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ゼリリン、ちょっとやる気になる



冒険者ギルドへ向かう道中、DPダンジョンポイントで入手した魔剣の効果を説明していた。

もちろんどこで手に入れたかとかいうのは全部隠し、効果の内容も伝手の商人から聞いたと適当にはぐらかしておいたんだけどね。

リグは妙に俺を信頼していて、まったく疑わずにすんなり信じてくれたようだ。


実は色々と言い訳を用意してあったのだが、まあ使わずに済むならそれでもいいや。


「うぅっ…… 若が、俺のためにっ、こんな高価な武器とっ、防具をっ、うぐぅっ…… ありがとうごじゃいましゅ!! ぐすっ」

「分かった、分かったから泣かないでよ。これじゃあ10歳の女の子をイジメてる5歳児に見えちゃうから」

「はぃ! すびまぜん!! うわぁぁあああんっ」

「ダメだこりゃ……」


俺の話をすぐに信じてくれたのは良いんだが、この少女ってば心が綺麗すぎて逆に感極まってしまったようなのである。

魔剣の値段を適当に聞かれた時に「師匠が死ぬ前に買ってくれた、忘れ形見なんだ」とか言ってしまったのが原因かもしれない。

リグの性格を考えて、はぐらかす方向性を完全に間違えたようだ。


「まあ、そんなに気になるならそれは貸しって事でいいよ。いつか返してくれればいいから」

「だめでづっ! 返しまぜん! 若の期待に応えるまで絶対に手放しまぜんっ! ぐすっ」


どっちやねん。

遠慮しているのか、していないのか、よく分からないやつだな。

返さないって言ってるし、遠慮してるわけでない……のか?

うん、わからん。


それとさっきはリグの事を10歳の女の子といったが、実のところ何歳かは全く分かってない。

小さい頃からスラムで生きてきて年齢なんて数えた事もなかったので、本人が何歳なのか把握してないようだ。

というか、そもそも数字の数え方を覚えたのも最近とのこと。


「それじゃ冒険者ギルドに着いたらとりあえずギルドカード作るけど、昨日話した通り依頼については僕に従ってもらうってことでいいね?」

「はいっ! 俺に難しいことは分からないので、若にお任せします」

「ふむふむ」


じゃ、予定通り魔族討伐だね。

そうと決まれば善は急げ、ゼリリンダッシュで一直線である。


「ちょっとギルドまで走るよ」

「えっ?」

「ぜりぜりぜりっ!」

「なっ! 速っ!?」


さあリグよ、このスピードについてくるがいい。

ちなみに「ぜりぜりぜり」っていう掛け声は今思いついた。

なんとなくやっていて楽しいんだよ、童心に返った気分だな。


余談だけど、その後のかけっこは俺が勝った。



唐突なかけっこが始まってから15分後。

現在、冒険者ギルドでリグのFランクカードを発行してもらったところである。


登録するときに受付嬢さんがギルドについての説明を始めたが、説明が長すぎてリグの頭がパンクしそうだったので、俺が要点だけかいつまんで説明しといた。

受付嬢さんは苦笑いだったが、冒険者には脳筋も多いのでこういうのは慣れっこなんだという。


「うん、これで冒険者だね。おめでとう」

「…………??」

「だめだ、頭がパンクしてる」


ま、依頼を受けるのは俺だから問題ないだろう。

さてさて、魔族の討伐依頼を探しますかね。


それから依頼書が乱雑に貼り付けられている掲示板とにらめっこすること3分、それらしき依頼を発見した。


──────────────


【下級魔族討伐:Bランク依頼】

クローム神聖国、王都クロムから徒歩で5時間ほど離れた村に多数の魔族が確認された。

報告によると下級魔族の集団のようだが、村人に成りすましたりして見分けがつかない。

現時点では主だった動きはないが、早急な対処が必要であり討伐を要請する。


報酬:下級魔族の死体一匹につき、金貨10枚。依頼を受けていない討伐後の報告でも達成とする。


依頼主:クローム神聖国騎士団


──────────────


ほうほう、依頼を受けなくても素材を引き渡せば達成になるらしいな。

依頼内容に死体が条件となっているので、魔石を渡さなくていいのもポイントが高い。

なにせ魔石は図鑑に登録するからね、渡すわけにはいかないのだ。


そして依頼主が国の騎士団となっているが、これは妥当な線だな。

なにせ一ヶ月前に第一王女誘拐未遂が起きたばかりだ、騎士を王都の警備に集中させ過ぎて動かしづらいのだろう。


表立って王女が誘拐されかけたなんて、王家の失態を公にするわけにもいかないしね。

騎士が動けない理由が明記されておらず、冒険者に依頼するのも頷ける話だ。


それにしても第一王女か、キャミィとはしばらく会ってないし、こんど王城に遊びにいこうっと。


「リグ、目的の依頼が見つかったよ。さっそく王都を出発しよう」

「……? はっ! お供します若!」


どうやら今まで意識が飛んでいたらしい。

頭のパンクが収まったようでなにより。


それじゃ、わんわんに乗って最寄りの村までひとっとびだ。

徒歩では5時間かかるらしいが、Aランク魔物のわんわんにかかれば30分もしないで到着するだろう。

本気を出せばもっとスピードは出るけど、そこまで急いでいるわけじゃないからこのくらいでちょうどいい。


村人に化けている魔族っていうのも攻略本さんの鑑定で一目瞭然だし、もはやカモでしかないな。

やる気も出てきたし、こうなったらとことん狩りまくってやろうと思う。

魔王種と下級魔族の違いをみせつけてやる。



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