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ゼリリン、空を飛ぶ


クローム神聖国から離れて30分、依頼書の地図に載っていた村の地点までわんわんを疾駆させた。

道中にいろいろな魔物がいたけど、とりあえず今は無視することにする。

自然に生きている魔物はあとからでもコンプリートできるからね、今は魔族が先だ。


ちなみにリグはわんわん部隊の一匹である、エクセレントウルフに乗って後ろをついてきているようだ。

これからも移動手段としてお世話になると思うし、リグにはエクセレントウルフの一匹をあげる予定なのである。

あげるといっても、俺がリグの言う事きけよって命令するだけなんだけどね。

この命令はいつでも取り消せるから、どちらかというと貸すって方が正しいかもしれない。


「で、村の近くまで来たわけだけど…… やっぱり魔族だらけだね。というか、村人とかもう一人もいないや」


鑑定してみた結果、視界に映る村の住民すべてが魔族の偽装であることが発覚した。

ただ攻略本さんのマップによると、村の倉庫あたりに多数の生命反応がまとまっているのが確認できる。

もしかしたら人間はそこに隔離されているのかもしれない。


「若、魔族って強いんですか?」

「え? わかんないよ」

「若でも分からないほどの強者ということですか…… ごくり……」


いや、そもそも俺に強者を見分ける技術なんてないからね。

まだ一回しか戦ったことがないから分からないだけだよ。


でもまあ、鑑定した限りじゃせいぜいCランクくらいの戦闘力だし、なんとかなるだろう。

俺も装備がなければCランクだけど、装備がある程度整っている今ならもうちょっと強いはず。

それにわんわんも居るし、下級魔族に負ける要素はないはずだ。


「とはいっても、ちょっと数が多すぎるね。さすがにこれは作戦を練った方がいいかなぁ」

「それじゃ、若が作戦を練っている間、俺は敵の数を一匹でも減らしてきますっ! うぉぉおおっ!」

「またんか脳筋少女」

「イタァッ!?」


一人で特攻しようとするリグの足をつかみ、転倒させた。

というかなんで作戦立てる前に特攻するんだ、それじゃ意味ないだろ……

これは先が思いやられるな。


それと俺が作戦を練る理由だが、このままだと村人の安全が確保できないからなのである。

乱戦になっても戦力的に負ける事はないけど、それだとほぼ確実に村人に被害が出る。


だって負けそうになった魔族が人質を取らないわけがないもんね。

取られても無視して戦うつもりだけど、そうなった場合は犠牲が計り知れない。


正直なところ、俺に村人を助けなきゃいけない義務があるわけじゃないけど、それでも見殺しにするほど余裕がないわけでもない。

なので出来るだけ助ける方針で行動するって感じだね。


「で、村人を救出させるための作戦だけど。名付けて、英雄がうまれたよ作戦だ」

「なるほど、若が英雄になって悪者をやっつけるんですね?」

「ちがうよ」

「そんな!?」


いやいや、絶対に当たると思ったのにって顔されても困る。

まだ何も話してないじゃん……


そして作戦を伝えること10分、リグにも内容が理解できたようなので実行に移すことにした。

さて、一仕事してきますかね。


それからしばらくして、俺は亜空間からとある装備を取り出した。



……数分後。


えー、こちらゼリリン。

現在、村人達を格納していると思われる倉庫の上空を飛んでいるところだ。

作戦は極めて順調、このまま倉庫に着陸することにする。


シュタッ!


