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ゼリリン、呪いの装備を手に入れる



亜空間迷宮で魔剣を手に入れ、猛ダッシュで鍛冶屋まで来た俺の前には、可憐な美少女がいた。

整えられた短髪の黒髪に、蒼い瞳、線の細い体をした人族の少女だ。


その少女が、明るい青を基調としたドレスに部分鎧を装備して、これ見よがしに衣装を見せつけてくるのである。

いや、本人にそのつもりはないんだろうけどね。



「えっと、君はリグでいいのかな? 僕の目がおかしくなったのか、君が女の子に見えるよ」

「え? 何言ってるんですか若、女で合ってますよ? それよりどうですかこの装備、これで俺も冒険者って感じしますよね」


ああ、うん。

気づかなかったわ。


どうやら鍛冶屋の店主は最初から気づいていたらしいが、まさかボロの布切れを着てボサボサの髪をした子が、こんなに可愛くなるなんて思わなかったよ。

世紀末覇者の眼力、恐るべし。


「うん、冒険者っていうより、聖騎士って感じがするかな。すごい似合ってるけど、僕が渡した金貨で足りたの?」


ちなみに渡したのは金貨10枚、およそ100万円だ。

これで残りは金貨280枚くらいになっちゃったけど、それはまたキノッピで稼げばいいや。


「そこらへんは気にするなガキんちょ。そもそも俺の作った特注の装備は、俺が絶対に使いこなせると思った奴にしか渡さねぇことにしてんだ。そのかわり、値段も勉強させてもらっている。なに、いくら安いっていっても赤字じゃねぇから大丈夫だぞ」


ほうほう。

つまり、リグはおっちゃんの装備を使いこなせると踏んだワケか。

ちょっと鑑定してみよう、攻略本さんカモン!


【乙女の戦鎧】

└特殊な魔物の素材により、魔法攻撃に対して高い耐性をもち、自己修復能力を持つ。

└防御力D、対魔力:B

└スキル:自己修復


かなり高性能な鎧だった。

魔剣のように特殊なスキルはそれほどでもないけど、装備が壊れても自己修復してくれるのは助かる。

それにリグは英雄スキルの効果で魔法抵抗が一般人より高いとはいえ、それでも成長率はCでしかない。

装備でさらに耐久を補強できるのはかなり助かるな。


これは良い買い物をした。


「ありがとうおじさん。助かるよ」

「おう、いいってことよ。それとオメェの分の鎧だが、こっちは部分的な金属すら使わずに作られたマントだ。それでも防御力は嬢ちゃんより高く、魔法耐性もとんでもねぇ。さらにおまけで特殊効果なんてものがついている」


そういって手渡されたのは、ほぼ全てが黒で統一された立襟マントだった。

なんというか、めちゃくちゃ悪役臭が漂うな……

まさに魔王とかが使ってそうなマントだ。


……あ、そもそも俺魔王だったわ。

でもこれ、俺には大きすぎて装備できないぞ。


「なんかすごそうな装備だけど、大きすぎて着れないよ?」

「いや、大丈夫だ。そいつには自動伸縮の機能がついていてな、まあ着てみれば分かる」


ふむふむ、まずは鑑定だな。

おっちゃんが勧めるんだし、きっと凄い装備なんだろう。


【魔人ゲラのマント】

└呪われた装備。使用者の魔法耐性が低いと、徐々に体力が削られる。

└防御力:B、対魔力:A(闇属性、またはその派生に対してはS)

└スキル:自己修復、自動伸縮、無魔法・闇魔法習得(対魔力A以上の場合のみ)


……別の意味で凄い装備だったわ。

だが、魔法耐性がA以上なら呪われないみたいだし、俺にとってはただ強い装備だな。


というか、なんでこんな装備を勧めてきたんだ。

まさか世紀末覇者さんは鑑定持ちだとでもいうのだろうか。


「これ、呪われてない? 着て大丈夫なの?」

「ん? おぉ、やっぱ分かるか。ただのガキじゃねぇと思っていたが、やっぱり俺の勘は正しかったぜ。まあ呪われても安心しろ、装備を外せばどうということも無い。これはタダでくれてやるよ」


全部勘かよっ!?

おっちゃん、そりゃないぜ。


それでもまあ、こんな高性能な装備がタダで手に入るんだから、こっちとしては儲けものなんだけどね。

俺としても魔法のレパートリーを広げておきたいし、金貨100枚出しても買っておきたいくらいだ。


「それじゃ、ありがたく使わせてもらうよ。よいしょ…… あ、ほんとに縮んだ。それに呪いも効いてないね」


装備してみたら、俺のサイズまでマントが伸縮した。

なんか面白い。


「か、かっこいいです若! 呪いの装備を着こなすなんて、凄すぎて痺れます!」


リグが興奮して火照った顔を近づけてきた。

ちょ、鼻息かかってるからっ、落ち着けって。


「落ち着いてよリグ。それと、ありがとうおじさん。ここまでの装備が手に入るとは思わなかった、今後も贔屓にさせてもらうよ」

「いいってことよ。それにそのマントだけは俺が作ったものじゃねぇ、冒険者が迷宮で手に入れてきたものを俺が買い取っただけだ。結局、誰も装備できんから貰い手が居なかったんだがな、ガハハハッ!」


誰も装備できない呪いの装備を、5歳児に押し付けるおっさんにある意味感謝だ。

普通はこんなの渡さないと思う。


「それじゃ、次は冒険者ギルドだね。剣の方は用意してるから、道中でリグに渡すよ。お代はリグの活躍でチャラってことで」

「はいっ! 誠心誠意、若にお仕えさせていただきます!」


さて、これでようやく魔族の討伐依頼が受けられるな。

依頼難易度的にFランクの俺では受けられるとは思えないが、こういう常時困っている依頼っていうのは倒してから見せれば達成になることも多い。


依頼の紙を見て魔族の居場所さえわかれば、あとは図鑑をコンプリートするだけだ。

魔物図鑑の報酬とグレードアップ、どんな物なのか楽しみだ。






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