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ゼリリン、学校へ行く



クローム神聖国の王都で、勇者召喚の話を聞いてから2年が経った。

そう、ゼリリン7歳である。


7歳といえば学校に通う時期でもあり、レナ姉ちゃん達が通っている学校に一緒に行くことになるのだ。

転生してから初めての学園ライフを満喫しよう。


余談だが、この2年で修行を重ねてだいぶ強くなったし、もういつ魔王が攻めてきても対処できる自信があるくらいだ。

いやまあ、実際に魔王を見たわけじゃないから、あくまでも自信があるだけなんだけどね。


とりあえずそんな訳で、現在は王都へ向けての身支度を整えている最中だったりする。

もうすぐ学園から迎えが来る頃だろうし、春休みとして帰省しているレナ姉ちゃん達と一緒に、竜車へ乗り込まなくてはいけない。


「ふむ。筆記用具よし、干し肉よし、その他旅に必要な物よし」


ほんの少し急ぎつつも、学校に必要なものをカバンにしまうと見せかけて、亜空間に収納していく。

うむ、だいたい準備が整ったな。


それじゃあもうやる事もないし、この2年間の集大成でも確かめておこうかな。

まずは<ゼリー細胞再生>のレベルアップによって生じた、新たな効果からだ。

カモン、ゼリリン2号、3号っ!


『──こちらゼリリン1号、たったいま母ちゃんの指示を遂行した。学校への準備はほぼOKだ、そちらはどうだ? オーバー』


『──こちらゼリリン2号、リジューン王国でパチュルと一緒にDランク依頼を達成したところだ。今のところは特に問題はなし、順調である。オーバー』


『──こちらゼリリン3号、しらみつぶしにクローム神聖国付近のダンジョンを潰している。現在、スライム形態で合計3個目のダンジョンを撃破した。オーバー』


うむ、どのゼリリンもかねがね順調なようである。

この分身こそ新たに入手したスキルであり、<ゼリー細胞再生>がレベルアップした時に出来るようになった特殊能力の一つだ。


Lv1とLv2は依然と変わらず、Lv3の効果はこんな感じ。


【ゼリー細胞再生Lv3】

└Lv1効果:魔力が残っていれば任意で自己再生できる。

└Lv2効果:ゼリー細胞を自由に動かし、ある程度の変身ができる。

└Lv3効果:ゼリー細胞を増殖させ、分身することができる。分身発動中は魔力を消耗する。



入手経路としては、俺がいろいろ試行錯誤していた2年間、自分自身に火魔法や無魔法を当てていたらレベルアップできたようだ。

美魔女さんの最上位雷魔法が直撃した時にもレベルアップしていたし、もしかしたら再生能力を酷使すればまた上がるのではないかと予想した結果、本当にレベルが上がった。

レベル3で俺を含めて3匹になれたので、もしかしたらレベル4で4匹になれるかもしれない。


それでもって、仕事の割り振りは以下の通り。


ゼリリン2号:

パチュルとパーティを組んだり、クローム神聖国の王様に謁見したりするのが仕事。

たまにサボりたくなると、孤児院で寝てる。


ゼリリン3号:

ぷよぷよのスライム形態でダンジョンを探索し、魔王の息がかかったダンジョンを潰しまくるのが仕事。

よく草原とかで風に揺れて黄昏たそがれている。


だいたいこんな感じ。


2号と3号の経験は常に俺と共有され、本体の俺が解除と念じれば水泡となって消えていくようだ。

なので、このテレパシーのやり取りもやる意味はあまりない。

なんとなくノリでやった以外に理由はなかったりする。


それにしてもゼリー細胞はとことんレベルアップするのに、食いしん坊と亜空間迷宮は全くレベルアップしない。

いずれビッグになろうと、日々努力している俺としては由々しき事態なのだが、うんともすんとも言わないのでどうしようもない。


しばらくは放置だ。


『──こちらゼリリン1号、そろそろ魔力も心許なくなってきた感じがする、分身は解除するよ。オーバー』

『──了解した、亜空間迷宮に一旦戻る。オーバー』


2匹の分身が亜空間迷宮に収納されたと同時に、分身を解除する。

うん、今日も順調だったようだ。


さらにこの2年間の情報収集によると、どうやら勇者召喚は無事に成功し、現在は王城で訓練を積んでいるとの事。

宝剣なんかを装備しちゃったりして、メキメキと実力をつけているようだ。


俺はまだ会ったことはないけど、見た目は15歳くらいの黒髪黒目の男で、既にとてつもない剣技や魔法、身体能力を保持しているらしい。

なんでも第一王女のキャミィに気があるらしく、いい所を見せようと頑張っているがあまり相手にされていないらしい。


おそらく日本人の高校生なんだと思うけど、まあがんばってくれたまえ。


……それからしばらくすると、庭の方からレナ姉ちゃんとルー兄ちゃんの声が聞こえてきた。

おそらく竜車が到着したのだろう。

俺もさっそく乗り込まなければ。


「セリルーっ、竜車が来たよーっ! お姉ちゃんさきに乗ってるね」

「もう準備はできたのかい、忘れ物はない?」


庭には2年前と同じく、足の筋肉が発達した亜竜が荷台につながれて待機していた。

本当はわんわんで向かった方が早いんだけど、まあ仕方ないね。


「大丈夫だよ。もうリグの分まで準備は終わらせといた」

「わっ、若! 私は自分の分は自分でやりましたよっ!?」


そうは言ってもですねリグさん、あなたの荷物はほとんど亜空間の中なんですよ。

まあ、ここでは言わないけどね。


ちなみにリグは学校に通うわけではなく、単純に王都へ便乗するだけだ。

一人称が俺から私へと変わったのは、母ちゃんに淑女の在り方を教わったかららしい。


それに学校と言っても、実技試験で特待生になった者は冒険者活動などが授業として認められるし、別に出席が強制されているわけでもない。

入試をパスできる貴族の長男や、学術試験の成績で特待生になった者はペーパーテストや授業が必須みたいだけどね。


この場合、実技試験の特待生のメリットとして、国から衣食住を負担してもらえるというのが大きい。

学校の設備や食堂が使いたい放題なわけだからね、一般の冒険者みたいに、仕事ができないからといって飢え死にすることはないのだ。


そして国のメリットとしては、この学校の実技に秀でた卒業生には騎士団への推薦が用意されており、強く育った人材をスカウトし放題になるという所がある。

スカウトを断る人も当然いるけど、だいたいは冒険者より安全で給料の良い騎士団に入るので、上手くできたシステムだと言えるかもしれない。


この制度を利用して、レナ姉ちゃんは既にCランク冒険者にまで登りつめているようだし、俺もそっちの方向で参加しようと思っている。

将来において、騎士団に入る気はさらさらないけどね。


まあそんな感じで、4人で王都へ向けて出発という訳だ。

王都についたら自由行動みたいなもんだし、一度勇者さんのお顔とやらを拝見してみるのもいいかもしれない。


それじゃ、出発進行。




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