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ゼリリン、自己紹介する


ロックナー領を出発し、3週間ほどが過ぎた。

前回の時と同じくらいの時間で到着し、今は学校で入学式に参加しているところだ。


やはりどの世界も入学式の挨拶は長く、目の前でしゃべっている校長先生には悪いが、俺はまったく話を聞いていない。

それどころか、ゼリリン2号がリグと一緒に依頼を受けているのを観察しているくらいである。


ちなみに、リグやパチュルには俺が分身魔法を使えるという大嘘を語っているため、特になにも疑われる事はない。

スライム形態になれるとかは人間の範疇じゃないので教えてないけどね。

それでも細胞の増殖による分裂スキルを、「原理はわからないけど、すごい魔法」で片づけてしまうあたり、さすが伝説の勇者様という事なのだろう。


勇者なら何でもありだな。


「……えー、……であるからして、入学してきた君たちには期待している。よき学校生活を送るように、以上だ」


……どうやら校長先生の挨拶が終わったようだ。

うむ、よく聞いてなかったけど素晴らしい挨拶だった、……と、思う。

よく聞いてないから知らないけどね。

たぶん今後も知ることはないだろう。


そしてその後は入学してきた1年生全員が校舎に集められ、自己紹介する運びとなった。

クラスはA~F、特待生組はSとして分かれており、俺はその特待生組に振り分けとなる。


正直なところ、特待生レベルのクラスだからと言って、特にこの学校で習うことはないんだけどね。

まあ自由時間が出来たと思えば別に問題ない、学校生活を満喫してやろうじゃないか。


それに学校そのものは、まさに王都にある国内最大の学校というだけあり、このベルン王国のお城と勘違いするくらいの敷地面積がある。

設備面も考えたら、習う事は無くても学ぶことはあるかもしれないし、無駄ではないだろう。


それから今更だけど、俺の住んでいる国の名前はベルン王国だ。

特に表立って強い国でもないけど、弱くもない、そんな国であるらしい。

でもたぶん強い国と戦争したらすぐ負けると思う、イチコロだ。


そんな取り留めもない事を考えていると、ようやく前の席の子が自己紹介を終え、俺の番になった。

一番最後になる席に座っていたとはいえ、Sクラスには10人くらいしか居ないのに、ずいぶん時間がかかったな。

みんな自己紹介長すぎなんじゃなかろうか、一人5分くらい話してたぞ。


こう、サクッと終わらせた方が楽だよ、サクッと。


「僕はセリル・ロックナー。将来の夢はビッグになることだよっ」

「「…………」」

「…………だよ?」

「「……えっ!? 終わりっ!?」」


終わりだが。

なぜ終わりじゃないと思ったのだろうか。

どうせあんまり長くても、誰も覚えてないって。


多少のハプニングはあったが、こうして自己紹介はつつがなく終わり、その日は解散となった。

俺は実技試験で特待生になったゼリリンなので、今後は特に授業を受ける必要もない。

つまり、自由時間である。


冒険者活動による依頼達成報告を定期的にしなくてはいけないけど、それはいつでもできるので今やる必要はない。

だいたい1週間に1報告くらいでなんの問題も無いのである。


2年間依頼をこなしてもまだC級冒険者だけど、卒業までにB級冒険者になってれば首席間違いなしだ。

そのくらいは余裕だったりする。


「さて、今日はもうやる事もないし、そろそろ勇者様でも拝見してこようかな」


既に力のある勇者が召喚されて1年くらい経ったし、向こうの大陸からこちらの大陸に情報が伝わってきてもおかしくない。

彼が頭角を現すなら、もうそろそろだろうし、別にこちらから行く必要はないんだけどね。


でもやっぱり、百聞は一見に如かずだ。


挨拶に行ってみよう。



という訳で、クローム神聖国の王城までやってきた。

お土産にそれぞれ1つ、全色キノッピを持ってきたけど、気に入ってくれるかな。


これは新しく[300]DPで購入した土の迷宮産のキノッピだが、相変わらず道具屋のおっちゃんからは最高評価を貰っている。

土の迷宮はまたよく分からない地域にランダムで誕生し、外に出てみると砂漠だったので、おそらく人とかはこないだろうと予測される。


まさに絶好のキノッピ畑だ。


「門番さん久しぶり。王様に会いに来たゼリリンだよ」

「はっ! これは勇者セリル様、お久しぶりでございます。王は勇者ユウキ様の訓練を見学中だと思われますので、御用の際は訓練場にお越しいただければと思います」

「うん、ありがとう門番さん」


この門番さんとは何年もここでやり取りしているので、既に顔パス状態だったりする。

俺も勇者ってことで王城の中を行き来自由だし、リグですら勇者の子孫とかいう大嘘によって門番さんに止められる事は無い。


それにしても王様が勇者の訓練を見学中とは、よほど今回召喚されたユウキ君とやらは強いらしいね。

これなら俺が無駄にダンジョンを潰さなくても、彼が頑張って魔王を倒してくれるかもしれないな。


うむ、ぜひとも頑張ってほしいものだ。

もし彼が有望なら、DPダンジョンポイントを使ってダンジョン産の道具や装備を譲ってやらないこともないと考えている。


たとえば瀕死の状態からでも全回復できる伝説級のポーション、エリクサーなんか需要が高そうだね。

人間基準だと、部位欠損がある程度回復できる高級ポーションまでしか製法がないみたいだけど、DPさえ使えばエリクサーは量産可能。


恩を売っておくにはちょうどいいだろう。


その後、どうやって恩を売るか考察していると、近くから剣戟の音が聞こえてきた。

やっと訓練場についたらしい。


「ま、参りましたユウキ殿。いやはや、剣を持って1年でこの成長とは驚きです」

「いえ、こちらこそお手合わせありがとうございます。それに僕なんてまだまだヒヨっ子ですよ」


訓練場では、ユウキと呼ばれた黒髪の少年が、自分が打ち負かした騎士に手を差し伸べていた。


……なるほど、アレはめちゃめちゃ強いわ。





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