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ゼリリン、ギルドでやらかす



なにはともあれ、予定通り土の迷宮は無くなったし神聖国に向かおう。

下級魔族をコンプリートしたときの報酬がなんなのか気になるしね。


「それじゃ、教会へ転移っと」


教会へ転移すると、辺りはすでに日が沈み始め、夕焼けがステンドグラスを照らしていた。

うむ、目の前の聖女さんも綺麗だし、幻想的な光景だな。


ちなみに聖女さんは祭壇に祈りを捧げている最中らしく、突然現れたすっぽんぽんの俺の目の前で手を合わせている。

なんかごめんね聖女さん、そんなつもりじゃなかったんだ。


「あっ、あの! 勇者様…… その、ご降臨された事は嬉しく思いますが、お召し物はどうしたのでしょうか?」


やはり気になるようだ。

もちろん俺も気になる。


「服は迷宮での戦いで消し飛んじゃったんだ。たいした装備で挑んでなかったから、こう……一瞬でぶわっと?」

「なっ!? 単身で魔王城に挑んでいたというのですかっ!? そんな、危険すぎます! あなたに万が一のことがあれば…… はわわ…… と、とりあえず今はお召し物を持ってきますっ!」


やったぜ。

これで普段着をゲットだ。


魔王城に挑んだわけではないが、俺が魔王である以上はある意味魔王城での戦いで間違いない。

なかなか鋭いな聖女さん、いい線いってる。


それからしばらくして、聖女さんとその他シスターさんが子供服を持ってきた。

ありがたや。


「ありがとう聖女さん。お礼はいつかするよ」

「そ、そんなお礼だなんて。それに私が聖女であることが分かるのですね? さすがは勇者様です」


いや分かるもなにも、この前来た時に周りから聖女って言われてたじゃないか。

どうやらこの人は天然のようだ。



「それと、今日こっちに来たのは魔族と戦うためなんだ。あとで装備も整えなきゃいけないし、僕はここで失礼するね」


特に防具は必須だ、ダメージを受けないためじゃなくて、素っ裸にならないために。


「お待ちください勇者さまっ! それでしたら、王宮の方へ問い合わせてみてはいかがでしょうか? 勇者様にお貸しになられるような装備が一般の鍛冶屋にあるとも思えませんし、せめて宝剣クラスの装備でないと……」

「いや、そこまでの装備はいらないかな。そもそも王宮の宝剣っていうのは最終兵器みたいなものでしょ? まだ成長途中で、力のない僕に扱えるとは思えないんだ。資金は十分にあるから、町の鍛冶屋で購入してくるよ」


ぶっちゃけ宝剣なんて借りちゃったら、この国に縛られちゃうからダメなんだよね。

そういうのを借りるってことは、その国の代表ってことになるわけだし。


「あぁ…… なんて素晴らしいお考えをもっているのでしょうか」

「じゃ、そういうことで」


聖女さんの勘違いがエスカレートしそうなので、その場から退散することにした。

勇者をやるのも楽じゃないな。


その後、教会から飛び出した俺は、攻略本を開きこの町の冒険者ギルドへと向かっていた。

以前は攻略本を隠して過ごしていたのだが、リジューン王国の闘技大会とかダンジョン探索で使ってしまっているので開き直ることにした。

もし奪おうとする奴がいたら返り討ちにすればいいし、負けそうだったら逃げよう。


ちなみにギルドの次は鍛冶屋に向かう予定だ。

なぜギルドが最初なのかというと、一度わんわん部隊を召喚獣として登録しないといけないからである。

リジューン王国では全員が知っていたからその必要はなかったけど、ここはそうでもないからね。

ポーションも売ってると思うし、わんわんの傷を癒さなくてはならないのもある。


……そして歩くこと数十分、冒険者ギルドへとたどり着いた。


「たのもー」

「あら、いらっしゃいボク。冒険者ギルドへの依頼かなにかかな?」


受付の女性がこちらを見て何かを納得し、依頼を出しに来た側だと勘違いしたようだ。


まあそれもそのはず、なにせ今の恰好は教会から支給された子供服だからね。

教会の関係者の子供が、おつかいか何かで訪れたのだと思うのが普通だろう。


「えっとー…… 依頼じゃなくて、召喚獣の従魔登録をしに来たんだ。これでも僕はFランクの冒険者なんだよ。ほら、これギルドカード」

「あら? ……確かに本物ね。これは失礼しました、それで君の従魔はどこにいるのかしら? ラビット系やスライム系は子供のうちは小さいけど、大きくなると飼うのが大変だから気をつけなさいね?」


ふむ、どうやら召喚獣ではなく、あくまでも俺がテイムしただけの魔物だと思っているようだ。

まあ召喚魔法なんて実際は使えないし、事実としてテイムしただけなんだけどね。


だが説明するのも面倒なので、ここは召喚獣ということにしておく。


「僕のは召喚獣だから、ここにはいないよ。出ておいでわんわん」

「グルォオオンッ!」

「へ……? え? サタン、フェンリル? はわわわわ……」


受付嬢の前でわんわんを呼び出たとたん、お姉さんの顔が青ざめ卒倒してしまった。

しかも周りの冒険者は何が起こったか分からず、喧噪の止まなかったギルド内が一瞬で静まり返っている。


あれ、俺なんかやらかした?

うん、やらかしたらしい。

……しかたない、ここは一旦わんわんを引っ込めよう。


「もどれわんわん」

「グルォンッ!!」


わんわんが影に戻ると、静まり返っていた室内が若干温度を取り戻す。

ここは軽く言い訳をしておこう。


「いやー、驚きました? 実は今のってうちの子の闇魔法なんですよ。幻影でブラックウルフをサタンフェンリルに見せる、すごい奴なんです」


これくらいなら嘘として妥当なラインではなかろうか。

俺の説明を聞いた冒険者たちも、手を武器から外して笑い合い始めた。


「なんだボウズ、ビックリさせやがって! それにしてもその歳で召喚魔法か、こりゃあ将来有望なルーキーが現れたな、ガハハハハッ!」

「そうだそうだ! サプライズにしてはちょっと刺激的だったが、面白かったぞボウズ!!」

「「「ガハハハハッ!!」」」


ふむ、なんとかごまかせたようだ。


その後は冒険者のおっさんたちに揉みくちゃにされ、あれよあれよという間に従魔登録が完了し、わんわん用の伸縮自在の首輪をもらった。

受付嬢さんも怒ってはおらず、「あんまりイラズラしちゃダメよ」なんて言われてデコピンされた程度だ。


揉みくちゃにされている間にポーションも調達したし、次は鍛冶屋へ向かうとしよう。



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