「うむ、我ながら見事な着陸だった」


そう言いつつ、ここまで飛んでくるのにお世話になった魔剣、軽剣トベルーワを亜空間にしまった。

なんのことか分からないと思うけど、つまり魔剣の力で上空を飛行してここまでやってきたのだ。


そう、何を隠そうこの軽剣トベルーワという魔剣、空を飛行できるのである。


トベルーワの説明文を見た時にまさかとは思ったけど、ほんとうにまさかの性能で使ったときは驚いた。

なにせ説明文に「とても軽い剣。魔力を込めるとさらに軽くなる」って紹介されてるんだよね。

つまり魔力を込めれば込めるほど軽くなり、一定以上の魔力を込めると浮遊しはじめるんだ。


普通はこんな使い方絶対に無理なんだろうけど、なにせ俺の魔力は現時点でもS、無理も通せば道理になるのである。

いやー、ちょっと疲れたけど、まあなんとかなったようでなによりだ。


「それじゃ、サクッと倉庫の中の魔族を片付けるとしますかね」


そういって天井から中を覗き見る。


ふむふむ、鑑定で見る限り、倉庫内の魔族の反応は入口付近に2体のみのようだ。

これなら俺一人でなんとでもなるな。

さすがにただの村人相手に厳重な警備をしたってしょうがないしね、妥当な人数だろう。

いや、むしろ多すぎるくらいだ。


「さて、倉庫だとさすがに火魔法は使えないな。それじゃあさっそく、新しい魔法の出番といこう」


俺のあふれんばかりの魔力を最大限に練り、両手の指先に魔力を集中させていく。

生まれてからずっと魔力操作の練習をしていただけあって、思った以上にスムーズに魔力が流動した。

……これくらいなら、もう十分かな。


そして、魔力を集中させた指先をピストルに似せて、天井から魔族に向ける。


「くらえっ! これが新兵器ゼリリンビームだっ!」


掛け声と共にためていた魔力を解き放つと、片方の指から極太のレーザービームが放たれた。

もちろんその魔力は必殺の威力となって魔族その1に降り注ぎ、名も知らぬ魔族の頭を爆砕していく。

いわゆる、無魔法ってやつだね。


「よし、いっちょあがり」

「なっ!? どうした!? おい、なにがあった!?」


どうやら同僚の魔族さんも状況に追いついてない様子。

よし、それならもう一発お見舞いしよう。


「それっ、もう片方のピストルでゼリリンビームっ!」

「グアアアァ……っ!?」


もう片方のビームはちょっと狙いがずれてしまったが、まあ半分くらいは頭がふっとんだのですぐに倒れるだろう。

うむ、任務完了だ。

村人たちの縄を解いてあげよう。


いざ倉庫の中へっ!


「とぅっ! 冒険者ギルドの依頼で助けにきたゼリリンだよ。……って、あれ?」

「ひ、ひぃいい! 漆黒の化け物!? どうか、どうか命だけは! なにとぞ、なにとぞぉぉ!」


どうやら俺の事を敵かなんかだと勘違いしているようだ。

漆黒のなんちゃらって言ってるし、やっぱりこの呪いのマントって悪役に見えるのかもしれない。


「いえいえ、僕は敵じゃありませんよ。ギルドの依頼を受けて魔族を討伐しにきた冒険者です」

「いのちだけはぁあ…… えっ?」

「その証拠にほら、外では僕の仲間が大勢の魔族たちと激戦を繰り広げています。僕は英雄様のサポートってところですよ」


そう言って倉庫の扉を開けると、そこには連双剣キラを両手に暴れまわるリグと、わんわん部隊の全てが戦っていた。

うむ、やっぱり剣が良ければ、下級魔族くらいリグでもなんとなるみたいだな。

あぶないところはわんわんが助太刀してるし、もうすぐ決着がつく頃だろう。


「お、おぉおお! 魔族共が蹴散らされていくっ! 奇跡じゃ、奇跡がおこったのじゃぁああ!」

「なんだあの美少女は!? ものすごい剣技で魔族を圧倒しているぞっ!」

「英雄だ、英雄が現れたぁああ!」


囚われていた村の人々は、リグの戦う姿を見て口々に英雄だと称え始めた。

ぶっちゃけ計画通りである。


この調子ならあと数分もしないうちにすべての方が付くだろう。

勇者の称号が俺一人だとなにかと動きづらかったし、まったくもって、リグさまさまだな。

今度からはリグにめんどうなことを押し付けて、俺はのんびりお昼寝することにしよっと。


……あっ、そういや魔族の魔石回収しとかないと。





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