、迷宮空間

契約装備:攻略本

スキル:火魔法・無魔法・闇魔法・音魔法・ダークオーラ・体術・逃げ足・障壁


こんな感じである。


体術・逃げ足・障壁に関しては、ゼリリン3号がダンジョンコアを破壊した時に習得した。

体術を持っているとなんとなく体の動かし方が分かるようになり、技術の向上も早くなるようだ。


効果としては、リグや勇者のように、技術がなんとなくわかるっていうやつの劣化版。

逃げ足は、ビビってたり警戒してたりすると一時的に敏捷が高まる。

障壁は一瞬だけ自分の周りに魔力による壁を作る。


キノッピによるドーピングであらゆる能力が高まっているとはいえ、まさか召喚されて間もない勇者君にここまで迫られるとは思っていなかった。

まあ戦ったら俺が勝つだろうけどね。

なにせこっちはところどころ成長標準超えてるし。


すると、勇者を凝視している俺に気づいたのか、彼がこちらに近づいてきた。


「クローム王、本日も訓練場を貸していただきありがとうございます。それと、その少年は?」

「うむ、ちょうどそのことについて話しておったのだ。彼は勇者セリル、そなたの前に召喚された者だよ」

「よろしく、挨拶に伺ったゼリリンだよ。よかったらキノッピでもどうぞ」

「……っ!? 彼がですかっ!? いや、しかし…… あ、キノコどうも」


俺が茶髪をしていることで、日本人かどうか疑っているようだ。

まあそりゃそうなるよね、だっていままで召喚された人は黒髪だったみたいだし。


でもぶっちゃけ、俺が勇者であろうとそうでなかろうと、どうでもいいことだ。

たまたまそういう扱いされてるだけだし。


「いや、彼は本物の勇者だよ。そなたと同じように教会で召喚されたという証拠がある」

「いえ、そういう訳ではないんです。ただ、実際に見てみるとやはり懐かしくて……」

「ふむ、それについては申し訳ないと思っている。いくら魔王の脅威に対抗する手段とはいえ、君のような若者を無理やり連れてきたのだからな」


王様が謝罪すると、彼はどことなく悲しげな表情を作った後、思い直したように力強く拳を握りなおした。


「確かに、その事については思うところがあります。でも同時に、僕がどうしようもないピンチに陥ったときに助かる手段があれば、同じような結論に至ったでしょう。僕にだって、そのくらいは分かります。お互いさまですよ……」

「そう言ってくれるか……」


やべぇええ……!

勇者だ、ここに勇者がいるよっ!

心が綺麗すぎる、うっ眩しいっ!


「それに、こんな小さな子まで勇気を振り絞って頑張っているんです。僕が挫けちゃ、そんなの嘘ですよ」

「ソ、ソウダネ」


そうだねとしか言えない。


「そうであったな。うむ、どうだね? ここでの顔合わせも済んだことだし、友好を兼ねてお互いの力を確かめ合ってみるというのは」

「ええ、それについては僕も気になっていた事です。ぜひとも手合わせしていただきたい」

「イ、イイヨー」


もうどうにでもなーれー。


……だが訓練とはいえ、ここまで本気で勇者やってる人に手加減は失礼だろう。

自分の実力がどこまで上がったかの把握にはちょうどいいし、本気ゼリリンで挑もうと思う。


そしてフィールドに向かい合って立つと、王の横からキャミィの声援が聞こえてきた。


「お二人とも頑張ってくださいっ! でもセリル様、負けちゃダメですよ?」

「はははっ。モテモテだねセリル、ちょっと羨ましいよ」


ウン、ソウダネ。

それからしばらくして、こちらは攻略本と悪役マントの準備を済ませ、彼の方は宝剣の抜刀を済ませた。

報酬による装備を使ってもいいけど、あれはまだ召喚しないつもりだ。


こちらの情報もある程度伝わっているだろうけど、報酬装備は何が出てくるか分からない所がメリットだからね。

であるならば、最初からは出さずに手札を悟られない方がいい。


「それでは、勇者ユウキと勇者セリルの試合を行う。……はじめっ!」

「先輩であるセリル君に遠慮は失礼だろうし、本気で行かせてもら、うよ…… なっ!?」


ユウキが本気で身体強化を行うと同時に、目を見開き冷や汗を流し始めた。

おそらく勇者Lv2の効果である、「本気で戦う時、敗北する場合はその結果が見える」という効果が発動したのだろう。

今の彼には、俺に敗北する瞬間の映像が見えているハズだ。


ふむ、これで警戒されちゃっただろうし、厄介な能力だな。

別に手の内がバレた訳じゃないんだけどね。


「まるで未来が見えたような顔してるね、まあでもそういう事だよ」


さて、魔王vs勇者の訓練試合といきますか。



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