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ゼリリン、便乗する


王からの質問に対して盛大に答え間違えた後、周りの空気が凍り付いた。

やっぱり無理があったかな?

ごめんよ王様。


「ふむ、やはり教えてはくれないか…… いや、そうだろうとは思っていたのだ。聖女からそなたの行動を聞いた時も、我々には内密に魔王城へ挑んでいたとの事であったからな。おそらく、特殊な力を持った勇者にしか抱えきれぬ事情というのがあるのだろう」

「そうですわお父様、きっとセリル様は今も一人で戦っておいでなのです。ですが、忘れないでください。セリル様のお傍には、いつでも力になってくれる人々が居ると言う事を。お父様やパチュル、そして…… 私も……」


王様が勘違いした後、第一王女のキャミィまで便乗しだした。

なんがごめんよ二人とも、これ完全なマッチポンプだわ。

申し訳ないし、どうにかして迷宮の話題から魔族の話にもどそう。


「うん、まあほどほどに頑張るよ。でも話はそれだけじゃないでしょ? 魔族に関係する内容がまだあるはずだ」


あるはずだとか言っているが、実際にあるかどうかまでは考えていない。

思わせぶりなことを言っただけである。


すると王様が大きく頷き、ここからが本題だとばかりに眼光を鋭くした。


「あぁ、そうだ。そなたも知っている通り、近頃は魔族や魔物の行動がおかしい。いくら騎士団が動かしにくい状態だったとはいえ、下級魔族が王都に近い村を占拠するなど前代未聞である。このレベルの動きがあるとなると、近いうちに…… 10年、いや5年以内には人と魔族の全面戦争になるだろう」


本当にまだお話があったらしい。

それになんだ戦争って、ダンジョンクリアするだけで大げさだな。


相手の規模にもよるけど、いくらなんでも一つのダンジョンが国を相手にするなんて無謀だと思うんだけどな。

DPダンジョンポイントが溢れるほどあって、迷宮外にも魔物を派遣できるくらいなら別だけど。


……もしかすると相手の魔王様っていうのは、ただのダンジョンマスターじゃないのかもしれない。


「その事に関しては私も同意だ。リジューン王国にも、ここ最近ダンジョンの発生が頻繁に見られるようになった。一つは森の迷宮、二つ目は記憶の大迷宮。ギルドマスターを務めてもう数十年にもなるが、こんな事は異例と言ってもいい」


美魔女さんは数十年ギルドマスターをやっていたらしい。

それでもダンジョンが年内に2個同時に発生するのは異例で、普通は無い事なんだとか。


うん、それも完全に俺のせいだね。

亜空間迷宮はDPさえあれば何個でもコアを作れちゃうし、ダンジョンなんていくらでも量産可能だったりする。


「それに、王の話では成人まではセリル君を鍛えてからとのことだったが、ここままいけばあと5年ほどでセリル君だけを前線で戦わせる事になる。正直言って、一人の大人としてそれは容認できない」

「そうだぜギルマス、こんな時こそ俺たち冒険者を使うタイミングって奴だろ。チビっこ一人に任せてられるかよ」


美魔女さんが王に向けて睨みを利かせると、剣士さんが後に続いた。

まあ俺も戦争とかめんどくさいし、もし始まったらトンズラするつもりだけどね。

魔王に会って説教したいのはあるけど、こういうタイプの戦いは疲れるから嫌だったりする。


「……まぁ待たんか二人とも、その事に関してはワシにも考えがある。皆にはまだ内密にしておったのだが、聖女と話を進め、勇者召喚をもう一度執り行う事にした。なぜか、セリル君を召喚した時には儀式に必要な魔石が全く消耗されていなかったらしいのだ」

「ふむ。となると、もう一度勇者召喚が可能ということですか?」

「そういうことだ」


なんと、次は本物の勇者が召喚されるらしい。

こりゃあ俺はのんびりと高みの見物ができそうだ。

うむ、ぜひ召喚してくれたまえ。


俺も召喚に便乗しとこ。


「確かに、未熟な今の僕では魔王に苦戦し、余計な犠牲を払ってしまうかもしれません。もし可能であるなら、もう一度儀式を執り行ってほしいと思います」


この場にいる全員に向けてそう言うと、誰もが納得した表情で頷いた。

ちょろいな。


そしてその後はしばらく話しあった後、俺はとりあえず現状維持ということで決着がつき、解散となった。

ふむ、新しい勇者君よ、ぜひとも魔王討伐とか頑張ってくれたまえ。

俺はロックナー領でのんびりしてるからさ。


だがもし召喚された奴が負けて、この国が無くなっちゃったりするとキャミィやパチュルが困るだろうし、修行だけはちゃんとやっておこう。

キノッピを毎日食べて、図鑑を埋めまくる。


完璧な作戦だ。


キノッピ畑用に土の迷宮でも新しく作って栽培するとしよう。


「それじゃリグ、おうちに帰ろうか」

「はい、若っ!」


ちなみに、気絶していたリグはちょっと前に目が覚めた。

最初は自分のやらかしたことに顔を青くしていたが、俺がなだめてあげるとすぐに機嫌をとりもどしたようだ。


「それじゃ、収……」

「ちょっと待ちなさいよばかセリルっ!」

「あだぁっ!?」


今度はなんだというのだ。


「ほら、ちゃんとあんたの家までエスコートしなさいよ。せっかく私がここまで来たんだから」


そういやそんな事いってたな。

どうしよ。

俺の家とか別大陸なんだけど、さすがにそこまでエスコートはできない。


「お、おぉ、おのれ金髪っ!! 一度ならず二度までも若に攻撃を…… 殺すっ!」

「あら、やれるものならやってみなさい? こんどこそ返り討ちよ。害虫駆除にはちょうどいいタイミングね」


どこでも喧嘩しますね君たち。

こりないなあ。


「まぁ、また遊びにくるから今日のところはこれで。またねー収納っ」

「ちょ、まち…… な、さ……」


うむ、今日もまた聞きそびれた。

まあまた今度聞けばいいかな。




次話は時間が進みます。

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