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ゼリリン、ビッグになる決意をする

この世界に転生して半年が過ぎた。

毎日の攻略本出し消しの成果なのか、1ヶ月目くらいで魔力の動きを掴むことには成功する。

そこからはデータベース先生にはお世話にならずに、ひたすら魔力を動かす訓練だ。


どうやら魔力は体全体に浸透しているらしく、ちょっと気合いを入れると全身を駆け巡って俺に活力を与えるようだ。

実に心地よい。


コツは血が細胞に酸素を供給するイメージ、ぐるぐる体中を巡っている感覚を掴んだら一気に技術が上達した。

おそらく、活力が出てくる理由はオリジンスキルのゼリー細胞の副作用なのではないかと考えている。

魔力を循環させると体も動きやすくなったので、若干の身体強化みたいなものが働いているのかもしれない。


最初は魔力の循環を半日くらい続けるとバテてしまっていたのだが、どうやらここ最近は魔力量もあがっているらしく、軽くやる程度なら一日中循環していても疲れることはない。

攻略本さんの言う訓練方法は正しかったようだ。



そして最近は母親の母乳から離乳食へと変わることになり、食べている間にふと力がみなぎる事が多くなった。

これも食いしん坊の成果なのかもしれない。

離乳食でこの程度ということは、今後の食生活によってはさらなる強化が見込まれるのだろう。

食べられる魔物の肉なんかがあれば、効率に期待が持てる。

たくさん食べて、将来はビッグになる予定なんだ。


あとこの半年で変化があったのといえば、自分の名前が分かったくらいかな。

翻訳によれば、どうやらセリルっていうパッとしない名前になったらしい。

なんだかゼリリンっぽい名前な気もするから、パッとしないといいつつもちょっと気に入っている。


あとはもう、この赤ん坊の体で出来る事などたかが知れているので、魔力の循環でもしながら惰眠を貪る事にする。

ちなみに迷宮空間は発動しようとしても何も起こらなかった、おそらく現在の魔力量では発動に必要な魔力が足りないのだと推察する。

成長を待つべし。



生まれてから1年が経った。

この体のスペックがいいのか、半年を少し過ぎたあたりから何の抵抗もなくあっさり歩けた。

つかまり立ちの練習なんて数回くらいしかしていない。

さすが魔王種、やることが規格外だ。


これには両親も驚きを隠せなかったらしく、何食わぬ顔で廊下を歩いているのを見かけられたときは、まるで心霊現象をみたかのような表情をされた。

まあそのあとは全力で喜ばれたけど。


1年間暮らして分かったが、どうやらこの家は田舎の男爵家のようで、貴族であるのにもかかわらず畑仕事に精を出す貧乏貴族だ。

家族構成は父、母、姉と兄、あと俺。


髪色に関しては、父は金髪、母は茶髪、姉と兄は金髪の俺茶髪っていったところ。

実にノーマルな髪色だ、もうちょっとファンタジーしてくれてもよかったんだけどな。


両親は貴族なだけあって魔法が使えるらしく、微弱ではあるものの詠唱とセットで火種を作っているところを見かけた。

いずれ俺も使いたい、魔法とはロマンなのだ。


詠唱といえば、そろそろ1歳にもなったし、ちょっとずつ喋ってみるのもいいかもしれない。

あの詠唱に意味があるのかはかなり謎だが、ここらへんは攻略本さんに聞けば一発だろう。

俺も早く強くなって、魔物素材で攻略本をグレードアップさせたいものだ。


…すると、俺のやる気を感じ取ったのか、傍で一家団欒していた家族が話しかけてきた。


「わー、セリルかわいいねぇー。もぎゅもぎゅ……」

「あうー……」


4歳の姉が俺のほっぺを全力でもみもみしてくる事案発生。

ちょ、やめんか姉ちゃん、1歳児の肌はまだ繊細なんだぞ。

お肌に傷でもついたらどうしてくれるっ!


まあ、どちらにせよゼリー細胞で再生するんだけどな。


「やめなさいレナ。セリルが嫌がってるでしょ」


母ちゃんがレナ姉ちゃんをとりあげてだっこした。

さすが母ちゃん、俺の魂のシャウトを正確に把握している、痺れるぜ。


「ふむ、セリルが1歳経たずに平然と歩いているのには驚いたが…この子は身体能力に才能があるのかもしれんな。将来は騎士にでもなるか?」


それは違うぞ父ちゃん、どちらかというと魔法寄りだ。

ただ魔王ゼリリンのスペックが平均的に高いだけなんだ、身体能力はオマケ。

ここはゼリリンの始祖として、誤解されている認識に一喝いれておかなければなるまい…


「パーパ、めっ!」

「お、おぉぅ……」

「あらあら、可愛いわねぇー」

「キャッキャッ!」


父ちゃんと母ちゃん、そしてレナ姉ちゃんを一瞬で骨抜きにしてしまったようだ。

くっ、一喝いれるつもりだったが…このラブリーなボディが恨めしいぜ。


ちなみに3歳のルー兄ちゃんはどこ吹く風と、素知らぬ顔で本を読みふけっていた。

どうやらお勉強が好きみたいだな。

絵本とはいえ、この中世時代に3歳が本を読むのはなかなかハイスペックだ。

将来が期待できるぞ兄ちゃん。


ちなみに自分自身の将来については、特になにになるとかは決めていない。

仮に世界を見て回るつもりなら、冒険者なんかもいいかもしれない。


だが、とりあえず今は成長が最優先だ。

ご飯を食べて寝て起きる、魔力循環も交えながら時が経つのを待とう。


あと1、2年もしたらやってみたい事もあるんだ。

将来はビッグになるって半年前に決めた。




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